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第二一章 またもや、頭の痛い連中を拾ったよ…

第744話 こいつ、ハブられてやんの…

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 街道整備の拠点建設のため、先ずは仮設建物を建てたピーマン王子とその取り巻き達。
 何とか、雨風を凌げる建物を建ててホッとしたのも束の間。
 料理長は、おじゃるを含む十人を食事当番に指名し、食材となる魔物を狩りに引っ張って行ったよ。
 おじゃるの奴、休む間もなく狩りに駆り出されることになって不満たらたらだったけど。
 鬼の料理長に抵抗できる訳もなく、ズルズルと引き摺られて行っちゃった。

 面白そうなので、料理長達の後を追うと。

「よし、この辺りならウサギの巣穴なんて幾らでもあるだろう。
 一人一匹がノルマだ。
 単独で狩るなり、グループで狩るなり好きにしろ。
 但し、夕食まで時間が無いから、十分以内に狩るんだぞ。」

 街道から離れた草原の真っ只中で、料理長はおじゃる達に指示を出してた。
 すると、食事当番に指名された十人の男達は…。

「罠の準備も無いし。
 一人で狩るのは大変だな。」

「ここは何組にか分かれて狩ることにしようぜ。」

「一人一匹ノルマと言うことは、グループの人数分狩れば良いのか。」

「一人で狩るよりそっちの方が楽そうだな。」

「異議なし!」

「うんじゃ、お前、一緒に狩ろうぜ。」

「俺達はこの三人で狩ることにしたわ。」

 そんな感じで簡単に打ち合わせすると、気の合う仲間同士でグループを作って散って行ったの。
 三人一組で一台の荷車を引いて、それが三組それぞれに巣穴を探してた。
 あれ? と言うことは…。
 人数が合わないと思い、それまで十人集まっていた場所を見ると。

「えっ、ちょっ、…。
 ちょっと、待つでおじゃる。」

 おじゃるが、ポツンと一人取り残されていたよ。
 おじゃるは誰からもグループに誘われなかったみたいなの。
 何処かのグループに入れてもらおうと声を掛けてたけれど、その声は誰にも届いてない様子だった。
 おじゃるの声が聞こえなかっただけだよね、まさかイジメとかじゃ…。

「なんだ、お前、ぼっちか?
 ははん、普段の行いが悪いからハブにされたんだろう。」

 料理長ったら、おいら、思っていても口に出さなかったことを…。
 
「違うでおじゃる。
 あ奴らは麿とは違う分隊の者達でおじゃる。
 麿は分隊長故、きっと自分の上官に気遣って誘えなかったでおじゃるよ。」

 自分の上官以外の隊長の指揮下に入ると、自分の隊長が快く思わないとおじゃるは主張したの。

「そっか?
 普通、隊長が混じってれば他の隊の者でも誘うもんじゃないか?
 その方がよっぽど気遣いだと思うが。」

 おじゃるの苦しい言い訳を、一刀両断にする料理長。
 料理長の言葉におじゃるは泣きそうになっていたよ。

「そんなこと無いでおじゃる。
 麿はピーマン殿下から栄えある第一分隊の隊長を拝命してるでおじゃるよ。
 殿下のお側に侍る第一分隊長は、最も人望がある者が選ばれるでおじゃる。
 他から憧憬の目で見られることこそあれ、疎まれることは無いでおじゃる。」

 料理長の言葉を否定し、自分の立ち位置を必死に言い繕うおじゃる。
 本当にそう思っているのか、そうやって自分を誤魔化しているのかは知らないけどね。

 でも…。

「ああ、そうかい。
 お前がそう思っているなら、そうなんだろうよ。」

 料理長はおじゃるの言葉を話半分にも聞いてない様子だったよ。

「それで、その人望がある分隊長様はどうするんだ。
 早く狩らないと時間が無くなるぜ。
 お前が狩らなければ、今晩の夕食、第一分隊は肉無しだな。」

 おじゃるの言葉を軽くスルーした料理長は、御託は良いからさっさとウサギを狩れとせっついたんだ。
 しかも、料理長ったら手にした小石を近くにあったウサギの巣穴に放り込んだの。
 それはもう、おじゃるに有無を言わさず…。

「ウキー!」

 怒りを込めた鳴き声と共に、血走った眼で巣穴を飛び出してきたウサギ。
 料理長はすかさずおじゃるの背後に回り込んだよ。

「ほれ、人望がある分隊長様、分隊の晩飯用の肉だぜ。
 チョチョイと狩っちまいな。」

 ニヤリの意地の悪い笑顔を浮かべて、おじゃるに指示する料理長。

「人望は関係ないでおじゃる。
 麿だけ一人で狩れなんて、酷いでおじゃる。」

「いや、一人一匹ノルマと最初に言っただろうが。
 仲間と協力して狩るんじゃなければ、一人で狩るしか無いだろうが。
 ほれ頑張れ、王族の側に侍る騎士ならそれなりのレベルがあるんだろう。
 最弱のウサギなんて、目じゃないさ。」

 冷たく突き放した料理長は、ウサギに向けておじゃるの背中を押したんだ。

「やめるでおじゃる!」

 背中を押されたおじゃるは、トトトとウサギの目の前まで進まされたの。

「ウキー!」

 牙を剥いておじゃるに飛び掛かるウサギ。

「ええい、近付くんじゃないでおじゃる。
 もう、噛まれたくないでじゃる。」

 太ももを噛み千切られた記憶が頭をよぎったのか、必死になって剣を振り回すおじゃる。
 この一ヶ月間、ずっと体を動かしてきた甲斐もあって、ウサギの攻撃を何とか躱していたよ。
 そして、しばらくの間、ウサギとおじゃるの攻防が続き…。

「はあ、はあ、何とか倒せたでおじゃる…。
 死ぬかと思ったでおじゃる。」

 おいら達の目の前には、息絶えたウサギに寄り掛かってへたり込むおじゃるの姿あったよ。

「ふむ、十分以上掛かったものの、何とか一人で狩りは出来るようだな。
 よし、これから毎日一匹狩るんだぞ。
 今と同じように狩れば良いさ。出来るだろう?」

 料理長の無情な言葉に、おじゃるは絶望の表情を浮かべてたよ。
 因みに、おじゃるがウサギを倒し終える前に、他の連中はきっちりウサギを仕留めて戻って来たよ。
 荷車三台に息絶えた九匹のウサギが乗せられてた。

         **********

「ねえ、第一分隊長は人望がある者が選ばれるって?」

 おじゃるの言葉が信じられないので、おいらのすぐ横に浮かんでいるアネモネさんに尋ねてみたの。
 ピーマン王子の監視役としてずっと一緒に居たなら知っていると思って。

「はあ? ゴマスリーのお調子者に人望なんてある訳無いでしょう。
 あいつはヨイッショが上手だから、ピーマンに気に入られてただけよ。
 ピーマンの取り巻きはロクでも無い奴らが多かったけど。
 あいつはその中でも群を抜いてるわ。
 何の取り柄もない癖に口ばっかり上手でね。
 あいつを慕っている者などいる訳無いじゃない。」

 アネモネさんから返って来た答えは辛辣なものだった。
 おじゃるの奴、あからさまなおべっかばっかり言うものだから、仲間内でも疎まれていたらしい。
 それで今日、ハブにされたみたいなの。
 おいら、納得しちゃって「ですよね~」としか言葉が出て来なかったよ。 
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