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第2章 オストマルク王立学園
第35話 旧魔導王国の王宮散策
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一休みの後、わたし達は、魔導昇降機で地下一階に下りた。
実は、わたしも地下に降りるのは初めてだ。
地下は倉庫になっていて、普段は危ないので降りちゃダメと言われている。
今日は、フローラちゃんが魔導王国の魔導具に興味を示したので、倉庫に眠っている魔導具を見学することになったのだ。
ウンディーネおかあさんが倉庫の案内をしてくれるらしい。
精霊は、基本的に魔導王国の作った魔導具を嫌悪している。
いうまでもなく、魔導王国の魔導具はそれを使うと瘴気を拡散するからだ。
この王宮もわたしを育てるのに必要最低限の魔導具しか稼動させていない。
なので、こんなにたくさんの種類の魔導具を見るのは初めてだ。
「魔導空調機、魔導冷蔵庫、魔導洗濯機、魔導掃除機、魔導オーブン、魔導通信機。
きゃあ!どれも素敵!いいな、欲しいな。」
「ええい、鬱陶しい!最初からやらんと言っておるだろう。
娘のフローラが大人しく見学しているのに、なんで母親のおぬしが子供みたいに駄々をこねる。」
ミルト皇太子妃が、ウンディーネおかあさんの袖口を引っ張って強請っている。
それを、ウンディーネおかあさんが呆れながらいなしている。
フローラちゃんも本当は欲しいと言いたいのだろうが、ミルト皇太子妃の言動を見て顔を赤らめ俯いている。恥ずかしいんだね。
駄々をこねるミルト皇太子妃を引き摺るように地下一階の見学を終えたわたし達は、再び魔導昇降機で地下2階へ降りた。
地下一階が王宮で使う魔導具などを収蔵しているのに対し、地下二階は車両置き場のようだ。
普段わたし達が使っている魔導車のほかに、三十人以上乗れる大型の魔導車や物を運搬するための魔導車など初めて見るものも多かった。
「ねえ、泉の精霊様…」
「ダメだと言っておるだろう。」
さすがに、ウンディーネおかあさんもミルト皇太子妃の扱いに慣れてきたのか、最後まで言わせずに拒んだ。
「いえ、魔導具を世に出すと瘴気の排出が増えるから駄目なのですよね?
じゃあ、今うちの王宮にある古くなった魔導車をここのと交換して貰えませんか?
どうせ使う予定ないんでしょう?
それに、普通に考えて古くなった方が瘴気の排出が増えるのではなくて?」
「おぬし、本当に図々しいな。そんなところ、あやつにそっくりだ。
何と言ったかな?いつも、ヴァイスハイトの後ろにくっついていた小娘。
そうだ、ミルト、あやつも確かミルトと言っていた。おぬし、もしやミルトの末裔か?」
「わたしの名前は、母の実家の開祖様の名前をあやかったものと聞いていますが。」
「そうか、あやつの血筋も二千年の時を超えてまだ残っておったか。
その図々しい強請り方も受け継がれたようだな。
そうじゃな、幾らでもという訳にはいかんが、おぬしとフローラの分二台をおぬしの王宮にある古い魔導車と交換してやろう。」
ちゃっかり、ミルト皇太子妃は、最新型?の魔導車を手に入れてしまった。
なんでも、魔導空調機、魔導冷蔵庫に加え、旧魔導王国で流行した音源の入った魔導音楽再生機が付いた魔導車らしい。
初耳だったが、わたしの使っている魔導車にも付いているらしい。
誰も言ってくれないから知らなかったよ。今度聴いてみよう。
ミルト皇太子妃は、さっきからニコニコ顔だ。
フローラちゃんからわたし達の使っている魔導車の話を聞いて、羨ましかったらしい。
わたしが追加で使う魔導車も選んで、地下三階へ向かうこととした。
地下三階へ降りて、わたし達はみな言葉を無くしていた。
そこには、巨大な見たことがないモノがあった。
形は、時々見かける、大人の男の人が咥えている葉巻のようなモノ。
大きさは、魔導車三十台を軽く収めてしまいそうだ。
「これは、何でしょうか?」
フローラちゃんがウンディーネおかあさんに尋ねた。
「これか?これは、魔導航空機、忌々しい魔導王国の魔導具の中でも最たるものだ。
これを動かすのには巨大な魔晶石が必要だったのだ。
これ一機空を飛ばすのに、大量の瘴気を撒き散らすのだが、魔導王国の連中はこれを大量に作ろうとした。
おぬしらに教えた事故を起こした魔晶石工場の作らんとしたものの一つが、これを飛ばすための魔晶石だ。」
「こんな大きなものが空を飛んだのですか?」
ミーナちゃんが信じられないという表情で問い返した。
「そうだ、もっとも完成したのは、ここにある試作機二機のみだ。
それに、巨大な魔晶石を作る技術が失われた今となっては巨大な置物だがな。」
倉庫見学の最後に、圧巻の魔導航空機を見せられたわたし達は、半ば呆然として倉庫を後にした。
**********
倉庫見学で、かなりの時間を要したため、今日の散策はここまでとした。
居住スペースに戻ったわたし達は夕食にしたが、フェイさんが王都から肉と調味料を持ってきてくれたらしい。
レシピも王都で調べてきたらしく、寮の食堂程度の食事は出すことができた。
良かったよ、王族の人にほとんど味のしない食事を出さずに済んで。
食事のあとは入浴、二十人くらい浸かれそうなだだっ広い浴槽に、満々と湛えられたお湯にみんな驚いていた。
フローラちゃんの王宮では、浴室に置かれたバスタブで入浴するんだって。寮と同じだね。
お湯は、給湯の魔導具はなくて、侍女の人が桶で運んでくるらしい。
一晩明けて、今日は図書館を見学する。
図書館は、居住棟の横にある地上二階建の建物だ。
図書館の中に入り、ミーナちゃん達三人は書架を見上げて呆然としてしまった。
「これ、全て本なのですか?」
「そうだな、ここだけで、十万タイトル以上の本がある。一つの本が数冊ずつあるので実際にある数はその数倍だな。」
オストマルク王国では、本は手書きなので貴重品だ。
しかし、旧魔導王国では今は失われた印刷という技術があったらしい。
それにより本を大量に複製したようだ。
「魔導具はやれんが、人の世に知識が失われるのは忍びないと思っておったのだ。
良い機会だから、本を持って帰ってもらおうと思って見繕っておいた。
ただし、魔導具の開発に関する本は一冊もないから期待するでないぞ。」
ウンディーネおかあさんの話では、魔導王国の歴史、農学、植物学、生物学、天文学、気象学、物理学などを中心に千冊程度を見繕ってあるらしい。
今のオストマルク王国よりも、二千年前の魔導王国の方が知識水準が上であったようだ。
当時の魔導王国が凄かったのか、今のオストマルク王国が残念なのかは、わたしにはわからない。
唯一つ言えるのは、そんなオストマルク王国より知識水準が劣る帝国ってどうなのだろうか?
**********
図書館見学を終えて、そろそろ帰る時間だ。
居住棟に戻り、エーオースおかあさんに挨拶を済ませて中庭に戻ると、既に魔導車が三台用意されていた。
また、帝国へ行くときのお供として、新たに光の上位精霊ホアカリさんと水の上位精霊ミツハさんが一緒に来てくれることとなった。
そして、なんとフローラちゃんとミルト皇太子妃へのお土産として、魔導空調機と魔導冷蔵庫を二台ずつ持たせてくれた。フローラちゃん大喜びだ。
更に、帝国に行くときに必要だろうと魔導通信機を全員に一台ずつ譲ってくれた。
大盤振る舞いだね。
魔導通信機は、てのひらサイズで自分のマナを直接通して通話する。
これがあれば、わたしが帝国に行っても、オストマルク王国に残るフローラちゃんと連絡が取れる。
さあ、帰ろうと思ったら、クロノスお姉ちゃんがやって来た。
魔導車や荷物はクロノスお姉ちゃんに送ってもらうのだって。
もちろん、マナはわたしの負担だ。
いつものように、クロノスお姉ちゃんにたっぷりとマナを持って行かれて、ヘトヘトになった。
さあ、学園に帰ろう。
実は、わたしも地下に降りるのは初めてだ。
地下は倉庫になっていて、普段は危ないので降りちゃダメと言われている。
今日は、フローラちゃんが魔導王国の魔導具に興味を示したので、倉庫に眠っている魔導具を見学することになったのだ。
ウンディーネおかあさんが倉庫の案内をしてくれるらしい。
精霊は、基本的に魔導王国の作った魔導具を嫌悪している。
いうまでもなく、魔導王国の魔導具はそれを使うと瘴気を拡散するからだ。
この王宮もわたしを育てるのに必要最低限の魔導具しか稼動させていない。
なので、こんなにたくさんの種類の魔導具を見るのは初めてだ。
「魔導空調機、魔導冷蔵庫、魔導洗濯機、魔導掃除機、魔導オーブン、魔導通信機。
きゃあ!どれも素敵!いいな、欲しいな。」
「ええい、鬱陶しい!最初からやらんと言っておるだろう。
娘のフローラが大人しく見学しているのに、なんで母親のおぬしが子供みたいに駄々をこねる。」
ミルト皇太子妃が、ウンディーネおかあさんの袖口を引っ張って強請っている。
それを、ウンディーネおかあさんが呆れながらいなしている。
フローラちゃんも本当は欲しいと言いたいのだろうが、ミルト皇太子妃の言動を見て顔を赤らめ俯いている。恥ずかしいんだね。
駄々をこねるミルト皇太子妃を引き摺るように地下一階の見学を終えたわたし達は、再び魔導昇降機で地下2階へ降りた。
地下一階が王宮で使う魔導具などを収蔵しているのに対し、地下二階は車両置き場のようだ。
普段わたし達が使っている魔導車のほかに、三十人以上乗れる大型の魔導車や物を運搬するための魔導車など初めて見るものも多かった。
「ねえ、泉の精霊様…」
「ダメだと言っておるだろう。」
さすがに、ウンディーネおかあさんもミルト皇太子妃の扱いに慣れてきたのか、最後まで言わせずに拒んだ。
「いえ、魔導具を世に出すと瘴気の排出が増えるから駄目なのですよね?
じゃあ、今うちの王宮にある古くなった魔導車をここのと交換して貰えませんか?
どうせ使う予定ないんでしょう?
それに、普通に考えて古くなった方が瘴気の排出が増えるのではなくて?」
「おぬし、本当に図々しいな。そんなところ、あやつにそっくりだ。
何と言ったかな?いつも、ヴァイスハイトの後ろにくっついていた小娘。
そうだ、ミルト、あやつも確かミルトと言っていた。おぬし、もしやミルトの末裔か?」
「わたしの名前は、母の実家の開祖様の名前をあやかったものと聞いていますが。」
「そうか、あやつの血筋も二千年の時を超えてまだ残っておったか。
その図々しい強請り方も受け継がれたようだな。
そうじゃな、幾らでもという訳にはいかんが、おぬしとフローラの分二台をおぬしの王宮にある古い魔導車と交換してやろう。」
ちゃっかり、ミルト皇太子妃は、最新型?の魔導車を手に入れてしまった。
なんでも、魔導空調機、魔導冷蔵庫に加え、旧魔導王国で流行した音源の入った魔導音楽再生機が付いた魔導車らしい。
初耳だったが、わたしの使っている魔導車にも付いているらしい。
誰も言ってくれないから知らなかったよ。今度聴いてみよう。
ミルト皇太子妃は、さっきからニコニコ顔だ。
フローラちゃんからわたし達の使っている魔導車の話を聞いて、羨ましかったらしい。
わたしが追加で使う魔導車も選んで、地下三階へ向かうこととした。
地下三階へ降りて、わたし達はみな言葉を無くしていた。
そこには、巨大な見たことがないモノがあった。
形は、時々見かける、大人の男の人が咥えている葉巻のようなモノ。
大きさは、魔導車三十台を軽く収めてしまいそうだ。
「これは、何でしょうか?」
フローラちゃんがウンディーネおかあさんに尋ねた。
「これか?これは、魔導航空機、忌々しい魔導王国の魔導具の中でも最たるものだ。
これを動かすのには巨大な魔晶石が必要だったのだ。
これ一機空を飛ばすのに、大量の瘴気を撒き散らすのだが、魔導王国の連中はこれを大量に作ろうとした。
おぬしらに教えた事故を起こした魔晶石工場の作らんとしたものの一つが、これを飛ばすための魔晶石だ。」
「こんな大きなものが空を飛んだのですか?」
ミーナちゃんが信じられないという表情で問い返した。
「そうだ、もっとも完成したのは、ここにある試作機二機のみだ。
それに、巨大な魔晶石を作る技術が失われた今となっては巨大な置物だがな。」
倉庫見学の最後に、圧巻の魔導航空機を見せられたわたし達は、半ば呆然として倉庫を後にした。
**********
倉庫見学で、かなりの時間を要したため、今日の散策はここまでとした。
居住スペースに戻ったわたし達は夕食にしたが、フェイさんが王都から肉と調味料を持ってきてくれたらしい。
レシピも王都で調べてきたらしく、寮の食堂程度の食事は出すことができた。
良かったよ、王族の人にほとんど味のしない食事を出さずに済んで。
食事のあとは入浴、二十人くらい浸かれそうなだだっ広い浴槽に、満々と湛えられたお湯にみんな驚いていた。
フローラちゃんの王宮では、浴室に置かれたバスタブで入浴するんだって。寮と同じだね。
お湯は、給湯の魔導具はなくて、侍女の人が桶で運んでくるらしい。
一晩明けて、今日は図書館を見学する。
図書館は、居住棟の横にある地上二階建の建物だ。
図書館の中に入り、ミーナちゃん達三人は書架を見上げて呆然としてしまった。
「これ、全て本なのですか?」
「そうだな、ここだけで、十万タイトル以上の本がある。一つの本が数冊ずつあるので実際にある数はその数倍だな。」
オストマルク王国では、本は手書きなので貴重品だ。
しかし、旧魔導王国では今は失われた印刷という技術があったらしい。
それにより本を大量に複製したようだ。
「魔導具はやれんが、人の世に知識が失われるのは忍びないと思っておったのだ。
良い機会だから、本を持って帰ってもらおうと思って見繕っておいた。
ただし、魔導具の開発に関する本は一冊もないから期待するでないぞ。」
ウンディーネおかあさんの話では、魔導王国の歴史、農学、植物学、生物学、天文学、気象学、物理学などを中心に千冊程度を見繕ってあるらしい。
今のオストマルク王国よりも、二千年前の魔導王国の方が知識水準が上であったようだ。
当時の魔導王国が凄かったのか、今のオストマルク王国が残念なのかは、わたしにはわからない。
唯一つ言えるのは、そんなオストマルク王国より知識水準が劣る帝国ってどうなのだろうか?
**********
図書館見学を終えて、そろそろ帰る時間だ。
居住棟に戻り、エーオースおかあさんに挨拶を済ませて中庭に戻ると、既に魔導車が三台用意されていた。
また、帝国へ行くときのお供として、新たに光の上位精霊ホアカリさんと水の上位精霊ミツハさんが一緒に来てくれることとなった。
そして、なんとフローラちゃんとミルト皇太子妃へのお土産として、魔導空調機と魔導冷蔵庫を二台ずつ持たせてくれた。フローラちゃん大喜びだ。
更に、帝国に行くときに必要だろうと魔導通信機を全員に一台ずつ譲ってくれた。
大盤振る舞いだね。
魔導通信機は、てのひらサイズで自分のマナを直接通して通話する。
これがあれば、わたしが帝国に行っても、オストマルク王国に残るフローラちゃんと連絡が取れる。
さあ、帰ろうと思ったら、クロノスお姉ちゃんがやって来た。
魔導車や荷物はクロノスお姉ちゃんに送ってもらうのだって。
もちろん、マナはわたしの負担だ。
いつものように、クロノスお姉ちゃんにたっぷりとマナを持って行かれて、ヘトヘトになった。
さあ、学園に帰ろう。
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