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第5章 冬休み、南部地方への旅
第72話 冬休みはどうするの?
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*お昼に1話投稿してあります。
まだお読みでない方は、そちらからお読みください。
よろしくお願いします。
***********
「ポルト?」
「そう、ポルト、この国一番の規模を誇る港町で、南部地方最大の都市よ。」
たしか『ポルト』ってこの国の言葉で『港』って言う意味だった。町の名前がポルトなの?
などとどうでもいい事を考えている間にもフローラちゃんは話を続ける。
「ポルトまではできる限り早く行くことを予定しています。
ポルトではある程度長く滞在して治療活動をしますの。もちろんポルトでは休養も取りますわ。
帰りは少しゆっくり移動して大きな街を中心に治療活動をしながら帰ってくる予定ですの。」
ポルトはポルト公爵が領主ということになっているが、実際は王領で王族の一人がポルト公爵位を授かり港町を治めるらしい。
だからポルト公爵は世襲じゃないし、引退するときは返上するんだって。
今のポルト公爵はミルトさんのお父さんだって、フローラちゃんから見ればお祖父ちゃんか。
たしか、王弟だったよね。
ポルトまでの距離は約四十シュタット、四日で着く計画のようだ。
ポルトからは二十日かけて途中の街で治療活動をしながら帰ってくる。
全体で五十日ちょっとの日程だからポルトに三十日くらい滞在するのかな?
「ポルトでは、王家の別荘に滞在しますわ。
ただ、私とお母様は何日かお祖父様のところに滞在することになると思いますの。
ターニャちゃん達は気疲れするだろうから王家の別荘に留まってもらって結構ですわ。」
王家の別荘は、わたし達の他は使用人しかいないらしい。
ミルトさんが、貴族の館に泊まると気疲れするというミーナちゃんに気を使ってくれたみたいだ。
今回は帝国へ行ったときと違い食料や種苗を用意しないで良い分だけ身軽だ。
ただ、ミルトさんのお願いでわたし達の魔導車のうち二台に設置されたベッドを応接セットに変更したよ。
近衛騎士を乗せて欲しいんだって。
別に構わないけどクロノスお姉ちゃんを呼ばないとできないんだよね。
魔導車の昇降口よりベッドの横幅の方が大きいんだもの。
クロノスお姉ちゃんに魔導車から術で精霊の森にベッドを送ってもらって、逆に応接セットを精霊の森から魔導車の中へ送ってもらうという操作をしないといけない。
クロノスお姉ちゃんはわたしに会えて大喜びだけど、わたしはたっぷりマナを吸い取られてげんなりしてしまった。
**********
そうこうしているうちに時間は流れ、今は冬休み前日の放課後、わたし達はエルフリーデちゃんのサロンにおじゃましている。
「ターニャちゃん達、フローラ様と一緒に南部地区の別荘地に行くんですって?
良いですわね、暖かい場所で冬越しができて。」
エルフリーデちゃんがしみじみと言う。
「エルフリーデちゃんとマイヤーちゃんは、王都の屋敷に両親が住んでいるからまだいいじゃない。
ボク達はずーっと寮にいることになるんだよ、退屈だよ。」
いつも元気なルーナちゃんが珍しく沈んでいる。
王都は今はまだ雪が積もっていないけど、例年あと二十日もすれば雪に閉ざされるという。
積雪がひどいと本当に寮に閉じこもっていなければならず、元気なルーナちゃんには苦痛なんだろう。
ちなみに今日は八の月の四十日、今年もあと五日だ。
冬休みは明日から二の月の十日まで、何と六十日もある。
これは、雪のせいでしょうがないんだって、この時期は王都でも積雪が四十センチシュトラーセになることもあり学園内で遭難しかねないそうだ。
ミルトさんが、冬が苦手だって言っていたのがわかる気がする。
「だから、うちの王都屋敷にみなさんで滞在すれば良いって申し上げたではないですか。」
「イヤだよ。エルフリーデちゃんのお屋敷って親戚の貴族が何人も滞在しているんでしょう。
気詰まりして死んじゃうよ。
ボクの両親が宿泊しているホテルも、貴族がいっぱい泊まっていて気が休まらないから結局寮にいるしかないんだよ。」
エルフリーデちゃんの家みたいに王国有数の大貴族になると、親戚関係にある貴族が多いらしい。
その中で、王都に屋敷を待たない貴族が冬の間エルフリーデちゃんの家の王都屋敷に滞在しているとのこと。
四六時中、他の貴族の目に晒されていたのでは気が休まらないとルーナちゃんは言っている。
どうでもいいけど、エルフリーデちゃんの家の王都屋敷ってドンだけ大きいんだろう?
「ところでターニャちゃん、南部地方への何時から何時まで行っているの?
ラインちゃんのお父さんが、挨拶したいらしいんだけど。」
ああ、学園祭の花の件かな?
なんか寄付金総額が十位以内に入って王様から感謝状を貰ったって言ってたよね。
「明日出発して、一の月の末までには帰ってくるつもりなんだけど、長い旅路なんで帰る日ははっきりしないんだ。」
「そうなんだ、ラインちゃんのお父さんも一の月の終わりには王都を出ちゃうみたいだから会うのは難しそうだね。」
ラインさんにはルーナちゃんがそのように説明してくれるって言ってくれた。
ラインさんのお父さんには申し訳ないことしたな。
(設定注釈)
一年=三百六十日=四十五日×八ヵ月
四十センチシュトラーセ=約二メートル
まだお読みでない方は、そちらからお読みください。
よろしくお願いします。
***********
「ポルト?」
「そう、ポルト、この国一番の規模を誇る港町で、南部地方最大の都市よ。」
たしか『ポルト』ってこの国の言葉で『港』って言う意味だった。町の名前がポルトなの?
などとどうでもいい事を考えている間にもフローラちゃんは話を続ける。
「ポルトまではできる限り早く行くことを予定しています。
ポルトではある程度長く滞在して治療活動をしますの。もちろんポルトでは休養も取りますわ。
帰りは少しゆっくり移動して大きな街を中心に治療活動をしながら帰ってくる予定ですの。」
ポルトはポルト公爵が領主ということになっているが、実際は王領で王族の一人がポルト公爵位を授かり港町を治めるらしい。
だからポルト公爵は世襲じゃないし、引退するときは返上するんだって。
今のポルト公爵はミルトさんのお父さんだって、フローラちゃんから見ればお祖父ちゃんか。
たしか、王弟だったよね。
ポルトまでの距離は約四十シュタット、四日で着く計画のようだ。
ポルトからは二十日かけて途中の街で治療活動をしながら帰ってくる。
全体で五十日ちょっとの日程だからポルトに三十日くらい滞在するのかな?
「ポルトでは、王家の別荘に滞在しますわ。
ただ、私とお母様は何日かお祖父様のところに滞在することになると思いますの。
ターニャちゃん達は気疲れするだろうから王家の別荘に留まってもらって結構ですわ。」
王家の別荘は、わたし達の他は使用人しかいないらしい。
ミルトさんが、貴族の館に泊まると気疲れするというミーナちゃんに気を使ってくれたみたいだ。
今回は帝国へ行ったときと違い食料や種苗を用意しないで良い分だけ身軽だ。
ただ、ミルトさんのお願いでわたし達の魔導車のうち二台に設置されたベッドを応接セットに変更したよ。
近衛騎士を乗せて欲しいんだって。
別に構わないけどクロノスお姉ちゃんを呼ばないとできないんだよね。
魔導車の昇降口よりベッドの横幅の方が大きいんだもの。
クロノスお姉ちゃんに魔導車から術で精霊の森にベッドを送ってもらって、逆に応接セットを精霊の森から魔導車の中へ送ってもらうという操作をしないといけない。
クロノスお姉ちゃんはわたしに会えて大喜びだけど、わたしはたっぷりマナを吸い取られてげんなりしてしまった。
**********
そうこうしているうちに時間は流れ、今は冬休み前日の放課後、わたし達はエルフリーデちゃんのサロンにおじゃましている。
「ターニャちゃん達、フローラ様と一緒に南部地区の別荘地に行くんですって?
良いですわね、暖かい場所で冬越しができて。」
エルフリーデちゃんがしみじみと言う。
「エルフリーデちゃんとマイヤーちゃんは、王都の屋敷に両親が住んでいるからまだいいじゃない。
ボク達はずーっと寮にいることになるんだよ、退屈だよ。」
いつも元気なルーナちゃんが珍しく沈んでいる。
王都は今はまだ雪が積もっていないけど、例年あと二十日もすれば雪に閉ざされるという。
積雪がひどいと本当に寮に閉じこもっていなければならず、元気なルーナちゃんには苦痛なんだろう。
ちなみに今日は八の月の四十日、今年もあと五日だ。
冬休みは明日から二の月の十日まで、何と六十日もある。
これは、雪のせいでしょうがないんだって、この時期は王都でも積雪が四十センチシュトラーセになることもあり学園内で遭難しかねないそうだ。
ミルトさんが、冬が苦手だって言っていたのがわかる気がする。
「だから、うちの王都屋敷にみなさんで滞在すれば良いって申し上げたではないですか。」
「イヤだよ。エルフリーデちゃんのお屋敷って親戚の貴族が何人も滞在しているんでしょう。
気詰まりして死んじゃうよ。
ボクの両親が宿泊しているホテルも、貴族がいっぱい泊まっていて気が休まらないから結局寮にいるしかないんだよ。」
エルフリーデちゃんの家みたいに王国有数の大貴族になると、親戚関係にある貴族が多いらしい。
その中で、王都に屋敷を待たない貴族が冬の間エルフリーデちゃんの家の王都屋敷に滞在しているとのこと。
四六時中、他の貴族の目に晒されていたのでは気が休まらないとルーナちゃんは言っている。
どうでもいいけど、エルフリーデちゃんの家の王都屋敷ってドンだけ大きいんだろう?
「ところでターニャちゃん、南部地方への何時から何時まで行っているの?
ラインちゃんのお父さんが、挨拶したいらしいんだけど。」
ああ、学園祭の花の件かな?
なんか寄付金総額が十位以内に入って王様から感謝状を貰ったって言ってたよね。
「明日出発して、一の月の末までには帰ってくるつもりなんだけど、長い旅路なんで帰る日ははっきりしないんだ。」
「そうなんだ、ラインちゃんのお父さんも一の月の終わりには王都を出ちゃうみたいだから会うのは難しそうだね。」
ラインさんにはルーナちゃんがそのように説明してくれるって言ってくれた。
ラインさんのお父さんには申し訳ないことしたな。
(設定注釈)
一年=三百六十日=四十五日×八ヵ月
四十センチシュトラーセ=約二メートル
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