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第十九章 難儀な連中が現れたよ…
第648話 ヒトの力は、ペテン師の騙る『神』の力を越えるよ
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千代前に遡れば、誰もが神の御子に辿り着くなどと妄言を吐き。
神の化身である自分は、全ての人間の真の母だなどと嘯いた教主だけど。
おいらが王家に伝わる家系図を示し、自分が第一万三千三百三十五代目と伝えると。
教主は目を丸くして、あごが外れんばかりにあんぐりと口を開いて驚いていたよ。
何てたって、オードゥラ大陸では通じた詭弁がはなから通じないのだから。
たった千代じゃ神に辿り着かないどころか、それより前のご先祖様の方が圧倒的に多いものね。
「嘘ざます。
そんなの箔付けのハッタリに決まっているざます。
神よりも古い人類などあってはならないざます。」
自分に不都合な事実を『嘘』とか、『フェイク』と一方的に決めつけるのって、何処のペテン師でも一緒だね。
『嘘』だと言うなら、誰が見聞きしても納得できる根拠を示して欲しいよ、
「一応、この家系図にはそれなりの信憑性はあるよ
ご先祖様の生年月日や没年月日、それに在位期間も記されているし。」
「嘘ざます、ハッタリざます。
後付けで日時を当て嵌めたに違いないざます。
そんなの誰か見て来た者でもいるのざますか。」
「それは、おあいこでしょう。
千代前に『神』が人類を創ったところを見た人が居るの?
そもそも、『神』なんてモノもそうでしょう。
おばさんの旦那さんが、勝手に『神』だと自称しているだけで。
『神』の存在を証明するモノなんて何も無いんだもの。」
だいたい、自称『神』の旦那さんが生まれたのが八十八年前って…。
目の前のオバハンはどう見ても五十前後だよ。
三十歳、下手したら四十歳近く歳が離れているじゃない。
オバハンが幾つの時に結婚したのか知らないけど、唯のロリコンオヤジだと思うよ。
『神』なんて崇拝の対象じゃなくて、汚物を見るような目で蔑まれる『変質者』だと思う。
「キー、まだ、神を侮辱するざますか。
では、誰が人を創り給うたと言うのですか。
人はその辺の犬畜生と全く異なる特別な存在なのざます。
神以外の誰が創れるざますか。」
おいらが、神の存在に対する疑念を口にすると。
教主のオバハンはムキになっておいらに噛み付いて来たよ。
「いや、人は何も特別な存在じゃないから。
その辺に入る犬だって、何ならイモムシだって。
等しく一つの命を持つ生き物だもの。
それに、こと、この大陸の人に関しては。
おいら、誰が創ったのか知っているよ。
神じゃなくて、普通の人だった。
今から約四十万年前に、空から降りてきた人が創ったんだ。」
父ちゃん、旅をしている時にいつも言ってたもの。
人だけが特別だと思うのは、人の思い上がりだと。
どんな生き物にも大切な命があるのだから、無益な殺生はしたらダメだってね。
狩りをする時も、その日食べるだけの最低限の獲物しか狩らなかったんだ
「空から降りて来たって…。
それが神ざましょう。
人が空から降りて来るはずが無いざます。」
まあ、そうだよね。
普通、空から人が降って来たなんて言っても信じないよね。
**********
その時、おいらの目に一人の女性が目に留まったんだ。
その人は屋台で買ったと思しき串焼き肉を頬張り、野次馬に混じって面白そうにこちらを見ていたの。
「ねえ、マリアさん。
この人に見せてあげてよ。
人が空から降りて来るところを。」
唐突においらが声を掛けると。
「ハェっ?
うっ、ゴホン、ゴホン…。」
虚を突かれて目を丸くしたマリアさん、驚いて串焼きを喉に詰まらせたみたいだった。
慌ててジョッキに入った麦酒を飲み干してたよ。
「ふうっ、助かった…。
マロンちゃん、いったい何を言ってるのかしら?
空から降りて来いって?」
「マリアさんでしょう。
数日前の夜に目撃された、空飛ぶ光の玉って。」
だって、あの日、マリアさんは夜に訪ねて来たと言ってたもん。
面識の無い人を、夜に訪ねる人は普通はいないよ。
街の外は物騒なので馬車は夕暮れ前に到着するから、常識的な人なら宿で一泊して翌日訪ねるもん。
きっとマリアさんは、宿が受付終了した真夜中にこの街に到着したんだと思ったの。
いや、最初から宿に泊まる気なんか無かったのか。
空を飛んでいるのを目撃されるのは避けるため、わざわざ真夜中を選んだのだと思う。
マリアさん、この街の人々が真夜中まで夜遊びしてるとは想像してなかったみたいだし。
それに、目撃情報でも光の玉はタロウの屋敷の上空で消えたとなってるしね。
きっと事前情報で、タロウが押しに弱いことを知っていたのだろうね。
最初からタロウの家に泊めてもらうつもりで、人目につかない夜に飛んできたんだ。
その辺のことを指摘した後、おいらはもう一つ付け加えたよ。
「それに、マリアって名前も、おいらに会った時に咄嗟に考えたんでしょう。
素性を隠すためか、単に同じ名前じゃ紛らわしいってだけの理由かも知れないけど。
違うかな、創造主のマロンさん。」
タロウに関する事前情報を渡したのは、ムルティか、アルトだね。
「あら、何時から気付いてたの?
賢いのね。
流石、イブの血を引くだけあるわね。
似ているのは、髪や瞳の色だけじゃないのね。」
「この間、ネズミ講もどきを摘発した晩かな。
あの時、言ってたよね。
マリアさんが知っているこの街の夜は閑散としてたって。
でもね、今は六十歳を過ぎている宰相が言ってたんだ。
この王都、宰相の若い頃から賑わっていて、よく街を飲み歩いたって。
それじゃ、マリアさん、いったい何時この街に来たのって。」
それにね、初めてマリアさんに会った時から気になっていたんだ。
何処かで会ったような気がするって。
何のことは無い、あの数日前にアカシアさんに見せてもらった映像に映っていたんだ。
映像の中のマロンさんは、いつも疲れた表情で、髪はボサボサ、目の下には濃いクマがデフォだったから。
活き活きとした表情で、髪の毛サラサラのマリアさんと直ぐには結び付かなかったの。
それに一つ謎なことがあるしね。
マリアさん、どう見ても映像の中のマロンさんより若返っているんだもの。
「あちゃー、迂闊だったわ。
前に来たのは四十万年くらい前ですものね。
この街は最初から計画的に創られた街で。
街の建設当初は、ちょくちょく訪ねて来てイブの相談に乗ってたのよ。」
どうやら、マリアさんがこの街に来たのって建国当初のことらしい…。
思った以上に昔のことだったよ。
**********
「まあ、仕方ないか。
可愛い子孫のたっての頼みだし。
そこのいかがわしいペテン師に教えてあげましょう。
人の技術は、ペテン師風情で想像できる神の力を遥かに凌ぐことを。」
教主のオバハンをペテン師と断じたマリアさん。
『積載庫』の中から、何やら大きな鉄(?)の塊を取り出したの。
全体的に明るい黄色をしていて、地面には丸い輪っかで接地しているの。
その真ん中部分には人が一人腰掛けられる座席が置かれた空間があって。
その空間は透明なガラスのようなもので覆われていたよ。
「あなた、いったいなんざます。
いきなり、話しに割り込んできたかと思えば。
こんな大きな物をいったい何処から出したざます。
この国はいったい何ざますか。
何で、物やら、人やらが、何も無い空間から現れるざますか。」
教主のオバハン、ペテン師呼ばわりされても怒らなかったよ。
突然現れた目を引く物体に気を取られて、ペテン師と呼ばれたことに気付かなかったみたい。
おいら達はすっかり慣れっこだけど、『積載庫』から出て来る物を初めて見たら驚くのも頷けるよ。
「それじゃ、見せてあげるね。」
そんな言葉と共に、マリアさんは透明な部分をパカっと開いて座席に乗り込んだの。
そして、少しの間、手許で何か細かい作業をしたかと思うと。
ブーン!
そんな大きな音がマリアさんの乗る物体から響いて来たよ。
そして、丸い四つの輪っかから土煙が上がったかと思うと…。
マリアさんを乗せた物体は、垂直に浮き上がったんだ。
「「「「おおっ!」」」」
広場は、野次馬の発するそんな驚嘆の声に包まれたよ。
「テルルってのは、地球に比べて随分と技術力が進んでいたんだな。
空飛ぶ車なんてのは地球じゃ、実験段階だったのに、
テルルじゃ、普通に市民の移動手段だったらしいからな。」
タロウが感心している間にも、マリアさんを乗せた空飛ぶ車はどんどん上昇し。
やがて、広場で一番高い建物の屋根を越える高さまで昇っちゃった。
その高さで一旦制止した空飛ぶ車は、それから縦横無尽に空を飛び回ったの。
もう広場は大歓声に包まれ、集まった人達にはとても良い見せ物になってたよ。
神の化身である自分は、全ての人間の真の母だなどと嘯いた教主だけど。
おいらが王家に伝わる家系図を示し、自分が第一万三千三百三十五代目と伝えると。
教主は目を丸くして、あごが外れんばかりにあんぐりと口を開いて驚いていたよ。
何てたって、オードゥラ大陸では通じた詭弁がはなから通じないのだから。
たった千代じゃ神に辿り着かないどころか、それより前のご先祖様の方が圧倒的に多いものね。
「嘘ざます。
そんなの箔付けのハッタリに決まっているざます。
神よりも古い人類などあってはならないざます。」
自分に不都合な事実を『嘘』とか、『フェイク』と一方的に決めつけるのって、何処のペテン師でも一緒だね。
『嘘』だと言うなら、誰が見聞きしても納得できる根拠を示して欲しいよ、
「一応、この家系図にはそれなりの信憑性はあるよ
ご先祖様の生年月日や没年月日、それに在位期間も記されているし。」
「嘘ざます、ハッタリざます。
後付けで日時を当て嵌めたに違いないざます。
そんなの誰か見て来た者でもいるのざますか。」
「それは、おあいこでしょう。
千代前に『神』が人類を創ったところを見た人が居るの?
そもそも、『神』なんてモノもそうでしょう。
おばさんの旦那さんが、勝手に『神』だと自称しているだけで。
『神』の存在を証明するモノなんて何も無いんだもの。」
だいたい、自称『神』の旦那さんが生まれたのが八十八年前って…。
目の前のオバハンはどう見ても五十前後だよ。
三十歳、下手したら四十歳近く歳が離れているじゃない。
オバハンが幾つの時に結婚したのか知らないけど、唯のロリコンオヤジだと思うよ。
『神』なんて崇拝の対象じゃなくて、汚物を見るような目で蔑まれる『変質者』だと思う。
「キー、まだ、神を侮辱するざますか。
では、誰が人を創り給うたと言うのですか。
人はその辺の犬畜生と全く異なる特別な存在なのざます。
神以外の誰が創れるざますか。」
おいらが、神の存在に対する疑念を口にすると。
教主のオバハンはムキになっておいらに噛み付いて来たよ。
「いや、人は何も特別な存在じゃないから。
その辺に入る犬だって、何ならイモムシだって。
等しく一つの命を持つ生き物だもの。
それに、こと、この大陸の人に関しては。
おいら、誰が創ったのか知っているよ。
神じゃなくて、普通の人だった。
今から約四十万年前に、空から降りてきた人が創ったんだ。」
父ちゃん、旅をしている時にいつも言ってたもの。
人だけが特別だと思うのは、人の思い上がりだと。
どんな生き物にも大切な命があるのだから、無益な殺生はしたらダメだってね。
狩りをする時も、その日食べるだけの最低限の獲物しか狩らなかったんだ
「空から降りて来たって…。
それが神ざましょう。
人が空から降りて来るはずが無いざます。」
まあ、そうだよね。
普通、空から人が降って来たなんて言っても信じないよね。
**********
その時、おいらの目に一人の女性が目に留まったんだ。
その人は屋台で買ったと思しき串焼き肉を頬張り、野次馬に混じって面白そうにこちらを見ていたの。
「ねえ、マリアさん。
この人に見せてあげてよ。
人が空から降りて来るところを。」
唐突においらが声を掛けると。
「ハェっ?
うっ、ゴホン、ゴホン…。」
虚を突かれて目を丸くしたマリアさん、驚いて串焼きを喉に詰まらせたみたいだった。
慌ててジョッキに入った麦酒を飲み干してたよ。
「ふうっ、助かった…。
マロンちゃん、いったい何を言ってるのかしら?
空から降りて来いって?」
「マリアさんでしょう。
数日前の夜に目撃された、空飛ぶ光の玉って。」
だって、あの日、マリアさんは夜に訪ねて来たと言ってたもん。
面識の無い人を、夜に訪ねる人は普通はいないよ。
街の外は物騒なので馬車は夕暮れ前に到着するから、常識的な人なら宿で一泊して翌日訪ねるもん。
きっとマリアさんは、宿が受付終了した真夜中にこの街に到着したんだと思ったの。
いや、最初から宿に泊まる気なんか無かったのか。
空を飛んでいるのを目撃されるのは避けるため、わざわざ真夜中を選んだのだと思う。
マリアさん、この街の人々が真夜中まで夜遊びしてるとは想像してなかったみたいだし。
それに、目撃情報でも光の玉はタロウの屋敷の上空で消えたとなってるしね。
きっと事前情報で、タロウが押しに弱いことを知っていたのだろうね。
最初からタロウの家に泊めてもらうつもりで、人目につかない夜に飛んできたんだ。
その辺のことを指摘した後、おいらはもう一つ付け加えたよ。
「それに、マリアって名前も、おいらに会った時に咄嗟に考えたんでしょう。
素性を隠すためか、単に同じ名前じゃ紛らわしいってだけの理由かも知れないけど。
違うかな、創造主のマロンさん。」
タロウに関する事前情報を渡したのは、ムルティか、アルトだね。
「あら、何時から気付いてたの?
賢いのね。
流石、イブの血を引くだけあるわね。
似ているのは、髪や瞳の色だけじゃないのね。」
「この間、ネズミ講もどきを摘発した晩かな。
あの時、言ってたよね。
マリアさんが知っているこの街の夜は閑散としてたって。
でもね、今は六十歳を過ぎている宰相が言ってたんだ。
この王都、宰相の若い頃から賑わっていて、よく街を飲み歩いたって。
それじゃ、マリアさん、いったい何時この街に来たのって。」
それにね、初めてマリアさんに会った時から気になっていたんだ。
何処かで会ったような気がするって。
何のことは無い、あの数日前にアカシアさんに見せてもらった映像に映っていたんだ。
映像の中のマロンさんは、いつも疲れた表情で、髪はボサボサ、目の下には濃いクマがデフォだったから。
活き活きとした表情で、髪の毛サラサラのマリアさんと直ぐには結び付かなかったの。
それに一つ謎なことがあるしね。
マリアさん、どう見ても映像の中のマロンさんより若返っているんだもの。
「あちゃー、迂闊だったわ。
前に来たのは四十万年くらい前ですものね。
この街は最初から計画的に創られた街で。
街の建設当初は、ちょくちょく訪ねて来てイブの相談に乗ってたのよ。」
どうやら、マリアさんがこの街に来たのって建国当初のことらしい…。
思った以上に昔のことだったよ。
**********
「まあ、仕方ないか。
可愛い子孫のたっての頼みだし。
そこのいかがわしいペテン師に教えてあげましょう。
人の技術は、ペテン師風情で想像できる神の力を遥かに凌ぐことを。」
教主のオバハンをペテン師と断じたマリアさん。
『積載庫』の中から、何やら大きな鉄(?)の塊を取り出したの。
全体的に明るい黄色をしていて、地面には丸い輪っかで接地しているの。
その真ん中部分には人が一人腰掛けられる座席が置かれた空間があって。
その空間は透明なガラスのようなもので覆われていたよ。
「あなた、いったいなんざます。
いきなり、話しに割り込んできたかと思えば。
こんな大きな物をいったい何処から出したざます。
この国はいったい何ざますか。
何で、物やら、人やらが、何も無い空間から現れるざますか。」
教主のオバハン、ペテン師呼ばわりされても怒らなかったよ。
突然現れた目を引く物体に気を取られて、ペテン師と呼ばれたことに気付かなかったみたい。
おいら達はすっかり慣れっこだけど、『積載庫』から出て来る物を初めて見たら驚くのも頷けるよ。
「それじゃ、見せてあげるね。」
そんな言葉と共に、マリアさんは透明な部分をパカっと開いて座席に乗り込んだの。
そして、少しの間、手許で何か細かい作業をしたかと思うと。
ブーン!
そんな大きな音がマリアさんの乗る物体から響いて来たよ。
そして、丸い四つの輪っかから土煙が上がったかと思うと…。
マリアさんを乗せた物体は、垂直に浮き上がったんだ。
「「「「おおっ!」」」」
広場は、野次馬の発するそんな驚嘆の声に包まれたよ。
「テルルってのは、地球に比べて随分と技術力が進んでいたんだな。
空飛ぶ車なんてのは地球じゃ、実験段階だったのに、
テルルじゃ、普通に市民の移動手段だったらしいからな。」
タロウが感心している間にも、マリアさんを乗せた空飛ぶ車はどんどん上昇し。
やがて、広場で一番高い建物の屋根を越える高さまで昇っちゃった。
その高さで一旦制止した空飛ぶ車は、それから縦横無尽に空を飛び回ったの。
もう広場は大歓声に包まれ、集まった人達にはとても良い見せ物になってたよ。
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