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第1章 人間の街へ

第4話 初めての友達 ①

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 当面の活動資金が手に入ったので、宿を取ろうという話になった。
なんでも、両替商にこの街一番の宿を紹介してもらったそうだ。

 この街の中心部の中でも一際大きな建物の前に来た、車寄せに私、フェイさん、アリエルさんの三人を降ろし、二台の魔導車は中庭の駐車場に誘導されて行った。
 わたしたちは、ロビーで腰掛けて、ソールさんとシュケーさんが戻るのを待った。

 待つうちにソールさんは、フロントで部屋の確保まで済まして来た様で、部屋の鍵をぶら下げて戻って来た。


 部屋は最上階の三ベッドルーム・一リビングの部屋だった。
本来一見さんお断りのこの宿で、食事つきで一泊金貨五枚の一番良い部屋らしい。
 わたし、お金って初めて見たからどのくらいの価値か分からないのよね。

 ソールさんの話では、夫婦がギリギリの生活をするのに金貨二枚、夫婦と子供一人で余裕を持って生活するのに金貨四枚が毎月必要とのこと。
 この部屋一泊の宿泊費で、夫婦と子供一人が一ヶ月贅沢な暮らしができるって、この部屋高過ぎない?

 ちなみに、わたしが入学する予定のオストマルク王立学園は、入学金が金貨百枚で四年間の授業料が金貨四百枚の一括払いなんだって。
 四年間の授業料で、夫婦子供一人が十年余裕を持て生活できるだけのお金がかかるんだ。
 だから、その学校に通えるのは、貴族か平民の中でもごく一部のお金持ちだけなんだって。



 部屋は六階で、リビング部分は角部屋になっており、街が一望に見渡せた。
ベッドルームも広くて綺麗で快適だった、ベッド以外は。
 ベッドの寝心地が悪いと漏らすと、わたしが普段使っているベッドは魔導王国の王族が使っていたものらしく、色々と隠れた工夫がされているらしい。我慢しなさいといわれた。


 そして、待ちに待った夕食、だっておなかペコペコだったんだもん。
夕食は、わたしの分だけ部屋に運んでもらった。
本当は定員六名分の食事が付くらしいが食べるのはわたしだけもんね。

 美味しかった。食事だけは精霊の森よりよかった。
初めて食べたお肉、初めて食べたお魚、、幸せの味がしました。
精霊は殺生を嫌うから、食事は果実、穀物、たまご、きのこなんだよね。
香辛料で味付けされたお肉は本当に美味しゅうございました。


     **********


 さあ、ノイエシュタット二日目の朝です。宿の朝ごはん美味しゅうございました。

 今日は、ソールさんが行きたいところがあるんだって。

 今日は歩いてお出かけする。人通りが多くて車を入れられない場所に行くんだって。
少し柄の悪い場所に行くから誘拐されないようにって、先頭を行くソールさんにわたしが続いて、わたしの左右と後ろを他に三人が歩いている。
 しかも、わたしの手はフェイさんが離さないようにしているんだよ。みんな心配しすぎ!!




 たしかに、泊まった宿の近くに比べて道幅が狭く人通りが多くなってきた。
でも、こっちのほうが活気があるね。色々な店が並んでいてなんだか楽しそう。

 わたしが、きょろきょろと周りを見ていたら、大きな水桶を抱えた女の子をいきなり男の人が蹴飛ばした。

「いつまで水汲みしてやがるんだ!もう十分溜まったよ。この役立たず!!」

 蹴飛ばされた女の子は、道に倒れこむと共に抱えてきた水桶の水で服を濡らしてしまった。

なんて酷いことをするんだ。
 わたしは女の子のもとへ駆け寄ろうとするが、フェイさんが手を掴んで行かせてくれない。
すると、ソールさんが、女の子を助け起こし、乱暴をした男に向かって言った。

「こんな幼い少女を足蹴にするなんて感心しませんね。」

「うるせい、人の家のことに口出すんじゃねえよ。こいつはうちの店においてやってるんだ、躾だよ。
こいつは魔法の一つも使えないで、悠長に水汲みしているもんだから開店に間に合わないんだよ。
しょうがねえから、俺が魔法で水を出すことになっちまった。疲れるから魔法は使いたくないのに。
まったく使えねえ!!こんなことなら奴から預かるんじゃなかった。」

「この子は、あなたの娘じゃないんですか?」

「ちがう、ちがう、こんな『色なし』なんか、俺の子のはずあるか。
こいつは、俺のダチから飯さえ食わせれば、給金はいらないからって押し付けられたんだ。
とんだ無駄飯喰らいだったがな。」

「あなたも酷いですが、あなたに預けた親も相当酷い人ですね。」

「親?こいつの親はおっちんじまってもういねえぜ。
鍛冶職人だったんだが、近くの村に頼まれ物を納品に行った時、運悪く盗賊に襲われてな。
おりゃ、こいつの親の弟からこいつを押し付けられたんだ、邪魔だからって。」

「そうですか。大体わかりました。では、この子は私がお預かりしますね。」

「なに、勝手に連れて行こうとしているんだよ。」

「いえ、この子の財産を取り返しに行くんです。あなたのこともこの街の官憲に訴えておきますので、覚悟しておいてくださいね。」

「ふざけたこと言ってるんじゃねえよ。俺は何も悪いことはしてないし、そいつはおいてけよ。」

と言って男はソールさんに掴みかかってきたが、ソールさんは軽くいなして男を拘束した。

「まったく無知な男は困ります。自分のやったことが犯罪だと知らないのですから。」

 ソールさんが男に向けて安らぎの光をあてると男は眠りに落ちた。
安らぎの光は心を落ち着かせるものだが、強く当てると睡眠効果があるんだ。さすが、上位精霊。

 
 ソールさんは、膝を折って女の子の顔の高さに視線を合わせ、言った。

「お迎えに参りました。あなたには、是非わが主人と友人になっていただきたいのです。
もう少し早く来れれば、こんな辛い思いしなかったのに、申し訳ございません。
 詳しい説明をさせていただきたいのですが、その前にあなたの家を取り戻しに行きましょう。」


 女の子はキョトンとしている。その気持ちわかる。わたしも事態が飲み込めない。
女の子は困っているが、ソールさんの笑顔の下の逃がさないぞという視線に観念したのか渋々付いて来ることになった。



 

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