ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
657 / 848
第十九章 難儀な連中が現れたよ…

第657話 頭を抱えちゃったらしいよ…

しおりを挟む
 「他人と争うな。」、「他人の物を奪うな。」、そう口を酸っぱくして躾けたにも関わらず。
 最初にマリア(マロン)さんが創り出した人工生命体のアダムは、他の集団を侵略したそうだよ。
 衝突防止のために緩衝地帯として設けた魔物の領域を越えて、近隣の集団に攻め入ったらしいの。

 幾度か血の惨劇を招いた末、アダムは三つの集団を併呑しこの大陸で最初の国を建国したんだって。

「でも、マロンさんはアダムを叱りに行かなかったの?」

「もちろん、行ったわよ。
 だって、単なる喧嘩じゃなくて、殺人まで犯しているのよ。
 絶対にダメだとちゃんと教えてあったのに…。」

 一つ目の集団を侵略した時に、そこのリーダーを惨殺したと知りマリアさんは激怒したらしい。
 アカシアさんと一緒にアダムの所に乗り込んだそうなんなんだけど。

「アダムは私の言葉に耳を貸さなかったの。
 『煩い、ババア、黙ってろ!』ですって…。」

 アダムは取り巻き達にマリアさんの排除を命じたそうで、渋々その場を退席したしたそうだよ。
 いったい何処で育て方を間違えたのかしらって、マリアさんはため息交じりに呟いてた。

「アダムがそんなんじゃ、もう一人の問題児も暴れたんじゃないの?
 ノアはどうなったの?」

「それね、私も心配してたのよ。
 でもノアの場合、一緒に入植したメンバーが良かったの。
 とても親分肌の女の子が居てね。
 その子がノアを上手く操縦してくれたのよ。
 一応、ノアがリーダーと言うことになっていたんだけど。
 ノアは夫婦になったその娘の尻に敷かれて逆らえなかったの。」

 リーダーなのだから率先して働けと、その娘はノアの尻を叩いたんだって。
 リーダーのノアが先頭にたって農作業に勤しむものだから、他の男の子も真面目に取り組まざるを得ず。
 その町は、とてもスムーズに発展したそうだよ。

 マリアさん、言ってたよ、アダムにも良い伴侶が居たらよかったのにって。
 因みに、最初の集団では『俺様』気質のアダムは、女の子に疎まれていたそうで。
 アダムが飛び出したのは、自分の集団からお嫁さんが見つからなかったって理由もあるらしい。
 冒険心からだけでは無く、何処か他の集団から嫁さんを手に入れようって下心もあっての行動だったって。

 アダムは他の集団を併吞する度に気に入った娘を召し上げて、最終的には五人もお嫁さんが居たらしい。
 「ホント、サル山のボスザルみたいな子だったわ。」と言って、マリアさんはまた溜息を吐いてたよ。

       **********

「もっとも、私がリアルタイムで把握しているのは最初の侵攻だけなの。
 アダムが二つの目の魔物の領域を討伐し始める前に、私は最初の眠りに就いたから。」

 アダムは最初の町を征服した後、その町で一番可愛い娘を強引に嫁に召し上げたそうで。
 しばらくは、その娘にご執心で大人しくなったらしいの。
 これで、落ち着いてくれるのではとマリアさんは期待したそうだよ。

 その頃、既に六十歳を超えていたマリアさん。
 嫁さんを貰うと言う望みを叶えたアダムが、もう他の町を襲うことは無いだろうと思うことにしたそうで。
 素敵な恋をするって自らの野望を叶えるべく、アカシアさんの『積載庫』の中で眠りに就いたんだって。

 何時までも人族のことに関わっていたら、自分の人生が終わってしまうと言うことで。
 アダムのことはもう心配いらないと、自分に言い聞かせることにしたらしいよ。

「それから、約百年後に目覚めた時、驚いたわ。
 アダムがあの後二つも、別の集団を飲み込んだと聞いたから。
 あのサルったら、お嫁さんが一人じゃ満足しなかったみたい。
 でもね、もっと驚いたのは、あと数回眠りに就いた後に起こったことなのよ。」

 アダムとノアを最初に入植させてから、四百年程過ぎた頃の出来事らしいよ。
 各地に入植した集団が順調に成長した結果、中央に広がる大平原には小国が沢山出来ていたそうなの。
 そして、その小国の幾つかがアダムの国同様、魔物の領域に到達していたらしい。
 その国々はアダムのような冒険心からではなく、開拓が進んだ結果、魔物の領域に行き当たったらしいけど。

「まあ、自分達に与えられた領域を開拓し終えた訳でも無いのよね。
 町がある程度大きくなると、そこから独立して新たな町を作ろうとする人々が出て来たの。
 新たな集団は、元の町との軋轢を避けるためある程度距離を取って開墾を始めるようでね。
 それを何世代も繰り返した結果、四百年経ったら魔物の領域まで到達したって訳よ。」

 その結果、個々の集団に与えた領域は、虫食い状態に点々と開拓が進んだそうなの。
 マリアさんは言うんだ、人には根源的に所有欲があるので自分の土地を手に入れたいって欲求は理解できると。
 とは言え、アダムみたいに意図的に探検した訳でも無いのに、たった四百年で魔物の領域まで達したのは想定外だったらしい。

「じゃあ、自分の土地を手に入れたいと望んで。
 元居た町から分離した人達が、魔物の領域に足を踏み入れたんだね。」

「そう言うこと。
 魔物の領域に到達した集団は、チャレンジャーにも魔物を討伐しながら開墾を続けたのよ。
 そして、私が目覚めた時には幾つかの集団は、魔物の領域を越えていたの。」

「それで、魔物の領域を越えたところで、別の集団と鉢合わせした訳だ。」

「そう、お互い土地を求めている集団同士だから…。
 新たな土地があると思っているところに。
 突如として競合者が現れて、心穏やかなはずは無いわね。」

 片や新たな土地を求めて魔物の領域を越えた来た人達で、新たな土地が欲しい訳だけど。
 魔物の領域を越えた先には、既にそこまで開墾してきた人達が居た。
 そこで生活を営んでいる人達が余所者を受け入れる義理は無いし、ましてや土地を分ける義理など当然ない訳で…。

 結局、魔物の領域を越えて来た集団は引き返すことを良しとはせずに、略奪者となった訳だ。

「目覚めてみれば、大陸中央に広がる大平原で争いが多発していたの。
 仲介に入ろうにも、既に修復不可能なくらい両者の関係が悪化していて。
 私の力では如何ともし難かったわ。」

 マリアさんが知った時には既に流血沙汰を起こした後で、お互いに憎しみを持っているケースが多かったらしい。
 あれほど争いの無い世の中を創ろうと努力していたのに、惑星テルルの二の舞いになるかと思うと気が遠くなったそうだよ。

「テルルの民の末裔が飢えないようにと。
 育てやすく多収穫な作物を与え。
 衣服にも不自由しないように。
 多収穫で環境耐性の強い綿花や亜麻なんかも与えたのよ。
 巨大な繭玉を作るカイコだって。
 製糸や織布についても、動力発明前としては最大限効率化した機械を与えたの。
 衣食住が満たされれば、人は争いをしないと思ったのに…。」

 巨大なカイコって…、まさか、あのイモムシもマリアさんが生み出したの?
 それはともかく。
 争いを止めようとしない人族に、マリアさんは愛想が尽きたとのことで。
 妖精族に指示を出したそうだよ。
 争いを始めた集団には、今後一切『妖精の泉』の水を与える必要がないと。
 この時点で、過保護な事は全て止めることにしたんだって。

「もう、私、失望したわ。
 人族のことは放置で、ふて寝することにしたの。
 また、百年ほどね。」

 いや、ふて寝って…、本当に争いを制止しないで良かったの? 
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

リゼと薬草図鑑

yu-kie
ファンタジー
緑の加護を持って生まれた少女リゼ。解析スキルを持つリゼは薬草研究のために図鑑を片手に薬草さがしのお散歩物語始まりの話。 一旦完結とします。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...