ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第二二章 チャラい王子としっかり者のお嫁さん達

第763話 そのさりげない気遣いにキュンときたらしい…

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 その日、クコさんは流されるままオベルジーネ王子の部屋に泊まることになったんだって。
 幸いにして、王子のベッドは庶民が使うそれの優に三倍はある大きなサイズだったらしく。
 クコさんはなるべく王子から離れたベッドの隅で横になったそうなの。

「寝室の灯りが消され、部屋が暗くなると。
 突然恐怖心が襲って来たのです。
 どうやら、闇が暴漢に襲われた恐怖を想起させるようで…。」

 街道の暗闇で暴漢に襲われたから、闇=怖いモノと頭が認識してしまったのだろうとクコさんは言ってたよ。
 湧き上がる恐怖心のため、クコさんは体を強張らせてブルブルと震えてしまったらしい。

 ベッドの隅で恐怖に身を震わせているクコさんに対して。

「可哀想に、本当に怖かったんだね。
 ほら、こっちにおいで、僕が護ってあげるから。」

 王子が優しく抱き寄せてくれたそうだよ。

「その時の旦那様の腕の中はとても温かくて…。
 頭や背中を優しく撫でられるととても安心出来ました。
 この方の胸に抱かれていれば、何も怖れるものは無いと。」

 クコさんが寝付くまでオベルジーネ王子はとても優しくしてくれたそうでね。
 その晩、それから先は夢心地となってしまい、何がどうなったのか良く覚えていないそうだよ。

 クコさんは、王子の腕の中で熟睡してしまったそうで、翌朝、寝室の扉が開く音で目が覚めたらしい。

「翌朝は、つい寝過ごしてしまったんです。
 よく眠れたはずなのに、何故かとても疲れていて…。
 目覚めた時も、気だるくてボウッとしていました。
 すると、突然、布団が剥ぎ取られて…。」

 それで、ハッキリと覚醒したらしいよ。いったい何事かと。
 気付くとペピーノ姉ちゃんが、クコさん達が使っていた掛け布団を手にしていたんだって。

 そのペピーノ姉ちゃんは細い目をいっそう細めて、嬉しそうに言ったそうなの。

「まあ、お兄様ったら、期待を裏切りませんこと。
 早速、お召し上がりになられたようですね。」

 …と。

 ペピーノ姉ちゃんの視線は、赤く染まったシーツに向けられていたそうだよ。
 その時、ペピーノ姉ちゃんと一緒に居たのは、三人の男女だったらしい。

 最初に口を開いたは、三十代半ばのペピーノ姉ちゃんによく似た目の細いご婦人で。

「あら、あら、この子ったら…。
 私、この若さでお祖母ちゃんと呼ばれちゃうのかしら。」

 穏やかな笑みを湛えてそんな呟きをもらすと、今度は隣にいた紳士が。

「先ずは、事実関係を確認せねばいかんな。
 女医殿、そちらの娘さんを診てはくださらぬか?」

 白い割烹着のような物を身に着けた初老の女性に向かって指示を出したんだって。
 女医殿と呼ばれる女性は丁重に、だけど有無を言わせず、クコさんを寝室の奥にある小部屋に連れて行ったらしい。
 そこは部屋付きの侍女が寝泊まりする部屋とのことで、簡素なベッドが一つだけ置かれていたそうだよ。
 ベッドに横にされたクコさんは、他人様ひとさまには言えないような診察をされたらしい。

        **********

 今思い出しても赤面してしまう診察を終えて、元居た寝室に戻ると。
 女医さん、何を思ったか、オベルジーネ王子のズボンとパンツを強引に剥ぎ取ったらしい。
 パンツの裏側と王子の股間を、僅かな埃すら見落とさないって様子でじっくりと観察していたそうなの。

 そして…。

「陛下、ご報告いたします。
 シーツの染みはこのお嬢様の破瓜の血に間違いござません。
 注ぎ込まれた子種の存在も確認致しました。
 また殿下にも、その痕跡が御座います。
 お二方がそのようなご関係になられたのはほぼ確実かと。」

 女医さんは陛下と呼ぶ紳士に向けて報告したそうだよ。
 クコさん、初めての睦事を暴露された恥かしさの余り、顔から火が噴き出しそうだったって…。
 そのため、『陛下』とか『殿下』という尊称が何を示すものかに頭が回らなかったみたい。

「ふむ、そうか…。」

 報告を受けた紳士はその一言だけ呟くと、何か思索に耽ってしまったらしいけど。

「あら、良いではございませんか。
 ペピーノちゃんもお気に入りのようですし、うちの娘になって貰えば。」

 奥様と思しきご婦人は何やら不穏なことを言い出したそうなの。
 しかも。

「お母様、それ、とても素敵ですわ。
 私も大賛成です。
 クコちゃんとなら、きっと私も仲の良い姉妹になれますわ。」

 ペピーノ姉ちゃんもメチャクチャ乗り気で、クコさんの意思など置き去りにして話が進みそうな雰囲気だったらしいよ。
 そんな時、盛り上がる母子を後目に、なにやら思索に耽っていた紳士が口を開いたんだって。

「オベルジーネよ。そなた、自分が何を仕出かしたのは理解しておるのだろうな。
 王侯貴族が特権的地位を笠に着て、平民の娘に関係を強いるのは重罪であるぞ。
 その刑罰に例外は無く、去勢した後、身分を剥奪して孤島への島流しとなるが。
 そなた、覚悟は出来ているのであろうな。」

 開口一番、オベルジーネ王子を糾弾したそうなの。

「ちょ、ちょ、何で、ボクちんが無理強いしたって決め付けてんの。
 ボクちん、そんな横暴はしてないしぃ。」

 チャラ王子は必死になって自己弁護していたんだって。
 こいつ、本当に身内から信用されてないんだな…。

「うちのバカ息子はこう言っておるが。
 娘さん、本当のところはどうなのだ。
 暴漢に襲われているところをこ奴に救われたそうだが。
 それを恩に着せて、無理やり関係を迫ったのではないか?」

 チャラ王子の弁明を聞いた父親らしき紳士は、クコさんに確認して来たそうだよ。

「いいえ、決してそんなことございません。
 無理強いなどされていませんし。
 とても優しくして戴き、幸せな気持ちで満たされています。」

 クコさんの答えを聞いた紳士は満足そうに頷き。

「ふむ、双方合意の下であったと言うことか。
 では、そなたはこれからどうするつもりであるか?
 この娘さんを妃に迎え入れるつもりであるか?」

 オベルジーネ王子にそう尋ねたそうなの。
 このセリフを聞いて、クコさんは初めて事の重大さに気付いたそうだよ。『妃』なんて聞き慣れないフレーズがあったから。
 と同時に、目の前の紳士がどんな立場の方なのか、やっと気付いたそうだよ。

「お兄様、そうしなさいませ。
 クコちゃんは絶対にお買い得です。」

 そんな動揺するクコさんのことなどお構いなしに、ペピーノ姉ちゃんは王子に嫁取りを勧めたらしい。
 とんでもない方向へ話が転がり始めちゃったものだから、何とかしないと拙いとクコさんが焦っていると。

「父上、それにペピーノも、少し落ち着いてちょ。
 クコちゃんが混乱しているじゃん。
 ボクちん、自己紹介してないしぃ。
 クコちゃん、多分ここが何処かも分かって無いよ~。」

 上手いタイミングでオベルジーネ王子が二人を落ち着かせてくれたんだって。 

「さては、そなた、身分を明かさずに、娘さんをもてあそんで。
 飽きたらポイ捨てするつもりであったか。
 我が息子ながら、見下げ果てた外道であるな。」

 その時、父上と呼ばれた紳士は軽蔑の眼で王子を見ていたらしい。
 こいつ、どんだけ身内から信頼されてないんだよ…。

「酷っ、みんな、ボクちんに対する評価低過ぎない?
 何で、ボクちんを悪者扱いするの。
 クコちゃん、昨日、暴漢に襲われて怯えていたんだよ~。
 そんなクコちゃんに、更に緊張を強いるなんて出来ないでしょう。
 ボクちんが王族で、ここが王宮だと知ったらリラックスできないじゃん。」

 オベルジーネ王子は主張したの。
 そもそも最初に王族と明かしたら、クコさんは是が非でも半裸に近い状態で家に帰ろうとしただろうって。
 確かにチャラ王子の言葉にも一理あると思うよ。王族から怪我の治療と服を用意すると言われても、普通は躊躇するもん。ホイホイと付いてくる胆の太い人はそうそう居ないよね。
 更に王宮に着いた後も、暴漢に襲われて強張っているクコさんに少しでも寛いでくつろいでもらうために、敢えて場所と身分を明かさなかったと弁明してたんだ。

 チャラ王子なりに、クコさんに対する気遣いを色々としてたんだね。
 その時、クコさんは王子の自分に対する配慮を知って、とても心が温かくなったそうだよ。キュンときちゃったって。

        **********

 オベルジーネ王子の弁明に、その場に居た大人達は一応納得したようで。
 ここで初めて、クコさんはオベルジーネ王子を含めてその場に居た人達を紹介してもらったそうだよ。

 そして、王様は言ったらしい。

「して、クコさんや。ペピーノから話は聞いている。
 毎日、図書館へ通っており、その帰りに襲われたそうじゃの。
 ペピーノはそなたを甚く気に入ったようで。
 ここに滞在させ、図書館へ通わせるよう望んでおる。
 儂としても是非は無い故、ここに留まりペピーノと共に図書館へ通うと良い。
 ご両親には、王宮から連絡しておくので心配せずとも良いぞ。」

 前の晩はそこが王宮と知らなかったので、ペピーノ姉ちゃんに押し切られる形で承諾してしまったけど。
 流石に、王宮は敷居が高いと感じたらしく、クコさんは無礼にならないよう遠回しに辞退しようとしたらしいの。
 それにこれ以上、話しが変な方向に転がったら拙いと…。

 クコさんはなるべく丁重にお断りしたつもりだったそうだけど、王様は渋い顔をみせると。

「申し訳ないが、そう言う訳にもいかんのだ。
 クコさんの中にオベルジーネの種があるからのう。
 下手に王宮から外に出すとややこしい話しになりかねん。
 しばらくはオベルジーネ以外の男性との接触は避けてもらうことになるし。
 外出の際は監視も兼ねて侍女が一人付くことになるが、それも辛抱してもらえるか。
 まあ、何年ここに滞在してもかまわんから、気の済むまで学ぶと良い。
 そうそう、その間、オベルジーネと今後のことも相談すると良いぞ。」
 
 クコさんのお腹に視線を向けてそう告げたらしいの。
 その時、クコさんは悟ったらしいよ。「どうやら、自分に拒否権は無いらしい。」と。
 結局、クコさんは王宮に滞在するとになったんだって。
 朝、ペピーノ姉ちゃんと共に馬車で図書館へ行き、夕方迎えの馬車で王宮に戻ってからは夕食までペピーノ姉ちゃんの話し相手になる。そんな生活が始まったらしい。
 衣食住、すべて王宮が負担してくれる上に、ペンとノートまで支給されると言う破格の待遇だったそうだよ。

 唯、想定外だったことが幾つかあったそうで…、
 何故か最初の約束にあった部屋が用意されることは無く、そのままオベルジーネ王子の部屋に滞在することになったこと。
 それから、女医さんの恥ずかしい健診を定期的に受けることになったこと。

 そして極めつけは…。

「そうこうしている間に、ロコトが出来ちゃったんです。」

 恥じらいを見せつつ、クコさんがそんなことを言ったんだ。

「何が想定外よ!
 することしてるんだから、出来るに決まっているでしょう!」 
 
 リュウキンカさんが、すかさずそこにツッコミを入れてたよ。

 なんだって…。
  
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