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第十八章【間章】おいらが生まれるよりずっと前のことだって
第608話 本当に流れ星に乗って来たんだ…
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いきなり小惑星?が落ちてくるって急展開を迎えたモニターの中の映像。
小惑星って巨大な流れ星みたいなものだと、タロウが教えてくれたよ。
そんな物が落ちてきたら、人類はおろか星そのものが存続の危機らしい。
お役所が匙を投げる中、マロンさんは僅かな可能性に賭けて最後まで研究を続けていたんだ。
その時、アカシアさんが提案したのが、「不思議な空間」の中への避難だった。
そして、アカシアさんは研究所の敷地ごとマロンさん達を「不思議な空間」へしまったの。
取り敢えずは、アカシアさんの予想通り「不思議な空間」へ避難できたのだけど…。
「この空間に避難できたのは良かったけど。
ここじゃ、外の様子は全く分からないわね。
もう緊急通信も利用できないだろうし。」
マロンさんはポツリと呟いたの。
元いた空間からこの空間の様子を窺うことが出来ないってことは、二つの空間の間で光が完全に遮断されている。
なので、元いた空間の状況が把握できないだろうと。
現に研究所の庭に立つマロンさん達の背景には、唯何も無い空間が広がっていたの。
「なに、外の様子が知りたいの?
ほら、見えるわよ。一方向のみだけだど。」
マロンさんの呟きが耳に入った様子で、アカシアさんがそう返答すると…。
「そんな馬鹿な…。何で、こんなことが可能なの?」
その時、研修所があった場所は夜だったらしく、上空に満天の星が映し出されたんだ。
「アカシア、まさか、元の空間に繋げちゃったの。
拙いわ、外気は今でも危険なレベルに汚染されているのよ。」
すぐさま、オリジンが焦りの色を見せたのだけど。
「大丈夫よ、ママ。
私だって、そのくらい理解しているわ。
外の様子が気になるようだから、光景を投影しただけ。
空間自体は隔絶したままよ。」
「何それ、凄い…。 いったいどうなっているの?」
アカシアさんの言葉にまたまたマロンさんは目を丸くしていたよ。
「そんなの私に分かる訳ないでしょう。
こんな空間に関する情報は一つも無いのよ。
少なくとも記憶しておくよう指示された文献の中にはね。
それを解明するのが、マロン達研究者の役割でしょうが…。」
「そんなことを言われても、畑違いだしね。
私、生化学が専門で、物理はとんと縁が無いから…。」
マロンさんが生まれた時には既に学校教育も破綻していたそうで。
両親が通ってた学校という場所のことは知らないそうだよ。
その代わりと言ったらなんだけど、マロンさんはとても偏った教育を施されたらしいの。
マロンさんの生まれた研究所は、両親を含めてその国の生命科学の権威を集めてたらしくて。
その権威たちがマロンさんに対して直々の指導をしてくれたそうだよ。
何でも、自分達の知識を後世に引き継ぐ役割をマロンさんに託したんだって。
その結果、とんだ専門馬鹿になったとマロンさんは自嘲気味に言ってたよ。
**********
「あなた達、その辺にしておきなさい。
分からない者と知らない者が議論しても不毛なだけよ。
そんな事より、アレを見てみなさい。」
二人の会話に割って入ったオリジンが指差した方向に目を向けるて…。
「えっ、もう来たの?」
マロンさんが、惚けた声を上げたよ。
遠くの空へ眩く光る火の玉が、今まさに落ちてきたところだったの。
「アカシア、あれ、方角は分かるかしら?」
「北の方向で距離は約二千キロくらい、海洋のど真ん中に落下するわ。」
流石、空間把握能力が突出しているだけあって、アカシアさんは的確な答えを返してた。
「ふう、直撃は免れましたか…。
とは言え、安心もしていられないわね。
あれだけの膨大な質量の衝突だもの。
この大陸まで巨大な津波が押し寄せるか。
ことによると、大洋の水が瞬間蒸発しちゃうかも。」
マロンさんがそんな言葉を呟いた直後、アカシアが宙に投影した映像が真っ赤に染まったよ。
どうやら小惑星が衝突したみたい。
本来なら強烈な音と衝撃波が襲い掛かって来るそうだけど、マロンさん達は隔絶された空間にいるし。
アカシアが音までは拾ってなかったようで、ただ遠くの空が真っ赤になるだけだったの。
「流石にアカシアの超感覚でも、水平線の彼方の様子までは掴めないか…。
あれって、どのくらいの被害なんでしょう。
大洋が沸騰するくらいで済んでいるのかしら。」
真っ赤に染まった映像を見ながらマロンさんが、小惑星衝突の影響に思いを巡らせていると。
「マロン、何か変よ。」
アカシアさんが急にそんなことを言ったんだ。
「変って、どんな風に変なの?」
「私達の大陸の辺りが剥ぎ取られると言うか、千切れると言うか。
とにかく、この大陸周辺の地殻が星から分離しそうなのよ。」
「「ええっーー!」」
実際、マロンさんとオリジンが驚きの声を上げる間にも二人が見ている映像が振動し始めたよ。
それからしばらくしたら、アカシアさんの言葉通り大地が割れて浮き上がっちゃった。
どうやら、絶妙な角度で斜めに衝突した小惑星が、その星の地殻の一部を宇宙に跳ね飛ばしたらしいの。
オリジンが記憶している過去の文献を参考にして、そんな想定を話していたよ。
何でも、マロンさん達の星に付属する衛星はそうやってできたと言う説が有力なんだって。
そして、数日後の映像…。
「あらら、テルルの重力に捉われて第二のルナになるかと思ったら。
弾き出されちゃったみたいね。」
衛星の名前がおいら達の星と同じだけど。
それはおいら達の星に着いたマロンさんが名付けたためらしい。
ソルもルナも、マロンさん達の故郷で呼んでた星の名前から取ったらしいの。
「仕方ないんじゃない、テルルがあの有り様だから…。
もう惑星の体裁を整えてないわよ。
この小惑星を補足しておくだけの重力は無いのでは。」
マロンさんとオリジンが会話する前では、砕けて半球体になった星が映し出されていたの。
どうやら、それがマロンさん達の住んでいた星、テルルらしい。
水の惑星だったと言うけど、前日見せてもらったこの星みたいに青くは無かったよ。
むしろルナみたいに岩がゴツゴツしているように見えたんだ。
アカシアさんに聞いてみたら、「小惑星の衝突で水が消し飛んだんじゃないの。」とか言ってたよ。
「マロン、これからどうするつもり?」
遠ざかるテルルを眺めながら、オリジンが尋ねると。
「取り敢えず寝るわ。」
「はっ?」
想定外の返事だったんだね、オリジンさんは聞き間違えかって表情で問い返していたよ。
「だから、寝ると言ってるの。
こんな想定外の事態になったんだもの。
ここでジタバタしても仕方が無いでしょう。
この数か月、まともに寝てなかったからね。
今日はゆっくり寝るわ。」
ちなみにマロンさんは小惑星の衝突から数日、ほとんど寝てなかったそうだよ。
テルルの重力圏を離脱したのを見届けて、やっと眠る気になったみたいなの。
自分達が宇宙を彷徨う小惑星に乗ってしまったんで、後は運任せと諦めたみたい。
「そうね、それが良いわ。
寝不足だと良い案も思い付かないでしょうからね。」
オリジンも、睡眠を勧めるとマロンさんは研究室から出て行ったよ。
そして、マロンさんが部屋から退出した後のこと。
「ママ、ちょっと、相談があるのだけど…。」
アカシアさんが何か思いつめた表情で、オリジンさんに声を掛けていたの。
何時に無くアカシアさんの顔つきが真剣なものだから、オリジンさんは当惑した様子だったよ。
小惑星って巨大な流れ星みたいなものだと、タロウが教えてくれたよ。
そんな物が落ちてきたら、人類はおろか星そのものが存続の危機らしい。
お役所が匙を投げる中、マロンさんは僅かな可能性に賭けて最後まで研究を続けていたんだ。
その時、アカシアさんが提案したのが、「不思議な空間」の中への避難だった。
そして、アカシアさんは研究所の敷地ごとマロンさん達を「不思議な空間」へしまったの。
取り敢えずは、アカシアさんの予想通り「不思議な空間」へ避難できたのだけど…。
「この空間に避難できたのは良かったけど。
ここじゃ、外の様子は全く分からないわね。
もう緊急通信も利用できないだろうし。」
マロンさんはポツリと呟いたの。
元いた空間からこの空間の様子を窺うことが出来ないってことは、二つの空間の間で光が完全に遮断されている。
なので、元いた空間の状況が把握できないだろうと。
現に研究所の庭に立つマロンさん達の背景には、唯何も無い空間が広がっていたの。
「なに、外の様子が知りたいの?
ほら、見えるわよ。一方向のみだけだど。」
マロンさんの呟きが耳に入った様子で、アカシアさんがそう返答すると…。
「そんな馬鹿な…。何で、こんなことが可能なの?」
その時、研修所があった場所は夜だったらしく、上空に満天の星が映し出されたんだ。
「アカシア、まさか、元の空間に繋げちゃったの。
拙いわ、外気は今でも危険なレベルに汚染されているのよ。」
すぐさま、オリジンが焦りの色を見せたのだけど。
「大丈夫よ、ママ。
私だって、そのくらい理解しているわ。
外の様子が気になるようだから、光景を投影しただけ。
空間自体は隔絶したままよ。」
「何それ、凄い…。 いったいどうなっているの?」
アカシアさんの言葉にまたまたマロンさんは目を丸くしていたよ。
「そんなの私に分かる訳ないでしょう。
こんな空間に関する情報は一つも無いのよ。
少なくとも記憶しておくよう指示された文献の中にはね。
それを解明するのが、マロン達研究者の役割でしょうが…。」
「そんなことを言われても、畑違いだしね。
私、生化学が専門で、物理はとんと縁が無いから…。」
マロンさんが生まれた時には既に学校教育も破綻していたそうで。
両親が通ってた学校という場所のことは知らないそうだよ。
その代わりと言ったらなんだけど、マロンさんはとても偏った教育を施されたらしいの。
マロンさんの生まれた研究所は、両親を含めてその国の生命科学の権威を集めてたらしくて。
その権威たちがマロンさんに対して直々の指導をしてくれたそうだよ。
何でも、自分達の知識を後世に引き継ぐ役割をマロンさんに託したんだって。
その結果、とんだ専門馬鹿になったとマロンさんは自嘲気味に言ってたよ。
**********
「あなた達、その辺にしておきなさい。
分からない者と知らない者が議論しても不毛なだけよ。
そんな事より、アレを見てみなさい。」
二人の会話に割って入ったオリジンが指差した方向に目を向けるて…。
「えっ、もう来たの?」
マロンさんが、惚けた声を上げたよ。
遠くの空へ眩く光る火の玉が、今まさに落ちてきたところだったの。
「アカシア、あれ、方角は分かるかしら?」
「北の方向で距離は約二千キロくらい、海洋のど真ん中に落下するわ。」
流石、空間把握能力が突出しているだけあって、アカシアさんは的確な答えを返してた。
「ふう、直撃は免れましたか…。
とは言え、安心もしていられないわね。
あれだけの膨大な質量の衝突だもの。
この大陸まで巨大な津波が押し寄せるか。
ことによると、大洋の水が瞬間蒸発しちゃうかも。」
マロンさんがそんな言葉を呟いた直後、アカシアが宙に投影した映像が真っ赤に染まったよ。
どうやら小惑星が衝突したみたい。
本来なら強烈な音と衝撃波が襲い掛かって来るそうだけど、マロンさん達は隔絶された空間にいるし。
アカシアが音までは拾ってなかったようで、ただ遠くの空が真っ赤になるだけだったの。
「流石にアカシアの超感覚でも、水平線の彼方の様子までは掴めないか…。
あれって、どのくらいの被害なんでしょう。
大洋が沸騰するくらいで済んでいるのかしら。」
真っ赤に染まった映像を見ながらマロンさんが、小惑星衝突の影響に思いを巡らせていると。
「マロン、何か変よ。」
アカシアさんが急にそんなことを言ったんだ。
「変って、どんな風に変なの?」
「私達の大陸の辺りが剥ぎ取られると言うか、千切れると言うか。
とにかく、この大陸周辺の地殻が星から分離しそうなのよ。」
「「ええっーー!」」
実際、マロンさんとオリジンが驚きの声を上げる間にも二人が見ている映像が振動し始めたよ。
それからしばらくしたら、アカシアさんの言葉通り大地が割れて浮き上がっちゃった。
どうやら、絶妙な角度で斜めに衝突した小惑星が、その星の地殻の一部を宇宙に跳ね飛ばしたらしいの。
オリジンが記憶している過去の文献を参考にして、そんな想定を話していたよ。
何でも、マロンさん達の星に付属する衛星はそうやってできたと言う説が有力なんだって。
そして、数日後の映像…。
「あらら、テルルの重力に捉われて第二のルナになるかと思ったら。
弾き出されちゃったみたいね。」
衛星の名前がおいら達の星と同じだけど。
それはおいら達の星に着いたマロンさんが名付けたためらしい。
ソルもルナも、マロンさん達の故郷で呼んでた星の名前から取ったらしいの。
「仕方ないんじゃない、テルルがあの有り様だから…。
もう惑星の体裁を整えてないわよ。
この小惑星を補足しておくだけの重力は無いのでは。」
マロンさんとオリジンが会話する前では、砕けて半球体になった星が映し出されていたの。
どうやら、それがマロンさん達の住んでいた星、テルルらしい。
水の惑星だったと言うけど、前日見せてもらったこの星みたいに青くは無かったよ。
むしろルナみたいに岩がゴツゴツしているように見えたんだ。
アカシアさんに聞いてみたら、「小惑星の衝突で水が消し飛んだんじゃないの。」とか言ってたよ。
「マロン、これからどうするつもり?」
遠ざかるテルルを眺めながら、オリジンが尋ねると。
「取り敢えず寝るわ。」
「はっ?」
想定外の返事だったんだね、オリジンさんは聞き間違えかって表情で問い返していたよ。
「だから、寝ると言ってるの。
こんな想定外の事態になったんだもの。
ここでジタバタしても仕方が無いでしょう。
この数か月、まともに寝てなかったからね。
今日はゆっくり寝るわ。」
ちなみにマロンさんは小惑星の衝突から数日、ほとんど寝てなかったそうだよ。
テルルの重力圏を離脱したのを見届けて、やっと眠る気になったみたいなの。
自分達が宇宙を彷徨う小惑星に乗ってしまったんで、後は運任せと諦めたみたい。
「そうね、それが良いわ。
寝不足だと良い案も思い付かないでしょうからね。」
オリジンも、睡眠を勧めるとマロンさんは研究室から出て行ったよ。
そして、マロンさんが部屋から退出した後のこと。
「ママ、ちょっと、相談があるのだけど…。」
アカシアさんが何か思いつめた表情で、オリジンさんに声を掛けていたの。
何時に無くアカシアさんの顔つきが真剣なものだから、オリジンさんは当惑した様子だったよ。
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