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第二一章 またもや、頭の痛い連中を拾ったよ…
第719話 残念、秘められし力、見せて欲しかったのに…
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木々を薙ぎ倒して姿を現したベヒーモスの群れ。
増えすぎていたと言うアルトの言葉通り、現れたのは三十頭以上に及ぶ大きな群れだったの。
それを迎え撃つのはピーマン王子麾下の精鋭(自称)憂国騎士団。
でも連中、全員が恐怖のあまり失禁して気を失っていたんだ。
逃げ出すことすらできないとは流石に予想外だったよ。
その様子を楽し気に見ていたアルトは、ピーマン王子の後ろに回り込むと。
「それじゃ、あんたの出番ね。
気絶した仲間を守るためにも、最前線に立って戦いなさい。
秘められし力も発揮のし甲斐があるでしょう。」
そう告げるやいなや、襟を掴んでベヒーモスの正面に飛んで行ったよ。
「おい、やめろ! 余は指揮官だぞ!
指揮官は安全な所から指示を飛ばすのが仕事なのだ!
直接戦闘するのは余の役目ではない!」
いや、それじゃ、秘められし力を発揮する舞台が無いじゃない。
「つべこべ言わずに逝ってらっしゃい。
あんたには秘められし力があるんでしょう。
仲間のピンチよ。
今覚醒しないで、いつ覚醒するの。」
ピーマン王子の必死の抵抗を無視して、アルトは王子を最前線に降ろしたの。
『逝』ってらっしゃいって、それ絶対字が違っているよね。
アルトにハッパを掛けられてやる気になったのか、気丈にもピーマン王子はベヒーモスの前で剣を構えたんだ。
自分には秘められた力があるとマジで信じているみたいで。
「ふん、ならば、王族の真の力見せてやろうではないか。
さあ、目覚めよ! 王族の血に秘められし真の力!」
ピーマン王子ったら、そんな恥ずかしい言葉を大声で叫んでた。
全然様にならない構えで剣を持ち、恐怖で小刻みに震えているけど。
ベヒーモスを目の前にして気絶しなかっただけでも、憂国騎士団(笑)の連中よりはマシかな。
「出でよ!真の力!
おい、出ろ、こら。
今覚醒しないと死んでしまうではないか!」
迫りくるベヒーモスに焦りながらも、剣を振ってそんなことを繰り返し叫ぶピーマン王子。
だけど、現実は残酷で…。
「そんな馬鹿な…、特別な力など無いではないか…。
これは拙い、余はまだ死にとうないわ。
誰か余を助けるのだ!
助けてくれたら、何でも言うことを聞く!
望みのままの褒美を取らすから、早く助けてくれ!」
やっとチューニ病を克服したのか、ピーマン王子は命乞いを始めたの。
「何でも言うことを聞くってその言葉、嘘じゃないよね。
誓うのなら助けてあげても良いよ。」
それなら、おいら、こいつらにやらせたいことがあるんだ。
「誓う、何でも言うことを聞くと誓う。
誓うから助けてくれ!」
やっぱり迂闊だね、『何でも言うことを聞く』なんて安易に連発する言葉じゃないのに。
**********
ピーマン王子の言質も取ったし、そろそろ真面目に狩らないとヤバそうだしで。
「それじゃ、みんな、行くよ!
いつも通り、狩った獲物は自分の物だよ。
『生命の欠片』もお肉もね。」
おいらは『山の民』が作った業物の剣を取り出すと、みんなに号令を掛けたんだ。
「ラッキー!あれ、レベル五十以上ですよね!
頑張っちゃおう!」
おいらに続いて、レベル狙いでタルトが飛び出すと。
「あっ、タルト、隊長の俺を差し置いて抜け駆けか!
俺の獲物も残しておくんだぞ!」
一歩遅れて、戦闘狂の近衛隊長ジェレ姉ちゃんが走り出したよ。
それに続いて残りのみんなも駆け出して…。
「おいら、一番乗り! ヨイショ!」
取り敢えずおいらは、ピーマン王子の目前に迫っている先頭のベヒーモスの首に一撃入れたんだ。
『クリティカル発生率百%』のスキルはいつも通り良い仕事をして…。
ドスン!
大きな音を立てながらピーマン王子の目と鼻の先に倒れ伏したの。
「一撃って…。
お前、バケモノか!
そのちんまい体で、こんなデカい魔物を一撃で屠れる訳なかろうが。」
驚愕した表情のピーマン王子はそんなことを言ってたよ。
その時のピーマン王子は、腰を抜かして地面に座り込んでいた。
か弱い少女に向かってバケモノとは、ホント、失礼な奴だね。
「えっ、だって、毎日、トレント狩りをして鍛えているもの。
おいら、もうすぐ十四歳だけど。
八つの時から欠かさずにトレントを狩っているから。
ニイチャン、幾らレベルが高くても鍛錬しないと意味ないよ。」
などと、おいらが悠長にピーマン王子に返事をしている間にも。
「よし、ここでマロンに良いところを見せないとな。
父親として面目が立たないぜ。」
なんて言いながら、父ちゃんが片手で大きな戦斧を振ってベヒーモスを屠ってるし。
「なあ、アルト姐さん、ベヒーモスって美味いのか?
俺、食える肉を確保するためにマロンに付き合ったんだが。」
「つべこべ言わずに狩りなさい! ベヒーモスは沢山居るのよ。
安心して狩れば良いわ。
私は食べたこと無いけど、噂では酔牛より美味しいらしいわよ。」
「それじゃ、頑張らないとな。
こいつ一匹狩れば、酔牛十匹分くらいの肉が取れそうだし。」
アルトに肉の味を尋ねつつ、タロウがベヒーモスを狩っていたよ。
おいらもアルトの言葉を聞いて、慌てて追加のベヒーモスを狩りに走ったんだ。
酔牛より美味しいお肉なら、沢山確保して周りにお裾分けしたいからね。
レクチェ姉ちゃんにも一頭くらい分けてあげて、滞在中にもう一度くらい肉祭りをしても良いし。
みんな、それぞれに狩りに旨味を感じているのか、嬉々としてベヒーモスを狩ってたよ。
そして、小一時間が経って…。
「『生命の欠片』は狩りの最中に回収しましたが…。
流石にベヒーモス本体は我々では如何ともしがたいので。
マロン陛下、いつも通り預かって頂けませんか。」
仕留めたおびただしい数のベヒーモスを前に、ジェレ姉ちゃんが代表して願い出てきたの。
ちなみにいつの間にかアルトの積載庫から降りていたようで、マリアさんがタロウの狩ったベヒーモスを回収してたよ。
父ちゃんが倒した分はアルトが引き受けてくれたみたい。
結局、倒したベヒーモスの数は五十頭に及んでた。
こんな魔物がスタンピードを起した日には大惨事になっていたよ。
上手い具合にベヒーモスを間引かせてくれたアルトに感謝しないとね。
**********
「やったね!
これだけレベルが上がれば。
どんなところへでもマロン陛下のお供が出来るね。」
「そうだね!
何時までも護衛の私達が、マロン陛下に護ってもらう訳にはいかないものね。」
なんて言いながら、タルトとトルテがハイタッチを交わしていたよ。
その傍らでは…。
「マリア姐さん、『生命の欠片』の保管頼んだぜ。
帰ったら嫁さん、みんなで分けるからな。
それに将来子供が出来た時のために蓄えてもおきたいから。
ネコババなんてしないでくれよ。」
「分かっているわよ。
私がダーリンの好意を無下にする訳無いでしょう
私達や将来できる赤ちゃんのことまで考えてくれてるんだもん。
責任もって預かっておくわ。」
タロウとマリアさんがベヒーモスから得た『生命の欠片』について話してた。
タロウ一人で五、六頭のベヒーモスを屠ってたはずだけど。
『生命の欠片』は取り込まないで、マリアさんの『積載庫』に保管しているみたいだね。
沢山いるお嫁さんに幾らか分けて、残りは将来赤ちゃんに分け与えるために残しておくんだって。
タロウったら、この数年で見違えるほど立派になって…。
出会った頃は、重度のチューニ病患者だったとはとても思えないね。
一見救いようが無いように見えるけど、ピーマン王子とその取り巻きのなんちゃって騎士達もあんな風に更生出来るかな?
そんなことを考えながら、狩りの成果を喜ぶみんなを眺めていると。
「お前ら、いったい何者でおじゃる!
貴族の麿ですら敵わぬ狂暴な魔物でおじゃるのに。
どうして、町娘風情がいとも容易く屠れるでおじゃるか。
そんな馬鹿げたこと、有り得ないでおじゃる。」
いつの間に目を覚ましたのか、おじゃるがそんな勝手なことを喚き立てたの。
いや、剣の一つも交えることなく気絶しておいて、『敵わぬ』も無いでしょう。
それは戦いを挑んで勝てなかった時に使う言葉だよ。
「あれ、目を覚ましたんだ?」
「私がこいつらの頭から冷や水を掛けてやったのよ。
マロンちゃん達がベヒーモスを屠るところを見せて。
自分達が如何に雑魚かを思い知るようにね。」
おいらの隣に浮かんでいたアネモネさんが教えてくれたよ。
こいつ等が気絶している間にベヒーモスが討伐されちゃうと、また世迷言を言いそうだから起こしたんだって。
無意識の間に秘められた力が覚醒して、いつの間にか自分が倒しただなんて妄想を言い出しそうだって。
そっか、こいつ等ってそこまで重症だったんだ。
こいつら、おいら達がベヒーモスを倒してのを見ていたのにそんな口を利くんだね。
「で、最初にいう言葉がそれなの?
ニイチャンはおいら達に助けてもらったんだよ。
有り難うって頭を下げるのが先じゃない?」
「黙るでおじゃる小娘!
町娘風情に下げる頭なぞ、麿は持ち合わせてないでおじゃる。
だいたい、何故に麿が頭を下げる必要があるでおじゃるか。
貴族の身に危機が迫った時に、平民が身を挺して護るのは当然の義務でおじゃる。」
おじゃるはそれまでの経緯を知らないから、いまだにおいらを町娘だと決め付けているみたい。
もし、こいつの言うことが本当なら、ウニアール国との付き合い方を考え直す必要があると思い。
おいらはアネモネさんに尋ねることにしたの。
「ウニアール国じゃ、平民にそんな義務を課しているの?」
「そんな訳ないじゃない。
むしろ伝統的な貴族の義務は真逆よ。
有事の際、貴族は領地や領民を身を挺して守る義務があるの。
こんなお馬鹿なことを言ってるのはこいつ等くらいよ。」
どうやら、こいつ等が極め付けの異端分子らしいね。
安心したよ、有事の際に平民を盾にするような国とは付き合いたくないからね。
増えすぎていたと言うアルトの言葉通り、現れたのは三十頭以上に及ぶ大きな群れだったの。
それを迎え撃つのはピーマン王子麾下の精鋭(自称)憂国騎士団。
でも連中、全員が恐怖のあまり失禁して気を失っていたんだ。
逃げ出すことすらできないとは流石に予想外だったよ。
その様子を楽し気に見ていたアルトは、ピーマン王子の後ろに回り込むと。
「それじゃ、あんたの出番ね。
気絶した仲間を守るためにも、最前線に立って戦いなさい。
秘められし力も発揮のし甲斐があるでしょう。」
そう告げるやいなや、襟を掴んでベヒーモスの正面に飛んで行ったよ。
「おい、やめろ! 余は指揮官だぞ!
指揮官は安全な所から指示を飛ばすのが仕事なのだ!
直接戦闘するのは余の役目ではない!」
いや、それじゃ、秘められし力を発揮する舞台が無いじゃない。
「つべこべ言わずに逝ってらっしゃい。
あんたには秘められし力があるんでしょう。
仲間のピンチよ。
今覚醒しないで、いつ覚醒するの。」
ピーマン王子の必死の抵抗を無視して、アルトは王子を最前線に降ろしたの。
『逝』ってらっしゃいって、それ絶対字が違っているよね。
アルトにハッパを掛けられてやる気になったのか、気丈にもピーマン王子はベヒーモスの前で剣を構えたんだ。
自分には秘められた力があるとマジで信じているみたいで。
「ふん、ならば、王族の真の力見せてやろうではないか。
さあ、目覚めよ! 王族の血に秘められし真の力!」
ピーマン王子ったら、そんな恥ずかしい言葉を大声で叫んでた。
全然様にならない構えで剣を持ち、恐怖で小刻みに震えているけど。
ベヒーモスを目の前にして気絶しなかっただけでも、憂国騎士団(笑)の連中よりはマシかな。
「出でよ!真の力!
おい、出ろ、こら。
今覚醒しないと死んでしまうではないか!」
迫りくるベヒーモスに焦りながらも、剣を振ってそんなことを繰り返し叫ぶピーマン王子。
だけど、現実は残酷で…。
「そんな馬鹿な…、特別な力など無いではないか…。
これは拙い、余はまだ死にとうないわ。
誰か余を助けるのだ!
助けてくれたら、何でも言うことを聞く!
望みのままの褒美を取らすから、早く助けてくれ!」
やっとチューニ病を克服したのか、ピーマン王子は命乞いを始めたの。
「何でも言うことを聞くってその言葉、嘘じゃないよね。
誓うのなら助けてあげても良いよ。」
それなら、おいら、こいつらにやらせたいことがあるんだ。
「誓う、何でも言うことを聞くと誓う。
誓うから助けてくれ!」
やっぱり迂闊だね、『何でも言うことを聞く』なんて安易に連発する言葉じゃないのに。
**********
ピーマン王子の言質も取ったし、そろそろ真面目に狩らないとヤバそうだしで。
「それじゃ、みんな、行くよ!
いつも通り、狩った獲物は自分の物だよ。
『生命の欠片』もお肉もね。」
おいらは『山の民』が作った業物の剣を取り出すと、みんなに号令を掛けたんだ。
「ラッキー!あれ、レベル五十以上ですよね!
頑張っちゃおう!」
おいらに続いて、レベル狙いでタルトが飛び出すと。
「あっ、タルト、隊長の俺を差し置いて抜け駆けか!
俺の獲物も残しておくんだぞ!」
一歩遅れて、戦闘狂の近衛隊長ジェレ姉ちゃんが走り出したよ。
それに続いて残りのみんなも駆け出して…。
「おいら、一番乗り! ヨイショ!」
取り敢えずおいらは、ピーマン王子の目前に迫っている先頭のベヒーモスの首に一撃入れたんだ。
『クリティカル発生率百%』のスキルはいつも通り良い仕事をして…。
ドスン!
大きな音を立てながらピーマン王子の目と鼻の先に倒れ伏したの。
「一撃って…。
お前、バケモノか!
そのちんまい体で、こんなデカい魔物を一撃で屠れる訳なかろうが。」
驚愕した表情のピーマン王子はそんなことを言ってたよ。
その時のピーマン王子は、腰を抜かして地面に座り込んでいた。
か弱い少女に向かってバケモノとは、ホント、失礼な奴だね。
「えっ、だって、毎日、トレント狩りをして鍛えているもの。
おいら、もうすぐ十四歳だけど。
八つの時から欠かさずにトレントを狩っているから。
ニイチャン、幾らレベルが高くても鍛錬しないと意味ないよ。」
などと、おいらが悠長にピーマン王子に返事をしている間にも。
「よし、ここでマロンに良いところを見せないとな。
父親として面目が立たないぜ。」
なんて言いながら、父ちゃんが片手で大きな戦斧を振ってベヒーモスを屠ってるし。
「なあ、アルト姐さん、ベヒーモスって美味いのか?
俺、食える肉を確保するためにマロンに付き合ったんだが。」
「つべこべ言わずに狩りなさい! ベヒーモスは沢山居るのよ。
安心して狩れば良いわ。
私は食べたこと無いけど、噂では酔牛より美味しいらしいわよ。」
「それじゃ、頑張らないとな。
こいつ一匹狩れば、酔牛十匹分くらいの肉が取れそうだし。」
アルトに肉の味を尋ねつつ、タロウがベヒーモスを狩っていたよ。
おいらもアルトの言葉を聞いて、慌てて追加のベヒーモスを狩りに走ったんだ。
酔牛より美味しいお肉なら、沢山確保して周りにお裾分けしたいからね。
レクチェ姉ちゃんにも一頭くらい分けてあげて、滞在中にもう一度くらい肉祭りをしても良いし。
みんな、それぞれに狩りに旨味を感じているのか、嬉々としてベヒーモスを狩ってたよ。
そして、小一時間が経って…。
「『生命の欠片』は狩りの最中に回収しましたが…。
流石にベヒーモス本体は我々では如何ともしがたいので。
マロン陛下、いつも通り預かって頂けませんか。」
仕留めたおびただしい数のベヒーモスを前に、ジェレ姉ちゃんが代表して願い出てきたの。
ちなみにいつの間にかアルトの積載庫から降りていたようで、マリアさんがタロウの狩ったベヒーモスを回収してたよ。
父ちゃんが倒した分はアルトが引き受けてくれたみたい。
結局、倒したベヒーモスの数は五十頭に及んでた。
こんな魔物がスタンピードを起した日には大惨事になっていたよ。
上手い具合にベヒーモスを間引かせてくれたアルトに感謝しないとね。
**********
「やったね!
これだけレベルが上がれば。
どんなところへでもマロン陛下のお供が出来るね。」
「そうだね!
何時までも護衛の私達が、マロン陛下に護ってもらう訳にはいかないものね。」
なんて言いながら、タルトとトルテがハイタッチを交わしていたよ。
その傍らでは…。
「マリア姐さん、『生命の欠片』の保管頼んだぜ。
帰ったら嫁さん、みんなで分けるからな。
それに将来子供が出来た時のために蓄えてもおきたいから。
ネコババなんてしないでくれよ。」
「分かっているわよ。
私がダーリンの好意を無下にする訳無いでしょう
私達や将来できる赤ちゃんのことまで考えてくれてるんだもん。
責任もって預かっておくわ。」
タロウとマリアさんがベヒーモスから得た『生命の欠片』について話してた。
タロウ一人で五、六頭のベヒーモスを屠ってたはずだけど。
『生命の欠片』は取り込まないで、マリアさんの『積載庫』に保管しているみたいだね。
沢山いるお嫁さんに幾らか分けて、残りは将来赤ちゃんに分け与えるために残しておくんだって。
タロウったら、この数年で見違えるほど立派になって…。
出会った頃は、重度のチューニ病患者だったとはとても思えないね。
一見救いようが無いように見えるけど、ピーマン王子とその取り巻きのなんちゃって騎士達もあんな風に更生出来るかな?
そんなことを考えながら、狩りの成果を喜ぶみんなを眺めていると。
「お前ら、いったい何者でおじゃる!
貴族の麿ですら敵わぬ狂暴な魔物でおじゃるのに。
どうして、町娘風情がいとも容易く屠れるでおじゃるか。
そんな馬鹿げたこと、有り得ないでおじゃる。」
いつの間に目を覚ましたのか、おじゃるがそんな勝手なことを喚き立てたの。
いや、剣の一つも交えることなく気絶しておいて、『敵わぬ』も無いでしょう。
それは戦いを挑んで勝てなかった時に使う言葉だよ。
「あれ、目を覚ましたんだ?」
「私がこいつらの頭から冷や水を掛けてやったのよ。
マロンちゃん達がベヒーモスを屠るところを見せて。
自分達が如何に雑魚かを思い知るようにね。」
おいらの隣に浮かんでいたアネモネさんが教えてくれたよ。
こいつ等が気絶している間にベヒーモスが討伐されちゃうと、また世迷言を言いそうだから起こしたんだって。
無意識の間に秘められた力が覚醒して、いつの間にか自分が倒しただなんて妄想を言い出しそうだって。
そっか、こいつ等ってそこまで重症だったんだ。
こいつら、おいら達がベヒーモスを倒してのを見ていたのにそんな口を利くんだね。
「で、最初にいう言葉がそれなの?
ニイチャンはおいら達に助けてもらったんだよ。
有り難うって頭を下げるのが先じゃない?」
「黙るでおじゃる小娘!
町娘風情に下げる頭なぞ、麿は持ち合わせてないでおじゃる。
だいたい、何故に麿が頭を下げる必要があるでおじゃるか。
貴族の身に危機が迫った時に、平民が身を挺して護るのは当然の義務でおじゃる。」
おじゃるはそれまでの経緯を知らないから、いまだにおいらを町娘だと決め付けているみたい。
もし、こいつの言うことが本当なら、ウニアール国との付き合い方を考え直す必要があると思い。
おいらはアネモネさんに尋ねることにしたの。
「ウニアール国じゃ、平民にそんな義務を課しているの?」
「そんな訳ないじゃない。
むしろ伝統的な貴族の義務は真逆よ。
有事の際、貴族は領地や領民を身を挺して守る義務があるの。
こんなお馬鹿なことを言ってるのはこいつ等くらいよ。」
どうやら、こいつ等が極め付けの異端分子らしいね。
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