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第二二章 チャラい王子としっかり者のお嫁さん達
第779話 こいつ、上手く隠しているつもりらしいけど…
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宿屋の後継ぎを作ると言って、オベルジーネ王子とウルピカさんが立ち去った後のはなし。
しばらくすると、宿の料理長と名乗るお爺ちゃんが、厨房の見習いを連れてやって来たんだ。
何でも、貴賓室には専用の厨房がついており、料理長が出来たてほやほやの料理を食べさせてくれるらしい。
貴賓室のお客さんの食事の進み具合にあわせて、タイミング良く次の料理が仕上がるように気配りしてるんだって。
やがて、貴賓室のお世話係としてつけられたメイドさんが、食卓で待つおいらに前菜を持って現れたの。
「こちら前菜となります。
山鳥のテリーヌ、ワサビソース掛けです。」
ペースト状にした山鳥のお肉を何種類かの野菜と一緒にテリーヌにして、淡い緑色のソースを掛けた前菜。
一口食べると、初めて食べる不思議な味だった。鼻にツーンとくるソースなんて想像もしてなかったよ。
「なに? このソース?」
「お気に召しませんでしたか?
料理長ご自慢のソースなのですが…。」
おいらがメイドさんに尋ねると、メイドさんはクレームだと思ったのか恐々とした様子で答えたの。
「とっても美味しいから、心配しないで良いよ。
ただ、鼻にツンとくるソースなんて初めてだったから。
何で作ればこうなるのかと思って。」
「ああ、それでしたらワサビですね。
私も詳しくは存じませんが。
料理長から聞いたところでは、とても貴重なハーブだとのことです。
清らかな湧水が豊富な場所でしか生育しない植物だそうで。」
メイドさんが料理長から聞いた話では、この国では国境周辺の山岳地帯にしか自生しない植物なんだって。
料理長がこの宿に引き抜かれるまで在籍してた料亭では、年に数回、僅かな数しか手に入らなかったそうだよ。
その料亭は王都で一番と評されている老舗らしいけど、それでも滅多に手に入らなかったらしいの。
でも、次に出されたサラダにもワサビの葉っぱが散らされてたし。
「今日の魚料理はニジマスのムニエル、ワサビのフリッター添えです。」
料理長自慢のニジマス料理の隣には、溶いた小麦粉の衣をまとったワサビの葉と茎のフリッターが添えられてた。
因みに、ニジマスという川魚も清流にしか生息しない魚で主に山岳部で食されているらしいの。
気候がやや乾燥気味の王都周辺では、ワサビもニジマスも珍しい食材みたい。
「今日のメインは『馬鹿』の霜降り肉のローストになります。
お好みにより、すり下ろしワサビを載せて召し上がってください。」
メイン料理は、ワゴンに乗ってるローストされた大きな塊肉を、料理長がその場で切り分けてくれたんだ。
分厚いステーキのように切り分けられたお肉は、中心部付近が綺麗なピンク色をしてて軽く火を通したって感じだった。
そこに料理長秘伝というソースを掛けて、脇にこんもりとすり下ろしたワサビを載せてくれたよ。
とても美味しく戴いたのだけど、食べ終わって不思議に思ったことが一つ。
それは、貴重な食材という割に惜しげもなく使われていたことだよ。ワサビ。
「ワサビって、王都の老舗料亭でも滅多に手に入らないのでしょう?
その割には、惜しげもなく使われていた気がするけど。
ここが貴賓室なので、特別料理だったのかな。」
おいらが料理長のお爺ちゃんに尋ねると…。
「そうさね、王都で買えばこの大きさでだいたい銀貨五十枚ってところかのう。
まあ、こんな立派なワサビは今まで見たこと無かったがのう。」
そう言って見せてくれたのは細目のニンジンくらいの大きさの野菜だった。
ニンジンのように太い根っこから葉っぱが出ているような野菜。
人参と違って、根っこはゴツゴツしてて黒っぽかった。
「女王陛下には申し訳ござらんが。
今日の料理は、貴賓室だからと特別な品を用意した訳ではござらんでのう。
他のお客様にも、同じ品をお出しすることになっております。」
本来なら貴賓室ではもっと上等な料理を出すらしいけど、おいら達の場合、飛び込みの宿泊なので仕込みが間に合わなかったらしいの。
そのため、料理長がここの厨房を使って出来たてのものを供しはするけど、メニューは他のお客さんと同じらしいんだ。
「他のお客さんにもそんな高級食材を惜しげもなく使っているんだ…。」
そもそもが、王都でも滅多に手に入らない食材じゃなかったの?
「陛下がそう言われるのも無理のないことでしょう。
何せ、永年厨房を任されてきた私ですら驚いたのですからのう。
まさか、こんな森の中でワサビの栽培とニジマスの養殖をしている人が居るとは…。」
料理長の言うところでは、この宿が開業して間もなくのことらしい。
どこから宿の話を聞きつけたのか、一人の娘さんが荷馬車に乗って尋ねてきたそうだよ。
娘さんは、ニジマスとワサビを買い取らないかと商談を持ち掛けてきたんだって。
料理長、何がビックリしたかと言えば、まずもってこんな森の中で新鮮採れたてのワサビとニジマスにお目に掛かったこと。
料理長の知識では、二つとも王都から遠く離れた山岳部まで行かないと採れないものとされてたらしい。
そんな貴重な食材を一定量、定期的に卸すと持ち掛けられて料理長は困惑したって。
そもそも、両方とも清らかな水が豊富な地域に存在するもので、この森の中で一定量を確保する事が本当に可能なのかと。
例えば、ここの領地。飲み水と生活用水に不自由しない程度には水が豊富だけど、ワサビが自生するほどでは無いし。
いわんやニジマスが生息するような清流は流れていないからね。
料理長がそのことを率直に尋ねたら、養殖と栽培に成功したって答えが返ってきたんだって。
料理長、今度は腰が抜けるほど驚いたそうだよ。
どう見ても二十歳にも満たない娘さんが、魔物が跋扈する森の中でニジマスの養殖やワサビの栽培を手掛けていることに。
そして、それが可能なほど水が豊富に存在する場所がこの森の中にあるということに。
水が豊富な場所って…、まさかね。
**********
翌朝、顔をテカテカさせたウルピカさんが上機嫌で朝の挨拶にやって来たよ。
「如何でしたか、貴賓室の居心地は? ゆっくりお寛ぎ戴けたでしょうか?」
「うん、とても寛げたよ。
温泉も、食事も良いし。何より、このお部屋がシックな造りで落ち着けるよ。
ゴテゴテと装飾過多な部屋じゃ落ち着かないからね。」
おいらの言葉を聞いたウルピカさんはパッと嬉しそうな表情を見せ。
「先般、お忍びでいらした国王陛下もそう仰ってくださいました。
この部屋はのんびり落ち着けて良いと。」
「国王陛下がお泊りになられたの?」
「はい、何でも主人から聞いたそうで。
主人、チャランポランに見えますが、中々腕は立つようでして。
時折、陛下の護衛を命じられることがあるそうなのです。
その時、この宿のことを耳にして良い温泉があると知りお越し戴いたとのことでした。
下級騎士の主人でも貴人の護衛を命じられることがあるのですね。」
やっぱり、下級騎士って設定で通しているんだね。
国王様の来訪からまだ半年も経っていないそうだよ。
皇后と共に、少数の護衛だけ連れてお忍びで宿泊に来たんだって。今回のおいらみたいに事前の連絡も無しに。
「とても気さくな方で、ご滞在の間、しばしばカレンと遊んでくださいました。
まるで孫娘のように可愛がって戴き、畏れ多いことです。」
チャラ王子から教えられてないかも知れないけど、本当の孫娘だからね。
貴賓室に何日か滞在した王様は、自分が爵位を与え領主と認めたカレンちゃんの顔が見たいと言ったそうだよ。
通常、叙爵は王宮の謁見の間でするそうだけど、貴族のお手付きでできた子供に爵位を与える場合はその限りではないらしい。
爵位を授与する書状と領主に任命する書状を送付して終わりなんだって。
その子供が成人した時に、王都で王様に謁見してご挨拶を申し上げるのが慣行らしいの。
もしかしたら王様が来た本当の目的は孫娘の顔を見ることで、温泉の方は口実かも知れないね。
ウルピカさんの領地滞在二日目、おいら達は領地周辺の魔物狩りに出掛けたよ。
例によって領地の前を通っている街道に沿って来た方向とは反対の方向へ狩り進めるのかと思いきや。
その日は森の奥と領地の周囲の魔物を徹底的に間引いたの。
「この街道をあっちに向かって狩るんじゃなかったの?」
「ここから先は大丈夫なんだぁ~。
大した時間も掛からず森を抜けるしぃ。
宿へ泊りに来た貴族の護衛が狩ってくれるからぁ。」
王子の言うところではここから半日も進むと森を抜けて、ウルピカさんの生まれ育った宿場町を通る街道に合流するらしい。
クコさんの領地側から入るより反対側から入った方が、森の中を通る距離が圧倒的短いそうで。
魔物が多い森の中を長距離移動するのは避けたいため、ウルピカさんの領地に保養に訪れるお客さんの多くが反対側から来るらしい。
現在、ウルピカさんの営む温泉宿は貴族の保養地としてとても評判で、毎日お客さんが絶えないそうなの。
宿泊客の大部分は貴族なのでそれなりの数の護衛がついており、道すがら遭遇した魔物は退治してくれるんだって。
まっ、当然だね。遭遇するってのは襲って来る訳だし、退治しないと自分達が危ないから。
結果として、宿泊客の護衛が魔物を間引いてくれることになり、王子が間引く必要が無いそうだよ。
その代わり、貴族の宿泊客が多いウルピカさんの領地が魔物に襲われることが無いよう、周囲を徹底的に間引くんだって。
「ところで、ウルピカさんの領地が温泉、フルティカさんの領地が絹織物。
それぞれ領地の柱となる収益源がある訳だけど。
クコさんの領地はどうなっているの?
これからはヒュドラ酒がウリになりそうだけど。今まではどうしてたの?」
昨晩、料理長の話を聞いて思ったんだ。
ワサビの栽培とニジマスの養殖をしているのって、もしかしたらクコさんかも知れないと。
だとしたら、クコさん、既にウルピカさん達のことを知っているんじゃないかな。
チャラ王子はウルピカさん達のことを上手く隠しているつもりみたいだけど…。
しばらくすると、宿の料理長と名乗るお爺ちゃんが、厨房の見習いを連れてやって来たんだ。
何でも、貴賓室には専用の厨房がついており、料理長が出来たてほやほやの料理を食べさせてくれるらしい。
貴賓室のお客さんの食事の進み具合にあわせて、タイミング良く次の料理が仕上がるように気配りしてるんだって。
やがて、貴賓室のお世話係としてつけられたメイドさんが、食卓で待つおいらに前菜を持って現れたの。
「こちら前菜となります。
山鳥のテリーヌ、ワサビソース掛けです。」
ペースト状にした山鳥のお肉を何種類かの野菜と一緒にテリーヌにして、淡い緑色のソースを掛けた前菜。
一口食べると、初めて食べる不思議な味だった。鼻にツーンとくるソースなんて想像もしてなかったよ。
「なに? このソース?」
「お気に召しませんでしたか?
料理長ご自慢のソースなのですが…。」
おいらがメイドさんに尋ねると、メイドさんはクレームだと思ったのか恐々とした様子で答えたの。
「とっても美味しいから、心配しないで良いよ。
ただ、鼻にツンとくるソースなんて初めてだったから。
何で作ればこうなるのかと思って。」
「ああ、それでしたらワサビですね。
私も詳しくは存じませんが。
料理長から聞いたところでは、とても貴重なハーブだとのことです。
清らかな湧水が豊富な場所でしか生育しない植物だそうで。」
メイドさんが料理長から聞いた話では、この国では国境周辺の山岳地帯にしか自生しない植物なんだって。
料理長がこの宿に引き抜かれるまで在籍してた料亭では、年に数回、僅かな数しか手に入らなかったそうだよ。
その料亭は王都で一番と評されている老舗らしいけど、それでも滅多に手に入らなかったらしいの。
でも、次に出されたサラダにもワサビの葉っぱが散らされてたし。
「今日の魚料理はニジマスのムニエル、ワサビのフリッター添えです。」
料理長自慢のニジマス料理の隣には、溶いた小麦粉の衣をまとったワサビの葉と茎のフリッターが添えられてた。
因みに、ニジマスという川魚も清流にしか生息しない魚で主に山岳部で食されているらしいの。
気候がやや乾燥気味の王都周辺では、ワサビもニジマスも珍しい食材みたい。
「今日のメインは『馬鹿』の霜降り肉のローストになります。
お好みにより、すり下ろしワサビを載せて召し上がってください。」
メイン料理は、ワゴンに乗ってるローストされた大きな塊肉を、料理長がその場で切り分けてくれたんだ。
分厚いステーキのように切り分けられたお肉は、中心部付近が綺麗なピンク色をしてて軽く火を通したって感じだった。
そこに料理長秘伝というソースを掛けて、脇にこんもりとすり下ろしたワサビを載せてくれたよ。
とても美味しく戴いたのだけど、食べ終わって不思議に思ったことが一つ。
それは、貴重な食材という割に惜しげもなく使われていたことだよ。ワサビ。
「ワサビって、王都の老舗料亭でも滅多に手に入らないのでしょう?
その割には、惜しげもなく使われていた気がするけど。
ここが貴賓室なので、特別料理だったのかな。」
おいらが料理長のお爺ちゃんに尋ねると…。
「そうさね、王都で買えばこの大きさでだいたい銀貨五十枚ってところかのう。
まあ、こんな立派なワサビは今まで見たこと無かったがのう。」
そう言って見せてくれたのは細目のニンジンくらいの大きさの野菜だった。
ニンジンのように太い根っこから葉っぱが出ているような野菜。
人参と違って、根っこはゴツゴツしてて黒っぽかった。
「女王陛下には申し訳ござらんが。
今日の料理は、貴賓室だからと特別な品を用意した訳ではござらんでのう。
他のお客様にも、同じ品をお出しすることになっております。」
本来なら貴賓室ではもっと上等な料理を出すらしいけど、おいら達の場合、飛び込みの宿泊なので仕込みが間に合わなかったらしいの。
そのため、料理長がここの厨房を使って出来たてのものを供しはするけど、メニューは他のお客さんと同じらしいんだ。
「他のお客さんにもそんな高級食材を惜しげもなく使っているんだ…。」
そもそもが、王都でも滅多に手に入らない食材じゃなかったの?
「陛下がそう言われるのも無理のないことでしょう。
何せ、永年厨房を任されてきた私ですら驚いたのですからのう。
まさか、こんな森の中でワサビの栽培とニジマスの養殖をしている人が居るとは…。」
料理長の言うところでは、この宿が開業して間もなくのことらしい。
どこから宿の話を聞きつけたのか、一人の娘さんが荷馬車に乗って尋ねてきたそうだよ。
娘さんは、ニジマスとワサビを買い取らないかと商談を持ち掛けてきたんだって。
料理長、何がビックリしたかと言えば、まずもってこんな森の中で新鮮採れたてのワサビとニジマスにお目に掛かったこと。
料理長の知識では、二つとも王都から遠く離れた山岳部まで行かないと採れないものとされてたらしい。
そんな貴重な食材を一定量、定期的に卸すと持ち掛けられて料理長は困惑したって。
そもそも、両方とも清らかな水が豊富な地域に存在するもので、この森の中で一定量を確保する事が本当に可能なのかと。
例えば、ここの領地。飲み水と生活用水に不自由しない程度には水が豊富だけど、ワサビが自生するほどでは無いし。
いわんやニジマスが生息するような清流は流れていないからね。
料理長がそのことを率直に尋ねたら、養殖と栽培に成功したって答えが返ってきたんだって。
料理長、今度は腰が抜けるほど驚いたそうだよ。
どう見ても二十歳にも満たない娘さんが、魔物が跋扈する森の中でニジマスの養殖やワサビの栽培を手掛けていることに。
そして、それが可能なほど水が豊富に存在する場所がこの森の中にあるということに。
水が豊富な場所って…、まさかね。
**********
翌朝、顔をテカテカさせたウルピカさんが上機嫌で朝の挨拶にやって来たよ。
「如何でしたか、貴賓室の居心地は? ゆっくりお寛ぎ戴けたでしょうか?」
「うん、とても寛げたよ。
温泉も、食事も良いし。何より、このお部屋がシックな造りで落ち着けるよ。
ゴテゴテと装飾過多な部屋じゃ落ち着かないからね。」
おいらの言葉を聞いたウルピカさんはパッと嬉しそうな表情を見せ。
「先般、お忍びでいらした国王陛下もそう仰ってくださいました。
この部屋はのんびり落ち着けて良いと。」
「国王陛下がお泊りになられたの?」
「はい、何でも主人から聞いたそうで。
主人、チャランポランに見えますが、中々腕は立つようでして。
時折、陛下の護衛を命じられることがあるそうなのです。
その時、この宿のことを耳にして良い温泉があると知りお越し戴いたとのことでした。
下級騎士の主人でも貴人の護衛を命じられることがあるのですね。」
やっぱり、下級騎士って設定で通しているんだね。
国王様の来訪からまだ半年も経っていないそうだよ。
皇后と共に、少数の護衛だけ連れてお忍びで宿泊に来たんだって。今回のおいらみたいに事前の連絡も無しに。
「とても気さくな方で、ご滞在の間、しばしばカレンと遊んでくださいました。
まるで孫娘のように可愛がって戴き、畏れ多いことです。」
チャラ王子から教えられてないかも知れないけど、本当の孫娘だからね。
貴賓室に何日か滞在した王様は、自分が爵位を与え領主と認めたカレンちゃんの顔が見たいと言ったそうだよ。
通常、叙爵は王宮の謁見の間でするそうだけど、貴族のお手付きでできた子供に爵位を与える場合はその限りではないらしい。
爵位を授与する書状と領主に任命する書状を送付して終わりなんだって。
その子供が成人した時に、王都で王様に謁見してご挨拶を申し上げるのが慣行らしいの。
もしかしたら王様が来た本当の目的は孫娘の顔を見ることで、温泉の方は口実かも知れないね。
ウルピカさんの領地滞在二日目、おいら達は領地周辺の魔物狩りに出掛けたよ。
例によって領地の前を通っている街道に沿って来た方向とは反対の方向へ狩り進めるのかと思いきや。
その日は森の奥と領地の周囲の魔物を徹底的に間引いたの。
「この街道をあっちに向かって狩るんじゃなかったの?」
「ここから先は大丈夫なんだぁ~。
大した時間も掛からず森を抜けるしぃ。
宿へ泊りに来た貴族の護衛が狩ってくれるからぁ。」
王子の言うところではここから半日も進むと森を抜けて、ウルピカさんの生まれ育った宿場町を通る街道に合流するらしい。
クコさんの領地側から入るより反対側から入った方が、森の中を通る距離が圧倒的短いそうで。
魔物が多い森の中を長距離移動するのは避けたいため、ウルピカさんの領地に保養に訪れるお客さんの多くが反対側から来るらしい。
現在、ウルピカさんの営む温泉宿は貴族の保養地としてとても評判で、毎日お客さんが絶えないそうなの。
宿泊客の大部分は貴族なのでそれなりの数の護衛がついており、道すがら遭遇した魔物は退治してくれるんだって。
まっ、当然だね。遭遇するってのは襲って来る訳だし、退治しないと自分達が危ないから。
結果として、宿泊客の護衛が魔物を間引いてくれることになり、王子が間引く必要が無いそうだよ。
その代わり、貴族の宿泊客が多いウルピカさんの領地が魔物に襲われることが無いよう、周囲を徹底的に間引くんだって。
「ところで、ウルピカさんの領地が温泉、フルティカさんの領地が絹織物。
それぞれ領地の柱となる収益源がある訳だけど。
クコさんの領地はどうなっているの?
これからはヒュドラ酒がウリになりそうだけど。今まではどうしてたの?」
昨晩、料理長の話を聞いて思ったんだ。
ワサビの栽培とニジマスの養殖をしているのって、もしかしたらクコさんかも知れないと。
だとしたら、クコさん、既にウルピカさん達のことを知っているんじゃないかな。
チャラ王子はウルピカさん達のことを上手く隠しているつもりみたいだけど…。
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