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第二一章 またもや、頭の痛い連中を拾ったよ…
第743話 こいつ、サルにも劣るらしい…
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街道整備の現場実習にと、南部辺境にある現場事務所へピーマン王子達を連れて行ったんだ。
現場事務所で実習の目的を伝えると、所長は街道整備の拠点を近々移転する計画だと知らせてくれたの。
そして、その移転工事をピーマン王子達の現場実習にしようと所長は言ったんだ。
移転工事は土木工事も建築工事もあり、領地開拓のための研修としてはうってつけだってね。
所長の提案は渡りに船に思えたから、おいらに否は無かったよ。
連中をその日のうちに移転予定地へ連れて行ったのだけど、そこは周囲に民家の一軒も無い草原のど真ん中。
もちろん宿などある訳も無く、野宿が嫌なら一日で建物を造れと指示されていたよ。
そんな訳で、着いた早々連中は仮設建物を造ることになったんだ。
まあ、建物を一日で建てるとは言え、予め建材は加工されて『ほぞ』まで刻まれているから簡単に組み立てられるんだけどね。
資材置き場で図面に指定された番号の部材を探して、同じ記号の『ほぞ』を組み合わせるだけ。
後は、パネルの形に加工された壁を組んだ柱に固定していくだけ。
パネルになった壁には窓付のものや扉付きのものまであり、ホント、模型を組み立てるようなものだった。
拠点建設を指揮する三人の技官は、ピーマン王子達が部材を組む間に騎士達に指示して仮設建物を建てる土地を整地させてたよ。
今回連れてきた騎士は二十人。交替制で建設現場の警備とピーマン王子達の脱走・怠業を防止するための監視に連れて来たんだ。
今は、料理長が連中の監視をしてくれているので、騎士達には整地という力仕事をしてもらったの。
騎士達は全員レベル二十以上で、訓練も欠かして無いので、えらい速さで整地作業を進めてた。
指揮する技官達も、作業進捗の速さに驚いていたもの。
「よし、じゃあ、仮設建物を建て始めるぞ。
組み上がった部材を順番通りに持って来い。」
現場監督役の技官が指示すると、ピーマン王子の取り巻き達がエッさ、ホイさと組み上がった部材を運び始めたよ。
騎士の皆が整地した場所へ組み上がった部材を運んで、そこで部材同士を組み上げて建物を完成させるの。
タロウがサルでも出来ると言っていただけあって、作業は淀みなく進んだんだ。
そして、夕刻には簡素ではあるけど百人以上の人員が雨風を凌げる建物が完成したの。
流石に怠け者の連中でも、サルには負けてないみたいだったよ。
最後に、建物一画をパネルで仕切って厨房を造り、カマドや水瓶を設置して建設が完了したんだけど。
その頃には、慣れない作業でピーマン王子達は疲れ切った様子だったの。
全員、地面にお尻を付いて膝を抱えてた。
すると。
「おい、お前、ちんたら休んでいるんじゃねえぞ。
これから夕食の食材を取りに行くから付いて来い。
そっちのお前もだ。」
地面に座り込んだおじゃると他数人に向かって、料理長が指示を出したの。
「何故、麿がそんなことをしないとならないでおじゃる。
他の者達は休んでいるでおじゃるよ。」
料理長が指名したのは百人中十人ほど。
疲れているところに指名されたおじゃるは不機嫌そうだったよ。
ゴチン!
「バカ野郎! 口答えするんじゃねえ!
良いか。
これからの研修期間中、俺の指示に対する返答は『はい』だけだ。
逆らったら、ぶっ飛ばすからな。」
おじゃるの脳天に拳骨を落とした後に、そんなことを言った料理長。
もう、ぶっ飛ばしているって…。
「横暴でおじゃる!
どうして、麿達が選ばれたか説明になって無いでおじゃる。」
拳骨を落とされて涙目になったおじゃるは、懲りずにも抗議したんだ。
おいら、もう一発拳骨を落とされるんじゃないかと思ったんだけど…。
料理長は、意外にも笑いを浮かべて。
「ほう、そうか、知りたいか。
お前、仮設建物を建てる作業中、人目を盗んでサボってたじゃないか。
他の連中に比べて、体力が残っているだろう。
俺が今指名した連中は、全員、今日の作業中にサボっていた奴らだ。
こいつ等には罰として、今日から十日間食事当番をやってもらうぞ。」
どうやら、おじゃるの奴、誰も見てないと思ってサボっていたらしい。
鬼の料理長が監視していることに気付かなかったみたい。
しかし、おじゃるの奴、まさかサルにも出来る作業すら真面に出来ないとは…。
「うっ…。」
おじゃるの奴、仲間達の前で作業をサボっていたことを指摘されて言葉に詰まってた。
それから、気拙そうな顔で周囲の顔色を窺ってたよ。
そりゃそうだ、みんながせっせと慣れない仕事をしている時にこっそりサボってたことを暴露されたんだもの。
気拙い思いもするよね、普通の感性を持ち合わせていたら…。
「ゴマスリー、お前…。」
実際、ピーマン王子も白い目で見てるし。
「殿下、誤解でおじゃる。
麿はサボっていたんじゃないでおじゃる。
虚弱体質なので、多めに休憩が必要なのでおじゃる。」
主と仰ぐピーマン王子に対し、おじゃるは必死に弁明するんだけど。
そんなおじゃるを料理長は猛禽のような目で睨んで言ったよ。
「ほほう、虚弱体質だって。
それは好都合だな。
その体質、俺が叩き直してやるぜ。
これから十日間、日の出前に起きて朝食の準備だ。
一日、必死に働けば疲れて夜更かしなんて出来ねえし。
早寝早起き病知らずと言うだろう。
十日も規則正しい生活をすれば体質だって改善するぜ。」
おじゃるの虚弱体質は単なる不摂生と運動不足の言い訳だと気付いている様子だったの。
ここでの食事当番は食事の準備だけではないらしい。
早朝、日の出前に起床して朝食の準備をした後は、他の仲間と混じって建設作業に従事するそうで。
午後は夕方近くまで建設現場で作業して、他の人より二時間ほど早く切り上げるんだって。
それから食材に使う肉を狩りに行って、夕食の準備をするそうだよ。
これ、ちんたらやっていると、他の人達が作業を終えるまでに夕食を準備することが出来ず。
お腹を空かせた仲間達から恨みを買うハメになりかねないそうなんだ。
今回、料理長が考えた食事当番のタイムスケジュールはとてもタイトで、休む時間が無いの。
きっと、怠け者のおじゃるには苦行以外の何ものでもないね。
「そんな殺生な…。」
おじゃるは涙目で「なんとかしてくれ」と主であるピーマン王子に訴えるけど。
「ゴマスリー、諦めろ。身から出た錆だ。」
ピーマン王子は冷たく突き放していたよ。
「さて、言いたいことはそれだけか。
じゃあ、早速ウサギでも狩りに行くぞ。
若いのが百人も居るんだ、十頭は必要だな。
もたもたしてたら、日が暮れちまうぞ。」
おじゃるとピーマン王子の会話が一段落ついたと見るや、料理長はおじゃるの後襟を掴んで引き摺り始めたんだ。
指名された残りの九人も今日の仕事をサボっていたようで、肩身が狭そうに料理長に付いて行ったの。
「嫌でおじゃる! 勘弁して欲しいでおじゃる!」
料理長に引き摺られながらも、そんな泣き言を叫ぶおじゃる。
「あやつも懲りん男だ…。
流石に余ですら目が覚めたと言うのに…。」
そんな呟きを漏らしたピーマン王子は、遠い目をして引き摺られていくおじゃるを眺めてた。
情けないおじゃるの姿に、つい先日までの自分の姿を重ねていたのかも知れないね。
現場事務所で実習の目的を伝えると、所長は街道整備の拠点を近々移転する計画だと知らせてくれたの。
そして、その移転工事をピーマン王子達の現場実習にしようと所長は言ったんだ。
移転工事は土木工事も建築工事もあり、領地開拓のための研修としてはうってつけだってね。
所長の提案は渡りに船に思えたから、おいらに否は無かったよ。
連中をその日のうちに移転予定地へ連れて行ったのだけど、そこは周囲に民家の一軒も無い草原のど真ん中。
もちろん宿などある訳も無く、野宿が嫌なら一日で建物を造れと指示されていたよ。
そんな訳で、着いた早々連中は仮設建物を造ることになったんだ。
まあ、建物を一日で建てるとは言え、予め建材は加工されて『ほぞ』まで刻まれているから簡単に組み立てられるんだけどね。
資材置き場で図面に指定された番号の部材を探して、同じ記号の『ほぞ』を組み合わせるだけ。
後は、パネルの形に加工された壁を組んだ柱に固定していくだけ。
パネルになった壁には窓付のものや扉付きのものまであり、ホント、模型を組み立てるようなものだった。
拠点建設を指揮する三人の技官は、ピーマン王子達が部材を組む間に騎士達に指示して仮設建物を建てる土地を整地させてたよ。
今回連れてきた騎士は二十人。交替制で建設現場の警備とピーマン王子達の脱走・怠業を防止するための監視に連れて来たんだ。
今は、料理長が連中の監視をしてくれているので、騎士達には整地という力仕事をしてもらったの。
騎士達は全員レベル二十以上で、訓練も欠かして無いので、えらい速さで整地作業を進めてた。
指揮する技官達も、作業進捗の速さに驚いていたもの。
「よし、じゃあ、仮設建物を建て始めるぞ。
組み上がった部材を順番通りに持って来い。」
現場監督役の技官が指示すると、ピーマン王子の取り巻き達がエッさ、ホイさと組み上がった部材を運び始めたよ。
騎士の皆が整地した場所へ組み上がった部材を運んで、そこで部材同士を組み上げて建物を完成させるの。
タロウがサルでも出来ると言っていただけあって、作業は淀みなく進んだんだ。
そして、夕刻には簡素ではあるけど百人以上の人員が雨風を凌げる建物が完成したの。
流石に怠け者の連中でも、サルには負けてないみたいだったよ。
最後に、建物一画をパネルで仕切って厨房を造り、カマドや水瓶を設置して建設が完了したんだけど。
その頃には、慣れない作業でピーマン王子達は疲れ切った様子だったの。
全員、地面にお尻を付いて膝を抱えてた。
すると。
「おい、お前、ちんたら休んでいるんじゃねえぞ。
これから夕食の食材を取りに行くから付いて来い。
そっちのお前もだ。」
地面に座り込んだおじゃると他数人に向かって、料理長が指示を出したの。
「何故、麿がそんなことをしないとならないでおじゃる。
他の者達は休んでいるでおじゃるよ。」
料理長が指名したのは百人中十人ほど。
疲れているところに指名されたおじゃるは不機嫌そうだったよ。
ゴチン!
「バカ野郎! 口答えするんじゃねえ!
良いか。
これからの研修期間中、俺の指示に対する返答は『はい』だけだ。
逆らったら、ぶっ飛ばすからな。」
おじゃるの脳天に拳骨を落とした後に、そんなことを言った料理長。
もう、ぶっ飛ばしているって…。
「横暴でおじゃる!
どうして、麿達が選ばれたか説明になって無いでおじゃる。」
拳骨を落とされて涙目になったおじゃるは、懲りずにも抗議したんだ。
おいら、もう一発拳骨を落とされるんじゃないかと思ったんだけど…。
料理長は、意外にも笑いを浮かべて。
「ほう、そうか、知りたいか。
お前、仮設建物を建てる作業中、人目を盗んでサボってたじゃないか。
他の連中に比べて、体力が残っているだろう。
俺が今指名した連中は、全員、今日の作業中にサボっていた奴らだ。
こいつ等には罰として、今日から十日間食事当番をやってもらうぞ。」
どうやら、おじゃるの奴、誰も見てないと思ってサボっていたらしい。
鬼の料理長が監視していることに気付かなかったみたい。
しかし、おじゃるの奴、まさかサルにも出来る作業すら真面に出来ないとは…。
「うっ…。」
おじゃるの奴、仲間達の前で作業をサボっていたことを指摘されて言葉に詰まってた。
それから、気拙そうな顔で周囲の顔色を窺ってたよ。
そりゃそうだ、みんながせっせと慣れない仕事をしている時にこっそりサボってたことを暴露されたんだもの。
気拙い思いもするよね、普通の感性を持ち合わせていたら…。
「ゴマスリー、お前…。」
実際、ピーマン王子も白い目で見てるし。
「殿下、誤解でおじゃる。
麿はサボっていたんじゃないでおじゃる。
虚弱体質なので、多めに休憩が必要なのでおじゃる。」
主と仰ぐピーマン王子に対し、おじゃるは必死に弁明するんだけど。
そんなおじゃるを料理長は猛禽のような目で睨んで言ったよ。
「ほほう、虚弱体質だって。
それは好都合だな。
その体質、俺が叩き直してやるぜ。
これから十日間、日の出前に起きて朝食の準備だ。
一日、必死に働けば疲れて夜更かしなんて出来ねえし。
早寝早起き病知らずと言うだろう。
十日も規則正しい生活をすれば体質だって改善するぜ。」
おじゃるの虚弱体質は単なる不摂生と運動不足の言い訳だと気付いている様子だったの。
ここでの食事当番は食事の準備だけではないらしい。
早朝、日の出前に起床して朝食の準備をした後は、他の仲間と混じって建設作業に従事するそうで。
午後は夕方近くまで建設現場で作業して、他の人より二時間ほど早く切り上げるんだって。
それから食材に使う肉を狩りに行って、夕食の準備をするそうだよ。
これ、ちんたらやっていると、他の人達が作業を終えるまでに夕食を準備することが出来ず。
お腹を空かせた仲間達から恨みを買うハメになりかねないそうなんだ。
今回、料理長が考えた食事当番のタイムスケジュールはとてもタイトで、休む時間が無いの。
きっと、怠け者のおじゃるには苦行以外の何ものでもないね。
「そんな殺生な…。」
おじゃるは涙目で「なんとかしてくれ」と主であるピーマン王子に訴えるけど。
「ゴマスリー、諦めろ。身から出た錆だ。」
ピーマン王子は冷たく突き放していたよ。
「さて、言いたいことはそれだけか。
じゃあ、早速ウサギでも狩りに行くぞ。
若いのが百人も居るんだ、十頭は必要だな。
もたもたしてたら、日が暮れちまうぞ。」
おじゃるとピーマン王子の会話が一段落ついたと見るや、料理長はおじゃるの後襟を掴んで引き摺り始めたんだ。
指名された残りの九人も今日の仕事をサボっていたようで、肩身が狭そうに料理長に付いて行ったの。
「嫌でおじゃる! 勘弁して欲しいでおじゃる!」
料理長に引き摺られながらも、そんな泣き言を叫ぶおじゃる。
「あやつも懲りん男だ…。
流石に余ですら目が覚めたと言うのに…。」
そんな呟きを漏らしたピーマン王子は、遠い目をして引き摺られていくおじゃるを眺めてた。
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