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第5章 冬休み、南部地方への旅
第106話 行く手を阻むのは?
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「すごーい!どこまでも真っ白!これ全部雪なの?きれいだね!」
みんなが呆然とする中でハンナちゃんが一人はしゃいでいる。
二の月の最初の日、わたし達はヴィーナヴァルトまであと五日というところで足止めを食らっている。
「やっぱり、子供達の冬休みの間に王都へ戻ってくるという日程には無理があったかしら。」
ミルトさんがのんびりとした声を上げた。
目の前は一面の雪景色、どこまでも続く雪原が広がっている。街道がどこにあるがわからないよ。
初夏の陽気だったポルトからここまで十五日間北上して来た。
十日目くらいから肌寒くなったかなと思っていたら、数日前から雪がちらつき始め今はこんな状況になっている。
例年、二の月の初めには王都に集まった貴族のうち南部地方の領主達が地元に戻り始めるので、わたし達が進んでいるこの街道は二の月の初日から一斉に除雪作業が始まるそうだ。
「二の月の初めって、今日から除雪を始めるんですか?
これだけの雪を王都まで除雪するのってどのくらいかかるんですか?
とても数日で終るとは思えないんですけど…。」
「そうよね、今年は雪が多かったようね。
雪が少ない年にあたれば何とかなると思っていたんですけど…。」
わたしの問いに頷きつつ、ミルトさんは教えてくれた。
この辺りは、例年なら積雪はそう多くない地域で、地元の領主は二の月を待たずに除雪を始めるんだって。
この街道は南部地方と王都を結ぶ一番重要な街道なので、領主としてもなるべく早く開通させたいとのこと。人の往来が増えれば街道沿いの町に落ちるお金が増えるのでいつまでも閉鎖させておきたくないそうだ。
ミルトさんは、診療しながらゆっくり進んでいけば、除雪のペースにあわせて王都まで帰れると踏んだらしい。
で、今の状況だけど、今年の冬は例年に比して積雪が多く一の月の間は全く手が付けられなかったようだ。
「今日はこの町に泊まって、明日はこの町で領民の診療をする予定になっているからここまでは予定通り。
問題は、明日の診療後に二つ先の町までいけるかどうかよね。困ったわね…。」
ミルトさん、それも大事だけど、わたしは冬休み中に王都まで帰れるかどうかの方が気になるんですけど…。
*********
そして、二の月の二日目、集まった領民の診療を終えて街道を見渡す。
昨日から始まった除雪作業で街道は姿を見せているがたいした距離は進んでいない。
「これ、今日の移動は無理じゃないですか?」
「そうよね、この町で何日か足止めかな…。」
わたしの問いかけに、ミルトさんはそう答えたが…。
雪が比較的少ないというこの町でこれだけの積雪があったなら、王都の方はもっと凄かったんじゃないかと思う。
だとしたら、ここからは町ごとに足止めになるんじゃないかな。とても冬休み中には帰れないなよ。
「ターニャちゃんは、早く学園に戻りたいですか?」
私の後ろに立っていたフェイさんが、わたしの耳元で囁いた。
「え、何とかできるの?」
「このくらいのことは容易いことですよ。
いつもは私を頼ることがないのですから、たまには頼りなさい。」
そう、基本勉強中の身であるわたしは、おチビちゃん達中位精霊との意思疎通を円滑にできるようにすることを日課とし、何かするときはおチビちゃん達にお願いしている。
フェイさんたち上位精霊は、基本的に助言はしてくれるが直接手を貸してくれることは少ない。
何でもできちゃうし、上位精霊の方がわたしの意思をくんでくれるからわたしの勉強にならないって。
しかも、上位精霊はわたしのマナなんて必要とせずに力を行使できる。
フェイさんは、わたしを抱きしめると少しばかりのマナを吸い抱擁を解いた。
そして、前へ進み出て言った。
「今から私が雪をどかします。
作業をしている人は危険ですから、こちらに戻ってくるかどこか安全な場所に退避してください。」
そう警告すると、膨大なマナを練り上げて、「そこを退きなさい。」とひとこと言った。
雪原が割れた。
そうとしか表現の仕様がない光景が目の前に現れた。
街道の上に積もった雪が街道の両脇にズズッと寄ったのだ、作業員のみんなが愕然とした表情でそれを眺めている。
「雪をどかすのは簡単なことなのですが、人が作った道に沿ってというのは難しいですね。
雪に埋もれて道がどこにあるかわからないので、どうしても直線になってしまいます。」
どこまでも続く直線の溝が雪原を貫いている。
幸いこの街道は計画的に作られた街道で、直線部分が多い。
フェイさんに手加減して雪を除けてもらい、曲がり角やカーブを修正しながら進むことになった。
こんな力技、おチビちゃん達にはできないよ。できるかもしれないけど、その分のマナを負担したらわたしが持たないよ。
ここから王都までは例年にない大雪に見舞われていたようで除雪が進んでおらず、フェイさんの力に頼りながら進むことになった。
フェイさんの揮う力は、行く先々で目にした人を驚かせていた。
そして、二の月の五日目、当初予定通りにわたし達は王都へ帰り着くことができたのであった。
みんなが呆然とする中でハンナちゃんが一人はしゃいでいる。
二の月の最初の日、わたし達はヴィーナヴァルトまであと五日というところで足止めを食らっている。
「やっぱり、子供達の冬休みの間に王都へ戻ってくるという日程には無理があったかしら。」
ミルトさんがのんびりとした声を上げた。
目の前は一面の雪景色、どこまでも続く雪原が広がっている。街道がどこにあるがわからないよ。
初夏の陽気だったポルトからここまで十五日間北上して来た。
十日目くらいから肌寒くなったかなと思っていたら、数日前から雪がちらつき始め今はこんな状況になっている。
例年、二の月の初めには王都に集まった貴族のうち南部地方の領主達が地元に戻り始めるので、わたし達が進んでいるこの街道は二の月の初日から一斉に除雪作業が始まるそうだ。
「二の月の初めって、今日から除雪を始めるんですか?
これだけの雪を王都まで除雪するのってどのくらいかかるんですか?
とても数日で終るとは思えないんですけど…。」
「そうよね、今年は雪が多かったようね。
雪が少ない年にあたれば何とかなると思っていたんですけど…。」
わたしの問いに頷きつつ、ミルトさんは教えてくれた。
この辺りは、例年なら積雪はそう多くない地域で、地元の領主は二の月を待たずに除雪を始めるんだって。
この街道は南部地方と王都を結ぶ一番重要な街道なので、領主としてもなるべく早く開通させたいとのこと。人の往来が増えれば街道沿いの町に落ちるお金が増えるのでいつまでも閉鎖させておきたくないそうだ。
ミルトさんは、診療しながらゆっくり進んでいけば、除雪のペースにあわせて王都まで帰れると踏んだらしい。
で、今の状況だけど、今年の冬は例年に比して積雪が多く一の月の間は全く手が付けられなかったようだ。
「今日はこの町に泊まって、明日はこの町で領民の診療をする予定になっているからここまでは予定通り。
問題は、明日の診療後に二つ先の町までいけるかどうかよね。困ったわね…。」
ミルトさん、それも大事だけど、わたしは冬休み中に王都まで帰れるかどうかの方が気になるんですけど…。
*********
そして、二の月の二日目、集まった領民の診療を終えて街道を見渡す。
昨日から始まった除雪作業で街道は姿を見せているがたいした距離は進んでいない。
「これ、今日の移動は無理じゃないですか?」
「そうよね、この町で何日か足止めかな…。」
わたしの問いかけに、ミルトさんはそう答えたが…。
雪が比較的少ないというこの町でこれだけの積雪があったなら、王都の方はもっと凄かったんじゃないかと思う。
だとしたら、ここからは町ごとに足止めになるんじゃないかな。とても冬休み中には帰れないなよ。
「ターニャちゃんは、早く学園に戻りたいですか?」
私の後ろに立っていたフェイさんが、わたしの耳元で囁いた。
「え、何とかできるの?」
「このくらいのことは容易いことですよ。
いつもは私を頼ることがないのですから、たまには頼りなさい。」
そう、基本勉強中の身であるわたしは、おチビちゃん達中位精霊との意思疎通を円滑にできるようにすることを日課とし、何かするときはおチビちゃん達にお願いしている。
フェイさんたち上位精霊は、基本的に助言はしてくれるが直接手を貸してくれることは少ない。
何でもできちゃうし、上位精霊の方がわたしの意思をくんでくれるからわたしの勉強にならないって。
しかも、上位精霊はわたしのマナなんて必要とせずに力を行使できる。
フェイさんは、わたしを抱きしめると少しばかりのマナを吸い抱擁を解いた。
そして、前へ進み出て言った。
「今から私が雪をどかします。
作業をしている人は危険ですから、こちらに戻ってくるかどこか安全な場所に退避してください。」
そう警告すると、膨大なマナを練り上げて、「そこを退きなさい。」とひとこと言った。
雪原が割れた。
そうとしか表現の仕様がない光景が目の前に現れた。
街道の上に積もった雪が街道の両脇にズズッと寄ったのだ、作業員のみんなが愕然とした表情でそれを眺めている。
「雪をどかすのは簡単なことなのですが、人が作った道に沿ってというのは難しいですね。
雪に埋もれて道がどこにあるかわからないので、どうしても直線になってしまいます。」
どこまでも続く直線の溝が雪原を貫いている。
幸いこの街道は計画的に作られた街道で、直線部分が多い。
フェイさんに手加減して雪を除けてもらい、曲がり角やカーブを修正しながら進むことになった。
こんな力技、おチビちゃん達にはできないよ。できるかもしれないけど、その分のマナを負担したらわたしが持たないよ。
ここから王都までは例年にない大雪に見舞われていたようで除雪が進んでおらず、フェイさんの力に頼りながら進むことになった。
フェイさんの揮う力は、行く先々で目にした人を驚かせていた。
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