ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・

第541話 タロウが言ってた通りだったよ

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 臨時総督のチャイを見つけ出したアルトは、おいらをその前に降ろしたの。
 突然目の前に現れたおいらに、チャイ達は驚きの表情を見せたけど。
 すぐに、おいらが取るに足らない小娘だと気付いたみたい。

「こら、小娘、いったい何処から入って来た!
 ここは子供の来るところじゃないぞ。
 さっさと、出て行くのだ!
 だいたい、何でお前のような町娘が王宮に入り込んでおるのだ。」

 チャイはおいらを追い払おうとしたんだ。
 チャイの後ろには護衛と思われる男が四人、全員鉄砲を所持していたの。
 そんな護衛の男達に対して…。

「先ずは、その物騒なオモチャ、使えなくさせてもらうね。」

 おいらは、間髪入れず連中の上から滝のように海水を降らせてやったよ。
 タロウの助言に従って、問答無用で鉄砲を無力化することにしたの。
 手加減が面倒だったので、前に座ってたチャイも道連れにしちゃった。

「うあっ! なんだ、これは!
 ペッ、ペッ、これは海水か? 何でこんなことに。」

 唐突に水を浴びせられて、その場の五人はパニック状態だったよ。

「こんにちは。
 ヌル王国の臨時総督、チャイだね。
 随分と悪いことをしているみたいじゃない。
 キツイお仕置きをしろって言われてるから、覚悟してちょうだいね。」

「小娘、何で、俺のことを知っている。
 まさか、この海水、貴様の仕業か!
 おい、この小娘をとっ捕まえろ。
 誰の差し金かを締め上げるんだ!」

 激昂したチャイが、四人の銃騎士においらを捕まえるように指示したんだ。

「へ、へ、へ、任せておくんなせい、親分。
 俺は、このくらいの小娘が大好物なんです。
 この娘、とっ捕まえたら、俺のオモチャにしちまっても良いでしょう。」

「ああ、とっ捕まえて。
 誰の命令でここに来たかを吐かせてからな。
 それさえ済めば、後は好きにしていいぞ。
 こんな悪さをしたことを死ぬほど後悔させてやれば良いさ。」

「へ、へ、じゃあ、ゴチになりますぜ。」

 銃騎士の一人がニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら、おいらに向かって来たよ。

      **********

「よう、嬢ちゃん、舐めたマネをしてくれたじゃねえか。
 今のはガキのイタズラじゃ済まねえぞ。
 嬢ちゃんには、少し痛い目を見てもらわねえとな。
 なあに、安心しな。痛てぇのは最初だけだ。
 そのうち、天にも昇る気分になるからよ。」

 頭から海水を被ってびしょ濡れになった男はそんな言葉を口にすると。
 おいらを取り押さえるべく、腕を伸ばして来たんだ。
 その男の顔は終始ニヤついていて、マジで怖気が走ったよ。

「触るな! キモい!」

 思わず、伸ばされた手を思いっ切り払っちゃった。…手加減無しで。

 ボキッとも、バキっとも、はたまたグシャっともつかない破砕音と共に…。

「ギャアアァーーーー!」

 にやけた顔は瞬時に苦悶の表情に変わり、耳障りな悲鳴共に両腕をダラーンと垂らしたよ。
 手首と肘の間の骨を両腕とも粉々に破砕してしちゃったみたい。
 男は痛みのために立っていられないようで、床に倒れて転げていたよ。

「おい、このガキ! なんてことをしやがる!」

 腕を砕かれた仲間を見て、残り三人の護衛が怒りも露わに襲い掛かって来たんだ。
 たとえ子供だろうが、手加減しないって感じでね。

 そして。

「俺の腹心四人を瞬殺だと…、信じられん。
 おい小娘、こんな事をしてタダで済むと思っているのか。
 俺は、ヌル王国から遣わされた総督だぞ。
 この国の王より偉いのだ。
 こんな舐めたことをした落とし前はきっちりつけてもらうからな。」

 おいらの足元に、護衛の四人が苦悶の表情を浮かべて転がっているんだけど。
 チャイはこの期に及んで、まだそんな強がりを言っているよ。
 分かってるのかな、もう自分を護ってくれる人は居ないってことを。

「タダで済むも何も、…。
 おいらがその気になれば、オッチャンも床で転がることになるんだよ。
 誰が、おいらに落とし前を付けさせるというのさ。」

「ガキが何を偉そうに。
 オメエら未開の原住民は知らねえだろうが。
 こっちには鉄砲と言う強えぇ味方があるんだぜ。」

 チャイは懐に手を入れると、護衛が所持してた物の四分の一程度しかない小さな鉄砲を出したよ。
 そして、銃口をおいらの方に向けて…。

 パチッ、パチッ!

「おい、こら、何で玉が出ねえんだ!
 げっ、さっきの海水で詰めといた火薬まで湿気っちまってるじゃねえか。」

 迂闊だね。
 服の内側に入れておいてくらいで、あれだけ大量の水を防げるとでも思ってたのかな。

「さっ、偉い総督さん、覚悟はできたかな?」

「ちょ、ちょっと待て! 話せばわかる!
 そ、そうだ、何が望みだ。
 なんなら、お前をこの国の王に据えてやっても良いぞ。」

 今度はおいらを買収に掛かったよ。何て往生際の悪い奴。

       **********

 おいらがチャイを取り押さえようとした丁度その時のこと。
 部屋の外に慌ただしく走る足音が近づいて来たんだ。

「親分、てえへんだ!
 沖合に待機させておいた船が消えちまったらしい。」

 長い鉄砲を肩に掛けた男が三人、慌てた様子で部屋に駆けこんできたんだ。
 どうやら、船乗りさん達が港に泳ぎ着いて、船の消失を知らせたようだね。

「お、お前ら、丁度良い所に。
 あの小娘を撃ち殺すんだ。
 子供だと思って舐めて掛かるんじゃないぞ。
 あれはバケモノだ。
 一斉に撃って蜂の巣にしてやれ!」

 チャイは重要な知らせにも関わらず、それを確認するよりもおいらを排除する方を選んだの。

「はっ、はぁ…。あの娘を撃つのですか?」

 とっても重要な報告をしに来たのに、おいらを撃ち殺せと命じられて困惑する男達。

「はぁ、じゃない! 良いから撃ち殺すんだ!」

 チャイの様子が尋常じゃないことに気付いたのだろう。
 男達はやっと鉄砲を肩から外し、おいらを撃つ姿勢を取ったよ。

「遅いよ!」

 おいらは、男達が引き金に手を掛ける前に、その頭上から海水を浴びせかけたよ。
 そして、男達が動揺している隙に駆け寄り、三人共無力化したよ。足をへし折ってあげたの。

「いったい、お前は何なのだ。
 海水を降らすなど、奇妙奇天烈な事をしおって。
 そして、俺達に対するこの狼藉。
 一人で、我がヌル王国に喧嘩でも売るつもりか。」

「自己紹介がまだだったね。
 おいらはマロン・ド・ポルトゥス。
 隣国ウエニアール国の女王なんだ。
 この国のシナモン王女に助力を請われてやって来たの。」

「貴様のような小娘が隣国の女王だと?
 いや、今、この国の王女に請われて来たと言ったか?
 それはどういう事だ、この国の王女は二人共ウーロン殿下が連れて行ったはずだぞ。
 何時、何処で、貴様が王女に助けを請われたと言うのだ。」

 チャイは、ウーロン王子が率いていた船団が惨敗したとは思いもしないのだろうね。

「うん? ウーロン王子ってのはこいつのこと?」

 おいらがチャイに問い掛けると、アルトが気を利かせてウーロン王子をおいらの足元に出してくれたよ。

「キュイン、キャン、キャン!」

 三日振りに外へ出してもらえたのが余程嬉しかったのか、鳴き声を上げておいらの足に頬を擦りつけていたよ。
 ウーロン王子のその仕草は、ブンブンと尻尾を振り回す犬のようだった。

「そ、その方は…、まさか、ウーロン殿下。」

「そっ、ウーロン王子。まるで犬みたいだけど。
 ちなみに、ヌル王国の船団はもうどこにもないよ。
 十四隻を拿捕して、残りは全部沈めちゃった
 いや捕らえたのは、この国に在った二隻を加えて十六隻か。
 ウーロン殿下だけじゃなく、乗っていた人は皆捕えたよ。
 沈んじゃった船の乗組員は、一緒に海の藻屑になっちゃったけどね。
 オッチャンと一緒に、この国に裁いてもらうつもりなんだ。」

 この街の沖合に停泊していた二隻が消えたのも、おいらの仕業だと明かしたよ。
 おいら、ついでに言っといたよ。
 ウエニアール国には被害らしい被害は無く、いとも簡単にヌル王国の船団を撃退したことを。
 そして、ヌル王国に深い恨みを持つであろうこの国で裁いてもらうことにしたって。
 王族三人も惨殺しているし、街も随分と破壊したようなので、全員極刑を覚悟した方が良いと伝えたら。
 チャイは観念したようで、崩れるように膝をついたんだ。

 後は、上陸している陸戦隊を一網打尽にしたらお終いだね。 連中、何処にいるんだろう?
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