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第二三章 時は緩やかに流れて…
第800話 オランが一足先に大人になったの
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それはウニアール国から戻ってしばらく経った頃のこと。
その頃にはおいらは十五歳、オランは十六歳になっていたんだ。
いつものようにオランと一緒に眠っていると、夜中にオランがむくっと起きて何やら布団の中をまさぐってたの。
おいらが半分眠った状態でぼうっとしてたら、当然オランはベッドから飛び出してトイレに駆け込んだよ。
何事かと思って起き上がると、オランが眠っていたところが微かに湿ってたんだ。
「オランったら、寝る前に冷たい物でも飲んでお腹を冷やしたかな?」
なんて思っていると、オランがトイレの中から出てきたのだけど…。
オランはおいらが起きていることに気付いてない様子で、ベッドに戻らず寝室に面している従者控え室に向かったの。 何やら慌てているようで、オランはノックもせずに従者部屋の扉を開けて足早に部屋に駆け込んでった。
お漏らしで汚してしまった下着の替えを用意してもらうつもりなのかな?
それから間もなく、従者控え室に居たウレシノがやって来て。
「マロン様、お休みのところ申し訳ございません。
どうやら不具合が生じたようですので、シーツを交換させてください。」
見るとウレシノは替えのシーツを手にしていたんだ。
おいらはウレシノの指示に従うことにしたよ、お漏らしで濡れたシーツの上で寝るのは抵抗があるからね。
掛け布団を捲ってベッドから出ようとした時のこと。
「あれ、寝室の中に栗の花なんて飾ってあったっけ?」
春、山の中で山菜採りなんかしていると稀に鼻に付く少々不快な臭いが漂った気がしたの。
「嫌ですわ、マロン様。
あのような不快な臭いがする花をマロン様の部屋に飾る訳が御座いませんでしょう。」
「そうだよね。ゴメンね、きっと気のせいだよね。」
ウレシノの返答を聞き、おいらは春の野山を駆け回って幼少時の夢でも見たのだろと思ったよ。
その時のおいらは寝室が暗かったため、全然気付かなかったんだ。オランが気拙そうな顔をしていたことに。
まあ、気付いたとしても、その時のおいらなら思っただろうね。いい歳してオネショしたことへの羞恥心からだと。
**********
その翌日。
「マロン様、申し訳ございませんが。
オラン様に少々お話ししたいことが御座いまして。
一時の間、お側を離れることをお許しください。」
朝食が済むと、ウレシノがオランと二人だけで話しをしたいと申し出たんだ。
「かまわないよ。元々、ウレシノはオランの専属侍女だし。」
常日頃、ウレシノは後ろに控えていておいらの秘書みたいな仕事をしているけど。本来はオランの専属侍女として採用したんだからね。
おいらとオランが常に一緒に行動してるので、必然的にウレシノも共に行動することになり。
ウレシノが何でもそつなくこなすスーパー侍女だから、いつの間にかおいらの秘書のようになってる訳だけど。
「有り難うございます。
では、オラン様、こちらにお越しください。」
おいらが快諾するとウレシノはパッと笑顔を浮かべ、さっそく従者控え室へ連れて行ったよ。
因みに従者控え室といっても狭い部屋ではなく、従者の執務室、休憩室、用具室、仮眠室が有り、そこそこ大きな区画なんだ。
おいらもオランも身の回りのことは自分でするから、側に侍ってるのはウレシノ一人だけど。普通なら十人単位で居るそうで、仮眠室なんて狭いけど五部屋もあるんだ。
衣服も毎日替えて選択に出す肌着類は従者部屋の用具室にしまってあるよ。用意するウレシノに都合が良いから。
てな訳で、ウレシノは従者控え室にある自分の執務室でオランと話をするつもりらしい。
いったい何の話をしているのか、そこそこ長い時間が経って…。
扉が開く音がしたかと思えば、顔を赤くしたオランがウレシノを従えて従者控え室から出てきたの。
顔を赤らめたオランはおいらの側まで来ると。
「マロン、昨夜は申し訳なかったのじゃ。」
それはおねしょしたことにだろうか、それとも深夜においらをおこしてしまったこと?
それはともかく、どうやらオランは羞恥心で顔を赤らめているらしい。
「気にしないで良いよ。あのくらいは誰にでもあることだから。」
何をと聞かないのはせめてもの気遣いだよ。十六歳にもなってオネショって、きっと黒歴史になるんだろうから。
「実はマロン、昨夜のアレはオネショじゃないのじゃ。」
オランは赤い顔をますます赤くして、蚊の鳴くような声で呟いたの。
「うん? 違うの?」
「私も漏らしかと思って慌ててトイレに駆け込んだのじゃが…。
下着に黄ばんだ膿のようなヌメッとしたモノが付いていて。
何か悪い病気ではないかと、ウレシノに相談しておったのじゃが…。」
言い難そうに歯切れの悪い言葉を紡ぐオラン。
「何か、悪い病気だったの? これ飲んでおいた方が良いんじゃない?」
おいらが『積載庫』から『妖精の泉の水』を詰めた小さな壺を取り出すと。
「オラン様は病気ではございませんので、ご心配には及びませんよ。」
言いあぐねているオランに代わってウレシノが答えたの。ウレシノはオランと対照的に嬉しそうに微笑んでたよ。
「じゃあ、オランはどうしたの? 膿みたいなモノって?」
「オラン様は恥ずかしがっておられますが。
何も恥ずかしいことではありませんよ。
むしろとてもおめでたいことです。」
「おめでたいこと?」
おいらが首を傾げていると。
「はい、オラン様は昨晩大人の男性になられたのです。
少々、遅れておりましたが、子を成すことが可能になりました。
昨晩の膿のようなモノ、あれが子種ですよ。」
ウレシノの話では昨夜の栗の花みたいな臭い、あれは子種特有の臭いらしい。
アレが女性の胎に入ると赤ちゃんが出来るんだって。
昨晩は深夜だったから、今朝、オランに説明したそうだよ。
「じゃあ、おいら、オランの赤ちゃんを授かれるの?」
宰相の奴、最近何かと、早く子供の顔が見たいってせっつくからね。
出来るものならサッサと作らないと、プレッシャーが半端ないんだ。
「いいえ、今すぐにって訳には参りませんね。
他ならぬマロン様が大人になっていませんから。
まだ、ルナからのお客さんは来てませんでしょう。
子を成すためには、双方が大人の体になりませんと。」
どうやら、『ルナからのお客さん』ってのが来ないと子供が産める体にならないらしい。
ウレシノの奴、おいらの胸の辺りを見てため息を吐きやんの。失礼な奴だな…。
「まあ、胸はともかくとして。
最近、マロンさまも背が伸び、肉付きも良くなってますし…。
そろそろ、ルナからのお客さんも来られるかと。」
ウレシノの言葉通り、この一年ほどで身長体重共に年齢相応まで追い付いて来たよ。
まあ、それでも身長体重共に同年代では一番小さな部類だけどね。
体の線も骨ばっていた少年的なラインから、女性的な柔らかなものに変わってきたもの。後無いのは胸だけだよ。
**********
「という訳で。
何時マロン様に『ルナからのお客さん』が来られても大丈夫なよう。
本日より、オラン様に寝所での作法を手解きしようと思います。
マロン様にはその許可を戴きたいのですが。」
嬉々としてウレシノが言ったの。何が『という訳で。』なのかは分からないけど。
「良いんじゃない。
元々、ウレシノを引き抜く時にそんな約束したものね。
円滑な子作りをするために必要なんだっけ?」
「はい、その通りで御座います。
オラン様がキチンとした作法を身に着けてないと、マロン様が辛いと存じます。
子作りはとてもデリケートな作業なのですよ。」
ウレシノはヌル国の貴族で実際あった話を聞かせてくれたよ。
旦那さんが子作りの作法を身に着けてなかったがため、奥さんは子作りが大変苦痛に感じてたそうなの。
そんな奥さんを気遣うことなく旦那さんは子作りをしようとしたため、奥さんは拒否するようになって終には夫婦生活が破綻してしまったんだって。
それは世継ぎを残すことが至上命題の貴族にとって致命的なことで、あっては困ることなの。
なので通常貴族社会では、子弟の結婚前に寝所での作法を手解きする女性を宛がうんだって。今回のウレシノみたいに。
ウレシノから聞く限り、作法を弁えて無い者を相手にすると女性にとって子作りはとても辛い作業らしいけど。
一方で、極上の作法を弁えている者が相手なら、子作りは天にも昇るような甘美な営みとなるんだって。それこそ病み付きになっちゃうくらいに。ああ、それってシフォン姉ちゃんやミントさんのことだね。
ノノウ一族では間諜のためハニートラップを仕掛けることもしばしばだったそうで、男性を籠絡するため極上の作法を完璧に仕込まれているそうなんだ。もちろん、女性が男性を悦ばせる作法のみならず、男性が女性を悦ばせる作法もね。
「うん、言わんとしていることは概ね分ったよ。
それで具体的にオランにはどうしてもらうの?」
「はい、私がオラン様にノノウ一族に伝わる秘伝の作法を実地で伝授させて戴きます。
ついては一月ほど、オラン様には私と褥を共にして戴とう御座いますので。
申し訳ございませんが、マロン様におかれましてはお一人でお休み戴くこととなります。」
ウレシノは従者控え室の仮眠室じゃなくて、王宮内に与えてある私室で手解きをするそうで。オランはそのままウレシノと共に就寝することになるらしい。
その間、おいらが就寝中の護衛兼侍女はウレシノの妹カラツに任せるつもりだって。
「了解、その辺はウレシノに任せる。
おいら、痛いのは勘弁して欲しいから、よろしく頼むよ。」
「謹んでその任を拝命させて戴きます。
ノノウ一族に伝わる秘伝の四十八手、完璧に伝授してご覧に見せましょう。」
おいらが了承すると、余程嬉しかったのかウレシノは満面の笑みを浮かべ。
「ささっ、オラン様、私の寝所に参りましょう。
オラン様のチェリーを頂戴するために二年も待ったのです。
今晩はたっぷりご奉仕させて戴きますから、オラン様も頑張りましょうね。」
煩悩ダダ漏れでオランの手を引き部屋を出て行ったの。
…って、まだ朝だよね。夜まで待てないんかい。
そんな訳で、九歳の時から約六年間、毎晩オランと一緒に寝ていたんだけど、久し振りに一人寝することになったんだ。
オランには『天にも昇る甘美な作法』ってのをマスターしてもらわないと困るからね。痛いのは嫌だよ、ホント。
その頃にはおいらは十五歳、オランは十六歳になっていたんだ。
いつものようにオランと一緒に眠っていると、夜中にオランがむくっと起きて何やら布団の中をまさぐってたの。
おいらが半分眠った状態でぼうっとしてたら、当然オランはベッドから飛び出してトイレに駆け込んだよ。
何事かと思って起き上がると、オランが眠っていたところが微かに湿ってたんだ。
「オランったら、寝る前に冷たい物でも飲んでお腹を冷やしたかな?」
なんて思っていると、オランがトイレの中から出てきたのだけど…。
オランはおいらが起きていることに気付いてない様子で、ベッドに戻らず寝室に面している従者控え室に向かったの。 何やら慌てているようで、オランはノックもせずに従者部屋の扉を開けて足早に部屋に駆け込んでった。
お漏らしで汚してしまった下着の替えを用意してもらうつもりなのかな?
それから間もなく、従者控え室に居たウレシノがやって来て。
「マロン様、お休みのところ申し訳ございません。
どうやら不具合が生じたようですので、シーツを交換させてください。」
見るとウレシノは替えのシーツを手にしていたんだ。
おいらはウレシノの指示に従うことにしたよ、お漏らしで濡れたシーツの上で寝るのは抵抗があるからね。
掛け布団を捲ってベッドから出ようとした時のこと。
「あれ、寝室の中に栗の花なんて飾ってあったっけ?」
春、山の中で山菜採りなんかしていると稀に鼻に付く少々不快な臭いが漂った気がしたの。
「嫌ですわ、マロン様。
あのような不快な臭いがする花をマロン様の部屋に飾る訳が御座いませんでしょう。」
「そうだよね。ゴメンね、きっと気のせいだよね。」
ウレシノの返答を聞き、おいらは春の野山を駆け回って幼少時の夢でも見たのだろと思ったよ。
その時のおいらは寝室が暗かったため、全然気付かなかったんだ。オランが気拙そうな顔をしていたことに。
まあ、気付いたとしても、その時のおいらなら思っただろうね。いい歳してオネショしたことへの羞恥心からだと。
**********
その翌日。
「マロン様、申し訳ございませんが。
オラン様に少々お話ししたいことが御座いまして。
一時の間、お側を離れることをお許しください。」
朝食が済むと、ウレシノがオランと二人だけで話しをしたいと申し出たんだ。
「かまわないよ。元々、ウレシノはオランの専属侍女だし。」
常日頃、ウレシノは後ろに控えていておいらの秘書みたいな仕事をしているけど。本来はオランの専属侍女として採用したんだからね。
おいらとオランが常に一緒に行動してるので、必然的にウレシノも共に行動することになり。
ウレシノが何でもそつなくこなすスーパー侍女だから、いつの間にかおいらの秘書のようになってる訳だけど。
「有り難うございます。
では、オラン様、こちらにお越しください。」
おいらが快諾するとウレシノはパッと笑顔を浮かべ、さっそく従者控え室へ連れて行ったよ。
因みに従者控え室といっても狭い部屋ではなく、従者の執務室、休憩室、用具室、仮眠室が有り、そこそこ大きな区画なんだ。
おいらもオランも身の回りのことは自分でするから、側に侍ってるのはウレシノ一人だけど。普通なら十人単位で居るそうで、仮眠室なんて狭いけど五部屋もあるんだ。
衣服も毎日替えて選択に出す肌着類は従者部屋の用具室にしまってあるよ。用意するウレシノに都合が良いから。
てな訳で、ウレシノは従者控え室にある自分の執務室でオランと話をするつもりらしい。
いったい何の話をしているのか、そこそこ長い時間が経って…。
扉が開く音がしたかと思えば、顔を赤くしたオランがウレシノを従えて従者控え室から出てきたの。
顔を赤らめたオランはおいらの側まで来ると。
「マロン、昨夜は申し訳なかったのじゃ。」
それはおねしょしたことにだろうか、それとも深夜においらをおこしてしまったこと?
それはともかく、どうやらオランは羞恥心で顔を赤らめているらしい。
「気にしないで良いよ。あのくらいは誰にでもあることだから。」
何をと聞かないのはせめてもの気遣いだよ。十六歳にもなってオネショって、きっと黒歴史になるんだろうから。
「実はマロン、昨夜のアレはオネショじゃないのじゃ。」
オランは赤い顔をますます赤くして、蚊の鳴くような声で呟いたの。
「うん? 違うの?」
「私も漏らしかと思って慌ててトイレに駆け込んだのじゃが…。
下着に黄ばんだ膿のようなヌメッとしたモノが付いていて。
何か悪い病気ではないかと、ウレシノに相談しておったのじゃが…。」
言い難そうに歯切れの悪い言葉を紡ぐオラン。
「何か、悪い病気だったの? これ飲んでおいた方が良いんじゃない?」
おいらが『積載庫』から『妖精の泉の水』を詰めた小さな壺を取り出すと。
「オラン様は病気ではございませんので、ご心配には及びませんよ。」
言いあぐねているオランに代わってウレシノが答えたの。ウレシノはオランと対照的に嬉しそうに微笑んでたよ。
「じゃあ、オランはどうしたの? 膿みたいなモノって?」
「オラン様は恥ずかしがっておられますが。
何も恥ずかしいことではありませんよ。
むしろとてもおめでたいことです。」
「おめでたいこと?」
おいらが首を傾げていると。
「はい、オラン様は昨晩大人の男性になられたのです。
少々、遅れておりましたが、子を成すことが可能になりました。
昨晩の膿のようなモノ、あれが子種ですよ。」
ウレシノの話では昨夜の栗の花みたいな臭い、あれは子種特有の臭いらしい。
アレが女性の胎に入ると赤ちゃんが出来るんだって。
昨晩は深夜だったから、今朝、オランに説明したそうだよ。
「じゃあ、おいら、オランの赤ちゃんを授かれるの?」
宰相の奴、最近何かと、早く子供の顔が見たいってせっつくからね。
出来るものならサッサと作らないと、プレッシャーが半端ないんだ。
「いいえ、今すぐにって訳には参りませんね。
他ならぬマロン様が大人になっていませんから。
まだ、ルナからのお客さんは来てませんでしょう。
子を成すためには、双方が大人の体になりませんと。」
どうやら、『ルナからのお客さん』ってのが来ないと子供が産める体にならないらしい。
ウレシノの奴、おいらの胸の辺りを見てため息を吐きやんの。失礼な奴だな…。
「まあ、胸はともかくとして。
最近、マロンさまも背が伸び、肉付きも良くなってますし…。
そろそろ、ルナからのお客さんも来られるかと。」
ウレシノの言葉通り、この一年ほどで身長体重共に年齢相応まで追い付いて来たよ。
まあ、それでも身長体重共に同年代では一番小さな部類だけどね。
体の線も骨ばっていた少年的なラインから、女性的な柔らかなものに変わってきたもの。後無いのは胸だけだよ。
**********
「という訳で。
何時マロン様に『ルナからのお客さん』が来られても大丈夫なよう。
本日より、オラン様に寝所での作法を手解きしようと思います。
マロン様にはその許可を戴きたいのですが。」
嬉々としてウレシノが言ったの。何が『という訳で。』なのかは分からないけど。
「良いんじゃない。
元々、ウレシノを引き抜く時にそんな約束したものね。
円滑な子作りをするために必要なんだっけ?」
「はい、その通りで御座います。
オラン様がキチンとした作法を身に着けてないと、マロン様が辛いと存じます。
子作りはとてもデリケートな作業なのですよ。」
ウレシノはヌル国の貴族で実際あった話を聞かせてくれたよ。
旦那さんが子作りの作法を身に着けてなかったがため、奥さんは子作りが大変苦痛に感じてたそうなの。
そんな奥さんを気遣うことなく旦那さんは子作りをしようとしたため、奥さんは拒否するようになって終には夫婦生活が破綻してしまったんだって。
それは世継ぎを残すことが至上命題の貴族にとって致命的なことで、あっては困ることなの。
なので通常貴族社会では、子弟の結婚前に寝所での作法を手解きする女性を宛がうんだって。今回のウレシノみたいに。
ウレシノから聞く限り、作法を弁えて無い者を相手にすると女性にとって子作りはとても辛い作業らしいけど。
一方で、極上の作法を弁えている者が相手なら、子作りは天にも昇るような甘美な営みとなるんだって。それこそ病み付きになっちゃうくらいに。ああ、それってシフォン姉ちゃんやミントさんのことだね。
ノノウ一族では間諜のためハニートラップを仕掛けることもしばしばだったそうで、男性を籠絡するため極上の作法を完璧に仕込まれているそうなんだ。もちろん、女性が男性を悦ばせる作法のみならず、男性が女性を悦ばせる作法もね。
「うん、言わんとしていることは概ね分ったよ。
それで具体的にオランにはどうしてもらうの?」
「はい、私がオラン様にノノウ一族に伝わる秘伝の作法を実地で伝授させて戴きます。
ついては一月ほど、オラン様には私と褥を共にして戴とう御座いますので。
申し訳ございませんが、マロン様におかれましてはお一人でお休み戴くこととなります。」
ウレシノは従者控え室の仮眠室じゃなくて、王宮内に与えてある私室で手解きをするそうで。オランはそのままウレシノと共に就寝することになるらしい。
その間、おいらが就寝中の護衛兼侍女はウレシノの妹カラツに任せるつもりだって。
「了解、その辺はウレシノに任せる。
おいら、痛いのは勘弁して欲しいから、よろしく頼むよ。」
「謹んでその任を拝命させて戴きます。
ノノウ一族に伝わる秘伝の四十八手、完璧に伝授してご覧に見せましょう。」
おいらが了承すると、余程嬉しかったのかウレシノは満面の笑みを浮かべ。
「ささっ、オラン様、私の寝所に参りましょう。
オラン様のチェリーを頂戴するために二年も待ったのです。
今晩はたっぷりご奉仕させて戴きますから、オラン様も頑張りましょうね。」
煩悩ダダ漏れでオランの手を引き部屋を出て行ったの。
…って、まだ朝だよね。夜まで待てないんかい。
そんな訳で、九歳の時から約六年間、毎晩オランと一緒に寝ていたんだけど、久し振りに一人寝することになったんだ。
オランには『天にも昇る甘美な作法』ってのをマスターしてもらわないと困るからね。痛いのは嫌だよ、ホント。
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