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第6章 王家の森
第116話 王家の森を欲する者は?
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「昨日王家の森に行ったのですよね。
どうでした?良い所ですよね、冬でも暖かいし。
私は、これから手が空いたときはあそこでうたた寝でもしようと思っているのですよ。」
王家に森に行った翌日、既に恒例となっている奉仕活動のため精霊神殿に行くと、ミルトさんが開口一番に言った。
皇太子妃が森でうたた寝などしていて良いのだろうか…。
まあ、わたし達以外は誰も入れない森だし、いつも三精霊が付いているから危なくはないだろうけど。
「はい、とっても素敵なところで驚きました。
きっと楽園ってあのような場所を示すんでしょうね。」
ミーナちゃんが昨日の光景を思い浮かべているのかうっとりとした表情で答える。
「でも、普通の人は知れないこととはいえ、あんな素敵な場所を切り開いてしまいたい人がいるなんて悲しいです。」
そう続けたミーナちゃんに優しく微笑んでミルトさんが言った。
「大丈夫よ、あの森に手を付けることはないから。
あの森に手をつける必然性は全くないのよ、欲深い一部の貴族の思惑だけだから。
今回注意して調べているのは、嘆願書に有力な貴族や商人が名を連ねているからなの。
誰か良からぬ人物が扇動していたらいけないなと思って。」
ミルトさんの話では、王家の森を開発したいという嘆願書で最も多い理由が、王都が手狭になってきているからというものなんだって。
実は王都ヴィーナヴァルトは東側に広がる王家の森以外に北側と南側も小さな森になっておりほぼ四角い形の町の三方が森なのだ。
そして、北側と南側の森は、王都が手狭になったときに農地を潰さないために、王都の拡張用に残してある森なんだって。
嘆願に対して、本当に王都が手狭なら北側と南側の森の開発許可を出すと回答しているらしい。
にもかかわらず、北側や南側の森の開発申請が出てこないのは、王都が手狭だという理由が建て前でしかない証拠だとミルトさんは言う。
実際は王家の森を開発してそこの領主になりたい領地を持たない貴族とその利権にあやかりたい商人が連名で嘆願書を出しているとのこと。
「領主になりたいのなら、別に王家の森を開発しなくても幾らでも空いている土地はあるのにね。
欲深い連中には、王家の森が一等地を無駄に眠らしているようにしか見えないのよ。」
ミルトさんの話では、オストマルク王国では西部地区で領主なる人を募集しているんだって。
西部地区は荒野が多く、それこそ無駄に眠っている土地なので、町や農地に変えたいらしい。
申請をすれば土地代はただ、開発に成功すればそこの土地の領主になれるらしい。
領地を持たない貴族が領主になるチャンスであり、貴族でない人が貴族になるチャンスでもあるらしい。
随分昔から募集しているが、応募はほとんどなく、数例あるのは有力な領主貴族が子供に領地を与えるために開発をしたケースだけみたい。
「今領主をしている貴族だって最初は大変な思いをして荒野を切り開いて町や農地を作ったのよ。
楽して領主になりたいなんて虫のいい話は認められないわ。」
**********
わたし達貴族でない者にはあまり関係ないが、貴族には領地を持つ貴族と領地を持たない貴族があるらしい。
領地を持つ貴族は、ヴァイスハイトさんと一緒にこの国を開墾した人やこの国に吸収された国の元王族など元から領地を持っていた貴族、シーマ男爵のように何らかの業績を上げて領地を下賜された貴族、新たに自分で領地を開拓した貴族の三通りがあるらしい。
領地を持たない貴族は宮廷貴族と呼ばれ宮廷を支えてきた高官などの家であるが、エルフリーデちゃんのアデル侯爵家みたいに有力領主貴族でありながら宮廷の高官をつとめる家もあり一概に宮廷貴族が領地を持たないとはいえないそうだ。
で、問題なのは領地を持たない宮廷貴族、かつて有能な文官を輩出し高位の貴族になったのはいいが、その後の子孫達がパッとしない家があるみたいね。
一方で、オストマルク王国では文官は能力主義で貴族以外からも積極的に採用しているそうだ。
そうすると、由緒正しい高位貴族でも有力な地位を得られない者が出てくるんだって。
そういう貴族が領主貴族にあこがれるのだそうだ。
領主貴族は二つの重要な特権を持っているんだって。
一つは、王国に納める税とは別に自分の領地特有の税を民から徴収する特権。
もう一つは、王国法に反しない限りにおいて領地内でのみ通用する領地法を制定する特権。
言ってしまえば、領主貴族は小さな国の王のようなものみたいだ。
宮廷貴族で地位が得られないないなら領主貴族になりたいという貴族が出てくるのも頷けるよ。
一方で、西部地区の荒野を開拓するような苦労はしたくないらしい。
そこで、目を付けられたのが王家の森ということみたい。
森には豊かな土がありよい農地になりそうだし、木材もたくさん取れるので建物を建てるのにも有利、なにより王都に近い。
労せずして良い領地なると考える貴族が結構いるみたいだ、しかも新たな領地ができれば利権が生じるということで商人の協力も得られるということだ。
ミルトさんの言うとおり虫のいい話だね。
過去に王家の私有財産が下賜された事例は確かにあるそうだ。
でもそれは、王国に多大な貢献があった者に対する褒章であり、間違ってもうだつの上がらない宮廷貴族に対するものではないとミルトさんは怒っていたよ。
どうでした?良い所ですよね、冬でも暖かいし。
私は、これから手が空いたときはあそこでうたた寝でもしようと思っているのですよ。」
王家に森に行った翌日、既に恒例となっている奉仕活動のため精霊神殿に行くと、ミルトさんが開口一番に言った。
皇太子妃が森でうたた寝などしていて良いのだろうか…。
まあ、わたし達以外は誰も入れない森だし、いつも三精霊が付いているから危なくはないだろうけど。
「はい、とっても素敵なところで驚きました。
きっと楽園ってあのような場所を示すんでしょうね。」
ミーナちゃんが昨日の光景を思い浮かべているのかうっとりとした表情で答える。
「でも、普通の人は知れないこととはいえ、あんな素敵な場所を切り開いてしまいたい人がいるなんて悲しいです。」
そう続けたミーナちゃんに優しく微笑んでミルトさんが言った。
「大丈夫よ、あの森に手を付けることはないから。
あの森に手をつける必然性は全くないのよ、欲深い一部の貴族の思惑だけだから。
今回注意して調べているのは、嘆願書に有力な貴族や商人が名を連ねているからなの。
誰か良からぬ人物が扇動していたらいけないなと思って。」
ミルトさんの話では、王家の森を開発したいという嘆願書で最も多い理由が、王都が手狭になってきているからというものなんだって。
実は王都ヴィーナヴァルトは東側に広がる王家の森以外に北側と南側も小さな森になっておりほぼ四角い形の町の三方が森なのだ。
そして、北側と南側の森は、王都が手狭になったときに農地を潰さないために、王都の拡張用に残してある森なんだって。
嘆願に対して、本当に王都が手狭なら北側と南側の森の開発許可を出すと回答しているらしい。
にもかかわらず、北側や南側の森の開発申請が出てこないのは、王都が手狭だという理由が建て前でしかない証拠だとミルトさんは言う。
実際は王家の森を開発してそこの領主になりたい領地を持たない貴族とその利権にあやかりたい商人が連名で嘆願書を出しているとのこと。
「領主になりたいのなら、別に王家の森を開発しなくても幾らでも空いている土地はあるのにね。
欲深い連中には、王家の森が一等地を無駄に眠らしているようにしか見えないのよ。」
ミルトさんの話では、オストマルク王国では西部地区で領主なる人を募集しているんだって。
西部地区は荒野が多く、それこそ無駄に眠っている土地なので、町や農地に変えたいらしい。
申請をすれば土地代はただ、開発に成功すればそこの土地の領主になれるらしい。
領地を持たない貴族が領主になるチャンスであり、貴族でない人が貴族になるチャンスでもあるらしい。
随分昔から募集しているが、応募はほとんどなく、数例あるのは有力な領主貴族が子供に領地を与えるために開発をしたケースだけみたい。
「今領主をしている貴族だって最初は大変な思いをして荒野を切り開いて町や農地を作ったのよ。
楽して領主になりたいなんて虫のいい話は認められないわ。」
**********
わたし達貴族でない者にはあまり関係ないが、貴族には領地を持つ貴族と領地を持たない貴族があるらしい。
領地を持つ貴族は、ヴァイスハイトさんと一緒にこの国を開墾した人やこの国に吸収された国の元王族など元から領地を持っていた貴族、シーマ男爵のように何らかの業績を上げて領地を下賜された貴族、新たに自分で領地を開拓した貴族の三通りがあるらしい。
領地を持たない貴族は宮廷貴族と呼ばれ宮廷を支えてきた高官などの家であるが、エルフリーデちゃんのアデル侯爵家みたいに有力領主貴族でありながら宮廷の高官をつとめる家もあり一概に宮廷貴族が領地を持たないとはいえないそうだ。
で、問題なのは領地を持たない宮廷貴族、かつて有能な文官を輩出し高位の貴族になったのはいいが、その後の子孫達がパッとしない家があるみたいね。
一方で、オストマルク王国では文官は能力主義で貴族以外からも積極的に採用しているそうだ。
そうすると、由緒正しい高位貴族でも有力な地位を得られない者が出てくるんだって。
そういう貴族が領主貴族にあこがれるのだそうだ。
領主貴族は二つの重要な特権を持っているんだって。
一つは、王国に納める税とは別に自分の領地特有の税を民から徴収する特権。
もう一つは、王国法に反しない限りにおいて領地内でのみ通用する領地法を制定する特権。
言ってしまえば、領主貴族は小さな国の王のようなものみたいだ。
宮廷貴族で地位が得られないないなら領主貴族になりたいという貴族が出てくるのも頷けるよ。
一方で、西部地区の荒野を開拓するような苦労はしたくないらしい。
そこで、目を付けられたのが王家の森ということみたい。
森には豊かな土がありよい農地になりそうだし、木材もたくさん取れるので建物を建てるのにも有利、なにより王都に近い。
労せずして良い領地なると考える貴族が結構いるみたいだ、しかも新たな領地ができれば利権が生じるということで商人の協力も得られるということだ。
ミルトさんの言うとおり虫のいい話だね。
過去に王家の私有財産が下賜された事例は確かにあるそうだ。
でもそれは、王国に多大な貢献があった者に対する褒章であり、間違ってもうだつの上がらない宮廷貴族に対するものではないとミルトさんは怒っていたよ。
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