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第二一章 またもや、頭の痛い連中を拾ったよ…
第749話 予想以上の成果があったよ…
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「ふむ、ゴマスリーが貴族籍を放棄したとな。
仕方あるまい。
あやつ、何事にもやる気が無かったからな。」
厨房から戻ってピーマン王子に知らせると、少し残念そうな顔で呟いてた。
おじゃるは幼少の時からの取り巻きだったようだから、多少は心を痛めてるようだけど。
ひどく落ち込んでいる様子でも無いのは、おじゃるの脱落を予想してたからみたい。
ピーマン王子と違って生活態度を改めようとしないので、何処かの時点でペピーノ姉ちゃんの勘気に触れるだろうと思ってたそうなの。
「おじゃるのことは心配しないでも良いよ。
料理長が厳しく鍛えるって言ってたから。
料理人見習いくらいにはしてくれるって。」
何処かのに料理屋で下働きにでも雇ってもらえば、路頭に迷うことは無いだろうってね。
「あの料理長に任せておけば安心だな。
あやつのくだらない自尊心を粉々にしてくれるだろうよ。
そうすれば平民として生きていくことも苦にはなるまい。」
ピーマン王子は言ってたよ。おじゃるは貴族としてプライドがおかしな方向に強いので生き難いのだろうと。
貴族籍を失い、平民であることを自覚すれば、変な自尊心に邪魔されること無く堅気に働くことが出来るだろうし。
その変な自尊心は、きっと料理長が粉々に破砕し尽くすだろうとも。
ピーマン王子は自嘲気味にこんなことも言ってたんだ。
自分はマイナイ領でレクチェ姉ちゃんから『キモい』と言われて、おかしな自尊心が粉微塵になったって。
あの時、今後は『キモい』と言われることが無い生き方をしようと決心したらしいよ。
「今のところ、ゴマスリー子爵家のドラ息子以外には目につく落伍者は居ないようですね。
残り二ヶ月、これ以上脱落する者が出ないように目配りしなさい。
それが人の上に立つ者としての訓練にもなるはずですから。」
ペピーノ姉ちゃんはそんな助言をしてたよ。
周囲の仲間の様子に気を配って誰一人として、落伍者を出さないように的確な指示や助言をするようにと。
ここにいる間、意識してそんな行動を続ければ、他人の上に立つための良い訓練になるだろうってね。
「はい、姉上。
ご期待に沿えるよう精進いたします。」
「期待していますよ。
今のあなたなら出来るはずです。」
ピーマン王子から素直な返事が返ってくると、ペピーノ姉ちゃんは細い目をいっそう細めていたよ。
いつも笑顔なので感情が読み取り難いけど、ピーマン王子の返答にとても満足そうだった。
**********
時間が経つのは早いもので、それから二ヶ月が経った日のこと。
三度、おいら達は街道整備の新たな拠点となる施設を訪れたんだ。
例によって監獄のような堅固な堀と壁に囲まれた施設の中に入ると…。
「あら、これは見事ですね。
たった三ヶ月でこれだけの施設が出来るなんて…。」
粗方完成した施設を目にして、ペピーノ姉ちゃんが目を丸くしてた。
スジが如き細い目のペピーノ姉ちゃんが、珍しく目を見開いてたよ。
正面の門を潜るとそこには広い道が一直線に裏門まで続き、道の両側はキレイな四角に整然と区画されてたんだ。
そして中央を貫く道の右側には、作業員宿舎らしき大型の建物がずらりと並んでた。
一方、道の左側には現場事務所や資材倉庫、それに食堂らしき建物が建てられていたよ。
更に、裏門に近い一画には自給自足用と思われる畑まで作られているの。
それは、さながら堅固な城壁に護られた小さな町のようだった。
ペピーノ姉ちゃんが目を丸くするのも無理はないと思う。
二ヶ月前に来た時には想像もできないくらい、立派な施設が建ち並んでいたんだもん。
「そうだね。
本来、この施設は半年の工期を予定してたんだ。
しかも、もっと沢山の人手を投入する見積もりだったの。」
これはピーマン王子達に対する謝礼を弾まないといけないなと思っていると。
「これは、これは、マロン陛下、ようこそいらっしゃいました。
先日送ったばかりですので、まだ、完成報告は届いていないはずですが。
施設の完成が良く分かりましたね。」
ピーマン王子と技師たちを連れた所長が声を掛けてくれたんだ。
「完成を知って来た訳じゃ無いんだ。
約束の三ヶ月が経過したから様子を見に来たの。
その言葉だと、ここが完成したと思って良いのかな。」
「はい、什器備品の搬入はまだですが、建屋や道路は完成しました。
予定していた半分の工期で完成するとは驚きです。
これもひとえに、ピーマン殿下他皆さんのご尽力の賜物です。」
所長はピーマン王子達をべた褒めだったよ。
以前の不健康なピーマン王子達を知らない所長は、良く体を鍛えているからとても重労働が捗ったと感心してた。
「そんなに褒められると恐縮してしまう。
これも技官殿のご指導が良かったこと、それに資材の出来の良さのおかげである。
それにしても、ここの建築資材は本当に良く出来ている。
事前に加工してあって、組み立てるだけであるからな。
我々にもこんな資材があれば、開拓もだいぶ楽になるだろうに。」
一瞬、おいらも目を疑ったよ。
だって、あのピーマン王子が謙遜して技官を立てるような言葉を口にするんだもの。
出会った時の横柄な態度はすっかり影を潜めて、こんな謙虚な態度が取れるなんて…。
「あら、あら、ピーマンったら。
見た目だけじゃなくて、性根まで真っ直ぐになって。
まるで別人のようですわ。
これはマロンちゃんにお任せして正解でした。」
やっぱり、ペピーノ姉ちゃんもピーマン王子の性格まで改善されていることに驚いてたよ。
**********
どうやら、所長達は完成した施設内の点検をしていたようで、おいら達もそれに同行させてもらったの。
先ずは敷地の中央を貫く大通り、道全体を四角い石で敷き詰めて舗装してあるんだ。
「なあ、この石のブロック、良いな。
寸分違わず同じサイズに切り揃えてあって。
整地して平坦に固めた上に敷き詰めるだけで良いんだから。
これって何処に売っているんだ?
所長に聞いても分からないって言うのだが。」
道路の出来栄えをチェックしている所長を横目に、ピーマン王子が尋ねてきたの。
自分達で領地開拓をする際に、こんな石があると助かるって。
「あっ、これ、非売品だから何処にも売ってないよ。
今整備している街道にも使って無いし。
試しに、ここで使ってもらうことにしたんだ。」
街路の舗装に使われている石は、地下貯水池を造る時に切り出した石だよ。
公衆浴場を造るのに使った後でも、膨大な量が『積載庫』に残っていたからね。
何か良い使い道が無いかと考えていたの。
『積載庫』の機能で切り揃えるから、寸分たがわない石のブロックが出来るんだ。
但し、幾ら膨大な量があると言っても、国内を縦横無尽に走る街道を舗装するには量が足りないからね。
街中の街路の舗装になら使えるかと思って、試しにここで使ってもらったの。
「そっか、残念だな。
この石があれば領地開拓が捗ると思ったのに。」
しゃがんで足元の石をつつきながら残念そうに呟いたピーマン王子。
「この石、欲しければ分けてあげるよ。
無尽蔵にって訳にはいかないけど。
この現場に使った数の何倍かくらいなら。」
「おお、それは本当か!」
おいらの言葉にとっても嬉しそうに反応したピーマン王子。
だけど、それから直ぐに浮かない表情になって…。
「あっ、いや、そんなに簡単に言うが…。
あんな正確に切り揃えてあるんだ。
素材が石とはいえ、高いんじゃないか?
正直、それほど予算は無いのだが。」
こいつ、本当に変わったね。予算の心配まで出来るようになるなんてビックリだよ。
「ああ、それは心配しないで大丈夫だよ。
これだけの施設を造ってくれたんだもの。
お金なんて取れないよ。」
ここへ送り込んだ時は、正直、ここまでのことが出来るようになるとは思っても居なかったんだ。
どうせちんたらやっていて、足手まといにしかならないと思ってた。
それでも、少しは真面目になって、領地開拓のためにノウハウを修得してくれればと考えて送り込んだの。
だから、あくまで実習でノウハウを教授するってことにして、ピーマン王子達には無給と伝えてたんだ。
でも予想以上の更生振りで、完璧に施設を造り上げたからね。無給って訳にはいかないじゃない。
それなりの謝礼をしないと。
そのことを明かしたら。
「それは有り難い。
では、ここで使った五倍ほどの数を分けてもらえないだろうか。
仲間内で話し合って、開拓地を五ヶ所ほど作ることにした。
五人が領主となって、残りの者を騎士として召し抱えるのだ。」
ピーマン王子達なりに、ここを出た後のことを話し合っていたんだって。
うん、うん、他の連中も皆それなりに更生したみたいで良かったよ。
「そのくらいの数なら大丈夫だよ。
それと開拓村を五つ造るなら。
その分の家を建てるキットも付けてあげるよ。」
おいらの言葉を聞いてピーマン王子は顔をパッと綻ばせ。
「おお、それは助かる。
あの組み立てキットがあれば開拓が捗る。」
「開拓村が独立した領地と認められるためには条件があったよね。
確か、一ヶ所最低五十件の家が必要なんだっけ?
そしたら、村一つ当たり一般家屋キット五十とお屋敷キット一つで良いかな。
あっ、宿屋用にここで建てた寄宿舎キットも付けようか。」
以前、アネモネさんから聞いたことを思い出しながら提案すると。
「えっ、そんなに大盤振る舞いしてくれるのか?
ここで指導してもらっただけでも有り難いのに。」
ピーマン王子は、ここにいる技師達から受けた指導をとても感謝しているようで。
給金が欲しいなどとは、ちっとも思わなかったそうなんだ。
おいらの申し出は予想外だったみたいで、とても喜んでいたよ。
その晩は、施設の完成祝いとピーマン王子達の慰労のため宴会を催したんだ。
おいらはアルトに頼んで近くの街に飛んでもらい、特別にお酒を差し入れたよ。
そしてその翌日、おいらはピーマン王子達を連れて王都へ戻ってきたの。
料理長の下で修業を続けるおじゃる一人を残して…。
**********
今年の投稿はここまでとさせていただきます。
今年一年、読んでくださった皆様、本当に有り難うございました。
新年は第二週から投稿を再開する予定です。
来年もお付き合い頂けましたら幸いです。よろしくお願い致します。
皆様、良いお年をお迎えください。
仕方あるまい。
あやつ、何事にもやる気が無かったからな。」
厨房から戻ってピーマン王子に知らせると、少し残念そうな顔で呟いてた。
おじゃるは幼少の時からの取り巻きだったようだから、多少は心を痛めてるようだけど。
ひどく落ち込んでいる様子でも無いのは、おじゃるの脱落を予想してたからみたい。
ピーマン王子と違って生活態度を改めようとしないので、何処かの時点でペピーノ姉ちゃんの勘気に触れるだろうと思ってたそうなの。
「おじゃるのことは心配しないでも良いよ。
料理長が厳しく鍛えるって言ってたから。
料理人見習いくらいにはしてくれるって。」
何処かのに料理屋で下働きにでも雇ってもらえば、路頭に迷うことは無いだろうってね。
「あの料理長に任せておけば安心だな。
あやつのくだらない自尊心を粉々にしてくれるだろうよ。
そうすれば平民として生きていくことも苦にはなるまい。」
ピーマン王子は言ってたよ。おじゃるは貴族としてプライドがおかしな方向に強いので生き難いのだろうと。
貴族籍を失い、平民であることを自覚すれば、変な自尊心に邪魔されること無く堅気に働くことが出来るだろうし。
その変な自尊心は、きっと料理長が粉々に破砕し尽くすだろうとも。
ピーマン王子は自嘲気味にこんなことも言ってたんだ。
自分はマイナイ領でレクチェ姉ちゃんから『キモい』と言われて、おかしな自尊心が粉微塵になったって。
あの時、今後は『キモい』と言われることが無い生き方をしようと決心したらしいよ。
「今のところ、ゴマスリー子爵家のドラ息子以外には目につく落伍者は居ないようですね。
残り二ヶ月、これ以上脱落する者が出ないように目配りしなさい。
それが人の上に立つ者としての訓練にもなるはずですから。」
ペピーノ姉ちゃんはそんな助言をしてたよ。
周囲の仲間の様子に気を配って誰一人として、落伍者を出さないように的確な指示や助言をするようにと。
ここにいる間、意識してそんな行動を続ければ、他人の上に立つための良い訓練になるだろうってね。
「はい、姉上。
ご期待に沿えるよう精進いたします。」
「期待していますよ。
今のあなたなら出来るはずです。」
ピーマン王子から素直な返事が返ってくると、ペピーノ姉ちゃんは細い目をいっそう細めていたよ。
いつも笑顔なので感情が読み取り難いけど、ピーマン王子の返答にとても満足そうだった。
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時間が経つのは早いもので、それから二ヶ月が経った日のこと。
三度、おいら達は街道整備の新たな拠点となる施設を訪れたんだ。
例によって監獄のような堅固な堀と壁に囲まれた施設の中に入ると…。
「あら、これは見事ですね。
たった三ヶ月でこれだけの施設が出来るなんて…。」
粗方完成した施設を目にして、ペピーノ姉ちゃんが目を丸くしてた。
スジが如き細い目のペピーノ姉ちゃんが、珍しく目を見開いてたよ。
正面の門を潜るとそこには広い道が一直線に裏門まで続き、道の両側はキレイな四角に整然と区画されてたんだ。
そして中央を貫く道の右側には、作業員宿舎らしき大型の建物がずらりと並んでた。
一方、道の左側には現場事務所や資材倉庫、それに食堂らしき建物が建てられていたよ。
更に、裏門に近い一画には自給自足用と思われる畑まで作られているの。
それは、さながら堅固な城壁に護られた小さな町のようだった。
ペピーノ姉ちゃんが目を丸くするのも無理はないと思う。
二ヶ月前に来た時には想像もできないくらい、立派な施設が建ち並んでいたんだもん。
「そうだね。
本来、この施設は半年の工期を予定してたんだ。
しかも、もっと沢山の人手を投入する見積もりだったの。」
これはピーマン王子達に対する謝礼を弾まないといけないなと思っていると。
「これは、これは、マロン陛下、ようこそいらっしゃいました。
先日送ったばかりですので、まだ、完成報告は届いていないはずですが。
施設の完成が良く分かりましたね。」
ピーマン王子と技師たちを連れた所長が声を掛けてくれたんだ。
「完成を知って来た訳じゃ無いんだ。
約束の三ヶ月が経過したから様子を見に来たの。
その言葉だと、ここが完成したと思って良いのかな。」
「はい、什器備品の搬入はまだですが、建屋や道路は完成しました。
予定していた半分の工期で完成するとは驚きです。
これもひとえに、ピーマン殿下他皆さんのご尽力の賜物です。」
所長はピーマン王子達をべた褒めだったよ。
以前の不健康なピーマン王子達を知らない所長は、良く体を鍛えているからとても重労働が捗ったと感心してた。
「そんなに褒められると恐縮してしまう。
これも技官殿のご指導が良かったこと、それに資材の出来の良さのおかげである。
それにしても、ここの建築資材は本当に良く出来ている。
事前に加工してあって、組み立てるだけであるからな。
我々にもこんな資材があれば、開拓もだいぶ楽になるだろうに。」
一瞬、おいらも目を疑ったよ。
だって、あのピーマン王子が謙遜して技官を立てるような言葉を口にするんだもの。
出会った時の横柄な態度はすっかり影を潜めて、こんな謙虚な態度が取れるなんて…。
「あら、あら、ピーマンったら。
見た目だけじゃなくて、性根まで真っ直ぐになって。
まるで別人のようですわ。
これはマロンちゃんにお任せして正解でした。」
やっぱり、ペピーノ姉ちゃんもピーマン王子の性格まで改善されていることに驚いてたよ。
**********
どうやら、所長達は完成した施設内の点検をしていたようで、おいら達もそれに同行させてもらったの。
先ずは敷地の中央を貫く大通り、道全体を四角い石で敷き詰めて舗装してあるんだ。
「なあ、この石のブロック、良いな。
寸分違わず同じサイズに切り揃えてあって。
整地して平坦に固めた上に敷き詰めるだけで良いんだから。
これって何処に売っているんだ?
所長に聞いても分からないって言うのだが。」
道路の出来栄えをチェックしている所長を横目に、ピーマン王子が尋ねてきたの。
自分達で領地開拓をする際に、こんな石があると助かるって。
「あっ、これ、非売品だから何処にも売ってないよ。
今整備している街道にも使って無いし。
試しに、ここで使ってもらうことにしたんだ。」
街路の舗装に使われている石は、地下貯水池を造る時に切り出した石だよ。
公衆浴場を造るのに使った後でも、膨大な量が『積載庫』に残っていたからね。
何か良い使い道が無いかと考えていたの。
『積載庫』の機能で切り揃えるから、寸分たがわない石のブロックが出来るんだ。
但し、幾ら膨大な量があると言っても、国内を縦横無尽に走る街道を舗装するには量が足りないからね。
街中の街路の舗装になら使えるかと思って、試しにここで使ってもらったの。
「そっか、残念だな。
この石があれば領地開拓が捗ると思ったのに。」
しゃがんで足元の石をつつきながら残念そうに呟いたピーマン王子。
「この石、欲しければ分けてあげるよ。
無尽蔵にって訳にはいかないけど。
この現場に使った数の何倍かくらいなら。」
「おお、それは本当か!」
おいらの言葉にとっても嬉しそうに反応したピーマン王子。
だけど、それから直ぐに浮かない表情になって…。
「あっ、いや、そんなに簡単に言うが…。
あんな正確に切り揃えてあるんだ。
素材が石とはいえ、高いんじゃないか?
正直、それほど予算は無いのだが。」
こいつ、本当に変わったね。予算の心配まで出来るようになるなんてビックリだよ。
「ああ、それは心配しないで大丈夫だよ。
これだけの施設を造ってくれたんだもの。
お金なんて取れないよ。」
ここへ送り込んだ時は、正直、ここまでのことが出来るようになるとは思っても居なかったんだ。
どうせちんたらやっていて、足手まといにしかならないと思ってた。
それでも、少しは真面目になって、領地開拓のためにノウハウを修得してくれればと考えて送り込んだの。
だから、あくまで実習でノウハウを教授するってことにして、ピーマン王子達には無給と伝えてたんだ。
でも予想以上の更生振りで、完璧に施設を造り上げたからね。無給って訳にはいかないじゃない。
それなりの謝礼をしないと。
そのことを明かしたら。
「それは有り難い。
では、ここで使った五倍ほどの数を分けてもらえないだろうか。
仲間内で話し合って、開拓地を五ヶ所ほど作ることにした。
五人が領主となって、残りの者を騎士として召し抱えるのだ。」
ピーマン王子達なりに、ここを出た後のことを話し合っていたんだって。
うん、うん、他の連中も皆それなりに更生したみたいで良かったよ。
「そのくらいの数なら大丈夫だよ。
それと開拓村を五つ造るなら。
その分の家を建てるキットも付けてあげるよ。」
おいらの言葉を聞いてピーマン王子は顔をパッと綻ばせ。
「おお、それは助かる。
あの組み立てキットがあれば開拓が捗る。」
「開拓村が独立した領地と認められるためには条件があったよね。
確か、一ヶ所最低五十件の家が必要なんだっけ?
そしたら、村一つ当たり一般家屋キット五十とお屋敷キット一つで良いかな。
あっ、宿屋用にここで建てた寄宿舎キットも付けようか。」
以前、アネモネさんから聞いたことを思い出しながら提案すると。
「えっ、そんなに大盤振る舞いしてくれるのか?
ここで指導してもらっただけでも有り難いのに。」
ピーマン王子は、ここにいる技師達から受けた指導をとても感謝しているようで。
給金が欲しいなどとは、ちっとも思わなかったそうなんだ。
おいらの申し出は予想外だったみたいで、とても喜んでいたよ。
その晩は、施設の完成祝いとピーマン王子達の慰労のため宴会を催したんだ。
おいらはアルトに頼んで近くの街に飛んでもらい、特別にお酒を差し入れたよ。
そしてその翌日、おいらはピーマン王子達を連れて王都へ戻ってきたの。
料理長の下で修業を続けるおじゃる一人を残して…。
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今年の投稿はここまでとさせていただきます。
今年一年、読んでくださった皆様、本当に有り難うございました。
新年は第二週から投稿を再開する予定です。
来年もお付き合い頂けましたら幸いです。よろしくお願い致します。
皆様、良いお年をお迎えください。
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