ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・

第578話 ご要望にお応えして…

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 迂闊にもサル達を街に放ってしまって、王都ローティーは大混乱に陥ったんだ。
 大半は宰相に命により出動した銃騎士達によって取り押さえられたのだけど。
 当然のことながら、そうそう上手くはことが運ばない場合もあったんだ。
 サルが軍上層部の子息だったりすると、銃騎士達は手荒なことは出来ないと尻込みしてたし。
 肉弾戦闘の訓練をロクに受けてない銃騎士が、野生のサルと化した連中に返り討ちにされる場面も見られたの。
 極め付けは若い娘さんがサルに襲われるのを、鼻息を荒くして見物しているけしからん銃騎士もいる始末で…。

 仕方が無いので、おいらも自主的にサルの捕獲をする事にしたんだ。
 サル共を迂闊に檻から出してしまったことに責任を感じたものだから。
 おいら自身でサル共を捕えるのは勿論のこと。
 四人の護衛騎士に加え、オランとタロウ、果ては元工作メイドまで動員して捕獲して回ったよ。

 捕物は夜まで続いたけど、何とか良い子がお眠の時間までには騒ぎは収まったの。

「有り難うございました。
 危ないところを助けて頂いただけでなく。
 服まで与えて頂けるなんて申し訳ないです。」

「ホント、汚れた体を洗わせて頂き助かりました。
 私、シャワーって浴びたの初めてです。
 それに素敵な下着まで頂いてしまって…。」

 サル達から救った娘さん達は、口々のお礼を言いながら帰って行ったよ。
 助けたのは良いけど、娘さん達は皆服を剥ぎ取られて裸同然だったんだ。
 脱がされた服も引き裂くようにして無理やり剝ぎ取られてたので、ボロボロでそのまま着て帰ることはとてもできなかったの。
 なので、街の服屋で服を買い与えたんだ。もちろん、代金はこの国の王宮や貴族から奪ったお金で支払ったよ。

 加えて、娘さん達は服を乱暴に剝ぎ取られただけじゃなく、地面に押し倒されて汚れていたから。
 アルトの積載庫、『特別席』に備え付けのシャワーで汚れを落としてもらったんだ。
 使い方の説明役にシフォン姉ちゃんを充てて、シャワーの後は下着も新しいモノを着けてもらったの。
 アウター同様にインナーも引き裂かれてボロボロだったからね。
 シフォン姉ちゃん、遠出する時は何時でも販売用の下着を持ち歩いているから、おいらがまとめて買い上げたんだ。
 シフォン姉ちゃんが作っている下着は、この国でも珍しいデザインのようで娘さん達に好評だったよ。

 しかし、サル共、娘さんをすっぽんぽんにして何をするつもりだったんだろう?

「皆、危ない所でしたが、何とか最悪の事態は免れたようです。
 何とか全員、られる前に間に合いました。」

 ルッコラ姉ちゃんからはそんな報告を受けたんだ。
 まあ、られる前に救い出させたのは良かったけど…。
 連中、殺すためにわざわざ服を剥ぎ取ったの?

         **********

 捕獲したサル共を縄で縛って、街の中央広場に戻ってくると…。

「おい、これで全部か?
 王宮前から逃亡した者は七百人くらいだったとのことだぞ。
 ここに捕えておるのは六百五十人、まだ五十人くらい足らんぞ。
 宰相閣下は何としても今夜中に捕縛を終えろと所望されておる。
 このままでは、今晩は徹夜になるぞ。」

 現場責任者らしき銃騎士が、部下にハッパを掛けていたよ。
 どうやら、捕らえたサル共を確認していて、数が足りないことに苛ついてるみたいだね。

「じゃあ、ここにいる五十三人でほぼ全部かな?
 悲鳴は聞こえなくなったんで、だいたい終わったとは思うけど…。」

 おいらが苛ついていた銃騎士に声を掛けると。

「うん? これはあんた達が捕らえてくれたのか?
 女子供だけで、これだけの数を?」

 最初、銃騎士は怪訝な顔をしたんだ。
 銃騎士の目に映るのは、おいらとオランの子供二人に、二十前の若い娘ばかりだものね。

「そうだよ。街を歩いていて出くわした暴漢は全て捕まえたよ。
 屋台から食べ物を強奪したり、娘さんを襲ったりしてたから。」

 おいらが問い掛けに返答していると。

「ああっ、さっきのバカ強い小娘だ!
 隊長、この小娘。
 プーアル大将軍のご子息を一撃でのしっちまったんですぜ。」

 さっきボスザルに返り討ちに遭っていた銃騎士が、おいらを指差して叫んだの。
 プーアル伯爵の息子を一撃で倒したと聞いて、隊長と呼ばれた銃騎士は顔を引き攣らせてたよ。
 あのボスザル、銃騎士の中でも屈指の猛者だったらしいからね。 

「あんたら、見かけによらず強いんだな。
 まあ、助かったぜ。協力に感謝する。」
 
 隊長は顔を引き攣らせたまま礼を言い、サル共を引き取ってくれたよ。
 無事にサル共の引き渡しを終えて、広場を立ち去ろうとすると。

「あんた、昼間ここで露店を出してたお嬢ちゃんだろう。
 見てたよ、暴漢共から屋台や若い娘を護ってくれたのを。
 お嬢ちゃん達、見上げたものだよ。
 女子供だけで、暴漢達から街の者を護ってくれたんだもの。
 ホント、有り難うよ。
 ところで、もう露店は出さないのかい。
 今日買いに行なくて悔しいと言ってた友達が居るんだけどね。」

 昼間、砂糖を買ってくれたオバチャンが声を掛けてくれたの。
 オバチャン、晩ごはんの総菜を買いに来たのか、肉の串焼きが山盛りになった皿を持っていたよ。

「露店は今日だけのつもりだったけど。
 明日一日、暇が出来ちゃったんで店を広げても良いよ。
 ついでに別の店も出すから、知り合いに声を掛けてくれると助かるかな。」

 本当は明日にはこの街を発つつもりだったけど。
 宰相から二日後に取りに来て欲しいと言われたからね、御名御璽入りの誓約書。
 要望があるなら、明日も露店を広げることにするよ。

「そうかい、それは有り難いことだね。
 じゃあ、近所の仲間達に声を掛けておくよ。
 砂糖以外に、どんな店を出すのか楽しみだよ。」

 オバチャンはそう言って上機嫌で帰って行ったよ。
 きっと、オバチャンの口コミネットワークでさぞかし拡散してくれるんだろうね。

       **********

 そして、翌日の早朝、おいらは再び中央広場の一画に在る事務所を訪ねたの。
 この事務所は、広場に露店を出すための許可を貰う場所だよ。
 受付のお兄さんに賃料を支払って、広場の区画を借りるの。

「おはよう、兄ちゃん。」

「ああ、一昨日のお嬢ちゃん。
 昨日はどうだった? 商売繁盛だったかい?
 昨日一日、お嬢ちゃんが広場を独占しちゃって。
 こっちに苦情が来るんじゃないかと心配してたけど。
 一つも無かったところを見ると、うまく折り合いを付けてくれたんだね。」

「一昨日は無理を言ってごめんなさい。
 おかげで、万事上手くいったよ。
 本当に助かったよ有り難う。」

「いえいえ、どういたしまして。
 こっちも満額の賃料を払って貰えたからね。
 王宮から金一封がもらえて得したよ。」

 年に何回か中央広場で特別な市が立ち、広場の全区画が満杯になるらしいの。
 そんな時は受付のお兄さんにも、ご祝儀として王宮から金一封が貰えるそうなんだ。
 市が立つ日でも無いのに満額の賃料を納めたら、王宮の担当者がビックリして金一封をくれたんだって。

「それで、今日は何の御用かな?
 また、露店を出したいのですか?」

「うん、今日は少しだけで良いんだ。
 昼間の間、区画を三つ借りたいの。」

「そう、じゃあ、一区画銀貨五枚で朝から夕方までね。
 三区画だから、全部で銀貨十五枚頂きます。」

「うんじゃ、これね。」

 こうして、おいらは二日連続で露店商の真似事をする事になったの。
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