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アイイロモンペ

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第二一章 またもや、頭の痛い連中を拾ったよ…

第718話 やっぱりこいつら、なんちゃって騎士団だった…

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 重度のチューニ病を患っているピーマン王子。
 まだ自分が特別な力を秘めているなんて寝言をほざいてた。
 ウサギやモモンガみたいな雑魚魔物に良いように蹂躙されたくせにね。
 おいら、その目を覚まさせてあげようかと思い、厄災級の魔物をけしかけてみることにしたんだ。
 おいらの意図を酌んだアルトは説明するまでもなく、魔物の領域の更に奥へ飛んで行ったよ。

 そのことをピーマン王子に伝えると、慌てて手下の騎士達に戦闘準備を整えるように指示してた。
 最初、おいらが出して上げた武器を手にすることに難色を示していた憂国騎士団の連中も渋々武器を選び始めたよ。

 ただ、連中、まだ事情が呑み込めていない様子で…。

「そう慌てへんでもええやろう。
 そうそう物騒な魔物なんて現れはしまへんよ。
 貴族たるもの常に優雅に行動しませな。
 あたふたするのんは見しんどいどすえ。」

 なんて言いながら、ちんたらと武器を漁っていて。

「なんや、武骨な剣やな。
 優雅さの欠片もあらへんとちがうか。
 うちは、やっぱし、うちの剣を使うとしよう。」

 結局、おいらが用意した剣がお気に召さない様子で、自分の腰に下げた儀礼用の宝剣で戦うなんて輩がいたよ。

 また一方では、こんな奴も…。

「まあ、まあ、殿下のご下命でおじゃる。
 ここは用心して戦う準備をしておくでおじゃる。
 しかし、どれもこれもほんに、武骨な剣でおじゃる。
 重くて持ち上がらないでおじゃるよ。
 おい、そこな娘、も少し軽い剣は無いでおじゃるか?」

 声を掛けられて、おいら、持てないような大剣を出した覚えは無いのだけどと思いながら振り向くと。
 まだ幼年の子息に初歩の練習用として与えるために用意したと思しき剣だった。
 貴族の武器庫から奪って来た剣だからそれなりの業物だと思うけど。
 重さとしては、冒険者研修を終えたばかりの女性冒険者がウサギ狩りに使うような最軽量の剣なの。

 こいつ、どんだけ体力が無いんだよ…。

「おじゃるのニイチャン、それ一番軽い剣。
 それも振り回せないなら、魔物と戦うのは無理だと思うよ。
 素直に王命に従い辺境の開拓をすると誓うならリタイアしても良いよ。」

 どう考えても足手まとい以外の何ものでも無いので、親切心で勧めてあげたんだけど。

「ええい、無知蒙昧な町娘が無礼でおじゃるぞ。
 愚民共には知らされていないことでおじゃるが。
 麿まろには十五の誕生日に王から贈られた特別な力があるでおじゃる。
 更に麿には秘められし力を持つ貴族の血が流れているでおじゃる。
 魔物ごときに後れを取ることはないでおじゃる。」

 いやいや、思いっ切りウサギに後れを取っているし…。
 てか…。

「王から贈られた特別な力?」

 おいらの前に浮かんでいるアネモネさんに尋ねると。

「ああ、ウニアール国では十五歳で成人とされていてね。
 十五歳を迎えた全ての貴族の子供に、国王からお祝いがあるの。
 レベル十に相当する『生命の欠片』なんだけどね。
 貴族の義務として、領内の魔物退治や開拓を行う必要があるから。
 その一助として贈っている訳だけど。
 近頃はそれを貴族の特権と勘違いするのおバカな子供が居るのよ。」

 ウニアール国では魔物退治や開拓作業を率先して行うことが貴族の美徳とされており。
 それを円滑に遂行できるようにと、国王が貴族の子供にレベルを分け与えているそうなの。
 建国からの伝統らしいけど、最近は『生命の欠片』を貰うだけ貰って貴族の義務を果たさないドラ息子も増えてるらしい。
 目の前の連中が典型で、そんな輩はえてして『図書館の試練』を突破できないそうなんだ。

 今、ウニアール国の宮廷ではその慣例を見直している最中なんだって。
 十五歳までに図書館の試練を二つ突破することを、『生命の欠片』下賜の条件とする案が有力らしいよ。

「ふーん、レベル十ね…。
 それで、ウサギに蹂躙されるなんてよっぽどだね。」

 ウサギならおいらの国の資格取得者ならレベルゼロの女性冒険者でも狩れるのに。

「まあ、見ての通りブヨブヨの体で、剣なんてロクに振ったことが無いからね。
 レベルなんて、鍛錬しなければ宝の持ち腐れだってことすら理解できない残念な連中なの。」

 そう答えて、アネモネさんはため息を吐いていたよ。

        **********

 それでも何とか、憂国騎士団の面々が剣を選び終えると。

「良いか、皆の者、日頃の鍛錬の成果を見せてくれようぞ。
 イメージ通りに剣を振れば、魔物なんぞに後れを取る訳ないからな。
 とは言え、くれぐれも油断禁物だぞ。
 間違っても先日のような無様な姿は晒すでないぞ。」

 ピーマン王子は連中にハッパを掛けてたけど。
 イメージトレーニングを日頃の鍛錬とか言われてもね。

「殿下の仰せの通りでおじゃる。
 この前は不意を突かれて混乱したでおじゃる。
 今こそ、貴族の血が持つ力を解き放って見せるでおじゃる。
 下等な魔物など、鎧袖一触でおじゃるよ。」

「おお、良く言ったぞ、ゴマスリー。
 そちの働き、余は期待しておるぞ。」

「ご期待にお応えするでおじゃる。
 大物の首を取って王都へ凱旋するでおじゃる。」

 どうやら、おじゃるのニイチャンがピーマン王子の腹心、ゴマスリー家のバカ息子らしい。
 駆け出しの女性冒険者でも易々と振る剣を重そうに引き摺りながら、気勢を上げていたよ。

 そうこうする間に、森の奥から樹木をなぎ倒す音とドドドと言う突進音が聞こえだし…。

 やがて…。

「マロン、お待たせ! ちょうど手頃なのが群れてたわよ。
 少し増えすぎてるみたいだから、こいつらに間引いてもらいましょう。」

 魔物に先んじて森から飛び出して来たアルトが告げたんだ。

 アルトに挑発されて怒っているのだろう、目の前の木々を薙ぎ倒して目を血走らせて魔物の一団が姿を現したよ。
 一頭一頭が小山かと見紛う巨体の魔物、それが目に入っただけで優に三十頭はいるの。
 その魔物は…。

「皆の者、戦闘準備、一頭たりとも打ち漏らすでないぞ!
 あれだけ巨大な魔物なら、さぞかし高レベルであろう。
 アレを討伐して、憂国騎士団の名を知らしめるのだ!」

 憂国騎士団約百人の最後尾で、威勢の良い掛け声をかけたピーマン王子。
 騎士団の面々は集中しているのか、剣を構えたまま王子の声に応える者は誰一人としていなかったよ。

「なあ、あれベヒーモスだよな。
 俺がアルト様に連れられて討伐に行った時は二頭しかいなかったが。
 あれ、軽く見積もっても三十頭以上いるぞ。
 あれって最低でもレベル五十はあるんじゃなかったか。」

 父ちゃんがおいらの隣に来て、そんなことを言ってたよ。
 そう、アルトが魔物の領域奥深くから引っ張ってきたのはワイバーン以上の大物ベヒーモス。
 サイのような姿で小山ほどの大きさがあり、その突進を食らったら石造りの堅固な建物ですら一溜りもないって魔獣。
 その突進を受ければ城壁など意味をなさないほど頑強なうえ、獰猛な性質でまさに厄災級の魔物なんだ。

 で、驚いたことに憂国騎士団の連中、誰一人として逃げ出さなかったんだ。
 おいらの予想では、魔物が姿を現した途端、蜘蛛の子を散らすように逃げ出すと思ってた。

「ニイチャン、良かったね。
 厄災級の魔物の中でも、極め付けの魔物が出てきて。
 一頭でも町を壊滅できる力を持っているし。
 秘められし力を開放するには格好の標的でしょう。」

「煩い、黙れ小娘。
 言われんでも分かっとるわ。
 皆の者、掛れ!」

 おいらの嫌味に憤慨したピーマン王子は、ベヒーモスに対して応戦するよう命じたんだけど…。
 誰一人として動かないの。 もしかして、恐怖で足がすくんで動けないのかなと思っていると。

「なあ、マロン。あいつら恐怖で気を失っているんじゃないか?
 よく見ると連中の足元に水溜りが出来ているぜ。」

 タロウがおいらに耳打ちしたの。
 確かに、皆が皆、足元に小さな水溜りを作っていたよ。バッチイな…。

「あら、ホント、口ほどにも無い連中ね。
 魔物を見た途端に気絶したみたいだわ。」

 タロウの言葉を耳にしたアネモネさんが憂国騎士団の連中の様子を見に行ったんだ。
 足がすくんで動けないどころか、あの時点で既に気絶していたらしい。

 憂国騎士団だなんてちゃんちゃら可笑しいね。
 たいそうな名前を付けたけど、やっぱりなんちゃって騎士団じゃない…。
 
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