ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・

第579話 何か、妙な友情が芽生えたみたい…

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 ヌル国王の御名御璽入りの誓約書を用意するのに二日掛かると言われ、一日ぽっかり暇が出来たの。
 前夜、騒ぎを起こしたサル共の捕縛していた時、広場に居合わせたオバチャンから希望が出たんだ。
 その日に買い逃したと悔やんでる知り合いがいるので、また露店を出して欲しいとね。
 ちょうど良いので、暇つぶしを兼ねて露店を広げることにしたよ。

 お店を広げてしばらくすると。

「お嬢ちゃん、約束通り店を広げてくれたんだね。
 私もその辺中に声を掛けちまったからね。
 お嬢ちゃんが店を出してなきゃ、恥をかくところだったよ。」

 そんな声の源は、昨晩、おいらに声を掛けてくれたオバチャン。
 オバチャンは言葉通りにご近所さんをぞろぞろと引き連れてやって来たよ。

「あら、本当に砂糖がびっしり入った壺が一つ銀貨一枚で買えるのね。
 やっすいわぁ、これ幾つ買っても良いの?」

 オバ友の一人が露店に置いてある『シュガーポット』の商品見本を見て尋ねてきた。

「うん、商品は沢山用意してあるから幾つ買ってもらっても大丈夫だよ。
 どの商品も、見本と同じで壺の口いっぱいまで砂糖が詰まっているから安心して買って帰って。
 砂糖の他にも、こっちのメイプルシロップも美味しいよ。
 昨日は貿易商の人に受けて沢山買って帰ってもらったんだ。」

 おいらは商品見本としてヘタを取った『メイプルポット』を手に取り、木べらでシロップを一すくいしたの。
 その場に集まったオバチャン達に、メイプルシロップを味見してもらうことにしたんだ。
 どうやら、この大陸では馴染みのない甘味料らしいからね。

「あら、美味しい。とっても深みのある味なのね。
 これも貰っていこうかしら。
 他に何かお勧めはあるかしら?」

 オバチャン、メイプルシロップがお気に召したようで、上機嫌で尋ねてきたよ。
 おいら、すかさず宣伝したね。

「お隣の服なんてどう?
 おいらの国じゃ、評判の店なんだよ。
 今日はオーナー自ら、売り子をしてるんだよ。」

 すると。

「は~い、見て行ってくださいね。
 ウエニアール国で評判のパンツですよ~。
 どれでも一枚銀貨一枚の大サービス。
 男物、女物、各種取り揃えてますよ。」

 おいらの隣で元気な声が上がったの。声の主はシフォン姉ちゃん。
 甘味料ばかりでは新鮮味が無いので、シフォン姉ちゃんにも露店を出してもらったんだ。
 シフォン姉ちゃんって、遠出する際は、販路開拓とばかりに常に商品を持ち歩いているからね。
 男物のトランクスや女物の際どいパンツと並んで、幾つかのアウターウェアも並べてあるよ。
 お馴染み、『きゃんぎゃる』の衣装とかね。

「おや、甘味料以外の店も出すって言ってたけど。
 服屋かい、どれどれ、…って凄いパンツだね。
 ほとんど布地が無いじゃないかい。
 これなんか、肝心な部分に切れ目が入っているし。
 パンツとしての体を成して無いじゃないかい。」

 オバチャン、オマタの部分が割れているパンツを手に取って呆れていたよ。
 うん、おいらも何でそんなパンツが売れているのかいまだに謎なんだ。
 シフォン姉ちゃんの店の売れ筋商品らしいけど…。

「あっそれ、私の店の人気商品なんですよ、夜の勝負下着。
 ロウソクの灯りだけの仄暗い寝室で、旦那さんに見せてみてください。
 お疲れ気味の旦那さんでも、一発で元気になりますよ。
 このナイティと一緒に着れば更に効果抜群です。」

 シフォン姉ちゃんは、ベビードールと呼んでるスケスケの寝間着を手にして勧めたんだ。
 ミントさんとか、お義母さんとかがお気に入りの寝間着だね。

「こりゃまた、服としての役目を放棄した寝間着だね。
 全然、隠そうとして無いじゃないかい。
 でも、旦那を奮い立たせる小道具かい…。
 最近ご無沙汰だし、一つ試してみるかね。
 その寝間着は幾らだい?」

 このオバチャン、肝心の砂糖も買わずにいきなりシフォン姉ちゃんの服に走ったよ。

「こっちの寝間着は安くは出来ないんです。
 素材はシルクですし、特殊な織の生地を使っている物なので…。
 本来は私の国の銀貨で二十枚なのですが。
 今回は特別にこの国の銀貨二十枚で提供しているのですが…。」

「うん? そりゃ、どういう事だい?
 私には何処が特別なのか分からないんだけど。
 銀貨二十枚には変わりないんだろう?」

「あっ、それ? おいら達の国とこの国じゃ銀貨の質が違うんだ。
 おいらも最近知ったんだけど。
 この国の銀貨って銀の割合が低くてね。
 おいらの国の銀貨の四分の三の価値しか無いんだって。」

 おいらはウエニアール国の銀貨を見せながら教えてあげたの。
 手のひらに乗せてみたオバチャンは、確かに重いと納得してたよ。

「本来ならこの寝間着一枚で銀貨三十枚近くするんかい。
 随分と高い寝間着だね。」

 オバチャン、手にしたベビードールを見てため息を吐いてたよ。
 寝間着一枚にそんなお金は払えないって。
 それに関しては、おいらも同感だね。
 そんなスケスケの寝間着に大枚叩く気にはなれないよ。

 お財布の紐は堅かったようで、シフォン姉ちゃんお勧めの寝間着は誰も買わなかったの。
 でもパンツの方は結構売れてたよ。あのオマタが割れているパンツも何枚も売れてた。
 もちろん、当初のお目当てだった甘味料もキッチリ買って帰ったよ。
 
       **********

 お日様が高くなってきると広場の人通りも増えて来て。
 シフォン姉ちゃんの店の前で足を止める人も増えたよ。

「あっ、昨日のお姉さん達だ!
 昨日は助けて頂き有り難うございました。」

 どうやら、昨晩、サル共から救った娘さんらしいね。
 娘さん、物珍しそうにシフォン姉ちゃんの店を眺めて…。

「これ、昨日頂いたパンツと同じものですよね?
 肌触りも良いし、腰の部分が伸び縮みして紐で結ぶ必要が無いのが良いですね。
 こんなの見たこと無くて、何処で買えるのかと思っていたんです。
 まさか、お姉さん達が露店で売っているなんて。」

「この伸び縮みするのはゴムと言って、私のお店のイチオシ商品なの。
 ゴムを使った衣類は、私のお店以外では見ないから。」

「そうなんですか。
 じゃあ、今日ここへ来てラッキーですね。
 沢山買って帰ろうっと。
 次に買える機会は無いかも知れないもんね。」

 他では手に入らないかもと聞いて娘さんは、パンツの物色を始めたよ。
 最初は昨日着けさせたような普通のデザインのパンツを漁っていたんだけど…。
 そのうち、際どいデザインのパンツに気付いて顔を赤らめたの。 

 そして。

「ねえ、ねえ、お姉さん。
 このパンツってアレですよね?
 効き目の程はどうですか。
 私、本命の彼氏を落としきれなくて…。」

 ほとんど紐にしか見えないパンツを手に取って尋ねてきたの。
 その用途が分かっているようで、ほとんど紐しかないのに何の疑問も抱いてなかったよ。

「ええっと…、見せる機会があれば効果抜群だと思うけど…。
 出来れば、私が着ているような服とセットの方が方が良いと思うな。
 これなら、自然にスカートの中を見せることが出来るでしょう。」

 シフォン姉ちゃん、今度は『きゃんぎゃる』の服を売りに掛かったんだ。
 確かに『きゃんぎゃる』の服って、しゃがむとパンツが見えちゃうものね。
 他にも、背伸びしたらチラッ、飛び跳ねたらチラッて。
 にっぽん爺はチラ見せの美学とか訳の分からないことを言ってたけど。

「お姉さん、師匠と呼ばせて頂いて良いですか!
 それ、ナイスです!
 その服と、このパンツ頂きます。
 お幾らになりますか。」

 そう言うと、気に入ったパンツ十枚以上を差し出し、『きゃんぎゃる』の服も指差したんだ。
 この娘さん、お金持ちの娘さんなのかな。 

「ねえ、無理してない?
 これ、全部で銀貨三十五枚になっちゃうけど。」

 シフォン姉ちゃんが心配そうに言ってたよ。
 他の場所に着ていけそうもない服とパンツに、そんな大金を注ぎ込んで良いのかって。
 若い娘さんの給金じゃ、銀貨三十五枚って大金だものね。

「大丈夫です、一生懸命働いて貯めたお金がありますから。
 このくらいの投資で彼を落とせるのなら安いモノです。」

 でも、このお姉ちゃん熱の籠った声で返答すると、財布から銀貨三十五枚を差し出したよ。

「お姉ちゃん、気にいったわ。
 恋に賭けるその心意気。
 じゃあ、もう一押しのために…。
 これ、おまけしちゃうね。」

 銀貨三十五枚を受け取ったシフォン姉ちゃん。
 何と、さっきオバチャンに銀貨二十枚で売りつけていたベビードールを『おまけ』に付けちゃったよ。
 大赤字じゃん、それ…。

 しかも、アルトに隠れて『ゴムの実』を一つ渡しているし。

「いいこと、これ、最後の詰めに使いなさい。
 彼を家に招いて晩ごはんを作ってあげるのよ。
 そして、最後にこの果肉を小皿に絞り出してデザートにしなさい。
 これ、どんなに草食な男の子でもケダモノに変える果物なの。
 とても貴重な物だから一つしか上げられないけど…。」

 シフォン姉ちゃんは、その後、おいらに聞こえないように娘さんの耳元で囁いていたよ。

「お姉さん、私、頑張ります。
 お姉さんの期待にお応えして、必ずや彼を落として見せます。」

「そう、頑張るのよ。遠い国であなたのことを応援しているわ。」

 そんな言葉を交わして、二人はヒシっと抱き合っていたよ。
 何か、おいらには理解できない不思議な友情が芽生えたみたい…。
 
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