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アイイロモンペ

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第十九章 難儀な連中が現れたよ…

第632話 本音、ダダ漏れになってるよ…

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 鉄砲を携行したまま入国を試みた『教団』の男達。
 何を血迷ったか、鉄砲を預かろうとしたギルドのお姉さんに向かって発砲しようとしたの。
 おいら、すかさず連中の鉄砲を『積載庫』の中に没収したんだ。
 手にした鉄砲が消え去って呆然とする男達。
 おいらは神に見放されたんじゃないのと指摘してやったよ。

「おい、大切な鉄砲が消えてしまったではないか。
 いったい、どうしてくれるつもりだ。」

 連中、落とし前をつけろと受付のお姉さんに食って掛かったの。 
 鉄砲は連中にとって、とても貴重な品物みたいだね。
 狼狽する余り。『神の杖』なんて取り繕っている心の余裕を失っている様子だもの。
 もう、自ら鉄砲と呼んでるし…。

 受付のお姉さん、チラッとおいらの方に視線を送ってきたものの。

「どうするつもりだと申されても。
 鉄砲が消失した件に関し、当方は一切関知していませんもの。
 当方に責任を問うのは筋違いではございませんか。」

 サラっと知らぬ存ぜぬで通したよ。

「だから、神に見限られたんでしょう。
 神から授かった神器を悪事に使おうとしたから。
 そんなのをギルドのせいにされても困るよ。」

 おいらが再度、神(笑)に見限られたのだろうと指摘すると。

「黙れ、クソガキ。
 神なんて胡散臭いモノ、居る訳ないだろが。
 あの鉄砲はな、貴族に大枚叩いて横流ししてもらったんだ。
 あの鉄砲一丁手に入れるのに。
 俺達がいったい幾つの壺を売らないといけないと思っているんだ。
 上納金ノルマ達成のために、俺なんか飯代も惜しんで金を貯めたんだぞ。」

 余程激昂しているのか、こいつらときたら本音がダダ漏れだったよ。
 こいつら一応建て前では、神様がナンタラという教えを広めているんだよね。
 なのに、神様の存在を全否定してるんだもの。
 詐欺師なら、もう少し平静を装う訓練をした方が良いと思う。

「あっ、バカ!
 これから布教をしようって土地でそれを言ってどうする。
 今のセリフが噂で広まったら、シノギが出来ねえじゃないか。」

「あっ、すまん。
 このガキが生意気なことを言うもんだから。
 つい、カッときちまった。」

 いやいや、それも全部聞いているから…。
 自分達が詐欺師だと自白したことをね。

 すると、鉄砲を失った男達の中から。

「おい、『歓び隊』の女達を余り待たせておく訳にはいかないぞ。」

「そうだな、急いで布教のための拠点を確保しないと。
 『歓び隊』がカモを連れ込む場所がないからな。」

「おう、鉄砲を無くしたことがお頭に知られたら。
 俺ら、どんな酷い目に遭うか分からんし。
 少しでも多く壺を売ってご機嫌を取らんとな。」

 そんな、ヒソヒソ話が聞こえたんだ。
 そして取り敢えず目先の行動方針が決まったようで。

「おう、姉ちゃんよ。
 見ての通り、『神の杖』が無くなっちまったし。
 もう、これで入国して良いんだろうな。」
 
 連中を代表するように、一人の男が横柄な態度で受付のお姉さんに迫ったの。
 するとお姉さんは、チラッとおいらに視線を向けたんだ。
 その目は、「入国させて良いかと。」と尋ねてた。

 まあ何時もなら、武器の預け入れを拒否された場合でも入国を認めてるんだけどね。
 力尽くで武器を没収した上で…。

 とは言え、今回はお姉さんに向かって発砲しようとしたからね。
 おいらが首を横に振ると。

「そうはいくか。
 ギルド職員に対する殺人未遂で捕縛させてもらうぞ。
 皆、私に続け!」

 近衛騎士の隊長ジェレ姉ちゃんが、連中に向かって捕縛すると告げたんだ。
 ジェレ姉ちゃんは真っ先に飛び出すと、最初の一人を殴り飛ばしていたよ。

「ジェレ隊長、相手は丸腰ですよ。
 少しは手加減してくださいね。」

 同じく近衛騎士のトルテが、慌ててジェレ姉ちゃんを追いかけてた。
 ジェレ姉ちゃんの好きにさせると、辺りが血の海になっちゃうから。

        **********

 その場に居た近衛騎士は、おいらの護衛の四人だけしかいなかったけど。
 四人共それなりに修羅場を潜って来ているからね。
 あっという間に教団の連中二十名を捕らえたよ。

「しかし、こいつ等、何で銃撃しようなんて考えたんだろう。
 常識的に考えて、入国管理の事務所で騒ぎなんか起こさないと思うけど。
 入国拒否されるのが目に見えているじゃない。」

 おいらが、そんな疑問を口にすると。

「たぶん、こいつ等、マロン陛下がヌル王国の水軍を撃退したことを知らないんですよ。
 何時この大陸に着いたのかは知りませんが。
 ヌル王国からここまで、普通なら八ヶ月を要します。
 途中、サニアール国の王都で情報収集すれば知ることも出来たでしょうけど。
 それを怠ったか、サニアール国に寄港しなかったか。
 いずれかの場合、この国で起きたことの情報を知らないまま着いたとすると。」

 ウレシノがそんな返答をしてくれたの。
 この国がヌル王国の侵攻を受けてまだ六ヶ月も経ってないから、情報の齟齬があるのだろうって。

「あっ、そうか、ヌル王国の『艦砲外交』ってのと同じだ。
 オードゥラ大陸には、この大陸に鉄砲・大砲は無いと伝わっているから。
 鉄砲でこの事務所を制圧して見せれば、この国が屈服すると考えたんだ。」

 おいらが、ウレシノの言葉からそんな予想をして見せると。

「はい、ご想像の通りかと。
 陛下がヌル王国を屈服させる前の認識では。
 オードゥラ大陸の者は、すべからくこの大陸を未開の地と考えておりました。
 そして、従来の未開の地への初期対応として、武器により威圧は常套手段だったのです。
 ヌル王国の軍隊のみならず、武装商人達も最初に現地人を殺して恐怖を与えるのが。」

 ウレシノの推理では、昨日油断して鉄砲を奪われたから、今日は何時でも撃てるようにしてきたんだろうって。
 そして鉄砲を取り上げられそうになったら、見せしめにこの事務所を制圧する計画だったに違いないって。
 大方、この事務所を制圧した上で、この国に於ける布教の権利を要求する算段でもしてたんだろうって。

 ウレシノ姉ちゃんの言葉を耳にして、捕縛された連中はギクッとか口に出していたよ。
 どうやら、図星だったみたい。

「マロン、のんびりしていて良いのかしら?
 ほら、新手がやって来たわよ。
 こいつ等は、私が預かっておくわね。」

 アルトは事務所の入り口を指差しながらおいらに注意を促したの。
 事務所の入り口では、鉄砲を手にした二十人くらいの男がおいら達を窺っていたんだ。

 アルトは荒事になったら邪魔だろうと、捕縛した二十人を『積載庫』に収容してくれたよ。
 ムルティに持ち帰ってもらうお土産の追加が手に入ったと、アルトは嬉しそうにしてた。

「おい、先発組の連中が消えちまったぞ…。
 いったい、この国はどうなっているんだ。
 鉄砲で武装した二十人の信徒が、何の抵抗も出来ないなんて。」

 どうやら、一部始終を目撃していた様子で、事務所の中に足を踏み入れるのを躊躇ってた。

「どうしました?
 入国されるのであれば、先ずはここで武器を預けてください。
 この国は武器の持ち込みが禁止になっています。」

 受付のお姉さん、空気を読まずに連中に声を掛けていたよ。
 このお姉さん、結構、肝が据わっているね。
 新手も全員鉄砲を抱えているし、現にさっき撃ち殺されるところだったのに。

「い、いえ、ちょっと出直してきます。
 よくよく考えると、『神の杖』は持ち歩きに適さないですから。」

 新手のうちの一人がそう答えると、全員船の方に引き返していったよ。
 どうやら、鉄砲を取り上げられるのは拙いと思ったみたい。
 大枚叩いて貴族から横流ししてもらったモノらしいからね。

「どうやら、鉄砲は船に保管することにしたようですね。
 力押しでは敵わないと悟ったのではないでしょうか。」

 そそくさと退散していく教団の連中を見てウレシノがそんな事を言ってたの。
 ウレシノの予想通り、連中、丸腰になって改めて武器預り所にやって来たよ。
 全員が大人しくボディチェックを受けて入国管理事務所へ移動してた。

 さて、入国した連中、今度は何をやって笑わせてくれるのかな。
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