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アイイロモンペ

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第二三章 時は緩やかに流れて…

第808話 どうやら意気投合したみたいだった

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 マリアさんがおいらの遠い祖先にあたると聞き、にっぽん爺とミントさんは呆然としてたよ。

「まだ、私がこの星にやって来た目的を話してなかったわね。
 私の母星の人類は深刻な放射能汚染のため滅びに瀕していたの。
 そして人類の存亡を賭けて、他の惑星への移住を計画したのよ。
 私はそのプロジェクトのメンバーでした。」

「では、マリアさんはその計画に基づきこの星に辿り着き。
 この大陸に住む人達の幾ばくかはマリアさんの故郷の人々の血を受け継いでいると?」

「まあ、概ねそんな感じだけど…。
 この大陸に住む人々の一部ではなく、ほぼ全てね。
 加えて言えば、妖精族も、耳長族も、『山の民』も全て私が生み出したの。」

「「「ええっ!」」」

 この大陸に住む人型の種族は全てマリアさんが生み出したとの発言に、事情を知らない人達が驚愕してたよ。
 それまで黙ってにっぽん爺の後ろに控えていたカズミ姉ちゃんすら驚きの声を上げてたもの。

「この星に無事辿り着いた人類は私一人。
 後は、私のサポート用に生み出した人工生命体妖精族だけ。
 この星の人々は凍結保存してあったテルル人の生殖細胞を使って人工授精で生み出したの。
 『森の民(耳長族)』、『山の民』、『海の民』はそこに遺伝子操作を加えた生命なの。」

 マリアさんは言ってたよ。普通に考えて、多数の人間を移住させるのは食料やエネルギーの面で現実的じゃないって。
 辿り着いた星で人工授精、人工培養で人を増やす方法なら、膨大な人数の生殖細胞を小規模な冷凍庫に収めて運べるし。
 場所を取る培養プラントだって、人を運ぶことに比べれば省スペースで済むって。
 
「マリアさんの母星には凄まじく発展した科学文明が存在したのですね。
 私やタロウ君の故郷では、恒星間航行など夢のまた夢でしたよ。
 人間を人工培養する技術なんてモノも確立されていなかったし…。」

「ええ、確かに科学技術の点ではお爺ちゃんの生まれた星より遥かに進んでいたと思うわ。
 だけど、人々のモラルって面では余り進歩していなかったみたい。
 気の狂った独裁者の誕生を抑制するシステムが確立してなかったですし。」

 マリアさんは苦々しそうな表情で言ってたよ。
 技術は進んだものの、それを扱う人間の倫理観が伴なわなかったことから滅びの道を歩んでしまったと。

「確かに、それだけ聞くと人の行動原理は地球と変わらんようだな。
 私の祖国の近くでもまさに何とかに刃物の呆れた独裁者がおった。
 国民が飢えているのに、軍拡に邁進して悦に入っている頭のおかしな輩がね。」

 マリアさんの話を聞いたにっぽん爺は言ってたよ。
 テルルが滅びる切っ掛けとなった戦争を起こした独裁者って、『にっぽん』の近くにあった国の独裁者そっくりだって。
 行動様式だけじゃなくて、小太りの醜男ぶおとこなところとか、世襲制の三代目のところとか…。 

「まっ、それで母星が滅びちゃった私は、二十億年にも及ぶ長い漂泊の末にこの星に辿り着いたったわけ。
 そして、二度とテルルの過ちを犯さないようにとの願いを込めてこの大陸の人々を生み出したの。
 色々と計画通りには進まないことが多かったけどね…。」

 マリアさんの計画ではこの大陸の男性は全てタロウみたいなヘタレ、いや、温厚な性格にする予定だったと言うけど。
 初っ端から期待を裏切られたらしいからね。マリアさんが最初に作った男性で、トアール国を建国したアダムはいきなり他国に攻め入ったそうだから。

        **********

 そんな感じでにっぽん爺の問い掛けに答えて、マリアさんはこの星へ来た経緯やこの星でしたことを説明してたんだ。
 マリアさんとにっぽん爺の会話は尽きることなく、おいら達の滞在中しばしばマリアさんはにっぽん爺のお屋敷を訪ねていたよ。
 その間に、マリアさんはミントさんとも仲が良くなったみたいだった。
 ミントさんが知らなかったにっぽん爺の故郷の話を、マリアさんが上手に聞き出してくれたのが好感度高かったみたい。
 この大陸と『にっぽん』では文化水準が違い過ぎて、おいらやミントさんでは想像も出来ないことが多いから。
 ミントさんでは尋ねようのないことが多かったんだけど、マリアさんはより進んだテルルとの比較で色々な話題を引き出していたんだ。

 そんなある日のこと。
 おいらは一緒に散歩でもしようかと妹のミンメイの手を引いて屋敷から出ると。
 毎度お馴染みのメンツが六人揃ってにっぽん爺のお屋敷から姿を現したの。タロウ一家がタロウ、マリアさん、シフォン姉ちゃん、そしてにっぽん爺一家がにっぽん爺、ミントさん、カズミ姉ちゃんで六人ね。

「おはよう。みんな揃ってお出掛け?」

「おはよう、マロン。
 ちょっと、私が持っている不動産をマリアさんに見てもらおうかと思ってな。」

 おいらが声を掛けると、若返ったにっぽん爺が艶々の黒髪を風にそよがせながら振り向いて言ったよ。
 カズヤ陛下がイケメンだから想像に難くはなかったけど、若い頃のにっぽん爺って本当にハンサムだったんだ…。

「なに、マリアさんが屋敷を買うの?」

「いいや、そうではないのだ。
 ここ数日、マリアさんと話をしてて惑星テルルの知識に興味が湧いてな。」

 にっぽん爺がおいらの問い掛けに答えてそう言うと。

「お爺ちゃんったら、好奇心旺盛なので私の蔵書を一揃え進呈しようって話になってね。
 それを収めるための建物を見繕いに行くの。
 聞けば、お爺ちゃん、この街の不動産王で空いてる屋敷もあるらしいから。」

「そうなのよ、マロンちゃん。
 それで、せっかくマリアさんが大量の書物を進呈してくださるそうだから。
 いっそ、この街の図書館として一般の方にも公開しようって話になったの。」

 マリアさんがこの大陸の各地に造った図書館だけど、この町には元から無かったそうなの。
 各地の図書館に収められている蔵書と同じ物を一揃え進呈してもらえることになったので、いっそのこと図書館を新設しようって話になったみたい。どうせ、にっぽん爺一人では読み切れないので宝の持ち腐れになるからって。
  
 で、辿り着いた先はと言うと…。

「何だ、この馬鹿でかい屋敷は…。
 この街で一番大きいんじゃないか。」

 屋敷の門扉の前でタロウが目を丸くして呟いてたよ。

「これは元々、領主のハテノ家の別邸だったらしい。
 ダイヤモンド鉱山の最盛期は、領主一族の者がここに居を構えてたそうだ。
 鉱山の直接指揮を執る者で、大概跡取り息子だったらしいが。」

 例によってダイヤモンド鉱山が魔物に占拠されたため売りに出されたみたい。
 にっぽん爺が聞いている話では、ハテノ家はダイヤモンド鉱山の再興を夢見て最後まで手放さなかったらしいけど。
 二十程前資金繰りに窮して手放すことになり、その時丁度この町に引っ越してきたにっぽん爺が格安で取得したみたい。

「これなら、私の蔵書を一揃え収めても十分な余裕スペースがあるわね。
 テルルから持って来た書物だけじゃなく、この大陸で記された書物も集めたいし。
 それに、ここ数日検討してきたプランを実現することも出来そうだわ。」

 そんなマリアさんの言葉通り、建物の中はムチャクチャ広かったんだ。流石、かつては王家を凌ぐ財力を持つと言われたハテノ家の別邸だけあったよ。
 それにマリアさんは、広いお庭を指差して増築の余地があるのも良いって呟いてた。

「ねえ、マロンちゃん、今日か、明日にでもハテノ領主に会いたいのだけど。
 アルト様にお願いしてもらえるかしら。」

 ミントさんがそんなことを頼んできたの。

「うん、良いけど。ライム姉ちゃんに話があるの?」

「ああ、この土地建物は私が無償で提供する予定だし。
 蔵書の大部分は、マリアさんからの贈呈になるのだが。
 維持管理はハテノ領主にお願いしたいと思ってな。」

「なに、爺さん、この屋敷を寄付するのか。随分と剛毅なことだな。」

 にっぽん爺がこの屋敷を図書館としてハテノ領に寄付すると言うと、タロウはビックリしてたけど。

「何を言ってるんだ。
 タロウ君だって、大英博物館くらい知っているだろう。
 あれとその付属の大英図書館は、コレクターからの寄贈で設立されたのだぞ。
 それに比べたら、この屋敷くらいどうってことはないよ。」

 にっぽん爺達は、「屋敷なんて墓場にまでは持って行けないからな」とか言って笑ってたよ。
 元々、ハテノ家の別邸だったので、ハテノ家に管理してもらうのが良いんじゃないかって。

 この街に滞在している間にライム姉ちゃんに挨拶に行く予定にはしてたけど、そんな訳で急遽訪ねることになったんだ。
 マリアさんとにっぽん爺はなにやら他にも計画があるらしく、それも併せてライム姉ちゃんに相談するって言ってたよ。
 いったい、何をするつもりなんだろうね。
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