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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ
第151話 村長さんの狼狽
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「みなさん、さっきの二人の話を聞いてどう思いました?」
若者二人が去った魔導車の中、ハイジさんが問いかける。
「あの二人の話だけで決め付ける訳には行かないけど、私にはスラムから連れてきた人を使い捨てにしているように感じられました。」
ミーナちゃんがそう言うと、普段はわたし達の話に口を挟まないフェイさんがミーナちゃんの感じたことに補足を加えた。
「ミーナちゃんの感じたことはあながち間違いじゃないと思いますよ。
普通、子供が仕事を始めるときは親方なり、先輩なり誰か大人が指導するものです。
魔獣狩りだって誰かベテランが指導しなければ上手くいく訳ありません。
スラムから腕っ節自慢の跳ねっ返りを連れてきて指導もなしに魔獣を退治しろなんて端から損耗を前提としているとしか思えません。」
フェイさんの予想は、伐採現場を守る要の部分はベテランにがっちり守ってもらい、そうでない所は持ち場を狭くした駆け出しをたくさん配置して肉の盾としているんじゃないかと言うものだった。
魔獣狩りに配置した駆け出しが損耗したらまたスラムから連れてくればいいと思っているのだろうとフェイさんは言う。
「アインさん達を見ればわかるように短期間でも瘴気中毒になる環境です。
短期間しか働けないのなら、まじめに魔獣狩りを育成するより損耗を前提に数で伐採現場を守るという手は雇う方には有効な手だと思います。
損耗した分はまたスラムから連れてくればいいのですから。
なんといっても、この国にはスラムの住人が多いようですし、その中には跳ねっ返りも多いでしょうから。」
「なんて酷い……。」
フェイさんの考えにハイジさんは顔をしかめて呟いた。
「えっ、酷いですか?
さっきの二人の話を聞いたでしょう。
彼らはオストエンデの街で引ったくりやカツアゲをしていたんですよ。
オストエンデの領主や住民は素行の悪い人間がいなくなったと喜んでいるかも知れませんよ。」
ハイジさんには耳の痛い言葉だったろう、スラムを放置している為政者が悪いと暗に言っているようなものだから。
でも、あくまでフェイさんの想像だからね、もう少し村の人の話を聞いてみないとね。
それよりも、わたしはすぐにやらないといけないと思うことがある。
「わたしは怪我をした人と瘴気中毒に罹った人がどうなったのかが気になる。
かなりたくさんいると思うの。まだこの村の中にいるのなら助けてあげたい。」
そう、ゼクスさんは怪我人や病人は何処かへ連れて行かれたと言っていた。
もしかしたら、もうこの町にはいないかもしれないけど、この町にいる人だけでも助けられたらと思う。
「それなら、やはり村長さんの話を聞いた方が良いと思います。」
ハイジさんの提案に従いわたし達は村長さんに話を聞きに行くことにした。
**********
村の人に教えてもらい村長さんの家までやってきた。
村長さんの家は今まで訪れた辺境の村の中では一番立派な家だった。
ここでも、ハイジさんが身分を明かすとすんなりと村長さんと会うことができた。
出てきた村長さんは心なしか大分疲れているように見える。
「事は急を要するので単刀直入に尋ねます。
この村に原因不明の高熱で倒れた者と魔獣狩りで大怪我をして動けない者がいるはずですが、どこに居るのです。」
ハイジさんは挨拶の後、いきなり本題を伐り出した。
「何でそのことを!どこで聞かれたのですか!」
村長さんは驚きの表情を浮かべてハイジさんに問い返した。
「どこで聞いたかは関係ありません。
私は患者はどこに居るのかと聞いているのです。」
ハイジさんの強い言葉に村長さんは慌てて答えた。
「申し訳ございません。
元からの村の者で病気を患った者は自宅で床に臥しております。
製材所が雇った者については私共は一切関与していないので分らないのです。」
「そうですか、では村の方だけで良いです。
治癒術師を連れてきました、これから治して回りますので患者のところに案内しなさい。」
ハイジさんに命じられた村長さんは渋々わたし達を病人が発生した家に案内してくれた。
その数なんと五十七人、みんな瘴気中毒の患者だった。
さすがに魔獣狩りを生業としてきた村の人だけあって、魔獣に遅れをとった人はいないようだ。
幸いにしてまだ亡くなった方はいないということだ。
わたしとミーナちゃんの二人で治癒を施して回り、五十七人全員の治療が終わったときにはすっかり日が暮れていた。
わたし達について治療の様子を窺っていた村長さんが、
「奇跡だ、治癒術師が全く治せなかった者達を半日で全員治してしまうとは…。」
と呟き涙を流している。
そんな村長さんにハイジさんは冷たく言った。
「さて、私が病人が何処にいるかを尋ねたとき、あなたは何故狼狽したのですか?
私にはあなたが病人を隠そうとしているように見えたのですが。」
村長さんは観念したように語り始めた。
「実は半年ほど前からこの病気で寝込むものが出始めまして、製材所が連れてきた創世教の治癒術師に診せたのですが一向に良くならないのです。
そうこうするうちに次々と同じ症状で倒れるものが出てきて、これは流行り病じゃないかと思ったのです。
流行り病だとすると、他の村に伝染する前に、早く国に報告しないといけません。
それを怠ると私達が国に罰せられてしまいます。
私は国へ報告しようとしたのですが、製材所の支配人に止められてしまいまして…。
国へ報告されると製材所を一時的に止めないといけなくなるかもしれない、それは困ると。
今のこの村は製材所のおかげで生活できているのが実情でして、従わない訳にいかなかったのです。
流行り病を隠していたことが国に露見したのかと思いまして慌ててしまったのです。」
ハイジさんは呆れた顔をして言った。
「あなたは命拾いしましたね。
これが本当に流行り病であったなら、それを隠すというのは死罪に値します。
しかし、幸いなことにこれは流行り病ではありません。
本来ならば疑わしいと思ったときに報告しないとなりませんが今回は目を瞑ります。
あなたは治療に当たってくれたこの二人に感謝しないといけませんよ。
それにしても、商売上の利益のために流行り病かもしれないものを隠せというのは感心しませんね。
やはり、一度訪ねて見なくてはなりませんか。」
村長さんの話では、村の魔獣狩りの人が次々と病気に罹り魔獣狩りをできなくなったため近隣の村に応援を頼んだそうだ。
また、製材所が木材を伐採する範囲が思いのほか広く、この村にいた魔獣狩りの人数では足らず初期から製材所が魔獣狩りの人を連れてきたみたいだ。
その中には、こちらが指摘したとおり大怪我をした者や同じ病に倒れる者も多数いたようだと村長さんは言っていた。
その人たちは今どうしているんだろう…。
若者二人が去った魔導車の中、ハイジさんが問いかける。
「あの二人の話だけで決め付ける訳には行かないけど、私にはスラムから連れてきた人を使い捨てにしているように感じられました。」
ミーナちゃんがそう言うと、普段はわたし達の話に口を挟まないフェイさんがミーナちゃんの感じたことに補足を加えた。
「ミーナちゃんの感じたことはあながち間違いじゃないと思いますよ。
普通、子供が仕事を始めるときは親方なり、先輩なり誰か大人が指導するものです。
魔獣狩りだって誰かベテランが指導しなければ上手くいく訳ありません。
スラムから腕っ節自慢の跳ねっ返りを連れてきて指導もなしに魔獣を退治しろなんて端から損耗を前提としているとしか思えません。」
フェイさんの予想は、伐採現場を守る要の部分はベテランにがっちり守ってもらい、そうでない所は持ち場を狭くした駆け出しをたくさん配置して肉の盾としているんじゃないかと言うものだった。
魔獣狩りに配置した駆け出しが損耗したらまたスラムから連れてくればいいと思っているのだろうとフェイさんは言う。
「アインさん達を見ればわかるように短期間でも瘴気中毒になる環境です。
短期間しか働けないのなら、まじめに魔獣狩りを育成するより損耗を前提に数で伐採現場を守るという手は雇う方には有効な手だと思います。
損耗した分はまたスラムから連れてくればいいのですから。
なんといっても、この国にはスラムの住人が多いようですし、その中には跳ねっ返りも多いでしょうから。」
「なんて酷い……。」
フェイさんの考えにハイジさんは顔をしかめて呟いた。
「えっ、酷いですか?
さっきの二人の話を聞いたでしょう。
彼らはオストエンデの街で引ったくりやカツアゲをしていたんですよ。
オストエンデの領主や住民は素行の悪い人間がいなくなったと喜んでいるかも知れませんよ。」
ハイジさんには耳の痛い言葉だったろう、スラムを放置している為政者が悪いと暗に言っているようなものだから。
でも、あくまでフェイさんの想像だからね、もう少し村の人の話を聞いてみないとね。
それよりも、わたしはすぐにやらないといけないと思うことがある。
「わたしは怪我をした人と瘴気中毒に罹った人がどうなったのかが気になる。
かなりたくさんいると思うの。まだこの村の中にいるのなら助けてあげたい。」
そう、ゼクスさんは怪我人や病人は何処かへ連れて行かれたと言っていた。
もしかしたら、もうこの町にはいないかもしれないけど、この町にいる人だけでも助けられたらと思う。
「それなら、やはり村長さんの話を聞いた方が良いと思います。」
ハイジさんの提案に従いわたし達は村長さんに話を聞きに行くことにした。
**********
村の人に教えてもらい村長さんの家までやってきた。
村長さんの家は今まで訪れた辺境の村の中では一番立派な家だった。
ここでも、ハイジさんが身分を明かすとすんなりと村長さんと会うことができた。
出てきた村長さんは心なしか大分疲れているように見える。
「事は急を要するので単刀直入に尋ねます。
この村に原因不明の高熱で倒れた者と魔獣狩りで大怪我をして動けない者がいるはずですが、どこに居るのです。」
ハイジさんは挨拶の後、いきなり本題を伐り出した。
「何でそのことを!どこで聞かれたのですか!」
村長さんは驚きの表情を浮かべてハイジさんに問い返した。
「どこで聞いたかは関係ありません。
私は患者はどこに居るのかと聞いているのです。」
ハイジさんの強い言葉に村長さんは慌てて答えた。
「申し訳ございません。
元からの村の者で病気を患った者は自宅で床に臥しております。
製材所が雇った者については私共は一切関与していないので分らないのです。」
「そうですか、では村の方だけで良いです。
治癒術師を連れてきました、これから治して回りますので患者のところに案内しなさい。」
ハイジさんに命じられた村長さんは渋々わたし達を病人が発生した家に案内してくれた。
その数なんと五十七人、みんな瘴気中毒の患者だった。
さすがに魔獣狩りを生業としてきた村の人だけあって、魔獣に遅れをとった人はいないようだ。
幸いにしてまだ亡くなった方はいないということだ。
わたしとミーナちゃんの二人で治癒を施して回り、五十七人全員の治療が終わったときにはすっかり日が暮れていた。
わたし達について治療の様子を窺っていた村長さんが、
「奇跡だ、治癒術師が全く治せなかった者達を半日で全員治してしまうとは…。」
と呟き涙を流している。
そんな村長さんにハイジさんは冷たく言った。
「さて、私が病人が何処にいるかを尋ねたとき、あなたは何故狼狽したのですか?
私にはあなたが病人を隠そうとしているように見えたのですが。」
村長さんは観念したように語り始めた。
「実は半年ほど前からこの病気で寝込むものが出始めまして、製材所が連れてきた創世教の治癒術師に診せたのですが一向に良くならないのです。
そうこうするうちに次々と同じ症状で倒れるものが出てきて、これは流行り病じゃないかと思ったのです。
流行り病だとすると、他の村に伝染する前に、早く国に報告しないといけません。
それを怠ると私達が国に罰せられてしまいます。
私は国へ報告しようとしたのですが、製材所の支配人に止められてしまいまして…。
国へ報告されると製材所を一時的に止めないといけなくなるかもしれない、それは困ると。
今のこの村は製材所のおかげで生活できているのが実情でして、従わない訳にいかなかったのです。
流行り病を隠していたことが国に露見したのかと思いまして慌ててしまったのです。」
ハイジさんは呆れた顔をして言った。
「あなたは命拾いしましたね。
これが本当に流行り病であったなら、それを隠すというのは死罪に値します。
しかし、幸いなことにこれは流行り病ではありません。
本来ならば疑わしいと思ったときに報告しないとなりませんが今回は目を瞑ります。
あなたは治療に当たってくれたこの二人に感謝しないといけませんよ。
それにしても、商売上の利益のために流行り病かもしれないものを隠せというのは感心しませんね。
やはり、一度訪ねて見なくてはなりませんか。」
村長さんの話では、村の魔獣狩りの人が次々と病気に罹り魔獣狩りをできなくなったため近隣の村に応援を頼んだそうだ。
また、製材所が木材を伐採する範囲が思いのほか広く、この村にいた魔獣狩りの人数では足らず初期から製材所が魔獣狩りの人を連れてきたみたいだ。
その中には、こちらが指摘したとおり大怪我をした者や同じ病に倒れる者も多数いたようだと村長さんは言っていた。
その人たちは今どうしているんだろう…。
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