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第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・
第528話 隣国は蹂躙されちゃったらしい
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(お詫び)予約登録をミスって2話同時に投稿してしまいました。
申し訳ございませんが、まだお読みでない方は1話戻ってお読みください。
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最初に何隻の船がやって来たかは分からないけど、沈まずに残った船を一網打尽にしたアルト。
その数十四隻で、中にはヌル王国の王族が乗る御座船も含まれていたよ。
ヌル王国の水軍を捕え、王都の民のパニックも鎮めて、おいら達が王宮に戻ると…。
「陛下、良くぞご無事で!
王都が賊の襲撃を受けたとの知らせがございまして。
陛下が市中に出ている最中でしたので心配しましたぞ。
何処かお怪我などなされていませんか。」
おいらが戻ったと聞き、宰相が安堵の表情を浮かべて駆け付けて来たよ。
「おいらは大丈夫、かすり傷一つ無いから。
王都にも、大した被害は出てないよ。
攻撃された区画は、今閉鎖されてる場所らしいから。
攻撃してきたのはヌル王国の水軍だって。
アルトが一網打尽に捕らえてくれたよ。」
おいらが掻い摘んで経緯を説明すると。
「アルト様、有り難うございます。
陛下を、王都の民をお護り戴きましたこと、深く感謝申し上げます。
して、陛下、アルト様が捕らえて下さった狼藉者は如何致しましょうか?」
宰相はアルトに頭を下げると、おいらに事後処理を尋ねてきたの。
「アルト、船に乗っている人って何人くらいいるか分かる?」
「分かるわよ、ちょっと待ってなさい。
あら、けっこういるわね…。」
おいらの問い掛けに、アルトは『積載庫』の確認を始めたよ。
びっくり、アルトの『積載庫』って、船の中にいる人の数まで分かるんだね。
「うーん…。全部で千百五十六人ですって…。
ただ、毛色の変わった人もいるわね。
サニアール国の女が四人、これって虜囚かしら。
それと、ヌル王国の女が十六人。
珍しいわね長い航海に女を連れて来るなんて。
夜のお楽しみに連れてきたのかしら。」
アルトの『積載庫』って、船に乗っている人の性別や国籍まで分かるんだ。
レベル三の『積載庫』、恐るべし…。
それはさておき、アルトの言う夜のお楽しみって、どんなことかは知らないけど。
基本、船乗りって男しかいないそうで、女の人が乗っていることは珍しいんだって。
普通は、夜のお楽しみのためだけに、余分な人を乗せることは無いみたい。
その分、貴重な水と食料を消費しちゃうから。
船に乗せられてる女の人って、精々が奴隷とするために捕らえた人くらいだそうだよ。
「まっ、そうだよな。
だから、港には必ず『風呂屋』みたいな店があるんだもんな。
あれかな、王族専用船に王族のお相手として乗せられてたんかな。
だとしたら、女を侍らせて優雅な船旅とは良いご身分だぜ。」
アルトの言葉を聞いて、タロウが呆れていたよ。
いや、いや、それはタロウの思い込みだから…。
勝手に決めつけて、呆れないでよ。
**********
「えっ、ここは?」
サニアール国の女性を『積載庫』から降ろしてもらうと。
突然周囲の風景が変わって驚いたんだろうけど、四人とも周りを見回して呆然としてたよ。
捕らわれた人なら気の毒だと思って、最初に外へ出してあげることにしたんだ。
四人共、整った身形をしている二十歳前後のお姉さんで、特に二人はとても瀟洒な服を身に着けていたよ。
少なくとも、奴隷として捕まった人では無いと思う。
「景色が突然変わって驚いたかもしれないけど。
ここはウエニアール国の王宮だよ。
おいらは、マロン・ド・ポルトゥス。
ここウエニアール国の女王なんだ。
お姉さん達はどういった人達かな。」
「ウエニアール国…。
た、助けて下さい!
私はサニアール国第一王女シナモン・イン・ハムン。
王都ハムンが、ヌル王国なる無法者の襲撃を受け…。
王都は破壊され、私達姉妹は人質として捕らわれの身となったのです。」
他の三人がオドオドとしている中で、たった一人、気丈なお姉さんが助けを求めてきたんだ。
シナモンお姉さんの話では、王都ハムンの沖合に現れた船団がいきなり砲撃してきたらしい。
最初は散発的な攻撃だったらしいけど、サニアール国が反撃も出来ずに手をこまねいていると。
船団は海岸線に近付いて、激しい砲撃を加えて来たんだって。
どうやら、最初に沖合遠くから砲撃するのは脅しだけが目的ではないみたいだね。
多分、相手に反撃能力があるかどうか窺っているんだと思う。
それで反撃してこなければ、一気呵成に攻めて都市を制圧する作戦なんだろう。
この港ではアルトやタロウが反撃したから。
一気に攻めてこないで四隻づつ小分けにしたんだと思う。
こちらの手の内が分からずに攻め入って、手酷い反撃を受けたら困るから。
ヌル王国の連中はサニアール国を与し易いと判断したみたい。
一頻り砲撃した後、船を港につけて上陸してきたそうだよ。
その時には海側にある建物はことごとく破壊されていて。
逃げ惑う多くの民衆で、街は混乱を極めていたらしいの。
ヌル王国の連中を迎え撃とうと、騎士が出撃したそうだけど。
逃げ惑う民衆が妨げとなって、思うように前進できなかったみたい。
そこをついて、上陸してきた者達が鉄砲と呼ばれる武器で攻撃したんだって。
馬上、動くに動けぬ騎士は格好の標的になってバタバタと倒されたそうなの。
鉄砲って、あの商人見習いのニイチャンが言ってたモノだよね。
弓矢よりも遠くへ届き、弓矢より殺傷力の強い武器だって。
鉄砲を作るために鉄がいっぱい必要で、鉄を作るために浅薄な連中が森を丸裸にしたって。
鉄砲の攻撃に手も足も出ないで、あっと言う間にハムンの王宮は制圧されちゃったらしいよ。
そして、国王と皇太子、第二王子は惨殺され、まだ子供の第三王子が王位に就いたんだって。
ヌル王国の属国となったサニアール国の傀儡王としてね。
そして、二人の王女が人質としてヌル王国へ送られることになったそうだよ。
第一王女のシナモンさんと第二王女のカルダモンさんだって。
残り二人は貴族の娘さんで王女二人のお世話係として付いて来たみたい、クミンさんとセージさん。
第二王女のカルダモンさんは、気弱そうなお姉さんで怯えた表情をしていて一言も話さなかったよ。
すると。
「マロン、この娘さん達のお願いを聞いてあげなさい。
ご近所付き合いは大事よ。」
ご近所付き合いって…、鉱山住宅のオバチャン達の付き合いじゃないんだから。
「まあ、アルトが手伝ってくれるのなら…。
でも、おいら、休み明けで仕事が山ほど溜まっているんだ。
宰相が許してくれるかどうか。」
ただでさえ、一月の予定の休暇が二月に伸びちゃって宰相はご機嫌斜めなのに。
この上、また長期間留守にするなんて言おうものなら、大目玉をくらうかも。
「陛下、日常の政務は我々にお任せください。
ヌル王国の連中がサニアール国に居座ったままでは安心できません。
また何時襲って来るやも知れませんから。
それに、隣国にならず者のような国になられたら堪りませぬ。
どうか、ヌル王国の連中をこの大陸から追い払ってください。」
意外なことに、宰相はマロンの提案に乗り気な様子だったよ。
隣国が、ヌル王国なんて物騒な国の属国になるなんてとんでもないことで。
何としてでも、この大陸から追い出さないと安心できないって。
アルトが協力してくれるのなら、好都合だって宰相は言ってた。
「ねえ、シナモンお姉さん、この国にやって来た船団は全て捕えたんだけど。
ヌル王国の連中、どのくらいの戦力をサニアール国に残して来たかわかるかな?」
「それが…、出港前から窓のない部屋に監禁されてましたので。
何隻くらいの船がハムンの港に残ったのか。
何人くらいの戦力が駐留しているのか見当が付かないのです。
ただ、ハムンを襲撃してきた船は三十には届いてなかったかと。」
自信無さげに返答するシナモンお姉さん。
最大三十隻としても、十四隻捕えて、五、六隻沈めちゃったから…。
多くても残り十隻ってところかな。
おいらがそんな見当をつけていると…。
「どのくらいの戦力を残して来たかなんて。
そんなの、当事者に聞いてみれば良いじゃない。」
アルトはそんな言葉を口にしながら、新たに『積載庫』から人を降ろしたよ。
申し訳ございませんが、まだお読みでない方は1話戻ってお読みください。
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最初に何隻の船がやって来たかは分からないけど、沈まずに残った船を一網打尽にしたアルト。
その数十四隻で、中にはヌル王国の王族が乗る御座船も含まれていたよ。
ヌル王国の水軍を捕え、王都の民のパニックも鎮めて、おいら達が王宮に戻ると…。
「陛下、良くぞご無事で!
王都が賊の襲撃を受けたとの知らせがございまして。
陛下が市中に出ている最中でしたので心配しましたぞ。
何処かお怪我などなされていませんか。」
おいらが戻ったと聞き、宰相が安堵の表情を浮かべて駆け付けて来たよ。
「おいらは大丈夫、かすり傷一つ無いから。
王都にも、大した被害は出てないよ。
攻撃された区画は、今閉鎖されてる場所らしいから。
攻撃してきたのはヌル王国の水軍だって。
アルトが一網打尽に捕らえてくれたよ。」
おいらが掻い摘んで経緯を説明すると。
「アルト様、有り難うございます。
陛下を、王都の民をお護り戴きましたこと、深く感謝申し上げます。
して、陛下、アルト様が捕らえて下さった狼藉者は如何致しましょうか?」
宰相はアルトに頭を下げると、おいらに事後処理を尋ねてきたの。
「アルト、船に乗っている人って何人くらいいるか分かる?」
「分かるわよ、ちょっと待ってなさい。
あら、けっこういるわね…。」
おいらの問い掛けに、アルトは『積載庫』の確認を始めたよ。
びっくり、アルトの『積載庫』って、船の中にいる人の数まで分かるんだね。
「うーん…。全部で千百五十六人ですって…。
ただ、毛色の変わった人もいるわね。
サニアール国の女が四人、これって虜囚かしら。
それと、ヌル王国の女が十六人。
珍しいわね長い航海に女を連れて来るなんて。
夜のお楽しみに連れてきたのかしら。」
アルトの『積載庫』って、船に乗っている人の性別や国籍まで分かるんだ。
レベル三の『積載庫』、恐るべし…。
それはさておき、アルトの言う夜のお楽しみって、どんなことかは知らないけど。
基本、船乗りって男しかいないそうで、女の人が乗っていることは珍しいんだって。
普通は、夜のお楽しみのためだけに、余分な人を乗せることは無いみたい。
その分、貴重な水と食料を消費しちゃうから。
船に乗せられてる女の人って、精々が奴隷とするために捕らえた人くらいだそうだよ。
「まっ、そうだよな。
だから、港には必ず『風呂屋』みたいな店があるんだもんな。
あれかな、王族専用船に王族のお相手として乗せられてたんかな。
だとしたら、女を侍らせて優雅な船旅とは良いご身分だぜ。」
アルトの言葉を聞いて、タロウが呆れていたよ。
いや、いや、それはタロウの思い込みだから…。
勝手に決めつけて、呆れないでよ。
**********
「えっ、ここは?」
サニアール国の女性を『積載庫』から降ろしてもらうと。
突然周囲の風景が変わって驚いたんだろうけど、四人とも周りを見回して呆然としてたよ。
捕らわれた人なら気の毒だと思って、最初に外へ出してあげることにしたんだ。
四人共、整った身形をしている二十歳前後のお姉さんで、特に二人はとても瀟洒な服を身に着けていたよ。
少なくとも、奴隷として捕まった人では無いと思う。
「景色が突然変わって驚いたかもしれないけど。
ここはウエニアール国の王宮だよ。
おいらは、マロン・ド・ポルトゥス。
ここウエニアール国の女王なんだ。
お姉さん達はどういった人達かな。」
「ウエニアール国…。
た、助けて下さい!
私はサニアール国第一王女シナモン・イン・ハムン。
王都ハムンが、ヌル王国なる無法者の襲撃を受け…。
王都は破壊され、私達姉妹は人質として捕らわれの身となったのです。」
他の三人がオドオドとしている中で、たった一人、気丈なお姉さんが助けを求めてきたんだ。
シナモンお姉さんの話では、王都ハムンの沖合に現れた船団がいきなり砲撃してきたらしい。
最初は散発的な攻撃だったらしいけど、サニアール国が反撃も出来ずに手をこまねいていると。
船団は海岸線に近付いて、激しい砲撃を加えて来たんだって。
どうやら、最初に沖合遠くから砲撃するのは脅しだけが目的ではないみたいだね。
多分、相手に反撃能力があるかどうか窺っているんだと思う。
それで反撃してこなければ、一気呵成に攻めて都市を制圧する作戦なんだろう。
この港ではアルトやタロウが反撃したから。
一気に攻めてこないで四隻づつ小分けにしたんだと思う。
こちらの手の内が分からずに攻め入って、手酷い反撃を受けたら困るから。
ヌル王国の連中はサニアール国を与し易いと判断したみたい。
一頻り砲撃した後、船を港につけて上陸してきたそうだよ。
その時には海側にある建物はことごとく破壊されていて。
逃げ惑う多くの民衆で、街は混乱を極めていたらしいの。
ヌル王国の連中を迎え撃とうと、騎士が出撃したそうだけど。
逃げ惑う民衆が妨げとなって、思うように前進できなかったみたい。
そこをついて、上陸してきた者達が鉄砲と呼ばれる武器で攻撃したんだって。
馬上、動くに動けぬ騎士は格好の標的になってバタバタと倒されたそうなの。
鉄砲って、あの商人見習いのニイチャンが言ってたモノだよね。
弓矢よりも遠くへ届き、弓矢より殺傷力の強い武器だって。
鉄砲を作るために鉄がいっぱい必要で、鉄を作るために浅薄な連中が森を丸裸にしたって。
鉄砲の攻撃に手も足も出ないで、あっと言う間にハムンの王宮は制圧されちゃったらしいよ。
そして、国王と皇太子、第二王子は惨殺され、まだ子供の第三王子が王位に就いたんだって。
ヌル王国の属国となったサニアール国の傀儡王としてね。
そして、二人の王女が人質としてヌル王国へ送られることになったそうだよ。
第一王女のシナモンさんと第二王女のカルダモンさんだって。
残り二人は貴族の娘さんで王女二人のお世話係として付いて来たみたい、クミンさんとセージさん。
第二王女のカルダモンさんは、気弱そうなお姉さんで怯えた表情をしていて一言も話さなかったよ。
すると。
「マロン、この娘さん達のお願いを聞いてあげなさい。
ご近所付き合いは大事よ。」
ご近所付き合いって…、鉱山住宅のオバチャン達の付き合いじゃないんだから。
「まあ、アルトが手伝ってくれるのなら…。
でも、おいら、休み明けで仕事が山ほど溜まっているんだ。
宰相が許してくれるかどうか。」
ただでさえ、一月の予定の休暇が二月に伸びちゃって宰相はご機嫌斜めなのに。
この上、また長期間留守にするなんて言おうものなら、大目玉をくらうかも。
「陛下、日常の政務は我々にお任せください。
ヌル王国の連中がサニアール国に居座ったままでは安心できません。
また何時襲って来るやも知れませんから。
それに、隣国にならず者のような国になられたら堪りませぬ。
どうか、ヌル王国の連中をこの大陸から追い払ってください。」
意外なことに、宰相はマロンの提案に乗り気な様子だったよ。
隣国が、ヌル王国なんて物騒な国の属国になるなんてとんでもないことで。
何としてでも、この大陸から追い出さないと安心できないって。
アルトが協力してくれるのなら、好都合だって宰相は言ってた。
「ねえ、シナモンお姉さん、この国にやって来た船団は全て捕えたんだけど。
ヌル王国の連中、どのくらいの戦力をサニアール国に残して来たかわかるかな?」
「それが…、出港前から窓のない部屋に監禁されてましたので。
何隻くらいの船がハムンの港に残ったのか。
何人くらいの戦力が駐留しているのか見当が付かないのです。
ただ、ハムンを襲撃してきた船は三十には届いてなかったかと。」
自信無さげに返答するシナモンお姉さん。
最大三十隻としても、十四隻捕えて、五、六隻沈めちゃったから…。
多くても残り十隻ってところかな。
おいらがそんな見当をつけていると…。
「どのくらいの戦力を残して来たかなんて。
そんなの、当事者に聞いてみれば良いじゃない。」
アルトはそんな言葉を口にしながら、新たに『積載庫』から人を降ろしたよ。
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