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第5章 冬休み、南部地方への旅
第90話 此方を窺う者
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結局誘拐騒動はお茶会に行ったミルトさん達の耳にも入ってしまった。
衛兵さんを呼んだのだから、領主である公爵にも報告は行っちゃうよね。
慌てて帰って来たミルトさんがいつもと変わらぬ様子でお茶を飲んでいたわたし達を見て安堵の表情を浮かべた。
ミルトさん達は相当心配してくれたらしい。
予定では今日は公爵邸に泊まって、明日の朝、精霊神殿で合流することになっていたんだ。
それなのに心配して帰ってきてくれたみたいで、申し訳ないことしちゃった。
ミルトさんは、わたし達が乱暴な扱いを受けていなかったことに安堵する一方で、今後このようなことが起こらないようにする必要があると言った。
元々、わたし達がミルトさんやフローラちゃんと別行動をとるときは護衛の騎士を付けようと言う意見があったんだ。
でも、四六時中騎士が傍にいるのは気詰まりするし、何よりもこちらにはソールさんを始め六体もの上位精霊が付いている。万の兵を相手にしても大丈夫だよ、たぶん…。
そういうことで、護衛に騎士をつけるというのはやめてもらったんだ。
だけど、今回のことでミルトさんは考えを改めたらしい。
たしかに精霊に守られている私たちを害することは出来ないかも知れないが、そもそも襲われることがないようにする必要があるとミルトさんは言っている。
ソールさん達は見た目は若い女性だから襲ってもなんとかなると襲撃者に侮られてしまう。
一方で、屈強な騎士が守っていれば襲撃者もしり込みしてしまうだろう。
要するに、常に護衛がついていると周囲に知らしめる必要があるのだとミルトさんは言っている。
そう言われてしまうとイヤとはいえないよ…。
結局ミルトさんに説得される形で平民組だけで行動するときも騎士がわかる形で護衛につくことになった。
ただでさえ、侍女や侍従に見える人(上位精霊)が六人も付き従っているのに、これに騎士まで加わったら何処のお姫様かって感じだよ。気軽に街に出かけることもできないよ…。
**********
翌日、いつものように精霊神殿の前庭で臨時診療所を開いている。
わたし達はいつもと同じだが、今日から少し変えたことがある。
ソールさんが少し周囲を警戒しようと考え、おチビちゃん達にこちらを探っている怪しい者がいないか見張ってもらうことにしたのだ。
というのも、昨日の誘拐犯は初日に治療を受けた船乗りさんと同じ船の船長と船員で、初日にわたし達の話を聞いてずっと誘拐の機会を狙っていたと言っていたそうだ。
恩を仇で返すなんて、なんて奴らだ…。
それを聞いたソールさんがこちらを窺っている者がいないか診療所の周辺も警戒することにしたんだって。
それはおチビちゃんに任せて、わたしはいつも通り治療に専念する。
やっぱり港町だけあって船乗りさんが多いね。
野菜不足の船乗りさんに加え、フェイさんが言っていた玄米を食べさせろという船乗りさんも来たよ。
足の痺れが取れなくなるんだって、水のおチビちゃんに『癒し』をしてもらってた後、ちゃんと玄米を食べてくださいと言っておいたよ。
でも、不思議なのはフェイさんは二つの病気の原因と対策を知っていた。
にもかかわらず、風邪の時みたいに精霊神殿の教えにないのはどうしてなんだろう。
これだけたくさんの船乗りさんが病気になっているのだから、教えの中にあってもいいはず。
『長い航海に出るときは日持ちする柑橘類と玄米を持っていきましょう。』
とか
『陸に上がったときは生野菜と果物それに玄米をたくさん食べましょう。』
とか書いた看板が精霊神殿の前辺りに立て掛けられていても良いような気がするんだけど。
フェイさんに言ってみたら、オストマルク王国ではそんな病気に罹るほど長い航海することがないのでそういう教えを残さなかったそうだ。
それもそうか、そもそもそんな長期間航海できる船は作れないんだもんね。
**********
そんな話をしながら治療を続けているとおチビちゃんが一体やってきて、わたしのマナを強請った。怪しい男を見つけたからご褒美が欲しい言っている。
マナを分けてあげながら、おチビちゃんの話を聞く。
少し要領を得ないところもあるが、怪しい男は昨日の誘拐騒動の話を聞きつけてきたらしい。
昨日の事件の後でこちらの警備が厳しくなっていないかを確かめに来たようだ。
こちらの様子を窺って警戒が厳しければ、別行動している皇后親娘を先に狙おうと言っていたみたいだ。
何かきな臭い話だなぁ…。
だいたい想像できるけど、念のためおチビちゃんに聞いてみる。
(その男ってどんな感じだった?)
(なんか黒くて、瘴気がいっぱいだった。)
予想通りの答えが返ってきて、思わず噴き出してしまった。
ヴィクトーリアさんとハイジさんは、ヴィクトーリアさんが病後の静養中なので別荘でのんびりしていることが多い。
王家の別荘だから警戒厳重だよ。向こうにも護衛に騎士がたくさんついてるしね。
ソールさんにおチビちゃんから聞いたことを話したところ、念のためホアカリさんとミツハさんをヴィクトーリアさん親娘の護衛として別荘に配置すると言っていた。
今日、明日、襲われることはないだろうがその方が安心だね。
衛兵さんを呼んだのだから、領主である公爵にも報告は行っちゃうよね。
慌てて帰って来たミルトさんがいつもと変わらぬ様子でお茶を飲んでいたわたし達を見て安堵の表情を浮かべた。
ミルトさん達は相当心配してくれたらしい。
予定では今日は公爵邸に泊まって、明日の朝、精霊神殿で合流することになっていたんだ。
それなのに心配して帰ってきてくれたみたいで、申し訳ないことしちゃった。
ミルトさんは、わたし達が乱暴な扱いを受けていなかったことに安堵する一方で、今後このようなことが起こらないようにする必要があると言った。
元々、わたし達がミルトさんやフローラちゃんと別行動をとるときは護衛の騎士を付けようと言う意見があったんだ。
でも、四六時中騎士が傍にいるのは気詰まりするし、何よりもこちらにはソールさんを始め六体もの上位精霊が付いている。万の兵を相手にしても大丈夫だよ、たぶん…。
そういうことで、護衛に騎士をつけるというのはやめてもらったんだ。
だけど、今回のことでミルトさんは考えを改めたらしい。
たしかに精霊に守られている私たちを害することは出来ないかも知れないが、そもそも襲われることがないようにする必要があるとミルトさんは言っている。
ソールさん達は見た目は若い女性だから襲ってもなんとかなると襲撃者に侮られてしまう。
一方で、屈強な騎士が守っていれば襲撃者もしり込みしてしまうだろう。
要するに、常に護衛がついていると周囲に知らしめる必要があるのだとミルトさんは言っている。
そう言われてしまうとイヤとはいえないよ…。
結局ミルトさんに説得される形で平民組だけで行動するときも騎士がわかる形で護衛につくことになった。
ただでさえ、侍女や侍従に見える人(上位精霊)が六人も付き従っているのに、これに騎士まで加わったら何処のお姫様かって感じだよ。気軽に街に出かけることもできないよ…。
**********
翌日、いつものように精霊神殿の前庭で臨時診療所を開いている。
わたし達はいつもと同じだが、今日から少し変えたことがある。
ソールさんが少し周囲を警戒しようと考え、おチビちゃん達にこちらを探っている怪しい者がいないか見張ってもらうことにしたのだ。
というのも、昨日の誘拐犯は初日に治療を受けた船乗りさんと同じ船の船長と船員で、初日にわたし達の話を聞いてずっと誘拐の機会を狙っていたと言っていたそうだ。
恩を仇で返すなんて、なんて奴らだ…。
それを聞いたソールさんがこちらを窺っている者がいないか診療所の周辺も警戒することにしたんだって。
それはおチビちゃんに任せて、わたしはいつも通り治療に専念する。
やっぱり港町だけあって船乗りさんが多いね。
野菜不足の船乗りさんに加え、フェイさんが言っていた玄米を食べさせろという船乗りさんも来たよ。
足の痺れが取れなくなるんだって、水のおチビちゃんに『癒し』をしてもらってた後、ちゃんと玄米を食べてくださいと言っておいたよ。
でも、不思議なのはフェイさんは二つの病気の原因と対策を知っていた。
にもかかわらず、風邪の時みたいに精霊神殿の教えにないのはどうしてなんだろう。
これだけたくさんの船乗りさんが病気になっているのだから、教えの中にあってもいいはず。
『長い航海に出るときは日持ちする柑橘類と玄米を持っていきましょう。』
とか
『陸に上がったときは生野菜と果物それに玄米をたくさん食べましょう。』
とか書いた看板が精霊神殿の前辺りに立て掛けられていても良いような気がするんだけど。
フェイさんに言ってみたら、オストマルク王国ではそんな病気に罹るほど長い航海することがないのでそういう教えを残さなかったそうだ。
それもそうか、そもそもそんな長期間航海できる船は作れないんだもんね。
**********
そんな話をしながら治療を続けているとおチビちゃんが一体やってきて、わたしのマナを強請った。怪しい男を見つけたからご褒美が欲しい言っている。
マナを分けてあげながら、おチビちゃんの話を聞く。
少し要領を得ないところもあるが、怪しい男は昨日の誘拐騒動の話を聞きつけてきたらしい。
昨日の事件の後でこちらの警備が厳しくなっていないかを確かめに来たようだ。
こちらの様子を窺って警戒が厳しければ、別行動している皇后親娘を先に狙おうと言っていたみたいだ。
何かきな臭い話だなぁ…。
だいたい想像できるけど、念のためおチビちゃんに聞いてみる。
(その男ってどんな感じだった?)
(なんか黒くて、瘴気がいっぱいだった。)
予想通りの答えが返ってきて、思わず噴き出してしまった。
ヴィクトーリアさんとハイジさんは、ヴィクトーリアさんが病後の静養中なので別荘でのんびりしていることが多い。
王家の別荘だから警戒厳重だよ。向こうにも護衛に騎士がたくさんついてるしね。
ソールさんにおチビちゃんから聞いたことを話したところ、念のためホアカリさんとミツハさんをヴィクトーリアさん親娘の護衛として別荘に配置すると言っていた。
今日、明日、襲われることはないだろうがその方が安心だね。
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