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アイイロモンペ

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第十九章 難儀な連中が現れたよ…

第628話 誰だよ、こんな連中に横流しした奴は…

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 王都の広場で、四人組の食い逃げ犯に遭遇したよ。
 盗っ人猛々しいと言えば良いのか、無銭飲食を当たり前だと思っているふしが伺えるの。
 頭のおかしな連中もいるものだと呆れていると、ウレシノが教えてくれたんだ。

 連中、オードゥラ大陸に数多ある『教団』と呼ばれるペテン師集団の一派らしいの。
 オードゥラ大陸の各地で詐欺や集りなどの悪事を働き、殆どの国で取り締まりの対象となっているみたい。
 ウレシノは言ってたよ、きっと捕縛を恐れてこの大陸まで逃げ延びて来たんだろうって。

 おいらとウレシノの会話は当然後ろに控えている護衛騎士の耳にも届いている訳で。

「陛下、あの連中、捕縛して参ります。
 そんなたちの悪い連中を野放しには出来ませんし。
 今なら、無銭飲食の現行犯で捕縛できますから。」

 そう言うと、隊長のジェレ姉ちゃんは他の騎士を率いて食い逃げ犯を捕縛しに動いたの。
 騎士の姉ちゃん達が、食い逃げ犯の許に駆け付けると。

「あっ、騎士様、良いところに来てくださいました。
 こいつら、うちの店でたらふく食っておいて金を払おうとしないんでさぁ。
 とっ捕まえて、キツイお灸を据えてやってくだせえよ。」

「ええ、勿論です。
 どうやら、こいつら、質の悪い詐欺集団の構成員らしいですから。
 現行犯逮捕にご協力頂き感謝します。」

 飯屋のご主人に軽く頭を下げると、ジェレ姉ちゃん達は教団の連中を取り押さえに掛かったんだ。
  
「ええい、無礼者! 
 神の使徒たる我らを詐欺師呼ばわりか。
 挙げ句、縄を打つなど、神をも畏れぬ所行。
 貴様ら、まとめて神罰が下されるぞ!」

 この期に及んで、まだ、そんな虚勢を張る食い逃げ犯。

「はい、はい。
 オードゥラ大陸でお尋ね者になって、逃げて来たんだろう。
 神なんて戯言で煙に撒こうったってそうはいかないよ。」

「ギクッ、何でそれを…。」

 ジェレ姉ちゃんに図星を指されて狼狽する食い逃げ犯。
 いや、ギクッなんて心の声を口に出すかな…。

「ええい、お尋ね者とは何たる言い掛かり。
 オードゥラ大陸の不信心者共が無知蒙昧ゆえ。
 高尚な神の教えを理解できなかっただけだ。
 故に我等は、神の教えを広く布教すべく海を渡ったのだ。
 決して逃げ出した訳では無いぞ。」

 ああ、あれだね。
 尻尾を巻いて逃げ出したことを、戦略的撤退と言い繕うの同じだ。
 言葉を言い換えることで、自分の行動を正当化しているつもりなんだね。
 傍からは負け惜しみにしか聞こえないのに…。

「はい、はい。そういう能書きは良いから…。
 おまえ等がどんな御託を並べようが、ここのご主人に食事代を払う義務があるんだ。
 食事代を踏み倒した以上、何があろうとお目溢しは出来ないぞ。」

 ジェレ姉ちゃん、こういう輩は真面に取り合わないのが一番だと分かっているようで。
 連中の言い掛かりを適当にあしらいながら捕縛してたよ。

        **********

 食い逃げ犯四人が捕縛されておいらの前に転がされると。

「マロン様、こいつ等、必ず集団で行動するんです。
 『教団』の連中が一匹いたら、少なくとも三十匹は近くに居ると言われてます。
 騎士を総動員して、一網打尽にしないと被害が拡大しますよ。」

 オードゥラ大陸に於ける『教団』の所行を熟知しているウレシノがそんな助言をしてくれたんだ。
 目の前に四人転がっているから、百二十人くらいいることを覚悟しないといけないのかな…。

 すると…。

「あれ、タロウ会長じゃない。
 その連中、やっぱり、何かやらかしたの?」

 タロウより少し年上のお姉さんが、声を掛けてきたの。
 二人連れのお姉さんは仕事帰りのようで、パンと串焼きの入った紙袋を抱えていたよ。

「おう、お勤めご苦労さん。
 もう帰りか、今日は早番だったのか?
 で、やっぱりって、なんかあったのか?」

 お姉さんはどうやら冒険者ギルドの職員さんみたいだね。

「今日は港で早朝勤務だったんですけど…。
 そいつら、判で押したような装いなんですよ。
 お揃いの黒ローブを着て、口の周りにぐるっとムサイ髭を生やしてるの。
 見るからに怪しい感じでしょう。
 きっと何かやらかすと思ってたんですよ。」

 確かに、全員黒尽くめ服装で口の周りに髭を生やしているよ。
 髭は一応手入れされているようで、短く切り揃えられてるけどなんかキモイ…。

「ちょっと、何を言っているの。
 確かに見るからに怪しい連中だけど。
 もっと、大事なことを報告しないとダメじゃない。」

 すると、もう一人のお姉さんが肘で小突いて、何か報告を促したの。

「あっ、忘れてたわ。
 タロウ会長、今朝早くにこいつらを乗せた船が入港したのですけど。
 入国する時に、ご禁制の鉄砲を持ち込もうとしたんです。
 武器の持ち込みは一切できないことを伝えて、預かろうとしたんですが。
 こいつら、手放そうとしないんです。」

 一人のおねえさんがそこで言葉を区切ると、もう一人がそれに続けて。

「そうなんです。訳の分からないことを言ってごねたんです。
 これは神から授かったものだから、他人には触らせないとか。
 それで、鉄砲を持ったまま入国しようとしたものですから…。
 仕方なく、実力行使で没収させて頂きました。」

 ギルドのお姉さんは、採用の際に促成栽培でレベル十まで上げてあるからね。
 火縄のセットがされてない状態なら、没収は容易かっただろうね。

「貴様らが『神の杖』を取り上げるからこんな目に遭ったではないか。
 『神の杖』さえあれば、我々に従わぬ不信心者共に魂の救済を与えてやれたのだぞ。」

 食い逃げ犯は今度はギルドのお姉さんに言い掛かりを付けたよ。
 ギルドのお姉さん、職務に忠実だっただけなのにね。
 だいたい、この国の法に従えないならさっさと出港しちゃえば良いのに。

「ねえ、ウレシノ。
 『魂の救済』ってどういう意味?」

 まあ、鉄砲を抱えてする事だから、想像は付くけどね。

「ああ、こいつ等、自分達の教義と対立する者を平気で殺すんですよ。
 心が悪しきモノに穢されているので、我が神を受け入れらないのだ。
 なんてイチャモンを付けて、魂の救済の名目で相手をズドンです。
 オードゥラ大陸でも、教団同士の抗争で良く撃ち合いをしてますよ。」

 ウレシノからは予想通りの答えが返った来たよ。

「でも、オードゥラ大陸でも鉄砲は切り札で。
 王の軍隊や一部の有力貴族しか保有してないと言ってたじゃない。
 何で、『教団』なんてならず者の集団が保有しているの?」

「そんなの決まっているじゃないですか。
 不心得な貴族が横流しするんですよ。
 『教団』は紙切れやら、壺やらを売って金を持ってますからね。
 ノノウ一族も王命で密かに摘発に動いてましたが…。
 とても追い切れないくらい、横流しされてましたよ。」

 中には『教団』とグルになって、あこぎな商売をする貴族すら居るんだって。
 ならず者にお金を持たせると、ホント、ロクな事をしないね。

 しかし、鉄砲まで持っているとなると、ますます放置する訳にはいかないよ。
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