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第二十章 王都の民の憩いの場を造ったよ
第687話 こいつら世間を舐めてるよ…
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『パパ活』娘達に対するお説教が一区切りつくと。
「さてと、娘さん達も自分が何をしていたのか理解したようですし。
マロン陛下、この者達の処分は如何なさりますか。
筋を通すのなら、官憲の裁きを受けることになり。
街娼を行った者に対する罰は、強制労働か…。
もしくは見せしめのため、公開の場での鞭打ち刑になりますが。」
ウレシノはおいらにそんなことを尋ねてきたの。
これは、おいらの裁可で温情を加えるようにってことかな?
確かに強制労働をさせるのは可哀想かも知れないね。
今、軽犯罪者は街道整備、重罪人は鉱山労働ってなっているけど。
正直、目の前の『パパ活』娘達は、そんな重労働に耐えられそうにないもん。
そうなると、残るのは鞭打ち刑か。
「鞭打ち刑って、どんな鞭で叩くのかな?」
おいらが刑の内容を尋ねると、タルトがひょいと立ち上がり。
「はい!はい!はい! 私、見たことあります。
乗馬用の鞭を使うんですよ。
上半身剥かれて背中を打たれるんです。
一撃毎に背中にミミズ腫れが出来て…。
百回打たれる頃には、背中の皮が向けて血だらけになるんです。
わたし達、王都の子供はそれを見て親から教えられるんですよ。
悪いことをやったらいけないって。」
嬉々として説明してくれたんだ。
どうやら、中央広場で行われる鞭打ち刑は、王都の民にとって娯楽のようなものらしい。
鞭打ち刑は軽犯罪の罰としてポピュラーなものみたいで、結構頻繁に行われているらしい。
その中でも、若い街娼が鞭打ち刑に処されるときは広場が野次馬で溢れるんだって。
いや、そんなに楽しそうに言わなくても…。
目の前に並ぶ娘さん達は、まだ十代半ばくらいの若い人ばかりだもの。
公衆の面前で上半身裸にされての鞭打ち刑はあんまりだよね。それじゃ、まんま晒し者だもん。
「どっちも、いやー!
お願い、もうしないから赦して!」
刑罰の内容を耳にして、『パパ活』娘の一人から泣きが入ったよ。
「それでは、故郷へ帰って真面目に働くことですね。
あなた達、家出娘でしょう。
親御さんが心配していますよ。」
おや、ウレシノは『パパ活』娘達を罪に問わないつもりなのかな?
実際にそれを決めるのはおいらの役割だけど。
「それもいやー! あんな田舎には帰りたくない。
私は都会で、オシャレに楽して暮らしたいの!
泥塗れになって畑仕事するのはいやー!」
「お姉さんには分からないのよ。
田舎に生まれた娘の気持ちなんて。
都会に住んで、そんな綺麗な格好して。
どうせ、楽な仕事して高い給金もらってるんでしょう。」
異口同音に不満を漏らす『パパ活』娘達。
ウレシノは大きくため息を吐くと…。
「そうですか、私のような仕事がしたいのですか。
では、私の一族が経営しているメイド養成所へ入所しますか?
マロン陛下の温情でこの国に召し抱えて頂いてから大分指導内容が易しくなりましたので。
あなた方でも、ものになるかも知れませんね。」
「えっ、お姉さんのような仕事に就けるのですか?
何のコネもない、田舎娘が?」
ウレシノがメイド養成所のことを口にすると、娘さん達の視線が集まったよ。
どうやら、ヒラヒラなエプロンを着けたメイド服が気を引いたみたい。
「メイド養成所は出自を問いませんよ。
卒業後は王宮で召し抱えて頂けることになっていますが。
その他、メイドを必要とする貴族にも斡旋を行うことも考慮しています。」
「王宮に、貴族のお屋敷…。
それ良い!
キレイな服着て上流階級に仕える。
それ最高じゃないですか。
養成所で何をすればいいんですか?」
「ホント、お貴族様のお手付きになれば玉の輿も夢じゃないかも。
私もその養成所に入りたい。」
ウレシノの返答に、娘さん達は前のめりになって喰い付いて来たよ。
「メイド養成所は修養期間五年。
高貴な方に仕えるためのノウハウを一から十まで学んでもらいます。
養成所に求められているのは、即戦力の養成ですから…。
掃除や料理から始まって、帳簿付けに、手紙の代筆、清書。
主が必要とするあらゆる能力を身に着けないといけません。
朝五時起床で養成所の掃除から始まって…。」
ウレシノは、養成所で学ぶことをつらつらと説明して行ったの。
話が進むにつれ、『パパ活』娘達の顔色が悪くなっていったよ。
「朝五時の掃除から始まって、夜九時の座学終了までびっちりって…。
その間、休憩時間は三食の食事休みだけって。
無理、無理、無理。
そんな厳しいスケジュール、絶対こなせませんよ。」
まあ、畑仕事が嫌で逃げ出して来た人達だもんね、メイド養成所を修了する根性があるとは思えないよ。
「そうでしょうか。
これでも、大分難易度が落ちたのですよ。
以前でしたら、上級生は座学の後に殿方を悦ばせるための実技があったのですから。
あなた達がこのところパパ相手にして来たことに関して。
もっと、本格的な技術を教え込んだのです。
実技担当教官がそこにいる私の父みたいにねちっこい人ですと。
朝まで一睡もさせてもらえず、翌日の修練に臨むって人も居たみたいですので。」
そう言ってウレシノは、実父を蔑むような目付きで睨んでいたよ。
「殿方を悦ばせるって…。 そんなことまで仕事なのですか?」
「ええ、元々私達が居た国ではね。
だって、主が望むことは全てこなせるように育てるのが一族の矜持でしたから。
ですが、マロン陛下に召し抱えて頂き、国を移って以降。
陛下のご意向で、房中術の修練はしないことになりましたのでご安心を。
他にも、暗殺術や卒業試練の山中サバイバルも無くなりましたので。
だいぶ修練の内容は丸くなっているのですが…。」
最後、サバイバル試験の話を聞いた娘さん達はドン引きだったよ。
食べ物や飲み水も持たずに身一つで猛獣が住む山の中に放置されて、試験の最中に死者が出るとか。
三日以内にクリアできずに不合格になると、爆弾を抱えて敵陣に送り込まれるとかね。
まあ、ノノウ一族の実態はメイドに扮した間者だったからね。 苛酷な修行となるのも仕方がないのだけど。
「あのう、私、王宮勤めや貴族にお仕えしたいなんて贅沢は言いません。
もう少し、楽して稼げる仕事が良いのですが…。
あと、キレイな格好をして出来る仕事が良いかなって。
泥塗れになるような仕事は嫌なので…。」
**********
ウレシノがメイド養成所で引き受けても良いって言ってくれたのに。
楽して稼ぎたいなどと虫の良いことを言う『パパ活』娘達は誰一人として入所を希望しなかったの。
メイド養成所って、授業料は無料だし、養成期間は三食と寄宿舎がタダでとてもお得なのにね。
ちゃんとそのことも伝えたのに、それでも朝から晩までの訓練には耐えられないって。
その後も、タロウが冒険者を勧めたり、タルトとトルテが実家の商会に口利きしてあげるとか言ったんだけど。
やれトレント狩りのような体力仕事は無理だとか、やれ細かい帳簿付けなんて面倒だとか。
そんなネガティブなことばかり言って、仕事に就こうとしなかったんだ。
「やっぱり、私、パパと楽しいことしてお小遣いもらうのが性に合ってると思う。
一緒にご飯食べて、お風呂に入って、ベッドで気持ちいことしてお金もらえるって最高じゃん。」
いや、だから、それ犯罪だって…。
楽して稼ぐことを知ってしまったため、堅気な仕事に就こうと言う意識が無くなっているの。
「だから、それが出来るのは若いうちだけです。
あなた達が二十歳を過ぎる頃には、そのパパ達は誰も見向きしなくなりますよ。
それ以前に、身籠るか、病気を貰うかして、『トー横』に立つことも出来なくなるでしょうけど。」
ウレシノはそう忠告するのだけど…。
目の前の『パパ活』娘達には二十歳なんて、そんな先のことは想像できないみたい。
ウレシノと『パパ活』娘達のやり取りを聞いていて、これは厳しく罰しないといけないかなと考えていると。
「そんなに風俗営業で稼ぎたいなら、俺の店に来るか?
あんまり若い娘を働かせたくは無いが…。
俺の故郷と違って、この世界は年齢制限なんて無いからな。
そもそも成人年齢からしてあやふやだし。」
タロウの故郷では十八歳未満はそう言う仕事をさせちゃいけないと法に定められているらしい。
十八歳というのは、法の上でその年齢から大人として扱われる歳なんだと言うけど。
この大陸では一人前に働くようになったら大人扱いで、法で定めるなんてことして無いもんね。
「うん? お兄さんってこの公衆浴場のご主人でしょう。
なんだ、ここでそう言う商売をしているなら最初から言ってよ。
お風呂に入りに来た男の人のお相手をすればいいんでしょう。
任せておいてよ、それで幾らくらいもらえるの?」
「あれ、そう言う仕事はご法度なんでしょう。
だから、私達、今ここに閉じ込められているんじゃ?」
そんな『パパ活』娘達の反応に頭を抱えたタロウ。
「バカ、ここは家族連れで楽しむ健全な施設だ。
そんないかがわしい商売している訳ないだろう。
俺は確かにここの責任者だけど。
ここの営業を引き受けている『ひまわり会』って冒険者ギルドの会長なんだよ。
ひまわり会は別の所で『風呂屋』を幾つも経営してるから。
そっちの仕事がしたいなら、俺の所で使ってやっても良いぜ。」
「ギルドの『風呂屋』ってヤバヤバじゃないか。
私、聞かされたことがあるよ。
借金のカタに娘を奴隷働きさせるところだろう。
体がズタボロになるまで働かされて。
年季が明ける前にポックリ逝っちまうって聞いたぜ。」
流石に田舎に居てもギルドの『風呂屋』の悪評は耳に届いているみたい。
田舎では悪さをした娘を叱るのに、「悪さばかりしていると『風呂屋』に叩き売るぞ」と脅すらしいよ。
「今はそんなことしてねえよ。
ここにいるマロンが女王になった時に、冒険者ギルドを真っ当なものに叩き直すことになってな。
今は、借金のカタにとって無理やり娘を働かせるようなことは無いし。
俺がギルドを引き継いだ時に、借金のカタに働かされていた娘は借金チャラの上持参金を持たせて解放したよ。
本当はその時に『風呂屋』そのものを閉鎖するつもりだったんだ。
だけど、今更他の仕事は出来ないって姉さんが結構いてな。
そんなお姉さん方のために、営業を続けることにした。
だから、出来る限り泡姫のお姉さんの取り分を多くしているつもりだぜ。
それと、今お前らが捕まっているのは、『無許可』かつ『路上』で客を引いているからだよ。
ありゃ、街の風紀を乱すからな。
役所の許可を得た施設の中で行う『娼館営業』は禁じられてないぞ。
もちろん、ひまわり会の『風呂屋』はちゃんと許可を受けている。」
タロウはひまわり会の『風呂屋』は避妊も、病気予防もばっちりなので安心して働けると言ってたよ。
それと、給金も具体的に幾らくらい貰えるかって説明してた。
「それ良い! 今までとやること変わんないじゃない!
それで、大手を振って稼げるんだったら最高じゃん!」
このお姉さん、さっきウレシノからメイド養成所のことを聞いた時も同じようなことを言ってたね。
真っ先に食い付いたのに、仕事の内容を聞いてしり込みしちゃったの。
でも、このお姉さんだけじゃなく、目の前の『パパ活』娘達全員がタロウの話に乗り気だったよ。
「タロウ…、あなたね。
私がこの娘達を真っ当な道に引き戻そうとしているのに。
何で、娼婦稼業なんかに誘うのですか。
それはマロン陛下の御心にも背くことでしょうが。」
ウレシノはタロウに苦言を呈してたんだけど。
「まあ、まあ、俺もこいつ等には少しばかり腹が立ってな。
楽な仕事なんて無いってことを教えてやろうかと思って。
ベッドの上でマグロになって、スケベ親父の好きにさせるだけで稼ごうなんて。
舐めたことを言ってるからな。
風俗だって、きっちり稼ごうとしたら大変だって教えてやろうか思ってよ。
シフォンの研修にこいつらが耐えられると思うか?」
タロウはウレシノにそんな耳打ちをしていたよ。
ああ、シフォン姉ちゃんの研修で合格が出ないとお店に出られないんだっけ。
軽い気持ちで応募してきて挫折するお姉さんが沢山いると言ってたね。
「さてと、娘さん達も自分が何をしていたのか理解したようですし。
マロン陛下、この者達の処分は如何なさりますか。
筋を通すのなら、官憲の裁きを受けることになり。
街娼を行った者に対する罰は、強制労働か…。
もしくは見せしめのため、公開の場での鞭打ち刑になりますが。」
ウレシノはおいらにそんなことを尋ねてきたの。
これは、おいらの裁可で温情を加えるようにってことかな?
確かに強制労働をさせるのは可哀想かも知れないね。
今、軽犯罪者は街道整備、重罪人は鉱山労働ってなっているけど。
正直、目の前の『パパ活』娘達は、そんな重労働に耐えられそうにないもん。
そうなると、残るのは鞭打ち刑か。
「鞭打ち刑って、どんな鞭で叩くのかな?」
おいらが刑の内容を尋ねると、タルトがひょいと立ち上がり。
「はい!はい!はい! 私、見たことあります。
乗馬用の鞭を使うんですよ。
上半身剥かれて背中を打たれるんです。
一撃毎に背中にミミズ腫れが出来て…。
百回打たれる頃には、背中の皮が向けて血だらけになるんです。
わたし達、王都の子供はそれを見て親から教えられるんですよ。
悪いことをやったらいけないって。」
嬉々として説明してくれたんだ。
どうやら、中央広場で行われる鞭打ち刑は、王都の民にとって娯楽のようなものらしい。
鞭打ち刑は軽犯罪の罰としてポピュラーなものみたいで、結構頻繁に行われているらしい。
その中でも、若い街娼が鞭打ち刑に処されるときは広場が野次馬で溢れるんだって。
いや、そんなに楽しそうに言わなくても…。
目の前に並ぶ娘さん達は、まだ十代半ばくらいの若い人ばかりだもの。
公衆の面前で上半身裸にされての鞭打ち刑はあんまりだよね。それじゃ、まんま晒し者だもん。
「どっちも、いやー!
お願い、もうしないから赦して!」
刑罰の内容を耳にして、『パパ活』娘の一人から泣きが入ったよ。
「それでは、故郷へ帰って真面目に働くことですね。
あなた達、家出娘でしょう。
親御さんが心配していますよ。」
おや、ウレシノは『パパ活』娘達を罪に問わないつもりなのかな?
実際にそれを決めるのはおいらの役割だけど。
「それもいやー! あんな田舎には帰りたくない。
私は都会で、オシャレに楽して暮らしたいの!
泥塗れになって畑仕事するのはいやー!」
「お姉さんには分からないのよ。
田舎に生まれた娘の気持ちなんて。
都会に住んで、そんな綺麗な格好して。
どうせ、楽な仕事して高い給金もらってるんでしょう。」
異口同音に不満を漏らす『パパ活』娘達。
ウレシノは大きくため息を吐くと…。
「そうですか、私のような仕事がしたいのですか。
では、私の一族が経営しているメイド養成所へ入所しますか?
マロン陛下の温情でこの国に召し抱えて頂いてから大分指導内容が易しくなりましたので。
あなた方でも、ものになるかも知れませんね。」
「えっ、お姉さんのような仕事に就けるのですか?
何のコネもない、田舎娘が?」
ウレシノがメイド養成所のことを口にすると、娘さん達の視線が集まったよ。
どうやら、ヒラヒラなエプロンを着けたメイド服が気を引いたみたい。
「メイド養成所は出自を問いませんよ。
卒業後は王宮で召し抱えて頂けることになっていますが。
その他、メイドを必要とする貴族にも斡旋を行うことも考慮しています。」
「王宮に、貴族のお屋敷…。
それ良い!
キレイな服着て上流階級に仕える。
それ最高じゃないですか。
養成所で何をすればいいんですか?」
「ホント、お貴族様のお手付きになれば玉の輿も夢じゃないかも。
私もその養成所に入りたい。」
ウレシノの返答に、娘さん達は前のめりになって喰い付いて来たよ。
「メイド養成所は修養期間五年。
高貴な方に仕えるためのノウハウを一から十まで学んでもらいます。
養成所に求められているのは、即戦力の養成ですから…。
掃除や料理から始まって、帳簿付けに、手紙の代筆、清書。
主が必要とするあらゆる能力を身に着けないといけません。
朝五時起床で養成所の掃除から始まって…。」
ウレシノは、養成所で学ぶことをつらつらと説明して行ったの。
話が進むにつれ、『パパ活』娘達の顔色が悪くなっていったよ。
「朝五時の掃除から始まって、夜九時の座学終了までびっちりって…。
その間、休憩時間は三食の食事休みだけって。
無理、無理、無理。
そんな厳しいスケジュール、絶対こなせませんよ。」
まあ、畑仕事が嫌で逃げ出して来た人達だもんね、メイド養成所を修了する根性があるとは思えないよ。
「そうでしょうか。
これでも、大分難易度が落ちたのですよ。
以前でしたら、上級生は座学の後に殿方を悦ばせるための実技があったのですから。
あなた達がこのところパパ相手にして来たことに関して。
もっと、本格的な技術を教え込んだのです。
実技担当教官がそこにいる私の父みたいにねちっこい人ですと。
朝まで一睡もさせてもらえず、翌日の修練に臨むって人も居たみたいですので。」
そう言ってウレシノは、実父を蔑むような目付きで睨んでいたよ。
「殿方を悦ばせるって…。 そんなことまで仕事なのですか?」
「ええ、元々私達が居た国ではね。
だって、主が望むことは全てこなせるように育てるのが一族の矜持でしたから。
ですが、マロン陛下に召し抱えて頂き、国を移って以降。
陛下のご意向で、房中術の修練はしないことになりましたのでご安心を。
他にも、暗殺術や卒業試練の山中サバイバルも無くなりましたので。
だいぶ修練の内容は丸くなっているのですが…。」
最後、サバイバル試験の話を聞いた娘さん達はドン引きだったよ。
食べ物や飲み水も持たずに身一つで猛獣が住む山の中に放置されて、試験の最中に死者が出るとか。
三日以内にクリアできずに不合格になると、爆弾を抱えて敵陣に送り込まれるとかね。
まあ、ノノウ一族の実態はメイドに扮した間者だったからね。 苛酷な修行となるのも仕方がないのだけど。
「あのう、私、王宮勤めや貴族にお仕えしたいなんて贅沢は言いません。
もう少し、楽して稼げる仕事が良いのですが…。
あと、キレイな格好をして出来る仕事が良いかなって。
泥塗れになるような仕事は嫌なので…。」
**********
ウレシノがメイド養成所で引き受けても良いって言ってくれたのに。
楽して稼ぎたいなどと虫の良いことを言う『パパ活』娘達は誰一人として入所を希望しなかったの。
メイド養成所って、授業料は無料だし、養成期間は三食と寄宿舎がタダでとてもお得なのにね。
ちゃんとそのことも伝えたのに、それでも朝から晩までの訓練には耐えられないって。
その後も、タロウが冒険者を勧めたり、タルトとトルテが実家の商会に口利きしてあげるとか言ったんだけど。
やれトレント狩りのような体力仕事は無理だとか、やれ細かい帳簿付けなんて面倒だとか。
そんなネガティブなことばかり言って、仕事に就こうとしなかったんだ。
「やっぱり、私、パパと楽しいことしてお小遣いもらうのが性に合ってると思う。
一緒にご飯食べて、お風呂に入って、ベッドで気持ちいことしてお金もらえるって最高じゃん。」
いや、だから、それ犯罪だって…。
楽して稼ぐことを知ってしまったため、堅気な仕事に就こうと言う意識が無くなっているの。
「だから、それが出来るのは若いうちだけです。
あなた達が二十歳を過ぎる頃には、そのパパ達は誰も見向きしなくなりますよ。
それ以前に、身籠るか、病気を貰うかして、『トー横』に立つことも出来なくなるでしょうけど。」
ウレシノはそう忠告するのだけど…。
目の前の『パパ活』娘達には二十歳なんて、そんな先のことは想像できないみたい。
ウレシノと『パパ活』娘達のやり取りを聞いていて、これは厳しく罰しないといけないかなと考えていると。
「そんなに風俗営業で稼ぎたいなら、俺の店に来るか?
あんまり若い娘を働かせたくは無いが…。
俺の故郷と違って、この世界は年齢制限なんて無いからな。
そもそも成人年齢からしてあやふやだし。」
タロウの故郷では十八歳未満はそう言う仕事をさせちゃいけないと法に定められているらしい。
十八歳というのは、法の上でその年齢から大人として扱われる歳なんだと言うけど。
この大陸では一人前に働くようになったら大人扱いで、法で定めるなんてことして無いもんね。
「うん? お兄さんってこの公衆浴場のご主人でしょう。
なんだ、ここでそう言う商売をしているなら最初から言ってよ。
お風呂に入りに来た男の人のお相手をすればいいんでしょう。
任せておいてよ、それで幾らくらいもらえるの?」
「あれ、そう言う仕事はご法度なんでしょう。
だから、私達、今ここに閉じ込められているんじゃ?」
そんな『パパ活』娘達の反応に頭を抱えたタロウ。
「バカ、ここは家族連れで楽しむ健全な施設だ。
そんないかがわしい商売している訳ないだろう。
俺は確かにここの責任者だけど。
ここの営業を引き受けている『ひまわり会』って冒険者ギルドの会長なんだよ。
ひまわり会は別の所で『風呂屋』を幾つも経営してるから。
そっちの仕事がしたいなら、俺の所で使ってやっても良いぜ。」
「ギルドの『風呂屋』ってヤバヤバじゃないか。
私、聞かされたことがあるよ。
借金のカタに娘を奴隷働きさせるところだろう。
体がズタボロになるまで働かされて。
年季が明ける前にポックリ逝っちまうって聞いたぜ。」
流石に田舎に居てもギルドの『風呂屋』の悪評は耳に届いているみたい。
田舎では悪さをした娘を叱るのに、「悪さばかりしていると『風呂屋』に叩き売るぞ」と脅すらしいよ。
「今はそんなことしてねえよ。
ここにいるマロンが女王になった時に、冒険者ギルドを真っ当なものに叩き直すことになってな。
今は、借金のカタにとって無理やり娘を働かせるようなことは無いし。
俺がギルドを引き継いだ時に、借金のカタに働かされていた娘は借金チャラの上持参金を持たせて解放したよ。
本当はその時に『風呂屋』そのものを閉鎖するつもりだったんだ。
だけど、今更他の仕事は出来ないって姉さんが結構いてな。
そんなお姉さん方のために、営業を続けることにした。
だから、出来る限り泡姫のお姉さんの取り分を多くしているつもりだぜ。
それと、今お前らが捕まっているのは、『無許可』かつ『路上』で客を引いているからだよ。
ありゃ、街の風紀を乱すからな。
役所の許可を得た施設の中で行う『娼館営業』は禁じられてないぞ。
もちろん、ひまわり会の『風呂屋』はちゃんと許可を受けている。」
タロウはひまわり会の『風呂屋』は避妊も、病気予防もばっちりなので安心して働けると言ってたよ。
それと、給金も具体的に幾らくらい貰えるかって説明してた。
「それ良い! 今までとやること変わんないじゃない!
それで、大手を振って稼げるんだったら最高じゃん!」
このお姉さん、さっきウレシノからメイド養成所のことを聞いた時も同じようなことを言ってたね。
真っ先に食い付いたのに、仕事の内容を聞いてしり込みしちゃったの。
でも、このお姉さんだけじゃなく、目の前の『パパ活』娘達全員がタロウの話に乗り気だったよ。
「タロウ…、あなたね。
私がこの娘達を真っ当な道に引き戻そうとしているのに。
何で、娼婦稼業なんかに誘うのですか。
それはマロン陛下の御心にも背くことでしょうが。」
ウレシノはタロウに苦言を呈してたんだけど。
「まあ、まあ、俺もこいつ等には少しばかり腹が立ってな。
楽な仕事なんて無いってことを教えてやろうかと思って。
ベッドの上でマグロになって、スケベ親父の好きにさせるだけで稼ごうなんて。
舐めたことを言ってるからな。
風俗だって、きっちり稼ごうとしたら大変だって教えてやろうか思ってよ。
シフォンの研修にこいつらが耐えられると思うか?」
タロウはウレシノにそんな耳打ちをしていたよ。
ああ、シフォン姉ちゃんの研修で合格が出ないとお店に出られないんだっけ。
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嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
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転生貴族のスローライフ
マツユキ
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現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
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