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第1章 人間の街へ
第11話 王都ヴィーナヴァルト
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昨日泊まった宿、ヴィーナヴァルトホテルの部屋はとっても落ち着いた雰囲気の居心地の良い部屋だった。ホテルってのは、この辺りの言葉で、高級な宿屋のことなんだって。
今日は、オストマルク王立学園に入学試験の申し込みに行くんだ。
入学試験と言っても、最低限の読み書きができて、魔法が使えれば良いみたい。
そうだよね、八歳児に高度な試験なんかやったら誰も合格しないよね。
基本的には学費を納められる資力があればいいみたい。
**********
オストマルク王立学園は、王都の東の外れ、王宮の横にあるんだって。
ホテルからは魔導車に乗って行く。
ここは王都のほぼ真ん中辺りで歩くと結構時間がかかることもあるけど、ある程度余裕のある生活をしている人は馬車で移動するのが普通なんだって。
魔導車に乗って街に出たけど、人通りが多いのでノロノロ運転だ。
でも、ゆっくり走っていると街の様子がよくわかるから良いね。
「ねえ、見てターニャちゃん、人がいっぱい、屋台もあんなに出ている。今日はお祭りかな?」
ミーナちゃんもさっきからずっと魔導車の窓にしがみつくようにして外を見ている。
「王都では、大体毎日こんなもののようですよ。市の立つ日なんかホテルの前の大きな広場が出店でいっぱいになるらしいですよ。」
フェイさんが教えてくれた。
ミーナちゃんは目を丸くして驚いている。
しばらくノロノロ運転で走っていた魔導車が、少し早く走るようになった。
外を見ると、賑やかだったお店がなくなって、人通りが疎らな大きなお屋敷が立ち並ぶ区画を走っていた。
フェイさんの説明では、主に貴族が邸宅を構える区画らしい。
王都は、東の端に王宮があり、中央から東に行くにしたがって高級住宅街になるらしい。
魔導車は、正面に王宮が見えるところまで来たところで、左折し少し北側に向かった。
そこには、広大な敷地に大理石で作られた白亜の建物が十分な余裕を持って立ち並ぶオストマルク王立学園があった。
「うわぁ!大きいね。建物と建物の間に木を植えてあったり、芝が植えてあったりして綺麗だね。」
ミーナちゃんが学校を見て感動している。うん、私も立派だなって素直に驚いた。
フェイさんの話では、オストマルク王立学校は、初等部四年、中等部三年、高等部三年の十年制で、私たちは初等部に入学する。
わたし達は、入学試験受付所と書かれた看板が掲げられた建物の前にやってきた。
みんなで建物に入り、受付手続きをしているカウンターに並ぶ、元々並んでいる人は少なかったのですぐに順番が回ってきた。
記入する書類は少なく、ソールさんが、わたしとミーナちゃんの分をわずかの時間で記入して提出した。
提出する際に、ミーナちゃんの書類には市民権証明書をつけて出したが、私はどうするのかと思っていると、
「留学生の方は何か身分を証明できるものを提示してください。」
と受付の女性が言った。
ソールさんが、
「ティターニアお嬢様、こちらをどうぞ。」
と言って豪華な装飾の指輪入れをわたしに差し出した。
ああ、今これを使うのかと納得したわたしは、指輪を中指に嵌めた。
その瞬間、指輪が淡くしかしハッキリと判る明るさで光った。
受付の女性は、何のことか理解できなくてポカンとしていたが、後ろに控えていた初老の男性が慌ててやってきた。
「お嬢さん、申し訳ないが指輪をもう一度光らせてもらえないか。」
わたしは、一度指輪を外してもう一度付け直した。すると、また淡く光を発した。
これは、滅んだ魔法王国の正当な王族の証である。
指輪は、正当な持ち主である魔法王国の王族がつけた場合にのみ淡く発光する様になっている。
この指輪は、ある継承手続きをすれば子孫に継承することができ、その手続きは王族しか知らない秘中の秘となっていた。
現在でも、隣の大陸に逃げ延びて国を作った魔法王国の王族の末裔は、この指輪を王家の証として使っているらしい。
もちろん、わたしの体には魔法王国の王族の血なんて一滴も流れていない。
そんなもの流れていたら、おかあさんが拾う訳がない。
これも王宮に保管されていたものだ、継承手順なんて精霊にかかれば幾らでも細工し放題だ。
ということで、わたしは、現時点以降この国では魔法王国の王族の末裔だと思われることになる。
わたしの指輪をじっと観察していた老人がわたしに向かって深く一礼して言った。
「やんごとなきお方に大変失礼しました。受験手続はこれで結構でございます。
ただし、試験の合否の判定に関しましては身分は考慮せず公平に行なわせていただきます。」
いいのかな?魔法王国の王族の末裔とみなされるのはともかく、現在の身元は何も証明していないけど?
後でソールさんに聞いたら、確認されている魔法王国の王族の末裔って、みな隣の大陸の王族なんで、この指輪の正当な継承者と言う段階で王族と勘違いしてもしょうがないらしい。
試験は十日後らしい、あたし達は受験票を手に入れ学校を後にした。
**********
受験手続を済ませて、これから王都見物だ。まずは、お昼かな?
ここ、ヴィーナヴァルトは、鶏肉が名物らしい。
何でも揚げた鶏肉料理は白髭おじさんの物より美味しいそうだ。何のことかわからない。
他にもローストチキンとか色々あるらしい、食欲をそそるね。
色々見て回って、ミーナちゃんが食べたいと言った屋台の揚げ鳥を買って、中央広場のベンチに腰掛けて食べることにした。パンの代わりに揚げ芋も買ったよ。
ソールさんが、衛生面がどうとか、外で食べるなんてはしたないとか言っていたけど、こんなに天気がいいんだからお外で食べると気持ちがいいよ。どうせ浄化してから食べるんだし。
白髭さんよりおいしいかどうかは判らないけど、衣を付けて揚げた鶏肉は衣がパリッとしてスパイシー、中の鶏肉が肉汁たっぷりでとても美味しかった。
お昼ごはんの後は、みんなでお店を見て回った。
今日は、オストマルク王立学園に入学試験の申し込みに行くんだ。
入学試験と言っても、最低限の読み書きができて、魔法が使えれば良いみたい。
そうだよね、八歳児に高度な試験なんかやったら誰も合格しないよね。
基本的には学費を納められる資力があればいいみたい。
**********
オストマルク王立学園は、王都の東の外れ、王宮の横にあるんだって。
ホテルからは魔導車に乗って行く。
ここは王都のほぼ真ん中辺りで歩くと結構時間がかかることもあるけど、ある程度余裕のある生活をしている人は馬車で移動するのが普通なんだって。
魔導車に乗って街に出たけど、人通りが多いのでノロノロ運転だ。
でも、ゆっくり走っていると街の様子がよくわかるから良いね。
「ねえ、見てターニャちゃん、人がいっぱい、屋台もあんなに出ている。今日はお祭りかな?」
ミーナちゃんもさっきからずっと魔導車の窓にしがみつくようにして外を見ている。
「王都では、大体毎日こんなもののようですよ。市の立つ日なんかホテルの前の大きな広場が出店でいっぱいになるらしいですよ。」
フェイさんが教えてくれた。
ミーナちゃんは目を丸くして驚いている。
しばらくノロノロ運転で走っていた魔導車が、少し早く走るようになった。
外を見ると、賑やかだったお店がなくなって、人通りが疎らな大きなお屋敷が立ち並ぶ区画を走っていた。
フェイさんの説明では、主に貴族が邸宅を構える区画らしい。
王都は、東の端に王宮があり、中央から東に行くにしたがって高級住宅街になるらしい。
魔導車は、正面に王宮が見えるところまで来たところで、左折し少し北側に向かった。
そこには、広大な敷地に大理石で作られた白亜の建物が十分な余裕を持って立ち並ぶオストマルク王立学園があった。
「うわぁ!大きいね。建物と建物の間に木を植えてあったり、芝が植えてあったりして綺麗だね。」
ミーナちゃんが学校を見て感動している。うん、私も立派だなって素直に驚いた。
フェイさんの話では、オストマルク王立学校は、初等部四年、中等部三年、高等部三年の十年制で、私たちは初等部に入学する。
わたし達は、入学試験受付所と書かれた看板が掲げられた建物の前にやってきた。
みんなで建物に入り、受付手続きをしているカウンターに並ぶ、元々並んでいる人は少なかったのですぐに順番が回ってきた。
記入する書類は少なく、ソールさんが、わたしとミーナちゃんの分をわずかの時間で記入して提出した。
提出する際に、ミーナちゃんの書類には市民権証明書をつけて出したが、私はどうするのかと思っていると、
「留学生の方は何か身分を証明できるものを提示してください。」
と受付の女性が言った。
ソールさんが、
「ティターニアお嬢様、こちらをどうぞ。」
と言って豪華な装飾の指輪入れをわたしに差し出した。
ああ、今これを使うのかと納得したわたしは、指輪を中指に嵌めた。
その瞬間、指輪が淡くしかしハッキリと判る明るさで光った。
受付の女性は、何のことか理解できなくてポカンとしていたが、後ろに控えていた初老の男性が慌ててやってきた。
「お嬢さん、申し訳ないが指輪をもう一度光らせてもらえないか。」
わたしは、一度指輪を外してもう一度付け直した。すると、また淡く光を発した。
これは、滅んだ魔法王国の正当な王族の証である。
指輪は、正当な持ち主である魔法王国の王族がつけた場合にのみ淡く発光する様になっている。
この指輪は、ある継承手続きをすれば子孫に継承することができ、その手続きは王族しか知らない秘中の秘となっていた。
現在でも、隣の大陸に逃げ延びて国を作った魔法王国の王族の末裔は、この指輪を王家の証として使っているらしい。
もちろん、わたしの体には魔法王国の王族の血なんて一滴も流れていない。
そんなもの流れていたら、おかあさんが拾う訳がない。
これも王宮に保管されていたものだ、継承手順なんて精霊にかかれば幾らでも細工し放題だ。
ということで、わたしは、現時点以降この国では魔法王国の王族の末裔だと思われることになる。
わたしの指輪をじっと観察していた老人がわたしに向かって深く一礼して言った。
「やんごとなきお方に大変失礼しました。受験手続はこれで結構でございます。
ただし、試験の合否の判定に関しましては身分は考慮せず公平に行なわせていただきます。」
いいのかな?魔法王国の王族の末裔とみなされるのはともかく、現在の身元は何も証明していないけど?
後でソールさんに聞いたら、確認されている魔法王国の王族の末裔って、みな隣の大陸の王族なんで、この指輪の正当な継承者と言う段階で王族と勘違いしてもしょうがないらしい。
試験は十日後らしい、あたし達は受験票を手に入れ学校を後にした。
**********
受験手続を済ませて、これから王都見物だ。まずは、お昼かな?
ここ、ヴィーナヴァルトは、鶏肉が名物らしい。
何でも揚げた鶏肉料理は白髭おじさんの物より美味しいそうだ。何のことかわからない。
他にもローストチキンとか色々あるらしい、食欲をそそるね。
色々見て回って、ミーナちゃんが食べたいと言った屋台の揚げ鳥を買って、中央広場のベンチに腰掛けて食べることにした。パンの代わりに揚げ芋も買ったよ。
ソールさんが、衛生面がどうとか、外で食べるなんてはしたないとか言っていたけど、こんなに天気がいいんだからお外で食べると気持ちがいいよ。どうせ浄化してから食べるんだし。
白髭さんよりおいしいかどうかは判らないけど、衣を付けて揚げた鶏肉は衣がパリッとしてスパイシー、中の鶏肉が肉汁たっぷりでとても美味しかった。
お昼ごはんの後は、みんなでお店を見て回った。
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