精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
18 / 508
第2章 オストマルク王立学園

第17話 魔法の授業と闖入者

しおりを挟む
 入学式から一週間ほど過ぎて、大分学園の雰囲気にも慣れてきた。
でも、この一週間で話らしい話ができたのはクラーラちゃんだけ。
みんな、わたし達二人を遠巻きに見ている感じ。
特に悪意は感じられないので気にしていない。
みんな、『色なし』にどう接してよいか戸惑っているみたいに見える。


 今日の授業は、午前中魔法の授業があって、午後からは魔法の実習だって。
 わたしは、人の使う魔法って入学試験の時にブリュードが使った魔法しか見たことないから楽しみなんだ。
 みんなどんな風に魔法を使うんだろう? ブリュードみたいに一々恥ずかしい言葉を言うのかな。


     **********


 ウートマン先生がやってきて魔法の授業が始まる。

「今日から魔法の授業を始めます。
魔法には基本的な属性が四つあることはみんな知っていると思います。
火、水、風、土ですね。
人により得意、不得意はあるものの、魔法が使える人は基本属性は全て使えます。
ですから、今使えない属性のある人は頑張って練習してください。」

  なるほど、魔法が使える人は全属性が使えるのか。
 ブリュードが二つの属性が使えるって威張っていたから、一つの属性しか使えないのが普通なのかと思ってた。
 このクラスの子は、入学試験の魔法実技で三つ以上課題をこなした子ばかりだから、少なくとも三属性は使えるんだね。


「かつては、光属性、植物属性という魔法があり、王祖ヴァイスハイト様が得意とされたという記録があります。
 現在は使える者がいないため実際にあったかを疑問視する人もいますが、二千年前までは王祖様以外にも使えたとする記録があることから、かつては存在し何らかの理由で後世に受け継ぐことができなかったというのが主流の考えです。
 あと、水属性の魔法の中に治癒魔法がありますが、使える人が少ないので治癒魔法だけを別の魔法として扱うこともあります。」


 人が使う魔法は瘴気を利用しているから、瘴気を浄化する光の精霊や木の精霊の術を人が魔法でマネすることは難しいよね。
 『癒しの水』って水のおチビちゃん達が簡単に使ってくれるから気にしたことなかったんだけど、魔法で模倣するのが結構難しいらしい。わたしにも何でだかわからないや。


「次にどの属性の魔法が大事かということについて説明します。
実際のところは、どの属性の魔法も大事なのです。
 しかし、どの属性の魔法を重視するかはそれぞれの国や文化によって違いが出てきます。
 わたし達の国は農業を一番大事にしているので、農耕に利用できる水属性と土属性を重視しており、国や貴族に仕える際にも水属性と土属性が得意な人は有利だと言われています。
 一方で、戦争によって領土を拡大してきたヴェストランテ帝国では、攻撃に使える火属性や風属性の魔法を重視していると聞きます。」


 うん、作物を作るのに土作りと水遣りは大事だよね。大規模な水の魔法が使えれば日照りにも対応できるしね。
 でも、風属性の魔法も、草刈とかに使えるんじゃないかな。
 火属性の魔法も、刈った草を灰にして土に混ぜ込んで肥料にするとか出来そうだけど。


「では、実際に魔法を使う際のコツや魔力の効率的な使い方などは、次回の授業から始めましょう。
午後の実習は、実際にわたし達の国で求められている魔法の使い方を体験してもらいましょう。」

 人は、魔法を発動する力を魔力と呼んでいるんだ、瘴気と同じものだとは知らないんだろうね。


       **********


 午前中の魔法の授業も、そろそろ終わりというときに教室の入り口が無造作に開けられた。

「一番優秀なクラスだと聞いたから覗きに来てやったが、このクラスの魔法の授業も魔法を百姓の道具として使うことを教えているのか。
 偉大なる神の御業である魔法をこのようなつまらないことに使うなど嘆かわしい。」

 何か変な奴が現れた。

「何だね君は!今はまだ授業中だ!授業の邪魔をするのは重大な校則違反だぞ、早く自分の教室に戻りなさい。」

 お、珍しく温厚なウートマン先生が本気で怒っている。

「うるさい!われに命令するな、学園の教師ごときが。われを誰と心得る。偉大なるヴェストランテ帝国の……。」

「誰であろうと、校内では生徒は教師の指示に従うと校則に書いてある。
それに、君は留学生か。であれば、尚更だ、留学する際に君のご両親はわが国の法律及びこの学園の校則に従うという念証にサインしているはずだ。
君が何者であろうとここでは私の指示に従う義務があるのがわからないのか。」

 ウートマン先生が闖入者に最後まで言わせず畳み掛けた。
しかし、こいつ「偉大なる…」というフレーズが好きだな、何を偉ぶりたいんだ?

「うるさい、うるさい、陛下より留学して見識を広げてこいと言われたから来たのに、入学試験ではみみっちい小技を試すような魔法実技をやらされて、最下位のクラスとか納得できるか。
 魔法実技の試験といえばわが国では、離れた的を魔法によっていかに破壊するかを競うものなどが定番だ。破壊力を評価しない試験なんかに意味はないだろうが。
 われが最下位クラスなのに、そこの『色なし』が特別クラスだとふざけるのも大概にしろ、入学試験に不正があったに違いない。」


 何か偉そうなこと言ってたけど、結局は自分が『色なし』よりも下の待遇なのが気に食わなくて、いちゃもん付けに来ただけのか。しょうもない。


「教師のいうことが聞けないのならやむをえません。保護者に来ていただいて退学処分にしましょう。学園の規則に従わず、授業妨害するなど論外です。
今まで、帝国からこられた留学生の方は皆さん優秀だったのですがね。」


「われを退学にするだと……、この無礼者!!」

激昂した闖入者が、火の玉を作り出そうとしている。

(あ、危ない、火のおチビちゃんあれの発動を止めて!!)

「キャンセル!!」

 わたしの体からマナが吸われる感触と共に、闖入者の手のひらに集まっていた炎が霧散した。
他人が発動しようとしている魔法を乗っ取り、発動をキャンセルするのはおチビちゃんにとっても高等テクニックらしく代償がひどく多い。


「われの魔法が打ち消されただと?」

何が起きたのか理解していない闖入者が呆然としている。

ウートマン先生が、わたしを見て、「君はあんな高等魔法が使えるのかね?」と尋ねてきた。

いえ、魔法ではないんですけど。







しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...