ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第二十章 王都の民の憩いの場を造ったよ

第690話 シフォン姉ちゃんが引き受けてくれるって… 

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 『トー横』の一斉摘発を行った翌日から、時計塔の横の路地両端の入り口には騎士を立てることにしたよ。
 なるべく強面の騎士を担当に充てるよう、騎士団のトシゾー団長に指示しておいた。

 それと、場所を替えて『パパ活』をする娘さん達が出て来る心配が残るもんだから。
 ノノウ一族に命じて王都にそんな場所が出来ないように見張るよう指示しておいたんだ。
 
 ウレシノとスルガの父ちゃんが、『心のオアシス』を奪うなんて酷いって愚痴を零してたけど。
 二人共、奥さんを呼び出して引き渡したら手酷くとっちめられてた。
 しばらく、お小遣い無しだって。

 そして、…。

「任せてチョ、ノノウ一族の名誉挽回して見せますって。
 オヤジの癖して小ギャルにモテたいなんて幻想抱いてキモいよね~。
 マロン陛下に幻滅されないように、俺っち、頑張っちゃうよ。」

 ウレシノの従兄チランがチャラい口調で言ってたけど。
 その言葉通りチランは大活躍だったよ。
 騎士を使って夜の『トー横』を事実上封鎖したら、『パパ活』娘達は場所を移して同じことを始めたの。
 チランはそれを素早く察知すると騎士団と連携して、『パパ活』娘達を一網打尽にしていったの。

「チラン兄いあにいは、王都の若い娘の間に情報網を築き上げてるんです。
 あんなチャラい男が尻軽娘達の好みに合うらしく、兄いは相当モテるんですよ。
 うちのキモ親父みたいに、お金で釣らなくても幾らでも寄って来ますから。
 娘さん達から色々な情報を吸い上げるのはお手の物です。」

 ウレシノはあんなチャラ男の何処が良いのか理解できないと言いつつ、チランが成果を上げている理由を教えてくれたの。
 それを聞いたタロウは、「チッ、ここでも『ただしイケメンに限る』かよ。」ってやっかんでいたけど。
 チランと騎士団が連携して動いたおかげで、一月も過ぎる頃には王都で表立って『パパ活』をする娘さんは姿を消したよ。

       **********

 この間、保護(捕縛?)した『パパ活』娘達だけど、その数百人弱。
 こんなに沢山の娘さん達が決まった住居を持たず、見知らぬおじさんに夜毎よごと一夜の宿を頼っていたって事実に驚いたよ。

「凄いね。よくもまあ、毎晩親切な『パパ』を見つけられたもんだよ。
 『パパ』になったおじさんって、宿だけじゃなくて食事も提供してくれるんでしょう。
 お小遣いも貰えるって言ってたし…。
 人の善意って捨てたもんじゃないね。」

「陛下、それ、真面目に言ってます?
 スケベ親父共に善意なんてある訳ないじゃないですか。
 あるのは下心だけですよ。
 だいたい、法に触れることをしてるからあの娘達を捕らえたのでしょう。」

 おいらの言葉を聞いて、ウレシノがジト目で睨んできたよ。
 うん、おいら、実はイマイチ理解してないんだよね。『パパ活』娘達がどんな罪を犯していたのか。
 漠然と分かっているのは、『パパ』は善意からでは無く、何がしかの見返りを求めて宿の提供をしたこと。
 そして、その見返りが法に抵触しているらしいってことくらいしか分からないんだ。

 まあ、それは追々ウレシノが教えてくれるそうで…。
 当面の問題は、捕えた『パパ活』娘達をどうするかだよ。
 最初の九人と同じように、色々と仕事を紹介しようとしたんだけど誰も真面な仕事をしようとしないんだ。
 皆が皆、ひまわり会の経営する風呂屋で働きたいなんて言うの。

 仕方ないから、空いている騎士団の宿舎を臨時の収容所にして、そこから風呂屋の研修に通わせたよ。
 普段なら、風呂屋での泡姫を志望するお姉さんは、タロウの屋敷の泊まり込みで研修を受けるんだけど。
 タロウの屋敷に、百人弱の娘さんを受け入れるだけの部屋は無いからね。

 そして、順繰りに研修に送り出してからしばらくすると、目の下に青黒いクマを作ったタロウが報告にやって来たよ。

「預かった娘の中で、シフォンの研修に合格したのは五人だけだったぜ。
 後の娘達はどうするつもりだ。
 一日に何人ものお客を相手するのは嫌だとか、時間を拘束されるのは嫌だとか。
 果ては、ベッドの上に寝てれば、お客が勝手に終わって帰るだろうなんて…。
 根っから世の中を舐めているとしか思えんことを言ってる奴らばかりだぞ。」

 百人弱の中で合格者が五人って、ほぼ全滅だよね。
 タロウの説明では、ほどんの娘さんがシフォン姉ちゃんの指導について行かなかったらしい。
 そもそも、娘さん達は『風呂屋』の仕事を舐めて掛かっていたようで。
 「何でお客さんにそんなサービスをしないといけないのか。」と不満を言って投げ出しちゃうみたい。

 すると、何故か今日に限ってタロウについて来たシフォン姉ちゃんが言ったの。

「あの達のことだけど、私に任せてもらえないかな?
 あの娘達を見ていると他人事とは思えないんだもん。
 タロウ君と出会う前の自分を見ているみたいで。
 少しでもあの娘達が自立できるようにお手伝いしたいの。」

 確かに、シフォン姉ちゃん、『パパ活』と『美人局つつもたせ』で生活してたらしいからね。

「まあ、シフォン姉ちゃんに考えがあるのなら任せてもかまわないかな。
 ダメでも元々だしね。」

 取り敢えず、手を挙げてくれたシフォン姉ちゃんに任せてみることにしたよ。
 シフォン姉ちゃんでダメだったら幌馬車でも仕立てて親元に送り返すよ。
 脱走防止のために騎士に護送させて、一人一人実家まで送りつけるの。
 引き渡す時に罪状を記した手紙でも渡せば、親兄弟がお灸を据えてくれるだろうからね。

「有り難う、マロンちゃん。
 ウレシノさん、ちょっと良い?
 色々と教えてもらいたいことがあるんだけど。」

 おいらが許可を出すと、シフォン姉ちゃんは嬉々としてウレシノを部屋の隅っこへ連れて行ったよ。
 そこにある机に何枚かの書類を広げ…。

「これ、企画書なんだけど。
 ウレシノさん、随分と勉強してて法に詳しいみたいだから。
 ちょっと確認してちょうだい。
 何か、法に抵触していることはないかしら。」

 どうやら、シフォン姉ちゃんは最初から何か企画を用意してあったみたいだね。
 何か、新しい商売でも始めようってのかな。

「は、はあ…。」

 予想外の相談だったのか、ウレシノは最初戸惑っていたけど。
 少し間を置くと、要望通りシフォン姉ちゃんの用意してきた企画書に目を通し始めたの。

「えっ、これ、やるつもりですか…。」

 途中、そんな戸惑いを含んだウレシノの呟きが聞こえて来たよ。
 シフォン姉ちゃんったら、一体何をするつもりなんだろう。

 一通り企画書に目を通すと、ウレシノはシフォン姉ちゃんに向かい。

「まあ、こういったご商売は聞いたことがございませんが。
 ちゃんと許可を取ってくだされば、違法ではないと思います。
 許可についても、申請してくださればすぐに降りるかと…。
 でも、これは何と申しますか…。」

 シフォン姉ちゃんの企画に気掛かりがあるようで、ウレシノはやはりバツが悪そうな顔つきで答えていたよ。
 何かを問い質したい様子だったの。

「有り難う、ウレシノさん。やっぱり、頼りになるわね。
 でも凄いわ、この国に来て間もないのに法に熟知していて。
 私、尊敬しちゃうわ。」

 シフォン姉ちゃんは、ウレシノの微妙な表情を敢えて無視するように称賛の言葉を送ってたよ。

「いえ、マロン陛下の側にお仕えするのですから。
 法や王宮の習慣について熟知しておかないといけないと思いまして。
 これでも睡眠時間を削って習得したのですよ。」

 おだてられて気を良くしたのか、ウレシノは笑顔になりさっきの言葉を続けることは無かったの。
 シフォン姉ちゃんに上手くはぐらかされたみたい。

       **********

 それから、また何日かして…。
 おいらが日課のトレント狩りに出かけると。

「キャー! タロウ会長、ステキー!
 あんな魔物を瞬殺なんて、その細い体の何処にそんな力があるんですか。」

 先客のタロウがトレントを狩っていたよ。
 いつもと違うのは、若い娘さんの黄色い声に包まれていたこと。
 何かと思えば、シフォン姉ちゃんに預けた『パパ活』娘達の何人かが見物してた。

「おはよう、タロウ。
 その娘さん達はどうしたの?」

「ああ、昨日、たまたま俺の稼ぎの話になってな。
 毎朝、トレント狩りで銀貨二万枚くらい稼ぐと言ったら。
 こいつ等、いきなり俺を見る目が変わってな。
 俺の愛人になりたいなんて言うもんだから。
 冗談じゃないと思ってよ。」

 どうやらこの娘さん達の願望は楽して稼ぎたいではなく、楽して生活したいらしくて。
 その選択肢の中には、お金持ちのお嫁さんや愛人ってのもあったみたい。
 それまで見た目がパッとしないタロウは歯牙にも掛けられて無かったそうだけど。
 タロウがムチャクチャお金持ちだと知り、いきなり自分達を売り込んできたらしいの。

 タロウは嫁さんが六人もいるからと毅然として断ったそうだけど。
 その時、ピンと来たらしい。
 ここでトレントを狩っている冒険者を見て気に入るかも知れないって。

 シフォン姉ちゃんが計画している商売は準備にもう少し時間が掛かるらしくてね。
 冒険者って独身男性が多いから、嫁に納まってくれたらしめたものだって。

 そう上手くいくかな…。
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