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第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・
第564話 それ、恥の上塗りだから…
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おいらの額にいきなり鉄砲を突き付けてきたプーアル伯爵。
スキルに任せて鉄砲の弾を回避したおいらはプーアル伯爵を打ちのめしたよ。
そのプーアル伯爵だけど、アルトにお願いして檻の中に放り込んでもらった。もちろん、パンツ一丁でね。
やがて、気絶していたプーアル伯爵が目を覚まし…。
「うん…、ここは…? 儂はいったい何を…。」
どうやら、自分の置かれた状況を理解できないみたい。
無理もないか。おいらに一撃を食らって気を失ったのは一瞬のことだったから。
周囲を見回し、自分の姿を確認すると、…。
「今すぐ、儂をここから出すのだ!
儂を誰だと思っておる!
儂は一軍を束ねる大将軍にして、当代のプーアル伯爵だぞ!
プーアル伯爵に対する数々の無礼、断じて赦してはおかぬぞ!」
怒りで火を噴くほど顔を赤らめて、伯爵は喚き散らしたんだ。
どうやら、頭に血が昇って冷静な判断ができないみたいだね。
そんな風に喚き散らすのは悪手なのに…。
「おい、聞いたか。
あのパンツ一丁のオヤジ、プーアル伯爵だってよ。」
「おお、確かにこの耳で聞いたぜ。
伯爵様が情けない姿で喚き散らしているのを。
いい歳して、パンイチで檻に捕らわれてるなんて。
大将軍が聞いて呆れらぁ、恥さらしも良い所だぜ。」
「てか、俺は最初から見物してたが。
この大将軍、そこのお嬢ちゃんに一撃でのされちまったぜ。
この国の大将軍てのは、家柄だけで選ばれているのか?
小娘に敗けるような軟弱者でもなれるなんてよ。」
ほら、さっそく野次馬達が噂している。
貴族は名誉を重んじると聞いてるけど、この伯爵、家名に泥を塗りまくりじゃん。
こんな所で家名を連呼するなんて。
プーアル伯爵の名が、『パンツ一丁で檻に捕らわれた伯爵』として民衆の記憶に刻まれちゃうよ。
ついでに、『幼女に一撃でのされた大将軍』としても人々の記憶に残るかも。
プーアル伯爵家の権威の前においらがひれ伏すとでも思ったのか。
伯爵は、その後も家名を連呼しつつ、檻から出せと大声で喚いていたよ。
檻の前には常に野次馬が群がっていたから、明日にはプーアル伯爵の不名誉な噂が王都中に広がっちゃうね。
**********
その後も、噂を聞きつけて何人もの貴族がやって来たよ。
最初のお爺さん同様に無事に戻って来たことに感謝している人達には、子息を返してあげたよ。
一方で、プーアル伯爵みたいにおいらに襲い掛かって来た血の気の多い貴族もいたんだ。
もちろん、返り討ちにしてパンツ一丁で檻の中に放り込んでやった。
そして、檻のこと、銃騎士隊が捕らえられたこと、そして新たに貴族が晒し者となったこと。
そんな諸々のことに関する噂が、やっと王宮の上層部の耳にまで届いたみたいで。
百をゆうに超える数の銃騎士隊が姿を現したよ。
しかも、最初からおいら達と戦うことを念頭に置いて行動しているようで。
銃騎士達は、鉄砲を肩から下げるのではなく、腰位置に両手で持って進んできたの。
多分、何時でも撃てるように火縄もセットしてあるんじゃないかな。
銃騎士隊が物々しく広場に入ってくると、身の危険を感じた街の人はおいら達から距離をとったよ。
露店を広げていた人達も、慌ただしく後片付けをして立ち去って行った。
「おおっ、良く来てくれた。
儂だ、大将軍のプーアルだ。早く儂をここから出してくれ。
そこで露店を広げている小娘が、儂らをこんな目に遭わせたのだ。」
プーアル伯爵は銃騎士隊に光明を見出した様子で助けを求めたの。
「これは、プーアル卿、おいたわしや。
少々お待ちください。
不届き者を成敗して後、直ぐにお救い致します。」
指揮官らしき男はそう返答すると、おいら達に向かって来たんだ。
その男が少し距離を置いておいら達の前に立ち止まると、銃騎士隊はその背後に横三列に並んだの。
それを見てタロウがボソッと呟いてたよ。「今度は三段撃ちか、信長ぐらいの知恵はあるんだな。」って。
何それって聞いたら、原始的な鉄砲の効果的な運用の仕方だと教えたくれたよ。
おいらがタロウから鉄砲の話を聞いていると。
「一応確認しておくが。
この広場で舐めたマネをしてくれたのは、貴様らで間違いないか?」
隊を率いていた指揮官らしき男が、威圧的な態度で尋ねてきたんだ。
でも、おいら、そのくらいでは怯まないよ。
「舐めたマネが何を示すのかは知らないけど。
この檻二つを設置したのはおいらだし。
態度の悪い銃騎士や貴族を拘束したのもおいらだよ。
商売の邪魔をしたんだもの、このくらい当然でしょう。」
堂々と言い返してやったの。
まあ、実際のところ、…。
商売の邪魔どころかお客さんを呼び込んでくれて、おいらは大助かりだったけどね。
「ほう、小娘、それだけの大口を叩いたんだ。
当然、覚悟は出来ているんだろうな。
貴様だけでは無く、後ろに居る貴様の仲間達も容赦はしないぞ。
精々、あの世で道連れにされた仲間達に詫びるんだな。」
指揮官は、そう言うと手にした指揮杖を振り上げて。
「撃ちかた始め!」
号令と共に指揮杖を振り下ろしたの。
それに続くように、耳をつんざくような爆音が立て続けに広場に響いたよ。
タロウの説明通り鉄砲の弾は、間断なくおいらの方へ飛んできた。
それと同時に、銃騎士隊は鉄砲から立ち昇る白い煙に包まれたんだ。
「よし、これだけ撃てば十分だろう。
撃ちかた止め!」
しばらくすると、そんな号令が聞こえて鉄砲の音が鳴り止んだよ。
やがて、鉄砲から昇った白煙が収まり…。
「ふふふ、ガキが粋がるから早死にすることになる…。
って、えっ、一人も倒れていないではないか!
それどころか、露店の物が何一つ壊れてない…。
おい、お前ら何をしおる!
こんな至近距離で全弾外したと言うのか!」
無傷なおいら達を目にして、激昂する指揮官と呆然とする銃騎士達。
まあ、部下を責めたくなるのも仕方がないと思うよ。
飛んでくる弾を全て『積載庫』に仕舞ったなんて、想像もできないだろうからね。
「マロン、こんな連中をおちょくって楽しい?
ちゃっちゃと片付けてそろそろ王宮へ行きましょうよ。」
アルトは、おいらが敢えて連中に鉄砲を撃たせたことに気付いたみたい。
うん、鉄砲の攻撃が全く通用しなかった時に、連中がどんな顔をするかちょっとだけ興味があったの。
「ゴメン、ゴメン、それじゃあ、本気で片付けるね。」
おいらが謝ると、アルトは首を横に振って。
「ここは私に任せて。
あの愚か者共に思い知らせてあげるわ。
自分達がどんな危ないモノを使っているかをね。」
そんな言葉を発するやいなや、アルトはビリビリを放ったんだ。
雷鳴と共に眩い稲妻が次々と広場に走り、銃騎士達は逃れる術を持たなかった。
パン! パン! パン! パン! パン! パン! パン!・・・。
「痛てぇーーー!」 「ギャーーーー!」
アルトのビリビリにより引火した火薬の炸裂音が鳴り響き、それと同時に銃騎士達の耳障りな悲鳴が上がったの。
炸裂音と悲鳴が止むと、所持した火薬の暴発で血塗れになった銃騎士達が地面を埋め尽くしてたよ。
百人以上の銃騎士達が一瞬にして壊滅したのを目にして。
「信じられん…。
雲一つないのに、狙ったように雷が落ちるとは…。
お前ら、いったい何なのだ。
雷や雨を自由自在に操れるとでも言うのか。」
呆然とした表情でそんな呟きを漏らしたのは、さっきおいらが海水を浴びせ掛けた銃騎士。
今の今まで威勢よく喚き散らしていたプーアル伯爵も、あんぐりと口を開けて言葉を失ってた。
**********
「ふふふっ、良い手土産が出来たわね。
こいつ等を持って王宮へ押し掛けましょう。
海賊崩れの王様に、目に物見せて上げないとね。」
倒れ伏した銃騎士達を『積載庫』に仕舞いながら、そんな言葉を呟くアルト。
その表情はとても楽しそうで、少しだけダージリン王を気の毒に思ったよ。
こんな表情をしている時のアルトのお仕置きって、苛烈を極めるから…。
アルトが急かすので、客足が途切れるのを見計らって露店をたたむと、おいら達は王宮へ向かったんだ。
もちろん、檻二つとそこに括りつけた銃騎士達もアルトの積載庫に仕舞ってもらったよ。
そして、最初に向かったのは王宮の北の端にある船着き場。
ヌル王国の王宮は、おいらの王宮よりも遥かに広大で隅の方には港まであったんだ。
もっとも、王宮がだだっ広い最大の理由は、後宮がとてつもなく広いからだけどね。
お妃が二十人くらいいるそうだから、仕方ないっちゃ仕方ないけど。
それはともかく船着き場、そこには同型の大型帆船が四隻も係留されていたの。
船体が白く塗られた綺麗な船で、ウーロン王子が乗ってきた船も同型船みたい。
五隻とも、王族の御座船として造られたものらしいよ。
せっかくだから、お土産に貰っていこうと思って。
お義父さんとローレル王に一隻ずつお裾分けするつもりなんだ。
それと一隻はジャスミン姉ちゃんが欲しいって、手切れ金代わりに。
と言うことで、ここにある四隻、丸っと貰いに来たんだ。
騒ぎになると拙いので、昨日は下見だけにしておいたけど。
今日は騒ぎになった方が王宮が混乱して、潜入するのに都合が良いからね。
「マロンちゃん、ここにある船。
『キング・ダージリン』とか『クイーン・オレンジペコー』とか王族の名前がついてるの。
せっかくだから、マロンちゃんも『クイーン・マロン』とか名前を付け替えたら。」
おいらが船を奪っていると、ジャスミン姉ちゃんが笑いながら勧めて来たけど。
嫌だよ、自分の名前をつけて沈没でもしたら気分悪いじゃない。
スキルに任せて鉄砲の弾を回避したおいらはプーアル伯爵を打ちのめしたよ。
そのプーアル伯爵だけど、アルトにお願いして檻の中に放り込んでもらった。もちろん、パンツ一丁でね。
やがて、気絶していたプーアル伯爵が目を覚まし…。
「うん…、ここは…? 儂はいったい何を…。」
どうやら、自分の置かれた状況を理解できないみたい。
無理もないか。おいらに一撃を食らって気を失ったのは一瞬のことだったから。
周囲を見回し、自分の姿を確認すると、…。
「今すぐ、儂をここから出すのだ!
儂を誰だと思っておる!
儂は一軍を束ねる大将軍にして、当代のプーアル伯爵だぞ!
プーアル伯爵に対する数々の無礼、断じて赦してはおかぬぞ!」
怒りで火を噴くほど顔を赤らめて、伯爵は喚き散らしたんだ。
どうやら、頭に血が昇って冷静な判断ができないみたいだね。
そんな風に喚き散らすのは悪手なのに…。
「おい、聞いたか。
あのパンツ一丁のオヤジ、プーアル伯爵だってよ。」
「おお、確かにこの耳で聞いたぜ。
伯爵様が情けない姿で喚き散らしているのを。
いい歳して、パンイチで檻に捕らわれてるなんて。
大将軍が聞いて呆れらぁ、恥さらしも良い所だぜ。」
「てか、俺は最初から見物してたが。
この大将軍、そこのお嬢ちゃんに一撃でのされちまったぜ。
この国の大将軍てのは、家柄だけで選ばれているのか?
小娘に敗けるような軟弱者でもなれるなんてよ。」
ほら、さっそく野次馬達が噂している。
貴族は名誉を重んじると聞いてるけど、この伯爵、家名に泥を塗りまくりじゃん。
こんな所で家名を連呼するなんて。
プーアル伯爵の名が、『パンツ一丁で檻に捕らわれた伯爵』として民衆の記憶に刻まれちゃうよ。
ついでに、『幼女に一撃でのされた大将軍』としても人々の記憶に残るかも。
プーアル伯爵家の権威の前においらがひれ伏すとでも思ったのか。
伯爵は、その後も家名を連呼しつつ、檻から出せと大声で喚いていたよ。
檻の前には常に野次馬が群がっていたから、明日にはプーアル伯爵の不名誉な噂が王都中に広がっちゃうね。
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その後も、噂を聞きつけて何人もの貴族がやって来たよ。
最初のお爺さん同様に無事に戻って来たことに感謝している人達には、子息を返してあげたよ。
一方で、プーアル伯爵みたいにおいらに襲い掛かって来た血の気の多い貴族もいたんだ。
もちろん、返り討ちにしてパンツ一丁で檻の中に放り込んでやった。
そして、檻のこと、銃騎士隊が捕らえられたこと、そして新たに貴族が晒し者となったこと。
そんな諸々のことに関する噂が、やっと王宮の上層部の耳にまで届いたみたいで。
百をゆうに超える数の銃騎士隊が姿を現したよ。
しかも、最初からおいら達と戦うことを念頭に置いて行動しているようで。
銃騎士達は、鉄砲を肩から下げるのではなく、腰位置に両手で持って進んできたの。
多分、何時でも撃てるように火縄もセットしてあるんじゃないかな。
銃騎士隊が物々しく広場に入ってくると、身の危険を感じた街の人はおいら達から距離をとったよ。
露店を広げていた人達も、慌ただしく後片付けをして立ち去って行った。
「おおっ、良く来てくれた。
儂だ、大将軍のプーアルだ。早く儂をここから出してくれ。
そこで露店を広げている小娘が、儂らをこんな目に遭わせたのだ。」
プーアル伯爵は銃騎士隊に光明を見出した様子で助けを求めたの。
「これは、プーアル卿、おいたわしや。
少々お待ちください。
不届き者を成敗して後、直ぐにお救い致します。」
指揮官らしき男はそう返答すると、おいら達に向かって来たんだ。
その男が少し距離を置いておいら達の前に立ち止まると、銃騎士隊はその背後に横三列に並んだの。
それを見てタロウがボソッと呟いてたよ。「今度は三段撃ちか、信長ぐらいの知恵はあるんだな。」って。
何それって聞いたら、原始的な鉄砲の効果的な運用の仕方だと教えたくれたよ。
おいらがタロウから鉄砲の話を聞いていると。
「一応確認しておくが。
この広場で舐めたマネをしてくれたのは、貴様らで間違いないか?」
隊を率いていた指揮官らしき男が、威圧的な態度で尋ねてきたんだ。
でも、おいら、そのくらいでは怯まないよ。
「舐めたマネが何を示すのかは知らないけど。
この檻二つを設置したのはおいらだし。
態度の悪い銃騎士や貴族を拘束したのもおいらだよ。
商売の邪魔をしたんだもの、このくらい当然でしょう。」
堂々と言い返してやったの。
まあ、実際のところ、…。
商売の邪魔どころかお客さんを呼び込んでくれて、おいらは大助かりだったけどね。
「ほう、小娘、それだけの大口を叩いたんだ。
当然、覚悟は出来ているんだろうな。
貴様だけでは無く、後ろに居る貴様の仲間達も容赦はしないぞ。
精々、あの世で道連れにされた仲間達に詫びるんだな。」
指揮官は、そう言うと手にした指揮杖を振り上げて。
「撃ちかた始め!」
号令と共に指揮杖を振り下ろしたの。
それに続くように、耳をつんざくような爆音が立て続けに広場に響いたよ。
タロウの説明通り鉄砲の弾は、間断なくおいらの方へ飛んできた。
それと同時に、銃騎士隊は鉄砲から立ち昇る白い煙に包まれたんだ。
「よし、これだけ撃てば十分だろう。
撃ちかた止め!」
しばらくすると、そんな号令が聞こえて鉄砲の音が鳴り止んだよ。
やがて、鉄砲から昇った白煙が収まり…。
「ふふふ、ガキが粋がるから早死にすることになる…。
って、えっ、一人も倒れていないではないか!
それどころか、露店の物が何一つ壊れてない…。
おい、お前ら何をしおる!
こんな至近距離で全弾外したと言うのか!」
無傷なおいら達を目にして、激昂する指揮官と呆然とする銃騎士達。
まあ、部下を責めたくなるのも仕方がないと思うよ。
飛んでくる弾を全て『積載庫』に仕舞ったなんて、想像もできないだろうからね。
「マロン、こんな連中をおちょくって楽しい?
ちゃっちゃと片付けてそろそろ王宮へ行きましょうよ。」
アルトは、おいらが敢えて連中に鉄砲を撃たせたことに気付いたみたい。
うん、鉄砲の攻撃が全く通用しなかった時に、連中がどんな顔をするかちょっとだけ興味があったの。
「ゴメン、ゴメン、それじゃあ、本気で片付けるね。」
おいらが謝ると、アルトは首を横に振って。
「ここは私に任せて。
あの愚か者共に思い知らせてあげるわ。
自分達がどんな危ないモノを使っているかをね。」
そんな言葉を発するやいなや、アルトはビリビリを放ったんだ。
雷鳴と共に眩い稲妻が次々と広場に走り、銃騎士達は逃れる術を持たなかった。
パン! パン! パン! パン! パン! パン! パン!・・・。
「痛てぇーーー!」 「ギャーーーー!」
アルトのビリビリにより引火した火薬の炸裂音が鳴り響き、それと同時に銃騎士達の耳障りな悲鳴が上がったの。
炸裂音と悲鳴が止むと、所持した火薬の暴発で血塗れになった銃騎士達が地面を埋め尽くしてたよ。
百人以上の銃騎士達が一瞬にして壊滅したのを目にして。
「信じられん…。
雲一つないのに、狙ったように雷が落ちるとは…。
お前ら、いったい何なのだ。
雷や雨を自由自在に操れるとでも言うのか。」
呆然とした表情でそんな呟きを漏らしたのは、さっきおいらが海水を浴びせ掛けた銃騎士。
今の今まで威勢よく喚き散らしていたプーアル伯爵も、あんぐりと口を開けて言葉を失ってた。
**********
「ふふふっ、良い手土産が出来たわね。
こいつ等を持って王宮へ押し掛けましょう。
海賊崩れの王様に、目に物見せて上げないとね。」
倒れ伏した銃騎士達を『積載庫』に仕舞いながら、そんな言葉を呟くアルト。
その表情はとても楽しそうで、少しだけダージリン王を気の毒に思ったよ。
こんな表情をしている時のアルトのお仕置きって、苛烈を極めるから…。
アルトが急かすので、客足が途切れるのを見計らって露店をたたむと、おいら達は王宮へ向かったんだ。
もちろん、檻二つとそこに括りつけた銃騎士達もアルトの積載庫に仕舞ってもらったよ。
そして、最初に向かったのは王宮の北の端にある船着き場。
ヌル王国の王宮は、おいらの王宮よりも遥かに広大で隅の方には港まであったんだ。
もっとも、王宮がだだっ広い最大の理由は、後宮がとてつもなく広いからだけどね。
お妃が二十人くらいいるそうだから、仕方ないっちゃ仕方ないけど。
それはともかく船着き場、そこには同型の大型帆船が四隻も係留されていたの。
船体が白く塗られた綺麗な船で、ウーロン王子が乗ってきた船も同型船みたい。
五隻とも、王族の御座船として造られたものらしいよ。
せっかくだから、お土産に貰っていこうと思って。
お義父さんとローレル王に一隻ずつお裾分けするつもりなんだ。
それと一隻はジャスミン姉ちゃんが欲しいって、手切れ金代わりに。
と言うことで、ここにある四隻、丸っと貰いに来たんだ。
騒ぎになると拙いので、昨日は下見だけにしておいたけど。
今日は騒ぎになった方が王宮が混乱して、潜入するのに都合が良いからね。
「マロンちゃん、ここにある船。
『キング・ダージリン』とか『クイーン・オレンジペコー』とか王族の名前がついてるの。
せっかくだから、マロンちゃんも『クイーン・マロン』とか名前を付け替えたら。」
おいらが船を奪っていると、ジャスミン姉ちゃんが笑いながら勧めて来たけど。
嫌だよ、自分の名前をつけて沈没でもしたら気分悪いじゃない。
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