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第二三章 時は緩やかに流れて…
第827話 驚きの新事実が明らかになったよ…
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結局、財務卿が折れてバジルさんの退職が認められたんだ。
財務省に巣食う無能な貴族連中を放逐し、代わりに優秀な人材を送ると、カズヤ兄ちゃんが約束したことで財務卿を納得させたの。
その後、おいら達はプティー姉一家をトアール国に残して、一旦、ウエニアール国へ戻ったよ。
トアール国で休暇中に溜まった仕事を片付けたら、おいらは休養継続のため再度辺境の街を訪れる予定になって
いたんだ。
プティー姉一家には、おいらがトアール国へ帰国している間にバジルさんのご両親への挨拶や婚礼の打ち合わせをしておくよう指示したの。
そして、ウエニアール国で溜まった仕事も恙なく処理して、一月ほどで辺境の街へ休養に戻ったんだ。
辺境の街に戻ったおいらは文字通り体を休めるべく、のんびり過ごしていたのだけど…。
「ねえ、マロンちゃん。
今この大陸ではレベルのある女性は殆ど居ないって聞いたけど。
それって本当のことかな?」
おいらが娘のキャロットを抱いてあやしていると、遊びに来ていたマリアさんがそんなことを尋ねてきたの。
「本当かと言われても…。
おいら、ずっと平民として暮らしてきたからね。
平民にレベルは縁が無いし、貴族の習慣は詳しくないんだ。
エクレアさんから聞いた話じゃ。
貴族でも、女児には『生命の欠片』は与えないらしいけど…。
それが一般的なのかは分からないよ。」
ウニアール国じゃ、男女を問わず貴族の子供が十五歳になると成人のお祝いに、レベル十相当の『生命の欠片』を王様が下賜してくれるらしいけど。おいらの国やトアール国じゃ、そんな話は聞いたことが無いし。
そんなおいらの返答に。
「いえ、マロン陛下、少なくとも我が国では女児に『生命の欠片』を与えないのは一般的です。
私は代々騎士を輩出してきた家の生まれですが、『生命の欠片』は男児のみに与えられてましたから。
私ですら、マロン陛下から賜って初めてレベルを得ましたもの。」
後ろに控えていた近衛騎士のジェレ姉ちゃんが、ウエニアール国の一般的な事情を補足してくれたんだ。
もっともジェレ姉ちゃんの言葉にあった通り、おいらの近衛騎士には採用に際し一律レベル二十相当の『生命の欠片』を支給しているし。
産休で滞在しているここハテノ辺境伯領でも、領主のライム姉ちゃんが領地の騎士団に『生命の欠片』を支給しているから、レベルを有する女性が皆無と言う訳ではないよ。
「ふーん。じゃあ、マロンちゃんはレベルが遺伝するって知ってた?」
「「「はぁ、今なんて?」」」
おいらにオラン、それにジェレ姉ちゃんが声を揃えて問い返したよ。おいらを含めて三人共初耳だったよ。
「ええっと…。
レベルが遺伝しないからこそ、貴族の間では親殺しが一般化している訳でして…。」
そんなバカな話があるかって表情で、今の貴族の習慣を説明するジェレ姉ちゃん。
それはおいらでも知っている。人でも魔物でも、殺すことにより『生命の欠片』が出現しレベルを奪うことが出来る訳だけど。何故か自然死した場合には『生命の欠片』が残らないんだ。しかも、ジェレ姉ちゃんの言葉通り、レベルは遺伝しないってのが通説なので王侯貴族は寿命を迎えた親が自然死する前に殺害することによりレベルを次世代に引き継いできたの。それが王侯貴族の一般的な習慣になっているらしい。
おいら、自分の子供に親殺しなんてされたくないので、『積載庫』の中にレベル七十二相当の『生命の欠片』を四人分蓄えてあるんだ。
ハテノ領のダイヤモンド鉱山を開放した時、討伐したワームのレベルが七十二だったのだけど、その時『金貨採集量増加』のスキルの効果で六倍の『生命の欠片』を手に入れたんだ。
おいらとオランが七十二までレベルを上げて、もう四人分は将来産まれてくる子供のために残したの。レベル七十もあればこの大陸最強クラスなので、仮に一人の子に渡す『生命の欠片』をレベル七十分に留めれば三十六人に渡せる計算になるの。それこそ曾孫の代まで親殺しをさせずに済む算段なんだ。
おいらとジェレ姉ちゃんの言葉を耳にして、マリアさんは深いため息を吐いたよ。
そして、呆れたって顔付きで言ったんだ。
「ふむ、やっぱり失伝しちゃったのね…。
ホント、男性社会の弊害だわ。」
「へっ? どう言うこと?」
男性社会ってことがどんな弊害をもたらすって、レベルが遺伝するって話とは脈絡が無いような気が済んだけど…。
「ここのところ少し変化があったみたいだけど。
基本、どの国の王侯貴族も男性当主が原則でしょう。
当然、当主に『生命の欠片』が集まることになるわ。
ところがね、レベルは女親から女の子にしか遺伝しないのよ。」
この人、さらりと今までの貴族制の伝統を根底から覆すようなことを言ったよ。
**********
「それは女親がレベル持ちなら、そのレベルが娘に継承されるってこと? 生まれつきに?」
おいらがマリアさんに尋ねると。
「そうよ。」
「息子には継承されない?」
「そうよ。
だって、レベル情報はⅩ染色体上の遺伝子に保存されるのだから。」
「Ⅹ染色体? 遺伝子? なにそれ?」
また聞いたことが無い言葉が出てきたよ。
「今現在、この世界で知られている自然科学の知識では理解できないかな。
知りたければ、試練をクリアして『図書館』の四階まで上がりなさい。
そうすれば、生化学の入門程度の知識は得られわ。」
マリアさんはそう前置きした上で。
「マロンちゃん、オラン君と子作りしたでしょう?
キャロットちゃんはどうやって誕生したのか分かるかしら?」
唐突にそんなことを尋ねて来たマリアさん。
おいら、思わず寝所のことを思い出して赤面しちゃったよ。
マリアさんの問い掛けに対する答えを口にするのが恥ずかしくて俯いていると、「あら、あら、マロン陛下、初々しいですわ。」とメイドのウレシノから茶化されちゃった。
「マロンちゃんのお腹の中にはキャロットちゃんの素となった卵があったの。
その卵にオラン君の子種が出会ってキャロットちゃんが誕生したのよ。
卵にはマロンちゃんの遺伝情報が記録されていて。
子種にはオラン君の遺伝情報が記録されているの。
遺伝情報ってのはそれこそ山ほどあるけど。
感覚的に理解し易いのは、髪や目の色かしら。」
キャロットの栗毛色の髪や濃い茶の瞳はおいらから受け継いだ遺伝情報が発現したものだと、マリアさんは言ったよ。
「うん? それじゃ、オランの金髪や碧眼の遺伝情報は何処へ行っちゃったの?」
「そう、それよ、それ。それが説明したかったの。」
おいらの問い掛けに、ポンと手を鳴らして答えたマリアさん。
「例えば、髪の色だけど。
キャロットちゃんには、マロンちゃんの茶髪とオラン君の金髪、双方の遺伝情報が受け継がれているの。
まあ、厳密に言えば、オラン君から受け継がれている髪の色の遺伝情報は金髪じゃないかも知れないけどね。」
「どういう意味?」
「複対立遺伝子と呼ばれるものだけど。
髪の毛の色みたいに、両親から両立しえない遺伝情報を受け継ぐと。
片方の遺伝情報が発現し、他方は潜在化してしまうの。
発現する遺伝情報を優性、潜在化してしまう遺伝情報を劣勢と言うわ。」
おいらから受け継いだ茶髪の遺伝子がオランから受け継いだ髪の色の遺伝子に対して優性だったのでキャロットが茶髪になったらしい。
潜在化してしまったオランの髪色だけど、実は金色とは限らないみたい。オランの遺伝情報の中にも王様、王妃様から受け継いだ髪色の遺伝子がある訳で。それが両方とも金色かも知れないけど、もしかすると金色に対して劣性の髪色かも知れないって。要はオランの中にも髪色について二つの遺伝情報があって、両方金色の組み合わせもあるし、金色と他別の色の可能性もあるってことだね。
だからマリアさんは、オランからキャロットに受け継がれた遺伝情報が金髪じゃないかもと言ったんだ。
それじゃ、キャロットの髪は、おいらと同じ茶髪でも、オランと同じ金髪でもない可能性もあったってことか。
「それで肝心のレベル情報だけど。
男女の性別を決定している遺伝情報は、性染色体ってよばれるものの上にあるのだけど。
性染色体にはX染色体とY染色体の二種類が存在するの。
子は両親から性染色体を一本ずつ引き継ぐのだけど。
引き継いだ染色体がXXの時が女性、XYの時が男性になるのよ。」
と、マリアさんはどのように男女の性別が決まるのかを教えてくれた上で、続けて教えてくれたんだ。
「そして、私がこの大陸の生物に施した遺伝子操作だけど…。
獲得したレベル情報はX染色体上に保管されるように操作したの。
加えて、発現するのは母親から受け継いだX染色体の情報のみとしたうえで。
更に発現のトリガーをXX型、つまり女性の場合だけにしたのよ。」
だから、母親がレベル持ちで娘が産まれた場合に限りレベルが継承されるんだね。
マリアさんは言ってたよ。だいたい、魔物の種類によって基準となるレベルがあるのはおかしいだろうって。
魔物は人と違って性別による差別が無いから、雌から雌にレベルが遺伝することで標準化が生じたんだって。
そう言われてみれば、ワイバーンがだいたいレベル四十とか、酔牛の標準レベルが三十とかっておかしな話だよね。
レベルゼロで産まれたのなら、魔物の種類によってレベルが揃っているのは不自然だもの。
遺伝によってそのレベルで産まれたって考える方がすんなり納得できる気がする。
大概の雄は雌ほど強くないためコロニーの中に籠っている場合が多く、人里に襲来するのは大抵が雌らしい。
そのため、どの個体を刈ってもレベルに大差はないんだって。
ホント、驚きの新事実だったよ。
財務省に巣食う無能な貴族連中を放逐し、代わりに優秀な人材を送ると、カズヤ兄ちゃんが約束したことで財務卿を納得させたの。
その後、おいら達はプティー姉一家をトアール国に残して、一旦、ウエニアール国へ戻ったよ。
トアール国で休暇中に溜まった仕事を片付けたら、おいらは休養継続のため再度辺境の街を訪れる予定になって
いたんだ。
プティー姉一家には、おいらがトアール国へ帰国している間にバジルさんのご両親への挨拶や婚礼の打ち合わせをしておくよう指示したの。
そして、ウエニアール国で溜まった仕事も恙なく処理して、一月ほどで辺境の街へ休養に戻ったんだ。
辺境の街に戻ったおいらは文字通り体を休めるべく、のんびり過ごしていたのだけど…。
「ねえ、マロンちゃん。
今この大陸ではレベルのある女性は殆ど居ないって聞いたけど。
それって本当のことかな?」
おいらが娘のキャロットを抱いてあやしていると、遊びに来ていたマリアさんがそんなことを尋ねてきたの。
「本当かと言われても…。
おいら、ずっと平民として暮らしてきたからね。
平民にレベルは縁が無いし、貴族の習慣は詳しくないんだ。
エクレアさんから聞いた話じゃ。
貴族でも、女児には『生命の欠片』は与えないらしいけど…。
それが一般的なのかは分からないよ。」
ウニアール国じゃ、男女を問わず貴族の子供が十五歳になると成人のお祝いに、レベル十相当の『生命の欠片』を王様が下賜してくれるらしいけど。おいらの国やトアール国じゃ、そんな話は聞いたことが無いし。
そんなおいらの返答に。
「いえ、マロン陛下、少なくとも我が国では女児に『生命の欠片』を与えないのは一般的です。
私は代々騎士を輩出してきた家の生まれですが、『生命の欠片』は男児のみに与えられてましたから。
私ですら、マロン陛下から賜って初めてレベルを得ましたもの。」
後ろに控えていた近衛騎士のジェレ姉ちゃんが、ウエニアール国の一般的な事情を補足してくれたんだ。
もっともジェレ姉ちゃんの言葉にあった通り、おいらの近衛騎士には採用に際し一律レベル二十相当の『生命の欠片』を支給しているし。
産休で滞在しているここハテノ辺境伯領でも、領主のライム姉ちゃんが領地の騎士団に『生命の欠片』を支給しているから、レベルを有する女性が皆無と言う訳ではないよ。
「ふーん。じゃあ、マロンちゃんはレベルが遺伝するって知ってた?」
「「「はぁ、今なんて?」」」
おいらにオラン、それにジェレ姉ちゃんが声を揃えて問い返したよ。おいらを含めて三人共初耳だったよ。
「ええっと…。
レベルが遺伝しないからこそ、貴族の間では親殺しが一般化している訳でして…。」
そんなバカな話があるかって表情で、今の貴族の習慣を説明するジェレ姉ちゃん。
それはおいらでも知っている。人でも魔物でも、殺すことにより『生命の欠片』が出現しレベルを奪うことが出来る訳だけど。何故か自然死した場合には『生命の欠片』が残らないんだ。しかも、ジェレ姉ちゃんの言葉通り、レベルは遺伝しないってのが通説なので王侯貴族は寿命を迎えた親が自然死する前に殺害することによりレベルを次世代に引き継いできたの。それが王侯貴族の一般的な習慣になっているらしい。
おいら、自分の子供に親殺しなんてされたくないので、『積載庫』の中にレベル七十二相当の『生命の欠片』を四人分蓄えてあるんだ。
ハテノ領のダイヤモンド鉱山を開放した時、討伐したワームのレベルが七十二だったのだけど、その時『金貨採集量増加』のスキルの効果で六倍の『生命の欠片』を手に入れたんだ。
おいらとオランが七十二までレベルを上げて、もう四人分は将来産まれてくる子供のために残したの。レベル七十もあればこの大陸最強クラスなので、仮に一人の子に渡す『生命の欠片』をレベル七十分に留めれば三十六人に渡せる計算になるの。それこそ曾孫の代まで親殺しをさせずに済む算段なんだ。
おいらとジェレ姉ちゃんの言葉を耳にして、マリアさんは深いため息を吐いたよ。
そして、呆れたって顔付きで言ったんだ。
「ふむ、やっぱり失伝しちゃったのね…。
ホント、男性社会の弊害だわ。」
「へっ? どう言うこと?」
男性社会ってことがどんな弊害をもたらすって、レベルが遺伝するって話とは脈絡が無いような気が済んだけど…。
「ここのところ少し変化があったみたいだけど。
基本、どの国の王侯貴族も男性当主が原則でしょう。
当然、当主に『生命の欠片』が集まることになるわ。
ところがね、レベルは女親から女の子にしか遺伝しないのよ。」
この人、さらりと今までの貴族制の伝統を根底から覆すようなことを言ったよ。
**********
「それは女親がレベル持ちなら、そのレベルが娘に継承されるってこと? 生まれつきに?」
おいらがマリアさんに尋ねると。
「そうよ。」
「息子には継承されない?」
「そうよ。
だって、レベル情報はⅩ染色体上の遺伝子に保存されるのだから。」
「Ⅹ染色体? 遺伝子? なにそれ?」
また聞いたことが無い言葉が出てきたよ。
「今現在、この世界で知られている自然科学の知識では理解できないかな。
知りたければ、試練をクリアして『図書館』の四階まで上がりなさい。
そうすれば、生化学の入門程度の知識は得られわ。」
マリアさんはそう前置きした上で。
「マロンちゃん、オラン君と子作りしたでしょう?
キャロットちゃんはどうやって誕生したのか分かるかしら?」
唐突にそんなことを尋ねて来たマリアさん。
おいら、思わず寝所のことを思い出して赤面しちゃったよ。
マリアさんの問い掛けに対する答えを口にするのが恥ずかしくて俯いていると、「あら、あら、マロン陛下、初々しいですわ。」とメイドのウレシノから茶化されちゃった。
「マロンちゃんのお腹の中にはキャロットちゃんの素となった卵があったの。
その卵にオラン君の子種が出会ってキャロットちゃんが誕生したのよ。
卵にはマロンちゃんの遺伝情報が記録されていて。
子種にはオラン君の遺伝情報が記録されているの。
遺伝情報ってのはそれこそ山ほどあるけど。
感覚的に理解し易いのは、髪や目の色かしら。」
キャロットの栗毛色の髪や濃い茶の瞳はおいらから受け継いだ遺伝情報が発現したものだと、マリアさんは言ったよ。
「うん? それじゃ、オランの金髪や碧眼の遺伝情報は何処へ行っちゃったの?」
「そう、それよ、それ。それが説明したかったの。」
おいらの問い掛けに、ポンと手を鳴らして答えたマリアさん。
「例えば、髪の色だけど。
キャロットちゃんには、マロンちゃんの茶髪とオラン君の金髪、双方の遺伝情報が受け継がれているの。
まあ、厳密に言えば、オラン君から受け継がれている髪の色の遺伝情報は金髪じゃないかも知れないけどね。」
「どういう意味?」
「複対立遺伝子と呼ばれるものだけど。
髪の毛の色みたいに、両親から両立しえない遺伝情報を受け継ぐと。
片方の遺伝情報が発現し、他方は潜在化してしまうの。
発現する遺伝情報を優性、潜在化してしまう遺伝情報を劣勢と言うわ。」
おいらから受け継いだ茶髪の遺伝子がオランから受け継いだ髪の色の遺伝子に対して優性だったのでキャロットが茶髪になったらしい。
潜在化してしまったオランの髪色だけど、実は金色とは限らないみたい。オランの遺伝情報の中にも王様、王妃様から受け継いだ髪色の遺伝子がある訳で。それが両方とも金色かも知れないけど、もしかすると金色に対して劣性の髪色かも知れないって。要はオランの中にも髪色について二つの遺伝情報があって、両方金色の組み合わせもあるし、金色と他別の色の可能性もあるってことだね。
だからマリアさんは、オランからキャロットに受け継がれた遺伝情報が金髪じゃないかもと言ったんだ。
それじゃ、キャロットの髪は、おいらと同じ茶髪でも、オランと同じ金髪でもない可能性もあったってことか。
「それで肝心のレベル情報だけど。
男女の性別を決定している遺伝情報は、性染色体ってよばれるものの上にあるのだけど。
性染色体にはX染色体とY染色体の二種類が存在するの。
子は両親から性染色体を一本ずつ引き継ぐのだけど。
引き継いだ染色体がXXの時が女性、XYの時が男性になるのよ。」
と、マリアさんはどのように男女の性別が決まるのかを教えてくれた上で、続けて教えてくれたんだ。
「そして、私がこの大陸の生物に施した遺伝子操作だけど…。
獲得したレベル情報はX染色体上に保管されるように操作したの。
加えて、発現するのは母親から受け継いだX染色体の情報のみとしたうえで。
更に発現のトリガーをXX型、つまり女性の場合だけにしたのよ。」
だから、母親がレベル持ちで娘が産まれた場合に限りレベルが継承されるんだね。
マリアさんは言ってたよ。だいたい、魔物の種類によって基準となるレベルがあるのはおかしいだろうって。
魔物は人と違って性別による差別が無いから、雌から雌にレベルが遺伝することで標準化が生じたんだって。
そう言われてみれば、ワイバーンがだいたいレベル四十とか、酔牛の標準レベルが三十とかっておかしな話だよね。
レベルゼロで産まれたのなら、魔物の種類によってレベルが揃っているのは不自然だもの。
遺伝によってそのレベルで産まれたって考える方がすんなり納得できる気がする。
大概の雄は雌ほど強くないためコロニーの中に籠っている場合が多く、人里に襲来するのは大抵が雌らしい。
そのため、どの個体を刈ってもレベルに大差はないんだって。
ホント、驚きの新事実だったよ。
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