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第二十章 王都の民の憩いの場を造ったよ
第683話 まさかのウレシノ父ちゃん登場…
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公衆浴場の開業から十五日目。
その日の公演後、十五日間連続で観覧したお客さんへの特典として、ご指名の出演者からほっぺにチューをしてもらったの。
おいら達は舞台の袖からその様子を覗いていたんだけど。
何やら気掛かりなことがあるみたいで、メイドのウレシノが微妙な顔をしていたんだ。
ウレシノが何を気にしていたのか、それは五日後に明らかになったよ。
五日後、それは公衆浴場の開業二十日目で、ペンネ姉ちゃん達『花小隊』と『STD四十八』の公演最終日だった。
二十日連続で公演を観覧したお客さんには、指名の出演者と一日デートのご褒美が与えられることになっていて。
そのデートにはおいらが王族専用船を出すことになっているんだ。
例によって、公衆浴場のロビーでお客さんの入りを観察していると。
「パパ。マイ、こんな素敵なところにお泊りできるなんて嬉しい。
夕食もとっても豪華なんでしょう。楽しみだな。」
仲の良い父娘連れが腕を組んで、宿泊カウンターへ向かって行ったよ。
「マイちゃんに喜んでもらって嬉しいよ。
夕食だけじゃなく、公演も観られるから楽しみにしておくれ。
そうそう、二人だけで入れるお風呂もあるから。」
父親が少しにやけ気味の顔で言うと。
「もう、パパったらエッチ。
顔がにやけてる。
でも、今日はご機嫌だから、一緒に入ってあげる。
マイ、お背中流してあげるね。」
そんな返事をしたマイさん。
でも…。
「ねえ、ウレシノ。
あのマイってお姉さん、アイって名前じゃなかったっけ?
五日前にやっぱりお父さんと一緒に来ていたよね。
サブにチューしてもらってたのを覚えてるよ。」
「ええ、そうですね。
ついでに言えば、父親が違いますね。
五日前の父親は、あんな中年太りの男じゃなかったです。
もう少し若くて精悍な雰囲気のイケメンでした。」
ウレシノに指摘されて良く見ると、確かに前回とお父さんが違っていたよ。
前見た時は、かなり若いお父さんでウレシノが実の父親かどうか疑ってる様子だったもの。
「どう言うことだろう?」
「そもそも、公演一回観るのに銀貨二十枚もするのに。
二十回連続観覧達成なんて無茶も良いところだと思っていたんです。
まさか、こんなことまでする輩が出て来るなんて…」
「こんなことって?」
「あっ、いえ、確たる証拠もございませんので。
憶測で陛下に申し上げるのは、差し控えさせて頂きます。
もし、このようなことが今後も続くようなら由々しき事態ですので。
証拠を掴んだうえ、改めてご説明させて頂きます。」
慎重を期すためか、ウレシノは意見を聞かせてくれなかったんだ。
ただ、五日前に疑念に思ったことがやはりその通りだったと、ウレシノは確信したみたい。
そして、言ったそばから、その確信を裏付ける証拠が現れたよ…。
**********
マイさん父娘(?)に続くように宿泊カウンターには父娘連れが訪れて来たの。
どうやらその時間は、宿泊プランで設定されてるチェックインの頃合いだったみたい。
そして、ある父娘連れがおいら達の目の前を通り掛かったんだ。
うん? あのお父さん、何処かで見覚えがあるんだけど、気のせいかな?
「パパ、大好き! 私、今日の公演、絶対に観たかったんだ!」
父親の腕を取って宿泊カウンターへ急かす娘さん。
「そんな慌てなくて大丈夫だよ。
ここの部屋は予約制で、ちゃんと予約してあるんだから。
公演まではまだ時間があるし。
部屋に荷物を置いたらまずはお風呂に入ろうよ。」
「もう、パパったら、せっかちなんだから。
パパこそ、そんなに慌てなくても平気だよ。
明日の昼まで、時間はたっぷりあるんだから。」
そんな会話を交わす父娘に、ウレシノはつかつかと歩み寄り。
「あらあら、面白い話をしてらっしゃいますこと。
私にも少々お二人の話を聞かせて頂けませんこと?」
ウレシノはそんな言葉を掛けるのが早いか、父親の耳をギュッと捻り上げたんだ。
「ウ、ウレシノ、お前、何でこんなところで。」
「きゃっ、パパに何するの! 酷いことしないで!」
ウレシノの顔を見てギョッとする父親。
いきなり現れて父親に乱暴したウレシノに、娘さんは非難の声を上げてたよ。
「お父様、何時の間に私に妹が出来たのでしょうか?
でも、その娘さんが仕込まれた頃には、この大陸に渡って来る術は無かったはず。」
どうりで見覚えがあったはずだよ。ウレシノの父ちゃんじゃない。
「えっ、パパの娘さん?
どうしよう、いきなり身バレしちゃうなんて…。
チェックインが済んでないから、チケットを貰って無いのに。」
ウレシノの素性を知って、娘さんは酷く焦っていたよ。
拙い状況だと気付いて逃げ出そうしてた。
「これから次のパパを探せば、公演に間に合うかしら。」なんてこぼしながら。
「ダメよ。
あなたにも聴きたいことがあるから一緒に来てもらうわよ。
因みに、逃げようなんて思わないことね。
私達の後ろに控える人達が見えるでしょう。
みんな、王宮の騎士達だからね。」
「えー、そんなー。
今日で二十日間連続観覧達成なのにー。
見逃してくれても良いでしょう。
私、ケンさんとデートしたいのー。」
ケンさんってのはSTD四十八のメンバーだね。『石清水のケン』という通り名があるの。
『石清水』と呼ばれる得意技があって、小っちゃい女の子が好きなんだって。
幼女のような容姿の耳長族最年少の姉ちゃんをお嫁さんにしてた。
「見逃す訳ないでしょう。
現行犯なのですからね、街娼行為はご法度ですよ。」
娘さんにそう告げると、ウレシノはトルテとタルトに指示して両脇から娘さんの腕を押えさせたよ。
うん? この娘さん、何か法に触れることをしていたのかな?
**********
そしてウレシノはひまわり会の職員にお願いして、空き部屋を一つ借りたんだ。
ウレシノは問い質すことがあると言って、タロウも同席させてたよ。
「さて、お父様、そのお嬢さんとはどういったご関係で?
どちらでお知り合いになられたのでしょうか。」
テーブルの向かいに座った父親に詰問するウレシノ。
「いや、どういう関係って、マロン陛下の前でそれはちょっと…。」
ウレシノの隣に座るおいらをチラリと見て、言い難そうに言葉を濁したウレシノ父ちゃん。
「わかりました。
陛下の前で口にするのは憚られるようなご関係なのですね。
それで、何処で知り合ったのでしょうか?
いつから、そんなご関係に?」
詰問を続けるウレシノの口調はいっそう冷ややかになってたよ。
「昨日知り合ったばかりだよ。信じてくれ。
昨日、中央広場の時計塔の横を歩いていたら声を掛けられたんだ。
今日ここの『宿泊プラン』を奢ってくれたら、今晩一晩付き合うって。」
おいら、知らなかったんだけど。
中央広場の時計塔の横にある路地って、若い人の間では『トー横』って呼ばれていて。
家出娘とか行き場のない若者の溜まり場になっているんだって。
お金を持っていそうなおじさんに声を掛けて、一夜の宿を提供してもらっているらしいの。
知り合った頃のシフォン姉ちゃんが同じようなことしてたって言ってたね。
若い娘さんのする事って、何処の地域でもあまり変わらないのかな?
ウレシノは、何か汚らわしいモノを見るような目で自分の父親を睨むと。
「このお嬢さんと知り合ったのは初めてなのですね。
ところで、その『トー横』という場所には随分とお詳しいようですね。
頻繁に通っているのはありませんか?」
皮肉たっぷりの口調で問い詰めたんだ。
すると…。
「パパ、あの路地では有名人だよ。
『トー横のパパ』って呼ばれて人気者なの。
ねちっこいけど、お小遣いいっぱい貰えるって。」
「あっ、こら!」
一緒にいた娘さんが口を滑らせたんだ。ウレシノ父、メチャクチャ焦ってた。
ウレシノは父親を一睨みすると、今度は視線を娘さんの方に移して。
「あなた、何時からこんなことをしているの?
あなたのしていることは犯罪よ。
牢屋に入れられたり、強制労働させられても文句言えないのよ。
捕まるならまだしも、質の悪い連中に食い物にされたらもっと大変よ。」
そんなお小言を言ったんだ。
でも、娘さんの方は悪びれた様子も無く…。
「えへへ、だって、ケンさんとデートしたかったんだもん。
でも、銀貨二十枚のチケを二十日分なんてお金無いし…。
友達がトー横に行けば手っ取り早く稼げるからって。
二日目からずっと…。」
ケロッとした表情で答えていたよ。
「呆れた…。自腹で支払ったのは初日だけですか…。
その友達って方も今日来ていますか?」
「ああ、友達の方は…。
ずっと援助してくれたパパが一昨日で力尽きちゃって。
昨日のチケをお願いできるパパが見つからなかったから。」
その友達は二日目からずっと同じパパにチケット代を集っていたそうだけど。
パパの方の資金力が尽きちゃったんだって。
そりゃそうだ。チケット一枚銀貨二十枚だもの、毎日買ってあげるなんて無理だよ。
どうやら友達の方は、デート権の望みが消えたらトー横に立つのを止めたみたい。
で、目の前の娘さんは、毎日違うパパを見つけていたらしいよ。
毎日違うパパって…、言葉が変だよ。
毎日、チェックアウトからチェックインまでの僅かな時間に、トー横で翌日のパパを見つけるんだって。
見つけたら直ぐに、ここに連れて来て翌日の宿泊予約を入れて…。
それから、その日のパパと待ち合わせのためトー横に戻るんだって。
だから、毎日、トー横とこの施設の間を行ったり来たりしていたらしいの。
なにそれ、凄いバイタリティーだね…。
トー横をブラついてるお金持ちそうなおじさんに手あたり次第声を掛けたんだって。
何処へ行くとなくトー横をふらついてるおじさん達の目的は分かり切っているので結構チョロいって。
トー横をふらついているおじさんの中でも、ウレシノ父ちゃんは結構有名人らしいよ。
ウレシノ父ちゃん、気前が良いとトー横の娘さん達に評判で競争率が高いんだって。
目の前の娘さん、ボヤいてたよ。
「昨日は『トー横のパパ』をゲットしてラッキーと思ったのに、こんなことになるとは。」って。
その日の公演後、十五日間連続で観覧したお客さんへの特典として、ご指名の出演者からほっぺにチューをしてもらったの。
おいら達は舞台の袖からその様子を覗いていたんだけど。
何やら気掛かりなことがあるみたいで、メイドのウレシノが微妙な顔をしていたんだ。
ウレシノが何を気にしていたのか、それは五日後に明らかになったよ。
五日後、それは公衆浴場の開業二十日目で、ペンネ姉ちゃん達『花小隊』と『STD四十八』の公演最終日だった。
二十日連続で公演を観覧したお客さんには、指名の出演者と一日デートのご褒美が与えられることになっていて。
そのデートにはおいらが王族専用船を出すことになっているんだ。
例によって、公衆浴場のロビーでお客さんの入りを観察していると。
「パパ。マイ、こんな素敵なところにお泊りできるなんて嬉しい。
夕食もとっても豪華なんでしょう。楽しみだな。」
仲の良い父娘連れが腕を組んで、宿泊カウンターへ向かって行ったよ。
「マイちゃんに喜んでもらって嬉しいよ。
夕食だけじゃなく、公演も観られるから楽しみにしておくれ。
そうそう、二人だけで入れるお風呂もあるから。」
父親が少しにやけ気味の顔で言うと。
「もう、パパったらエッチ。
顔がにやけてる。
でも、今日はご機嫌だから、一緒に入ってあげる。
マイ、お背中流してあげるね。」
そんな返事をしたマイさん。
でも…。
「ねえ、ウレシノ。
あのマイってお姉さん、アイって名前じゃなかったっけ?
五日前にやっぱりお父さんと一緒に来ていたよね。
サブにチューしてもらってたのを覚えてるよ。」
「ええ、そうですね。
ついでに言えば、父親が違いますね。
五日前の父親は、あんな中年太りの男じゃなかったです。
もう少し若くて精悍な雰囲気のイケメンでした。」
ウレシノに指摘されて良く見ると、確かに前回とお父さんが違っていたよ。
前見た時は、かなり若いお父さんでウレシノが実の父親かどうか疑ってる様子だったもの。
「どう言うことだろう?」
「そもそも、公演一回観るのに銀貨二十枚もするのに。
二十回連続観覧達成なんて無茶も良いところだと思っていたんです。
まさか、こんなことまでする輩が出て来るなんて…」
「こんなことって?」
「あっ、いえ、確たる証拠もございませんので。
憶測で陛下に申し上げるのは、差し控えさせて頂きます。
もし、このようなことが今後も続くようなら由々しき事態ですので。
証拠を掴んだうえ、改めてご説明させて頂きます。」
慎重を期すためか、ウレシノは意見を聞かせてくれなかったんだ。
ただ、五日前に疑念に思ったことがやはりその通りだったと、ウレシノは確信したみたい。
そして、言ったそばから、その確信を裏付ける証拠が現れたよ…。
**********
マイさん父娘(?)に続くように宿泊カウンターには父娘連れが訪れて来たの。
どうやらその時間は、宿泊プランで設定されてるチェックインの頃合いだったみたい。
そして、ある父娘連れがおいら達の目の前を通り掛かったんだ。
うん? あのお父さん、何処かで見覚えがあるんだけど、気のせいかな?
「パパ、大好き! 私、今日の公演、絶対に観たかったんだ!」
父親の腕を取って宿泊カウンターへ急かす娘さん。
「そんな慌てなくて大丈夫だよ。
ここの部屋は予約制で、ちゃんと予約してあるんだから。
公演まではまだ時間があるし。
部屋に荷物を置いたらまずはお風呂に入ろうよ。」
「もう、パパったら、せっかちなんだから。
パパこそ、そんなに慌てなくても平気だよ。
明日の昼まで、時間はたっぷりあるんだから。」
そんな会話を交わす父娘に、ウレシノはつかつかと歩み寄り。
「あらあら、面白い話をしてらっしゃいますこと。
私にも少々お二人の話を聞かせて頂けませんこと?」
ウレシノはそんな言葉を掛けるのが早いか、父親の耳をギュッと捻り上げたんだ。
「ウ、ウレシノ、お前、何でこんなところで。」
「きゃっ、パパに何するの! 酷いことしないで!」
ウレシノの顔を見てギョッとする父親。
いきなり現れて父親に乱暴したウレシノに、娘さんは非難の声を上げてたよ。
「お父様、何時の間に私に妹が出来たのでしょうか?
でも、その娘さんが仕込まれた頃には、この大陸に渡って来る術は無かったはず。」
どうりで見覚えがあったはずだよ。ウレシノの父ちゃんじゃない。
「えっ、パパの娘さん?
どうしよう、いきなり身バレしちゃうなんて…。
チェックインが済んでないから、チケットを貰って無いのに。」
ウレシノの素性を知って、娘さんは酷く焦っていたよ。
拙い状況だと気付いて逃げ出そうしてた。
「これから次のパパを探せば、公演に間に合うかしら。」なんてこぼしながら。
「ダメよ。
あなたにも聴きたいことがあるから一緒に来てもらうわよ。
因みに、逃げようなんて思わないことね。
私達の後ろに控える人達が見えるでしょう。
みんな、王宮の騎士達だからね。」
「えー、そんなー。
今日で二十日間連続観覧達成なのにー。
見逃してくれても良いでしょう。
私、ケンさんとデートしたいのー。」
ケンさんってのはSTD四十八のメンバーだね。『石清水のケン』という通り名があるの。
『石清水』と呼ばれる得意技があって、小っちゃい女の子が好きなんだって。
幼女のような容姿の耳長族最年少の姉ちゃんをお嫁さんにしてた。
「見逃す訳ないでしょう。
現行犯なのですからね、街娼行為はご法度ですよ。」
娘さんにそう告げると、ウレシノはトルテとタルトに指示して両脇から娘さんの腕を押えさせたよ。
うん? この娘さん、何か法に触れることをしていたのかな?
**********
そしてウレシノはひまわり会の職員にお願いして、空き部屋を一つ借りたんだ。
ウレシノは問い質すことがあると言って、タロウも同席させてたよ。
「さて、お父様、そのお嬢さんとはどういったご関係で?
どちらでお知り合いになられたのでしょうか。」
テーブルの向かいに座った父親に詰問するウレシノ。
「いや、どういう関係って、マロン陛下の前でそれはちょっと…。」
ウレシノの隣に座るおいらをチラリと見て、言い難そうに言葉を濁したウレシノ父ちゃん。
「わかりました。
陛下の前で口にするのは憚られるようなご関係なのですね。
それで、何処で知り合ったのでしょうか?
いつから、そんなご関係に?」
詰問を続けるウレシノの口調はいっそう冷ややかになってたよ。
「昨日知り合ったばかりだよ。信じてくれ。
昨日、中央広場の時計塔の横を歩いていたら声を掛けられたんだ。
今日ここの『宿泊プラン』を奢ってくれたら、今晩一晩付き合うって。」
おいら、知らなかったんだけど。
中央広場の時計塔の横にある路地って、若い人の間では『トー横』って呼ばれていて。
家出娘とか行き場のない若者の溜まり場になっているんだって。
お金を持っていそうなおじさんに声を掛けて、一夜の宿を提供してもらっているらしいの。
知り合った頃のシフォン姉ちゃんが同じようなことしてたって言ってたね。
若い娘さんのする事って、何処の地域でもあまり変わらないのかな?
ウレシノは、何か汚らわしいモノを見るような目で自分の父親を睨むと。
「このお嬢さんと知り合ったのは初めてなのですね。
ところで、その『トー横』という場所には随分とお詳しいようですね。
頻繁に通っているのはありませんか?」
皮肉たっぷりの口調で問い詰めたんだ。
すると…。
「パパ、あの路地では有名人だよ。
『トー横のパパ』って呼ばれて人気者なの。
ねちっこいけど、お小遣いいっぱい貰えるって。」
「あっ、こら!」
一緒にいた娘さんが口を滑らせたんだ。ウレシノ父、メチャクチャ焦ってた。
ウレシノは父親を一睨みすると、今度は視線を娘さんの方に移して。
「あなた、何時からこんなことをしているの?
あなたのしていることは犯罪よ。
牢屋に入れられたり、強制労働させられても文句言えないのよ。
捕まるならまだしも、質の悪い連中に食い物にされたらもっと大変よ。」
そんなお小言を言ったんだ。
でも、娘さんの方は悪びれた様子も無く…。
「えへへ、だって、ケンさんとデートしたかったんだもん。
でも、銀貨二十枚のチケを二十日分なんてお金無いし…。
友達がトー横に行けば手っ取り早く稼げるからって。
二日目からずっと…。」
ケロッとした表情で答えていたよ。
「呆れた…。自腹で支払ったのは初日だけですか…。
その友達って方も今日来ていますか?」
「ああ、友達の方は…。
ずっと援助してくれたパパが一昨日で力尽きちゃって。
昨日のチケをお願いできるパパが見つからなかったから。」
その友達は二日目からずっと同じパパにチケット代を集っていたそうだけど。
パパの方の資金力が尽きちゃったんだって。
そりゃそうだ。チケット一枚銀貨二十枚だもの、毎日買ってあげるなんて無理だよ。
どうやら友達の方は、デート権の望みが消えたらトー横に立つのを止めたみたい。
で、目の前の娘さんは、毎日違うパパを見つけていたらしいよ。
毎日違うパパって…、言葉が変だよ。
毎日、チェックアウトからチェックインまでの僅かな時間に、トー横で翌日のパパを見つけるんだって。
見つけたら直ぐに、ここに連れて来て翌日の宿泊予約を入れて…。
それから、その日のパパと待ち合わせのためトー横に戻るんだって。
だから、毎日、トー横とこの施設の間を行ったり来たりしていたらしいの。
なにそれ、凄いバイタリティーだね…。
トー横をブラついてるお金持ちそうなおじさんに手あたり次第声を掛けたんだって。
何処へ行くとなくトー横をふらついてるおじさん達の目的は分かり切っているので結構チョロいって。
トー横をふらついているおじさんの中でも、ウレシノ父ちゃんは結構有名人らしいよ。
ウレシノ父ちゃん、気前が良いとトー横の娘さん達に評判で競争率が高いんだって。
目の前の娘さん、ボヤいてたよ。
「昨日は『トー横のパパ』をゲットしてラッキーと思ったのに、こんなことになるとは。」って。
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