ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十九章 難儀な連中が現れたよ…

第624話 えっ、また増えたの?

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 おいらの執務室の隣に設置された専属侍女の控え室でのこと。

「結局のところ、私達はコツコツ学ぶしか無いのですね。
 いいなー、この大陸の人は何処へ行っても言葉に不自由しなくて。」

 侍女のウレシノがそんな愚痴をこぼしながら小冊子を読んでいたよ。
 その冊子は、おいらが王宮の官吏に指示して作らせたもので。
 冊子の左右のページに同じ内容の文言が記されているんだ。
 但し、片方がこの大陸の言葉、もう一方がヌル国王語で書かれているの。
 この大陸の文字が読めないノノウ一族の人達に、教材として使ってもらうために作らせたんだ。

「そうだね、ウレシノに指摘されるまで気付かなかったけど。
 おいら達って凄く恵まれているんだね。
 こうして、有能なメイドを雇うことが出来たしね。
 この能力が無かったら、ウレシノ達を雇わなかったと思うよ。」

「そうですよね。
 私達は侵略者でしたし。
 意思疎通できなければ、その場で処刑されても文句言えませんでしたもの。」

「おいらと同じ名前の大昔のお姉さんに感謝だね。」

「ホント、おっしゃる通りですね。
 でも、遠い空の果てからやって来たと聞いた時は驚きましたよ。」

「まったくだよ。 おいらもびっくりした。
 でも、今回の行幸は楽しかったね。
 きっと、おいら達だけだよ。
 空の果てから見たこの星の姿を知っている人間なんて。」

 おいらとウレシノが、アカシアさんを尋ねた時の話題で盛り上がっていると。

「そう言えば、マロン陛下はもう街の噂を耳にしました?
 今のお二人の話で思い出したのですけど。」

 香りの良いお茶をおいらの前に差し出しながら、ウレシノの妹カラツがそんなことを言ったんだ。

「街の噂? ウレシノとの会話に関係あるの?」

「いえ、陛下とお姉さまの会話に直接関係ある訳ではございません。
 昨夜、夜も更けた頃の出来事らしいのですが…。
 夜空を明るく輝く玉が飛んでたらしいのです。
 先ほどの空の果てからやって来たと言う会話で思い出しまして。」

 今日の午前中、カラツはプティー姉の遣いで街に出たそうで。
 その時、街のオバチャン達が噂しているのを耳にしたそうなんだ。

 何でも、井戸端会議をしていたオバチャンの一人の旦那さんが目撃したらしいよ。
 その旦那さん、街の酒場で深酒したそうで、日付も変わった時刻に千鳥足で家路についたそうなの。
 街の中心街を抜けて人通りも少なくなったところで、頭上から耳慣れない音が聞こえたんだって。
 何かと思い夜空を見上げると、煌々と輝く光の玉が二つ、旦那さんの方に向かって飛んで来たらしいの。
 旦那さん、びっくり仰天して道に尻もちをついたそうだよ。

 すると、その光の玉は旦那さんの頭上を飛び越して飛んで行き、スッと姿を消したんだって。
 気を取り直した旦那さんは、光が飛び去った方向へ行ってみたそうだけど。
 途中、大きな屋敷の敷地に阻まれて光の玉の行方は追えなかったみたいなの。

「おいら達の会話を聞いて思い出したってことは。
 カラツはその光の玉が宇宙から来たものだと思っているの?
 アカシアさんやマロンさんみたいに、宇宙から何かがやって来たと?」

「いえいえ、噂話ではその光の玉はリンゴくらいの大きさらしくて。
 とても生き物が乗って来たなんて思えません。
 ただ単に、空を何か未知のモノが飛んでいたと言うだけです。
 もっとも、おばさん達はこうも言ってました。
 酔っ払いが道端で寝込んで、夢でも見たんだろうって。」

 どうやら、カラツは空繫がりで街の噂を思い出しただけみたいだね。

 すると、今度はおいらの背後から…。

「それって、流れ星じゃないの。
 リンゴくらいの大きさに見えると言うことは火球かしら。
 どちらにせよ、それって空と言っても大分上空の出来事よ。
 酔っ払っていて近くに見えたんだじゃない。」

「あっ、アルトお帰りなさい。
 もう、アカシアさんの所から戻ったんだ。」

「はい、ただいま。
 今戻ったところなの。
 ムルティも余り自分の森を留守に出来ないから。
 そろそろ、この大陸から退去するんだって。
 アカシア母さんとは気が済むまで話が出来たそうよ。」 

 ムルティがそろそろ帰ると言うので、アルトも帰って来たんだって。
 ムルティはハゥフルとシレーヌに会うため、直接タロウの家に行ったそうだよ。

「ところでアルト、火球ってなーに?」

「ああ、火球ってのは流れ星の大きいモノだと思っておいて。
 共に宇宙空間からやって来た岩石がこの星の大気との摩擦で光るモノなの。
 スッと消えたと言うのは、大気との摩擦で燃え尽きたのね。
 燃え尽きずに地上に落ちてきたのが隕石よ。」

 リンゴくらいの大きさの光が二つ見えたと言うのは、比較的大きな岩が大気に接触した衝撃で二つに割れたんだろうって。 
 どうやら、人が乗って来たって訳では無いみたいだね。

        **********

「そうだ、アルト。
 シフォン姉ちゃんから伝言があったんだ。
 服の仕立てに使うゴムの在庫が無くなりそうなんだって。」

 アルトがアカシアさんの森へ行っていたのは一月も無かったけど。
 突然に出掛けたものだから、余分な在庫を置いていかなかったんだ。
 相変わらず、シフォン姉ちゃんの服やパンツは好評でゴムの在庫が心許無くなったみたい。

「あら、そう言えばシフォンには留守にすると伝えなかったわね。
 悪いことをしたわね、早速行ってくるわ。」

「あっ、ちょっと待って。
 おいらも一緒に行く。
 街の様子を見たいと思ってたんだ。
 このところ、ゆっくり街に出てなかったから。」

 アルトが留守にしている間、おいらはほぼ王宮に閉じこもっていたんだ。
 外出したのは早朝、日課のトレント狩りと冒険者が狩ったトレントの回収に行っただけ。
 オードゥラ大陸へ行ってた四ヶ月の間に、仕事が溜まりに溜まっていたからね。
 それを片付けるのが精一杯で、街の様子を視察している暇が無かったの。

 それも、ウレシノ達やプティー姉に手伝ってもらってやっと一段落したから。
 久し振りに街の様子を視察に行こうと思っていたところなんだ。

 そんな訳で王宮を出て、繁華街の外れにあるタロウの屋敷にやって来たよ。
 タロウの邸宅のリビングルームに通されると…。

「あんた、朝っぱらから何をしているの…。
 こっちには、まだ小さな子供が二人も居るんだからね。
 そんなふしだらな姿を見せたらダメでしょう。」

 呆れた様子で話したアルトの目の前にいるのはタロウなんだけど…。
 スケスケのネグリジェを身に着けて、タロウの膝の上に座っているお姉さんは初めて見たよ。
 タロウはヨレヨレにくたびれた様子で、目の下に隈と首筋に幾つも痣を作ってた。

「アルト姐さん、ゴメン。
 それは俺も分かっているんだが…。
 こいつが離れてくれないんだよ。」

 タロウがそんな言い訳をすると、膝の上のお姉さんはほっぺを膨らませて言ったんだ。

「あら、ダーリン。
 こいつだなんて、冷たいことを言っちゃイヤ。
 昨夜、あんなに熱い夜を過ごした仲なのに…。」

「こら、マロンやオランの前でそう言う話をするんじゃない。
 俺がアルト姐さんに殺されちまうだろう。」

「えっ、この二人もダーリンのこれなの?
 ダーリン、節操無いにもほどがあるでしょう。
 幼女趣味は感心できないわよ。」

 タロウの言葉をどう解釈したのか、お姉さんは小指を立てながらタロウに尋ねたの。

「だぁー、そんなんじゃねえよ。
 マロンは、こんなチンチクリンでもこの国の女王だぞ。
 口の利き方に気を付けないと不敬罪になるって。
 それに、隣のオランはマロンの旦那だ。
 女みたいな形だが、ああ見えてれっきとした男だ。」

 いや、おいら、口の利き方に気を付けるのはタロウだと思うよ。
 現役の女王に対してチンチクリンだとか、王配に対して女みたいな形とか。
 多分、普通の国なら不敬罪でブタ箱行きじゃないかな。

「あら、あなたがこの国の王様なの。
 噂に違わず可愛いわね。
 私、マリア、昨日、ダーリンのお嫁さんになったの。
 うーん、六人目?」

 タロウのお嫁さんの人数を数えるように指折りしながら名乗ったマリアさん。
 おいらの前まで出て来ると、しゃがんでおいらの頭を撫で始めたんだ。

 何でもいいけど、スケスケのネグリジェで下着を着けてないものだから胸のポッチまで丸見えだよ。
 いくら女同士でも目のやり場に困るじゃない。
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