522 / 848
第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・
第522話 当事者同士で解決してよ…
しおりを挟む
身なりの良いオッチャンが、屈強な男達の集団に追い回されているのに遭遇したおいら達。
オッチャンが袋叩きにされるのを見過ごす訳には行かないので、割って入ったんだ。
話を聞くと、追いかけていたのはオードゥラ大陸から来た船の船乗りさん達、追われていたのはその雇い主の商人らしい。
追われていた商人、船乗りさん達に操船以外の仕事を押し付けたらしい。
何でも、船乗りさん達に冒険者研修を受けて来いと命じたとか。
「それで、冒険者研修は合格して、登録証は貰えたんでしょう。
何で、このオッチャンを追いかけてたの?
そんなに怒って。」
「ああ、こいつな、俺達が研修を終えた時に受け取った銀貨を取り上げようとしたんだよ。
業務命令の遂行中に手に入れた金は雇い主のものだとか何とか理屈をコネてな。
おじさん達、予定外の仕事を押し付けられた上に、死にそうな思いをして手に入れた金だと言うのに。」
筋骨隆々とした厳つい顔のおじさんが、外見からは想像できない人当たりの良い口調で答えてくれたの。
研修中に倒したウサギやトレントは換金されて、研修終了時に均等に分けられるんだ。
冒険者研修の受講者は田舎から出て来たばかりの人が多く、大したお金も所持していないから。
当面の生活が安定するようにね。
研修中は、五人一組で一日に一体のトレントを狩るのがやっとだから。
研修終了時に受け取れる銀貨は千枚ほどだけど、それなりの大金だからね。
船乗りさん達は航海で鍛えた体と連携を活かして、大したケガも無く研修を終えたそうだけど。
トレント狩り実習では、これは死んだと肝を冷やす場面が何度もあったそうなんだ。
そんな大変は思いはしたものの、研修終了時に思わぬ臨時収入があって留飲を下げていたそうなの。
ところが、その銀貨を商人が取り上げようとしたので、コメカミに青筋が浮かんだって。
「お頭の言ったことだけじゃないんですぜ。
俺達が研修で稼いだ金を取り上げるだけじゃなくて。
これから毎日、トレントの狩場に潜り込んで苗木を探せと言うんだ。
冗談じゃない、そんな危ないことが出来るかってんだ。
船乗りは陸に上がったら、航海の疲れを癒すと昔から相場が決まっているんだ。」
どうやら、強面だけど人当たりの良いおじさんは、船乗りの頭領らしいね。
研修で受け取ったお金を取り上げると言われた時、血気盛んな若い船乗り達が暴動を起こしそうになったらしい。
その時は、何とか頭領が宥めたそうなんだけど。
トレントの苗木を探して来いと言われて、流石の頭領もプツンと切れたらしい。
そんな事をしたら、大事な船乗りたちの命が危ないって。
そして、頭領は商人に反旗を翻したらしいんだ。
**********
おいらの心証では、船乗り達の言う事の方がもっともだと思うけど…。
国が違えば法もしきたりも違うのが当たり前だし、ましてや遠い大陸の事だものね。
商人と船乗り、どっちの言い分が正しいのかは分からないよ。
「お前ら、何を言ってやがる。
船乗りが船主を害することは、重罪だぞ。
国に帰って、俺が役人にお前らのことを突き出せば。
全員、縛り首なのだからな、分かってんのか。
分かってんなら、俺に逆らうのは止めて。
さっさと、トレントの苗木を探しに行かんか!」
うん、やっぱり、この商人の方が悪いんじゃないかな。おいらの直感がそう告げてる。
だいたい、こいつ、馬鹿だよ。
国に帰って役人に突き出すなんて脅せば、国に帰る前に口封じされると思わないのかな。
「ねえ、オッチャン。おいら、子供だから良く分かんないんだけど。
船乗りさんって、普通、港に着いたら休息をとるものなんでしょう。
何で、船乗りさんにトレントの苗木を探せなんて命じるの?
オッチャン、大きな商人なら、使用人を沢山連れて来ているでしょう。
使用人に探させれば良いじゃん。」
おいらが、素朴な疑問をぶつけると…。
「そんなの、最初にやったわい。
トレントってのは木の分際で攻撃してくるって言うじゃないか。
うちの使用人達は、全員、冒険者研修を受けて大ケガだ。
みんな、俺が手塩に掛けて育てた手代達だってんだぞ。
今回は大仕事だったんで、秘蔵っ子連中を連れてきたのに。
大怪我を負わされて、これで苗木が手に入らなければ大損だわ。
だから、腕っ節の強い船乗り達に命じたんだ。」
どうやら、一応最初に商人の使用人を研修に送り込んだみたい。
でも、使用人達は商人としては優秀な人材だったようだけど、腕っ節はダメダメだったらしい。
全員が研修二日目でリタイヤして帰って来たそうだよ、ウサギにボコボコにされて…。
「なら、せめて、船乗りさん達に特別手当を弾めば良いじゃない。
本来、船乗りさん達の仕事は船を操ることだけなんでしょう。
手当てを出すどころか、研修で稼いだお金を巻き上げるなんて問題外だよ。
それじゃ、船乗りさん達が怒るのも当然だと思うな、おいら。」
「子供が何知ったような口を利きやがる。
儂は、王命を受けてトレントの苗木と木炭を入手するためにやって来たのだ。
ところが、木炭はひまわり会なる商会の独占で馬鹿高いわ。
苗木は何処にも売ってないわで。
仕方がないので、もう一月も、産元を探してこの国を彷徨ったのだ。
それだけでも、予定外の経費が嵩んでおると言うのに。
この上、特別手当など出そうものなら大赤字だ。
爵位の一つくらいじゃ、とても割に合わんわ。」
ムッ、このオッチャン、ひまわり会が独占しているせいで『トレントの木炭』が高いと思ってる。
まるで、ひまわり会がぼっているかの言い様だね。
言い掛かりも甚だしいよ、『トレントの木炭』の貴重さも知らない癖に。
あれは、一流の刀匠が一級品の刀剣を造るために必要な物だから高価なんだ。
間違っても、そんじょそこらの鉄を大量に造るためにあるもんじゃないよ。
そもそも、おいらとスフレ姉ちゃん以外には、トレントの木炭の大量生産なんて出来ないんだよ。
トレントの討伐が容易でないこと以上に、ムチャクチャ重いトレント本体の回収が難しいから。
しかも、一月もこの国を彷徨って時間を浪費したのは、自業自得じゃない。
船乗りさん達に、手当を支払わない理由にはならないよ。
トレントの苗木を献上したご褒美は爵位らしいけど、赤字になるのが嫌なら諦めれば済む話なのに。
**********
「トレントの苗木は諦めた方が良いよ。
あれは、危なくて採れたもんじゃないから。
たぶん、おいらにも採るのは無理だと思う。
傷口を広げる前に、ひまわり会から木炭を買って帰った方が良いよ。
この大陸中を探しても、ひまわり会より安く売っている商人は無いから。」
アルトから聞いた話だけど。
トレントって、苗木を護るため群落の中央に発芽させるんだって。
一見木に見えるけど、魔物なので、根っこを器用に動かして移動するんだ。速度はゆっくりだけどね。
群落の外周部のトレントが討伐されたり、枯れたりすると、そこを埋めるため成木が順繰りに移動するの。
なので、苗木は常に群落の中央部分に発生しているらしいよ。
苗木を採集しようとしたら、トレントの森の中央部まで辿り着かないといけないの。
アルトみたいに、一足飛びに群落の中央まで飛んで行ければ楽なんだけど。
空を飛べない人間の身では、外周部からトレントを倒しながら進む必要があるんだ。
おいら、トレントと戦っても負けはしないけど、多分途中で力尽きるよ。
疲れ果てたところを、トレントに食べられちゃうのが目に見えるようだ。
おいら、そのことも商人のオッチャンや船乗りのみんな教えてあげたよ。
「鍛えてないとは言え、仮にも大人の使用人が負けちまうんだ。
お前みたいな、子供に敵う訳ないだろう。
お前に出来ないからと言って、屈強な船乗りに出来ないとは言えないだろうが。
儂の国では商人が貴族に成り上がれる機会など皆無なのだ。
そう簡単に諦められる訳が無かろうが。
船乗りを使って、是が非でも苗木を手に入れるぞ。」
オードゥラ大陸でも貴族階級は様々な特権を持っているみたいで。
爵位を持っていると、商売をするにも何かと都合が良いらしいの。
貴族に列せされれば、所領も貰えるそうだしね。
そして、長いこと市井の民が貴族に列せられたことは無いらしいよ。
大商人達は、特権階級になれる稀有な機会だと、皆躍起になっているみたい。
なら、ケチらないで、赤字になっても特別手当を出して上げれば良いのに…。
まあ、それでも大事な船乗りさん達を損なうだけで、無駄な努力だろうけど。。
「分かったよ。
トレント苗を諦めるつもりも、船乗りさんに特別手当を出すつもりもない訳だ。
じゃあ、おいら、これ以上は口は挟まないよ。
ねえ、頭領、このオッチャンをこの国で袋叩きにするのは止めてくれない。
法に基づいて、船乗りさん達を捕縛しないといけなくなるから。
それと、おいら、オードゥラ大陸のしきたりは知らないから。
どう解決するかは、当事者に任せるよ。
港にある擁壁の外なら、どうしようと関知しないので好きにすれば良いよ。」
おいらは、商人と船乗りさんの双方に向けてそう告げ。
商人を船乗りさんに引き渡すよう、護衛騎士に指示したの。
「おい、こら、あんたら騎士だろう。
儂は保護を求めているのだぞ。
何で、無法を働こうとしている連中に引き渡すんだ。
あんたら、無法者の肩を持つつもりか。
だいたい、何で、そんな子供の言うことに従っているんだ。」
おいらの指示に従おうとする騎士達に、オッチャンは抗議したけど…。
「いえ、船乗りの皆さんに肩入れするつもりはありません。
陛下の仰せの通り、我々には国交のない国の法は分かりかねますので。
この国の外へ出て、当事者同士で解決して欲しいと言うことです。
この国に揉め事を持ち込まないでください。
船乗りさんに引き渡さないと、あなた、またこの街中を逃げ回るでしょう。
それでは、困りますので。」
ジェレ姉ちゃんはオッチャンの肩を押して船乗りさん達へ突き出したよ。
「おい、こら、ちょっと…。」
船乗りさん達に両腕をがっしり掴まれたオッチャンは、まだ騎士達に助けを求めようとするけど。
助けを求める言葉を発する間もなく、ズルズルと引き摺られて行っちゃったよ。
オッチャンが袋叩きにされるのを見過ごす訳には行かないので、割って入ったんだ。
話を聞くと、追いかけていたのはオードゥラ大陸から来た船の船乗りさん達、追われていたのはその雇い主の商人らしい。
追われていた商人、船乗りさん達に操船以外の仕事を押し付けたらしい。
何でも、船乗りさん達に冒険者研修を受けて来いと命じたとか。
「それで、冒険者研修は合格して、登録証は貰えたんでしょう。
何で、このオッチャンを追いかけてたの?
そんなに怒って。」
「ああ、こいつな、俺達が研修を終えた時に受け取った銀貨を取り上げようとしたんだよ。
業務命令の遂行中に手に入れた金は雇い主のものだとか何とか理屈をコネてな。
おじさん達、予定外の仕事を押し付けられた上に、死にそうな思いをして手に入れた金だと言うのに。」
筋骨隆々とした厳つい顔のおじさんが、外見からは想像できない人当たりの良い口調で答えてくれたの。
研修中に倒したウサギやトレントは換金されて、研修終了時に均等に分けられるんだ。
冒険者研修の受講者は田舎から出て来たばかりの人が多く、大したお金も所持していないから。
当面の生活が安定するようにね。
研修中は、五人一組で一日に一体のトレントを狩るのがやっとだから。
研修終了時に受け取れる銀貨は千枚ほどだけど、それなりの大金だからね。
船乗りさん達は航海で鍛えた体と連携を活かして、大したケガも無く研修を終えたそうだけど。
トレント狩り実習では、これは死んだと肝を冷やす場面が何度もあったそうなんだ。
そんな大変は思いはしたものの、研修終了時に思わぬ臨時収入があって留飲を下げていたそうなの。
ところが、その銀貨を商人が取り上げようとしたので、コメカミに青筋が浮かんだって。
「お頭の言ったことだけじゃないんですぜ。
俺達が研修で稼いだ金を取り上げるだけじゃなくて。
これから毎日、トレントの狩場に潜り込んで苗木を探せと言うんだ。
冗談じゃない、そんな危ないことが出来るかってんだ。
船乗りは陸に上がったら、航海の疲れを癒すと昔から相場が決まっているんだ。」
どうやら、強面だけど人当たりの良いおじさんは、船乗りの頭領らしいね。
研修で受け取ったお金を取り上げると言われた時、血気盛んな若い船乗り達が暴動を起こしそうになったらしい。
その時は、何とか頭領が宥めたそうなんだけど。
トレントの苗木を探して来いと言われて、流石の頭領もプツンと切れたらしい。
そんな事をしたら、大事な船乗りたちの命が危ないって。
そして、頭領は商人に反旗を翻したらしいんだ。
**********
おいらの心証では、船乗り達の言う事の方がもっともだと思うけど…。
国が違えば法もしきたりも違うのが当たり前だし、ましてや遠い大陸の事だものね。
商人と船乗り、どっちの言い分が正しいのかは分からないよ。
「お前ら、何を言ってやがる。
船乗りが船主を害することは、重罪だぞ。
国に帰って、俺が役人にお前らのことを突き出せば。
全員、縛り首なのだからな、分かってんのか。
分かってんなら、俺に逆らうのは止めて。
さっさと、トレントの苗木を探しに行かんか!」
うん、やっぱり、この商人の方が悪いんじゃないかな。おいらの直感がそう告げてる。
だいたい、こいつ、馬鹿だよ。
国に帰って役人に突き出すなんて脅せば、国に帰る前に口封じされると思わないのかな。
「ねえ、オッチャン。おいら、子供だから良く分かんないんだけど。
船乗りさんって、普通、港に着いたら休息をとるものなんでしょう。
何で、船乗りさんにトレントの苗木を探せなんて命じるの?
オッチャン、大きな商人なら、使用人を沢山連れて来ているでしょう。
使用人に探させれば良いじゃん。」
おいらが、素朴な疑問をぶつけると…。
「そんなの、最初にやったわい。
トレントってのは木の分際で攻撃してくるって言うじゃないか。
うちの使用人達は、全員、冒険者研修を受けて大ケガだ。
みんな、俺が手塩に掛けて育てた手代達だってんだぞ。
今回は大仕事だったんで、秘蔵っ子連中を連れてきたのに。
大怪我を負わされて、これで苗木が手に入らなければ大損だわ。
だから、腕っ節の強い船乗り達に命じたんだ。」
どうやら、一応最初に商人の使用人を研修に送り込んだみたい。
でも、使用人達は商人としては優秀な人材だったようだけど、腕っ節はダメダメだったらしい。
全員が研修二日目でリタイヤして帰って来たそうだよ、ウサギにボコボコにされて…。
「なら、せめて、船乗りさん達に特別手当を弾めば良いじゃない。
本来、船乗りさん達の仕事は船を操ることだけなんでしょう。
手当てを出すどころか、研修で稼いだお金を巻き上げるなんて問題外だよ。
それじゃ、船乗りさん達が怒るのも当然だと思うな、おいら。」
「子供が何知ったような口を利きやがる。
儂は、王命を受けてトレントの苗木と木炭を入手するためにやって来たのだ。
ところが、木炭はひまわり会なる商会の独占で馬鹿高いわ。
苗木は何処にも売ってないわで。
仕方がないので、もう一月も、産元を探してこの国を彷徨ったのだ。
それだけでも、予定外の経費が嵩んでおると言うのに。
この上、特別手当など出そうものなら大赤字だ。
爵位の一つくらいじゃ、とても割に合わんわ。」
ムッ、このオッチャン、ひまわり会が独占しているせいで『トレントの木炭』が高いと思ってる。
まるで、ひまわり会がぼっているかの言い様だね。
言い掛かりも甚だしいよ、『トレントの木炭』の貴重さも知らない癖に。
あれは、一流の刀匠が一級品の刀剣を造るために必要な物だから高価なんだ。
間違っても、そんじょそこらの鉄を大量に造るためにあるもんじゃないよ。
そもそも、おいらとスフレ姉ちゃん以外には、トレントの木炭の大量生産なんて出来ないんだよ。
トレントの討伐が容易でないこと以上に、ムチャクチャ重いトレント本体の回収が難しいから。
しかも、一月もこの国を彷徨って時間を浪費したのは、自業自得じゃない。
船乗りさん達に、手当を支払わない理由にはならないよ。
トレントの苗木を献上したご褒美は爵位らしいけど、赤字になるのが嫌なら諦めれば済む話なのに。
**********
「トレントの苗木は諦めた方が良いよ。
あれは、危なくて採れたもんじゃないから。
たぶん、おいらにも採るのは無理だと思う。
傷口を広げる前に、ひまわり会から木炭を買って帰った方が良いよ。
この大陸中を探しても、ひまわり会より安く売っている商人は無いから。」
アルトから聞いた話だけど。
トレントって、苗木を護るため群落の中央に発芽させるんだって。
一見木に見えるけど、魔物なので、根っこを器用に動かして移動するんだ。速度はゆっくりだけどね。
群落の外周部のトレントが討伐されたり、枯れたりすると、そこを埋めるため成木が順繰りに移動するの。
なので、苗木は常に群落の中央部分に発生しているらしいよ。
苗木を採集しようとしたら、トレントの森の中央部まで辿り着かないといけないの。
アルトみたいに、一足飛びに群落の中央まで飛んで行ければ楽なんだけど。
空を飛べない人間の身では、外周部からトレントを倒しながら進む必要があるんだ。
おいら、トレントと戦っても負けはしないけど、多分途中で力尽きるよ。
疲れ果てたところを、トレントに食べられちゃうのが目に見えるようだ。
おいら、そのことも商人のオッチャンや船乗りのみんな教えてあげたよ。
「鍛えてないとは言え、仮にも大人の使用人が負けちまうんだ。
お前みたいな、子供に敵う訳ないだろう。
お前に出来ないからと言って、屈強な船乗りに出来ないとは言えないだろうが。
儂の国では商人が貴族に成り上がれる機会など皆無なのだ。
そう簡単に諦められる訳が無かろうが。
船乗りを使って、是が非でも苗木を手に入れるぞ。」
オードゥラ大陸でも貴族階級は様々な特権を持っているみたいで。
爵位を持っていると、商売をするにも何かと都合が良いらしいの。
貴族に列せされれば、所領も貰えるそうだしね。
そして、長いこと市井の民が貴族に列せられたことは無いらしいよ。
大商人達は、特権階級になれる稀有な機会だと、皆躍起になっているみたい。
なら、ケチらないで、赤字になっても特別手当を出して上げれば良いのに…。
まあ、それでも大事な船乗りさん達を損なうだけで、無駄な努力だろうけど。。
「分かったよ。
トレント苗を諦めるつもりも、船乗りさんに特別手当を出すつもりもない訳だ。
じゃあ、おいら、これ以上は口は挟まないよ。
ねえ、頭領、このオッチャンをこの国で袋叩きにするのは止めてくれない。
法に基づいて、船乗りさん達を捕縛しないといけなくなるから。
それと、おいら、オードゥラ大陸のしきたりは知らないから。
どう解決するかは、当事者に任せるよ。
港にある擁壁の外なら、どうしようと関知しないので好きにすれば良いよ。」
おいらは、商人と船乗りさんの双方に向けてそう告げ。
商人を船乗りさんに引き渡すよう、護衛騎士に指示したの。
「おい、こら、あんたら騎士だろう。
儂は保護を求めているのだぞ。
何で、無法を働こうとしている連中に引き渡すんだ。
あんたら、無法者の肩を持つつもりか。
だいたい、何で、そんな子供の言うことに従っているんだ。」
おいらの指示に従おうとする騎士達に、オッチャンは抗議したけど…。
「いえ、船乗りの皆さんに肩入れするつもりはありません。
陛下の仰せの通り、我々には国交のない国の法は分かりかねますので。
この国の外へ出て、当事者同士で解決して欲しいと言うことです。
この国に揉め事を持ち込まないでください。
船乗りさんに引き渡さないと、あなた、またこの街中を逃げ回るでしょう。
それでは、困りますので。」
ジェレ姉ちゃんはオッチャンの肩を押して船乗りさん達へ突き出したよ。
「おい、こら、ちょっと…。」
船乗りさん達に両腕をがっしり掴まれたオッチャンは、まだ騎士達に助けを求めようとするけど。
助けを求める言葉を発する間もなく、ズルズルと引き摺られて行っちゃったよ。
1
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!


クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?
果 一
ファンタジー
リクスには、最強の姉がいる。
王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。
類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。
『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』
何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。
そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。
「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」
その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。
英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?
これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。
※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる