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第二十章 王都の民の憩いの場を造ったよ
第688話 一部の人々には、そこも憩いの場だったみたい…
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タロウに何か考えがあるみたいなので、目の前の『パパ活』娘達八人を任せることにしたよ。
反省して真っ当な生活に戻るなら、徒に若い娘さんを罪人にすることも無いからね。
目の前の『パパ活』娘達はタロウに任せるとしても…。
「おいら、『トー横』って言葉は今日初めて聞いたんだけど…。
中央広場の時計塔の前って、おいら、毎日通っているよね。
だけど、横の路地に若い娘さんが屯っているとこなんて見たこと無いんだけど。」
時計塔の前に屋台を出している串焼き屋さんはおいらのお気に入りなんだ。
朝ごはんとして食べるお客さんのために、朝早くから店を出しているし。
毎朝、日課のトレント狩りの後に一、二本摘まんでいるの。
「それはマロン陛下の生活リズムが、この娘達とはズレているからでしょう。
この娘達のような稼ぎをしている者が道端に立つのは夕方から夜に掛けてです。
陛下が広場を訪れるような早朝の時間帯は、おそらく『パパ』と一緒にベッドの中ですよ。」
ウレシノが教えてくれたよ。
目の前の娘さん達がおいらのような健全な生活している訳ないって。
夜遅くまで快楽を貪り、朝は日が高くなるまで寝ているという爛れた生活をしているんだって。
「それにしても、王都で生まれ育った私ですら知りませんでした。
時計塔の横の路地が若者の溜まり場になっているなんて。」
そんなことを口にしたのは、護衛騎士のタルト。
タルトは王都に店を構える商家の娘さんで、王都の事情には詳しいんだ。
もっとも、最近の街中の事情にはあまり通じていないかも知れない。
おいらの護衛に就くようになってからは、王宮に住み込みでいるからね。
夕方から夜に掛けて、王都の街中に出ることは殆ど無くなっているし。
「そもそも、この娘達はよくも浮ついた気分で王都へ出て来たものですね。
私など、重税と不景気で故郷じゃ食っていけないから、渋々王都へ出稼ぎに来たのに。
若い娘が伝手も無く出て行ったらロクな目に遭わない。
うちの田舎じゃ、それが王都に対する一般認識でしたよ。」
これは、同じく護衛騎士しているルッコラ姉ちゃんの言葉。
ルッコラ姉ちゃんも仕事を求めて田舎から出て来た口だけど。
それは簒奪者ヒーナルが課した重税と、それに伴う不景気のせいで田舎じゃ暮らしてけなかったからなんだ。
王都は若い娘さんに危険が多いって認識の中で、仕方なく出稼ぎにやって来たんだけど。
その認識に間違いはなく、王都に着いた早々無理やり冒険者ギルドに拉致監禁されて慰み者にされてたの。
冒険者ギルドの前を通り掛かっただけで、冒険者に取り囲まれで無理やり連れ込まれたってんだから酷いよね。
そんな目に遭ったルッコラ姉ちゃんには、楽したいってだけで王都に出て来た『パパ活』娘達が信じられないみたい。
どうやら、世の中って良くなったら、良くなったで問題が出て来るものらしいね…。
**********
ルッコラ姉ちゃんの言葉に対し、『パパ活』娘の一人が。
「田舎じゃ、今、王都が憧れの的なんですよ。
王様が変わって、王都は凄く安全な街になったって評判で…。
女の子が夜道を歩いていても、襲われること無くなったって。
最近村に来る行商人は、口々に王都が住み易くなったって言ってます。」
今の王都は無法者が姿を消して、とても安全な場所になったと口コミで広がっているらしい。
また、重税が撤廃されると共に、王宮やエチゴヤが独占していた商売が開放されたことで景気が良くなり。
王都では新しいお店が色々で出来ていて、とても賑わっているとも伝わっているそうで…。
「今の王様になって、税が軽くなったとかで…。
うちらの田舎でも農産物の売れ行きが良くなってるんですよ。
親共は稼ぎが増えると喜んでるのだけど。
私のような娘まで、朝から晩まで泥塗れで畑仕事です。
これが一生続くかと思うと、我慢できなくて…。」
別の『パパ活』娘がそんな不満を漏らしていたよ。
以前は畑仕事がそんなに忙しいことはなく、年少の娘が一日中畑仕事に使われることは無かったって。
どうやら、街道整備が進み、物の流れが良くなったことが影響しているみたい。
農家の親世代は喜んでいるみたいだけど、まだ遊びたい年頃の子供達には歓迎されてないようだね。
すると今度は、シフォン姉ちゃんのお店で買ったと思しき『きゃんぎゃる』の服を着た娘さんが言ったの。
「それに、王都じゃ、私達くらいの歳の女の子はオシャレな格好をして生活を楽しんでいるって聞いたんだ。
行商人に親父さんが言ってたぜ。
『アトリエ・シフォン』って服屋の可愛い服が、女の子の間で流行しているって。
王都じゃ、若い娘が可愛い服を着てイケメンにチヤホヤされてるらしいじゃん。
そんな話を聞いたら、田舎で畑仕事なんてバカバカしくてやってられないよ。」
シフォン姉ちゃんの店の評判が田舎まで伝わっているとは、びっくりだよ。
でもこの娘さん、街中で『きゃんぎゃる』の服を着ているなんて勇者だね。
その服を人前で着るの恥ずかしく無いのかな? パンツとか色々隠せてないじゃん。
「でも、またなんで、『トー横』なんて場所で『パパ』にたかろうと思ったんだ?
お前たちが聞いた通り、王都は景気が良くて紹介状無しでも仕事なんて幾らでもあるだろう?
真面目に働けば良かったのに。」
『きゃんぎゃる』姿の娘さんに、タロウが至極真っ当なことを尋ねると。
「だって普通の仕事じゃ、給金は一月働いて銀貨百枚ちょっとが良いところですよ。
下宿代や食費を引いたら、ほとんど残らないじゃないですか。
『アトリエ・シフォン』の可愛い服は一番安い服で銀貨百枚もするんだもん。
安い給金じゃ、何時まで経っても手に入らないですよ。」
その娘さんが、ある日、シフォン姉ちゃんのお店で展示されている服に見惚れていると。
「なあ、これ、欲しいのか。
これくらいならすぐに買える方法があるけど…。
興味あるなら、教えてやろうか?
アタイの教えた通りにすれば、宿代も、食事代も必要なくなるし。
銀貨の二百枚や三百枚あっという間に貯まるぜ。」
見知らぬ娘さんが耳元でそんなことを囁いたんだって。
その娘さんは、その時欲しいと見惚れてたシフォン姉ちゃん作の服を着ていたらしい。
即座にその話に食い付くと、『トー横』に連れていかれたらしい。
そこで『パパ活』のノウハウを教えてもらい、最初の『パパ』を紹介してもらったらしいの。
「おい、その娘、絶対にそのオヤジからお前の紹介料をふんだくってるぞ。」
タロウはそんなことを言ってたけど。
その晩、夕食をご馳走になったあと歓楽街の安宿に泊まって、教えられた通り『天井のシミ』を数えていたらしい。
翌朝、朝食をご馳走になった後、お小遣いに銀貨二十枚もらって別れたそうだよ。
その一晩で『きゃんぎゃる』姉ちゃんは病み付きになったんだって。
翌日、勤めていた商家を辞めて、下宿も引き払い、『トー横』の住民になったらしい。
宿メシタダで一日銀貨二十枚稼げるのなら、一月働いて銀貨百枚ってのがバカバカしくなったって。
それ以来、毎日『パパ』を見つけて暮らしていたらしいの。
「姉さんは、私を紹介した口利き料なんて取ってないっすよ。
現に二日目以降は、自分で『パパ』を見つけてますから。
新しい女の子の勧誘は、『トー横』で生きていく知恵なんですよ。
若い新人が増えれば、集まって来る『パパ』も増えるでしょう。
首尾よく『パパ』を見つける機会が増えるじゃないですか。」
娘さん達を物色に来るパパが減るとその日の稼ぎにあぶれる恐れがあるし。
『パパ活』娘の中で、パパの取り合いで喧嘩になるかも知れない。
それを回避する為に絶えず新しい娘さんを誘い込んでいるらしいの。
宿無しのトー横の住人にとって、一夜の宿を提供してくれるパパが見つからないのは死活問題らしい。
最近、確たるアテも無く王都に来る若い娘さんが増えているので、誘う娘さんに事欠かないみたい。
**********
「げっ、自己増殖しているのか…。 たちが悪いぜ…。
しっかし、不思議だよな。
今まで、『パパ活』娘なんて見かけなかったのに。
急に出てきて、『トー横』なんてムラを作るまでになるなんて。」
タロウがそんな疑問を口にすると…。
「ああ、それもこの王都の治安が良くなったかららしいですよ。
マロン陛下が冒険者ギルドの綱紀粛正を図ったでございましょう。
従来、色街稼業は全て冒険者ギルドが牛耳っていたそうです。
冒険者ギルドに隠れて勝手に街娼をするのは無理だったようです。
『トー横』に若い娘が自発的に集まるようになったのは、この一年くらいのことらしいです。
無法を働く冒険者が居なくなったことだけじゃなくて。
好景気で小金持ちのパパが増えてるから、楽して稼げるって噂になったようで。」
解説してくれたのはウレシノ父ちゃんだったよ。
ウレシノ父ちゃんは自分が拾った『パパ活』娘や『トー横』へ物色しに来た『パパ』から情報を集めていたらしい。
「お父様、何故、その情報は一族の当主である私まで報告が上がってこないのですか。
ノノウ一族、こと男衆はこの国の治安情報を集めるお役目をマロン陛下から下命されてますよね。
『パパ活』などと言葉を弄してますが、これは組織的な街娼行為でございましょう。
このような犯罪行為を黙認するのは由々しきことだと思いますが。」
まあ、ノノウ一族の男衆にお役目を与えたのはつい最近のことだから。
元々、そんなすぐに成果が上がるとは期待してなかったけど。
王都の中に生じた問題を、知っていて報告しないのは問題だね。
「だって、ノノウ一族は女性優位だし、儂らは屋敷に安らげる場所が無いんじゃ。
今だって、こうして実の娘に説教される立場じゃし。
唯一の楽しみじゃった房中術の実技講習も取り上げられて、色々鬱憤が溜まっているだ。
『トー横』は儂ら立場が弱いおじさんにとって心のオアシスなんじゃぞ。
お前は、儂らからささやかな楽しみすら奪おうと言うのか。
儂らだって、若い娘にチヤホヤして欲しいんじゃ。」
ウレシノ父ちゃんはキレ気味に、情けない心の内をぶっちゃけたよ。
「ホント、我が父親ながら呆れた人間のクズですね…。
そんな些細な欲望のために、王都の風紀悪化をお目溢ししていたのですか。
お父様みたいな男が居るから、こうして楽して稼ごうとする娘が出てくるのですよ。
せっかくマロン陛下のご厚意で、こうして一族のお役目を賜ったのですから。
この国のために働いてくださいませ。」
ウレシノは自分の父親の言動に再三ため息を漏らしていたよ。
まあ取り敢えず、『トー横』ってのは何らかの取り締まりをしないといけないようだね。
反省して真っ当な生活に戻るなら、徒に若い娘さんを罪人にすることも無いからね。
目の前の『パパ活』娘達はタロウに任せるとしても…。
「おいら、『トー横』って言葉は今日初めて聞いたんだけど…。
中央広場の時計塔の前って、おいら、毎日通っているよね。
だけど、横の路地に若い娘さんが屯っているとこなんて見たこと無いんだけど。」
時計塔の前に屋台を出している串焼き屋さんはおいらのお気に入りなんだ。
朝ごはんとして食べるお客さんのために、朝早くから店を出しているし。
毎朝、日課のトレント狩りの後に一、二本摘まんでいるの。
「それはマロン陛下の生活リズムが、この娘達とはズレているからでしょう。
この娘達のような稼ぎをしている者が道端に立つのは夕方から夜に掛けてです。
陛下が広場を訪れるような早朝の時間帯は、おそらく『パパ』と一緒にベッドの中ですよ。」
ウレシノが教えてくれたよ。
目の前の娘さん達がおいらのような健全な生活している訳ないって。
夜遅くまで快楽を貪り、朝は日が高くなるまで寝ているという爛れた生活をしているんだって。
「それにしても、王都で生まれ育った私ですら知りませんでした。
時計塔の横の路地が若者の溜まり場になっているなんて。」
そんなことを口にしたのは、護衛騎士のタルト。
タルトは王都に店を構える商家の娘さんで、王都の事情には詳しいんだ。
もっとも、最近の街中の事情にはあまり通じていないかも知れない。
おいらの護衛に就くようになってからは、王宮に住み込みでいるからね。
夕方から夜に掛けて、王都の街中に出ることは殆ど無くなっているし。
「そもそも、この娘達はよくも浮ついた気分で王都へ出て来たものですね。
私など、重税と不景気で故郷じゃ食っていけないから、渋々王都へ出稼ぎに来たのに。
若い娘が伝手も無く出て行ったらロクな目に遭わない。
うちの田舎じゃ、それが王都に対する一般認識でしたよ。」
これは、同じく護衛騎士しているルッコラ姉ちゃんの言葉。
ルッコラ姉ちゃんも仕事を求めて田舎から出て来た口だけど。
それは簒奪者ヒーナルが課した重税と、それに伴う不景気のせいで田舎じゃ暮らしてけなかったからなんだ。
王都は若い娘さんに危険が多いって認識の中で、仕方なく出稼ぎにやって来たんだけど。
その認識に間違いはなく、王都に着いた早々無理やり冒険者ギルドに拉致監禁されて慰み者にされてたの。
冒険者ギルドの前を通り掛かっただけで、冒険者に取り囲まれで無理やり連れ込まれたってんだから酷いよね。
そんな目に遭ったルッコラ姉ちゃんには、楽したいってだけで王都に出て来た『パパ活』娘達が信じられないみたい。
どうやら、世の中って良くなったら、良くなったで問題が出て来るものらしいね…。
**********
ルッコラ姉ちゃんの言葉に対し、『パパ活』娘の一人が。
「田舎じゃ、今、王都が憧れの的なんですよ。
王様が変わって、王都は凄く安全な街になったって評判で…。
女の子が夜道を歩いていても、襲われること無くなったって。
最近村に来る行商人は、口々に王都が住み易くなったって言ってます。」
今の王都は無法者が姿を消して、とても安全な場所になったと口コミで広がっているらしい。
また、重税が撤廃されると共に、王宮やエチゴヤが独占していた商売が開放されたことで景気が良くなり。
王都では新しいお店が色々で出来ていて、とても賑わっているとも伝わっているそうで…。
「今の王様になって、税が軽くなったとかで…。
うちらの田舎でも農産物の売れ行きが良くなってるんですよ。
親共は稼ぎが増えると喜んでるのだけど。
私のような娘まで、朝から晩まで泥塗れで畑仕事です。
これが一生続くかと思うと、我慢できなくて…。」
別の『パパ活』娘がそんな不満を漏らしていたよ。
以前は畑仕事がそんなに忙しいことはなく、年少の娘が一日中畑仕事に使われることは無かったって。
どうやら、街道整備が進み、物の流れが良くなったことが影響しているみたい。
農家の親世代は喜んでいるみたいだけど、まだ遊びたい年頃の子供達には歓迎されてないようだね。
すると今度は、シフォン姉ちゃんのお店で買ったと思しき『きゃんぎゃる』の服を着た娘さんが言ったの。
「それに、王都じゃ、私達くらいの歳の女の子はオシャレな格好をして生活を楽しんでいるって聞いたんだ。
行商人に親父さんが言ってたぜ。
『アトリエ・シフォン』って服屋の可愛い服が、女の子の間で流行しているって。
王都じゃ、若い娘が可愛い服を着てイケメンにチヤホヤされてるらしいじゃん。
そんな話を聞いたら、田舎で畑仕事なんてバカバカしくてやってられないよ。」
シフォン姉ちゃんの店の評判が田舎まで伝わっているとは、びっくりだよ。
でもこの娘さん、街中で『きゃんぎゃる』の服を着ているなんて勇者だね。
その服を人前で着るの恥ずかしく無いのかな? パンツとか色々隠せてないじゃん。
「でも、またなんで、『トー横』なんて場所で『パパ』にたかろうと思ったんだ?
お前たちが聞いた通り、王都は景気が良くて紹介状無しでも仕事なんて幾らでもあるだろう?
真面目に働けば良かったのに。」
『きゃんぎゃる』姿の娘さんに、タロウが至極真っ当なことを尋ねると。
「だって普通の仕事じゃ、給金は一月働いて銀貨百枚ちょっとが良いところですよ。
下宿代や食費を引いたら、ほとんど残らないじゃないですか。
『アトリエ・シフォン』の可愛い服は一番安い服で銀貨百枚もするんだもん。
安い給金じゃ、何時まで経っても手に入らないですよ。」
その娘さんが、ある日、シフォン姉ちゃんのお店で展示されている服に見惚れていると。
「なあ、これ、欲しいのか。
これくらいならすぐに買える方法があるけど…。
興味あるなら、教えてやろうか?
アタイの教えた通りにすれば、宿代も、食事代も必要なくなるし。
銀貨の二百枚や三百枚あっという間に貯まるぜ。」
見知らぬ娘さんが耳元でそんなことを囁いたんだって。
その娘さんは、その時欲しいと見惚れてたシフォン姉ちゃん作の服を着ていたらしい。
即座にその話に食い付くと、『トー横』に連れていかれたらしい。
そこで『パパ活』のノウハウを教えてもらい、最初の『パパ』を紹介してもらったらしいの。
「おい、その娘、絶対にそのオヤジからお前の紹介料をふんだくってるぞ。」
タロウはそんなことを言ってたけど。
その晩、夕食をご馳走になったあと歓楽街の安宿に泊まって、教えられた通り『天井のシミ』を数えていたらしい。
翌朝、朝食をご馳走になった後、お小遣いに銀貨二十枚もらって別れたそうだよ。
その一晩で『きゃんぎゃる』姉ちゃんは病み付きになったんだって。
翌日、勤めていた商家を辞めて、下宿も引き払い、『トー横』の住民になったらしい。
宿メシタダで一日銀貨二十枚稼げるのなら、一月働いて銀貨百枚ってのがバカバカしくなったって。
それ以来、毎日『パパ』を見つけて暮らしていたらしいの。
「姉さんは、私を紹介した口利き料なんて取ってないっすよ。
現に二日目以降は、自分で『パパ』を見つけてますから。
新しい女の子の勧誘は、『トー横』で生きていく知恵なんですよ。
若い新人が増えれば、集まって来る『パパ』も増えるでしょう。
首尾よく『パパ』を見つける機会が増えるじゃないですか。」
娘さん達を物色に来るパパが減るとその日の稼ぎにあぶれる恐れがあるし。
『パパ活』娘の中で、パパの取り合いで喧嘩になるかも知れない。
それを回避する為に絶えず新しい娘さんを誘い込んでいるらしいの。
宿無しのトー横の住人にとって、一夜の宿を提供してくれるパパが見つからないのは死活問題らしい。
最近、確たるアテも無く王都に来る若い娘さんが増えているので、誘う娘さんに事欠かないみたい。
**********
「げっ、自己増殖しているのか…。 たちが悪いぜ…。
しっかし、不思議だよな。
今まで、『パパ活』娘なんて見かけなかったのに。
急に出てきて、『トー横』なんてムラを作るまでになるなんて。」
タロウがそんな疑問を口にすると…。
「ああ、それもこの王都の治安が良くなったかららしいですよ。
マロン陛下が冒険者ギルドの綱紀粛正を図ったでございましょう。
従来、色街稼業は全て冒険者ギルドが牛耳っていたそうです。
冒険者ギルドに隠れて勝手に街娼をするのは無理だったようです。
『トー横』に若い娘が自発的に集まるようになったのは、この一年くらいのことらしいです。
無法を働く冒険者が居なくなったことだけじゃなくて。
好景気で小金持ちのパパが増えてるから、楽して稼げるって噂になったようで。」
解説してくれたのはウレシノ父ちゃんだったよ。
ウレシノ父ちゃんは自分が拾った『パパ活』娘や『トー横』へ物色しに来た『パパ』から情報を集めていたらしい。
「お父様、何故、その情報は一族の当主である私まで報告が上がってこないのですか。
ノノウ一族、こと男衆はこの国の治安情報を集めるお役目をマロン陛下から下命されてますよね。
『パパ活』などと言葉を弄してますが、これは組織的な街娼行為でございましょう。
このような犯罪行為を黙認するのは由々しきことだと思いますが。」
まあ、ノノウ一族の男衆にお役目を与えたのはつい最近のことだから。
元々、そんなすぐに成果が上がるとは期待してなかったけど。
王都の中に生じた問題を、知っていて報告しないのは問題だね。
「だって、ノノウ一族は女性優位だし、儂らは屋敷に安らげる場所が無いんじゃ。
今だって、こうして実の娘に説教される立場じゃし。
唯一の楽しみじゃった房中術の実技講習も取り上げられて、色々鬱憤が溜まっているだ。
『トー横』は儂ら立場が弱いおじさんにとって心のオアシスなんじゃぞ。
お前は、儂らからささやかな楽しみすら奪おうと言うのか。
儂らだって、若い娘にチヤホヤして欲しいんじゃ。」
ウレシノ父ちゃんはキレ気味に、情けない心の内をぶっちゃけたよ。
「ホント、我が父親ながら呆れた人間のクズですね…。
そんな些細な欲望のために、王都の風紀悪化をお目溢ししていたのですか。
お父様みたいな男が居るから、こうして楽して稼ごうとする娘が出てくるのですよ。
せっかくマロン陛下のご厚意で、こうして一族のお役目を賜ったのですから。
この国のために働いてくださいませ。」
ウレシノは自分の父親の言動に再三ため息を漏らしていたよ。
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