ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・

第568話 絶対に返さないよ!

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 ヌル王国の王宮、ダージリン王が癇癪を起していきなりおいらを銃撃してきたんだ。
 王は姑息にもあちこち鉄砲を隠してあって、立て続けに撃って来たよ。
 おいらは回避スキルに任せて全弾を回避し、王が盾にしてた玉座を粉砕して見せたんだ。
 そしたら、王はその場にへたり込んじゃった。よほど恐怖を感じたのか、いい歳して失禁してたよ。

 おいら、思ったよ。こんな血の気の多い奴に鉄砲を持たせちゃダメだろうって。
 それで、二度と鉄砲を持てないように、王の手を粉砕しておこうかと思ったのだけど。
 その時の王は両手とも床に着いていたの、お漏らしで水浸しになった床に…。

 そんなばばっちい手を踏みつける気になれず、どうしたものかを考えていると。

「マロン陛下、その辺でお赦し頂けませんか。
 そのような姑息で浅慮な者でも、一応、我が国の国王ですので。」

 宰相がおいらを宥めて来たよ。
 しかし、宰相のダージリン王に対する評価、凄いな…。ナチュラルにディスってるし。

「おい、こら、ゲンマイ! 姑息で浅慮とは何たる言い草だ!
 儂はこの国の王だぞ、この国で一番偉いんだからな。」

 ダージリン王は、床から振り上げた手で宰相を指差して文句を垂れてたよ。
 そんなに勢いよく手を振り上げたら、ばっちい液体が飛び散るって…。おいら、思わず飛び退いちゃった。

「陛下、そうおっしゃるのでしたら、もう少し思慮深く行動して欲しいものですな。
 今、この国が存亡の危機にあることを、陛下はお分かりになりませんか?」

 残念なモノを見るような目付きでダージリン王を見詰めて、宰相は諭すのだけど。
 当のダージリン王はことの深刻さを理解してない様子で。

「馬鹿馬鹿しい。たかが小娘一人に、何が国の存亡の危機だ。
 その小娘が、一国の女王だと言うことが真であれば。
 我が国の全軍を持って、そ奴の国を攻め滅ぼしてやろうではないか。
 儂にこんな恥をかかせたことを後悔させてやる。
 ウーロンに渡した小軍を撃退したくらいで調子に乗りおって。」

 ダージリン王には宰相の言葉が理解できなかったみたい。ホント、愚かだね。
 だいたい、全軍でおいらの国へ攻め入るって、何処にその全軍があるんだか…。

「陛下、全軍で攻め滅ぼすと仰せですが…。、
 今、我が国の武装船の多くが行方不明になっているのをお忘れですか?」

「あっ…。」

 宰相の冷静な突っ込みに、ダージリン王は言葉を失ったよ。

「それ以前に、マロン陛下の行いが無礼か否かと言う先程のお話。
 ウーロン殿下が一方的に攻撃を仕掛けたことにより。
 我が国とマロン陛下の国は交戦状態にあります。
 交戦状態にある国が、敵国の王宮へ攻め入る際に断りを入れることは普通は無かろうと…。
 そして、今、陛下はマロン陛下の前に丸腰で座り込んでおられる。
 この状況、客観的に見て何時首を刎ねられても不思議ではないのですが。」

 察しの悪いダージリン王に、宰相は噛んで含むように易しく説明してた。
 それでもダージリン王は納得してない様子で、憮然とした顔をしてたよ。
 仕方がないので、おいら、ダージリン王に状況を理解させてあげることにしたの。

「ひっ、やめてくれ! 儂が悪かった、この通り。」

 『積載庫』から取り出した剣を喉元に突き付けたら、ダージリン王はその場で平身低頭してた。
 自分が作った水溜りの中にね。ばっちぃな、ホントに…。

 取り敢えずは、自分の立場を理解してもらえて良かったよ。    

        **********

 ダージリン王が自分の立場を理解したところで、話し合いに入ろうとしたのだけど。
 お漏らしをした上に、その水溜りで土下座したものだから、ダージリン王が凄いことになってたの。
 正直、近くに寄りたくないくらい、汚らしかったんだ。
 宰相が、話し合いの前に王の着替えをしたいと申し出たのだけど。

「そいつに逃げられたり、援軍を呼ばれたりしたら面倒だわ。
 側仕えに指示してここに着替えをもって来るように指示しなさい。」

 良からぬことを企まないようと、アルトはダージリン王をこの部屋から出すことを拒んだの。
 宰相は、アルトに得体の知れない恐ろしさを感じた様子で、素直に指示に従っていたよ。

 宰相の指示で三人ほどのメイドさんが王の着替えを持ってくると。
 アルトはメイド三人にダージリン王の着替えを指示して、積載庫の中に放り込んだよ。

「マロン陛下、我が王はいったい何処へ消えたのでしょうか?
 あれでも一応この国の王ですので、誘拐は困るのですが…。」

 宰相は少しだけ心配そうに、おいらに尋ねてきたの。

「紹介してなかったね。
 この大陸では見かけないみたいだけど。
 妖精族のアルト。おいらの保護者なの。
 妖精族って色々と不思議な力を使えてね。
 王様は今、『妖精さんの不思議空間』で着替えてもらってる。
 心配しなくても良いよ。着替えが終わったら出してくれるから。
 そうだ、アルト、ここに来る前に捕らえた連中を出して上げて。」

 おいらは宰相への紹介ついでに、アルトに銃騎士隊の連中の解放をお願いしたよ。
 そして、部屋の空いてる場所に積み上げられた百人以上の男達。
 アルトのビリビリで身に着けていた火薬が暴発して、全員が血塗れになっているけど。
 みんな、命に別状はないよ。

 とはいえ、皆が皆、血塗れでうめき声を上げているものだから、部屋にいる貴族達は顔面蒼白だった。

「マロン陛下、この者達はいったい?」

「おいらが広場で露店を広げていたら、この人達がやって来てね。
 おいら達の露店に向けて一斉に発砲したんだ。
 まっ、何一つ被害は無かったけど、アルトが怒っちゃった。
 火薬がどれだけ危険な物か、一度身をもって体験した方が良いって。
 この人達が身に着けている火薬を暴発させたの。
 他人の痛みを知らないから、平気で鉄砲を撃てるんだと言ってね。」

「これだけの銃騎士をアルト様お一人で撃退したと?」

 おいらが頷くと、宰相は頭を抱えていたよ。
 「何てモンを敵に回してしまったんだ。」って言わんばかりの顔だった。  
 
       **********

 その後、ダージリン王の着替えが済んだので、交渉のテーブルに着くことになったよ。
 部屋にあった大きなテーブルにダージリン王と宰相が着席し、その向かいにおいらが座ったの。
 他にも書記役の役人が座っていて、おいらも記録係としてトルテを座らせた。
 そして、おいらの隣一席は空けてもらい、残りの席には傍聴を希望した貴族の人達が座ったよ。
 座ったのは主に、間者を送り込まれたことで王様を糾弾したい貴族達だった。

「先ずは、我が国のウーロン王子の行為に付きまして、全面的に非を認め謝罪申し上げます。  
 して、マロン陛下は我が国に対して、どのような要求をなされるおつもりでしょうか。」

 宰相は全面的にヌル王国の非を認めて謝罪したけど。その隣ではダージリン王が憮然としていたよ。
 ダージリン王はこの状況を受け入れ難いみたい。
 征服に赴いて返り討ちに遭った上に、王宮まで攻め込まれるなんて前代未聞のことらしいから。

「色々あるものだから、一応書面にしてきたよ。」

 おいらは、一通の書簡を宰相に差し出したよ。
 今までは予め書面で要求を伝えることは無かったけど、今はトルテ、タルトという頼もしい味方が居るからね。
 商人の娘だけあって書面を作成するのが得意なんだ。近衛騎士団の事務仕事もお願いしているくらいだし。
 今回は、二人に要求書を作ってもらったんだ。

「先ずは、今回の紛争の最中にウエニアール国側が接収した戦利品に関する返還請求権の放棄ですか…。
 まあ、これは仕方がありませんな。戦利品を返せなどと恥知らずな事は言えないですから。」
 
 この大陸では敗北した国の物を接収するのは戦勝国の権利らしいよ。
 特に貴重な武装船は、戦になると各国共に戦利品として確保しようと血眼になるそうだよ。
 なるべく破損が少ない船を確保したいため、甲板に鉄砲隊を並べて激しい打ち合いになるみたい。
 大砲は船を壊すから撃たないように努めるんだって。
 
 そんな訳で、宰相がおいらの要求を飲もうとした時のことだよ。
 今、この部屋で何が行われているかを知らない役人さんが駆け込んできたの。

「申し上げます。
 王宮内埠頭に係留中の王族御座船四隻が行方不明になっております。
 今朝、警備の者が巡回した時には消え失せていたとのことです。」

 どうやら、船の管理室の役人さんみたい。
 それにしても、今頃やっと報告に来たの? もう、半日経っているよ…。

「何、儂の御座船が行方不明だと!
 あれは儂のお気に入りなのだぞ、草の根分けても探し出すのだ。」

 それまで憮然として黙り込んでいたダージリン王だけど。
 余程お気に入りの船だったのか、声を荒げて探せと命じていたよ。

 それとは対照的に、宰相は落ち着いた様子でおいらの方へ視線を向けてた。
 そして。

「消えた四隻の御座船とは…。
 三本マストの大型帆船でして、純白の船なのですが。
 マロン陛下、何か、ご存じではありませんか?」

 宰相の瞳は、「盗っただろう」と言っていたよ。

「てへっ、分かった?
 あれ、知り合いへのお土産に良いかと思って貰っておいたよ。
 この王宮を襲撃した戦利品だね。」

 おいらが正直に言うと。

「貴様がやったのか、この盗っ人が!
 返せ、さっさと返すのだ!」

 ダージリン王は自分の立場を忘れたのか、また噛み付いて来たよ。
 こいつ、もう一度お漏らしさせてやろうか…。
 おいらはそんなことを考えていたんだけど。

 激昂したダージリン王とは対照的に、宰相の方は極めて冷静で。

「もしや、王都軍港での武装船消失もマロン陛下がなされたことでは?」

 御座船を失敬したのがおいらだと知ると、直ぐそのことに思い至ったみたい。
 それまでは、おいら達に盗まれたなんて思いもしなかったようだよ。

 さっき、『妖精さんの不思議空間』のことを明かしたけど。
 巨大な船、しかも百隻以上を収納できるとは予想外だったみたいだね。
   
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