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アイイロモンペ

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第二十章 王都の民の憩いの場を造ったよ

第689話 無責任なおじさんは赦さないって…

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 粗方『パパ活』娘達の事情は把握したのだけど…。
 もう一つ、別の問題も浮かび上がったね。

「タロウ、今回の開業記念公演は煽り過ぎじゃない。
 公衆浴場部分を無料にしてもらうためだから、多少ことは目を瞑ると言ったけど。
 幾ら利益を上げるためだとは言え。
 違法な事までして稼いだお金を注ぎ込む人が出てくるのは拙いと思う。
 今回は開業記念だから派手なイベントを企画したのは分かるけど。
 これからは、無茶なお金の使わせ方をするようなイベントをしたらダメだよ。」 

 王都に人の憩いの場にしようと思って、公衆浴場を作ったんだからね。
 それが元で王都の治安や風紀が乱れるようなことになったら困るよ。
 それに、公衆浴場が不健全な目的で利用されているって噂が立ったらもっと困るし。

「ああ、それは悪かったよ。俺も反省している。
 俺としてはペンネちゃん達『花小隊』に入れ込んだオタク達が金を落としてくれると踏んでたんだが。
 まさか、歌舞伎町のホストに入れ込む勢いで、『STD四十八』の連中を推す娘がいるとは思わなかったぜ。
 そう言えば、爺さんが言ってたのを今思い出したぞ。
 若い頃に『イケメン酒場』にどっぷりハメた娘を、泡姫として風呂屋に沈めていたって。
 ひまわり会の系列には『イケメン酒場』なんて無いから忘れてたぜ。」

 いや、それを実行したのはトアール国にあったギルド『アッチカイ』のコンカツでしょうに。
 その言い方じゃ、まるでにっぽん爺が極悪人みたいだよ。

 タロウの言葉は続いて…。

「でも、意外だったぜ。
 『オタク』連中がみんな十日で脱落しちまうなんて…。
 俺の想定じゃ、『オタク』の中から二十日制覇者が出てくるはずだったんだが。
 銀貨二百枚もする『花小隊』の実物大人形を五体全部買って行った奴すらいるのに…。」

 オタクと呼ばれる連中はタロウの予想通り、セーナン兄ちゃんの作った人形にたんまりお金を落としたらしい。
 セーナン兄ちゃんも、持ち込んだ商品が完売の勢いだと言ってたものね。
 その勢いで、記念公演のチケットも二十日連続で購入する猛者が出てくると期待してたみたい。

「誰しもお金を無尽蔵に使える訳では無いですからね。
 タロウが『オタク』と呼ぶ人々は、『花小隊』との一日デートより等身大人形を選んだのでしょう。
 人形に銀貨千枚も出しておいて、更にチケットに銀貨四百枚も注ぎ込めると思いますか。
 そのキモい『オタク』って連中には、気前の良い『パパ』は付いていないのですよ。」

 いい歳した大人の男が実物大人形を買って喜んでいると聞いて、ウレシノはドン引きしてたけど。
 更にその人形が実用性を兼ね備えていると聞き、『オタク』のことを心底キモい生き物だと感じたらしい。

「若い男性が、生身の女性の代わりに人形を抱いて満足しているのは異常だと思いませんか。
 普通、人形にそんなお金を費やすくらいなら、お見合いでも何でもするでしょう。
 社交性やコミュニケーション能力に欠けているとしか思えません。
 そんな男性が、アイドルと一日デート権を貰っても困るんじゃないですか。
 憧れの女性にどう接して良いか分からずに、きっと持て余してしまいますよ。」

 オタクの属性からも、生身のペンネ姉ちゃん達より、ペンネ姉ちゃん達の人形の方が選択されたのだろうって。

「ウレシノ姐さん、世界中のオタクを敵に回すようなことを言わなくても…。」

 多分に偏見を含んだウレシノの言葉に、タロウは苦笑いしてたよ。
 
 まっ、それはともかく、タロウには指示を出したよ。
 今後は特定の顧客層に大きなお金を落とさせるようなイベントは避けるようにとね。

        **********

 そして、翌日の夕方。
 中央広場、時計塔の前、毎朝通っている串焼き屋でお気に入りの串焼きを頬張っていると。
 一人、二人と若い娘さんが塔の横の路地に吸い込まれるように入って行ったの。
 その娘さん達は何をするでなく時計塔の壁に寄り掛かって、ぼうっと立っていたんだ。

「本当だ、あんなに沢山若いお姉さんが立っている。
 こんな時間に来たことが無かったから知らなかったよ。」

 おいらが、串焼き屋のおじさんに話しかけると。

「何だい、マロン陛下は知らなかったんかい。
 ここ最近、そこの路地は好き者オヤジの間じゃ有名な場所だぜ。
 風呂屋じゃお目に掛かれない若い娘が摘まみ放題だってね。
 まあ、見て居なって。すぐに中年オヤジが寄って来て声を掛けるから。」

 おじさんが最近の様子を話して聞かせてくれたよ。
 ウレシノ父ちゃんの報告通り、塔の横の路地に若い娘さんが立つにようになったのは一年程前のことらしい。
 最初は数人だったのだけど、最近では日に日に増えているそうで。
 今では毎晩『パパ活』娘達が五十人を下ることはないそうだよ。

「時代が変わってと言うか…。
 つい最近まで、立ちんぼなんて歓楽街の隅っこの方にしかいなかったのに。
 今じゃ、こんな中心街で堂々と客待ちしているんだから驚きだぜ。
 しかも嘆かわしいことに、あんな素人みたいな若い娘ばかりだぜ…。
 昔は、それこそギルドでもお目溢しする年寄りか、病気持ちしかいなかったのに。」

 ウレシノ父ちゃんが言ってたけど、ああいう仕事はギルドの主要なシノギの一つで。
 ギルドの支配下でしかすることが出来なかったらしいの。
 ギルドも堅気の人に気を遣って、人目につく場所で大ぴらにはしてなかったらしい。
 でもまあ、歓楽街の裏路地なんて今でも治安が悪いから、若い娘さんは近寄りたくないよね。
  
 屋台のおじさんとそんな会話を交わしていると。

「おじさん、今晩暇してない?
 よかったら、私のパパになって欲しいな~。
 夕朝二食と宿代別で、これでどうかな。
 ねえ、良いでしょう。最後までさせてあげるから。」

 一人にお姉さんが路地を通り掛かったおじさんの袖を掴んでそう言うと、指を五本立てて見せたよ。

「おっ、お嬢さん、初めて見る顔だね。」

「そっ、昨日、王都に着いたばかりなの。
 今日仕事を探してたら、先輩のお姉さんに誘われたんだ。
 ここに来れば、優しいパパが援助してくれるよって。」

「何だい、お嬢さん、初めてかい。
 それじゃ、お小遣い弾まないといけないね。
 正直、ここの相場は二本なんだけど。
 お嬢さん、可愛いし、初仕事なら、五本で良いよ。
 じゃあ、行こうか。」

「パパ、ありがと~!
 うんと、サービスしちゃうね!」

 ニッコリ笑ったお姉さんは、おじさんの腕に抱き付くようにして身を寄せたよ。
 二人は腕を絡ませたまま路地からこちらに向かって歩いて来て…。

 その場で、忽然と消えたんだ。

「マロンちゃん、協力するのは今晩だけよ。
 私、役人じゃないんだから。
 毎晩、取り締まりに協力しろと言われても困るわ。」

 そんな不満を零すマリアさん。
 消えた二人はマリアさんの『積載庫』の中だよ。
 積載庫の中では騎士が待ち構えていて、街娼行為の現行犯で取り調べをする段取りになっているの。

「おいらもそんな無茶は言わないよ。
 今晩一晩で決着をつけるつもりだから安心して。」

 昨日、宰相も交えて相談した結果、『トー横』にたむろう人達を一網打尽にすることにしたんだ。
 子供を含む街の人達が多く集まる中央広場で、公然と違法な街娼行為が行われているのは看過できないって。

 そのために今朝、告知板に御触れを出したよ。
 今日以降街娼行為の取り締まりを強化するってね。

 捕縛に当たっては、逃げられないように『積載庫』で捕えることにしたんだ。
 だって、騎士団を大規模動員して捕縛したら、客待ちの『パパ活』娘達が蜘蛛の子を散らすように逃げちゃうじゃない。
 そしたら、場所を移して『パパ活』をする娘さんが出て来るだけだものね。

 あと、『パパ活』娘達を捕らえるだけじゃ足りないとウレシノが主張してたよ。
 そもそも、『パパ活』などと称して若い娘を買うスケベ親父が居るのも問題だって。
 無責任にタネを蒔き散らす男共を、罪に問えるような法を作ったら良いのではと。

 宰相も含めて色々検討したんだけど、一朝一夕には難しいらしくてね。
 タロウは、自分の故郷のように子供を買うのは犯罪にしようと主張したんだけど。
 何歳までが子供かって基本的な問題で躓いたの。
 だって、十八歳未満は子供だと言われたって、この国じゃ十五歳未満だって普通に働いてるし。
 何なら十四、五歳でお嫁に行く娘さんは沢山居るんだ。
 結局、時間を掛けて継続的に検討することになったよ。

 それで今回は罪には問えないけど、少しお灸を据えることにしたんだ。

 何をしたかと言うと…。

「全く、恥かしいったらありゃしないよ。
 騎士様から呼び出しがあって何かと思えば。
 旦那を引き取りに来いと言うじゃないか。
 違法な街娼を買ったところを取り押さえられたって。
 それを聞かされた時は顔から火が出るかと思ったよ。」

 騎士の横で身を縮こまらせている中年男に、その奥さんが呆れた口調で声を掛けてたよ。
 中年男性は、さっき王都に出て来たばかりの娘さんを拾ったおじさんだよ。

 罪にはならないけど、違法な街娼行為を助長したってことで厳重に注意することにしたんだ。
 それと同時に、ご家族に身柄を引き取りに来てもらって、その事情を詳細に説明することにしたよ。
 こんなことが家族に知られたら、二度とやろうって気が起きないくらいにお灸を据えられるだろうからって。
 
 その晩は、夜遅くまで『トー横』にたむろう娘さん達とそれを買おうとするおじさん達の捕縛が続いたって。
 おいらは早々に退散したよ。良い子は早寝早起きだもの。
 最後まで捕縛に付き合わされたマリアさんが、夜更かしはお肌の大敵だってブツブツ言ってた。
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