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第十六章 里帰り、あの人達は…
第489話 そうくるとは思わなかったよ…
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おいらの家にやって来たネーブル姉ちゃん。
ご要望にお応えしてウルシュラ姉ちゃんに会わせると、カズヤ殿下に対してどう思うかを尋ねたの。
ウルシュラ姉ちゃんがカズヤ殿下に好意的なセリフを口にすると、ネーブル姉ちゃんはとても上機嫌になったよ。
ネーブル姉ちゃん、一体何を考えてるんだろう?
まさか、自分の旦那さんが褒められて嬉しかっただけってことは無いよね。
おいらがネーブル姉ちゃんの意味不明な行動に首を傾げていると。
「そう、じゃあ、あなた、私の婚約者を憎からず思っていると考えて良いのね。
ねえ、あなた、今のお仕事を辞めるつもりは無いかしら。
私なら、代わりにもっと良いお仕事を与えることが出来るけど。」
ネーブル姉ちゃんは唐突にそんなことを言い出したんだ。
ウルシュラ姉ちゃんも言ってることが理解できなかった様子で…。
「お嬢さんは先程から何を仰ってるのでしょうか。
私が下賤な仕事している人間だからと、からかっているのではございませんか。
風呂屋の泡姫に身を落した女に、良い仕事などある訳が無いでございましょう。」
少しムッとした表情になって、ネーブル姉ちゃんに言い返したんだ。
やっぱり、からかわれていると思ったんだね。
「ゴメンなさいね。気を悪くしたのなら謝るわ。
でも、私、あなたをからかうつもりはないのよ。
ねえ、あなた、私の付き人にならない?
私の身の周りの世話や仕事の手伝いをして欲しいの。」
何を考えたのか、ネーブル姉ちゃんはとんでもないことを言い出したよ。
この国のお妃様になるのに、泡姫のお姉さんを付き人にするなんて…。
お妃様の付き人って言ったら、高級貴族のご令嬢の仕事だよ、普通は。
「ええと、お嬢さん。
私、貧農の生まれで…。
仕事と言えば野良仕事か、殿方の床のお相手しかしたことが無いのですが。
お金持ちのお嬢さんのお世話とか、仕事のお手伝いとか私に務まるとは思えません。
第一、紹介状も身元保証人も無しに、お嬢さんのお父様が私を雇い入れて下さりますか?」
ウルシュラ姉ちゃんは、ネーブル姉ちゃん自身が雇い主になるとは露ほども思っていないみたい。
ネーブル姉ちゃんの父親が雇って、ネーブル姉ちゃんの付き人にするものだと想像しているようだね。
「その心配は要らないわ。
あなたは私の権限で雇い入れるから。
仕事もちゃんと指導役をつけるから安心してちょうだい。
給金も悪いようにはしないわ。
月の給金はお風呂屋さんの稼ぎには及ばないだろうけど…。
お風呂屋さんと違って長く働けるわよ。」
ネーブル姉ちゃんは至って真剣に返答したのだけど。
「お嬢さんは、何故、初対面の私を雇おうなどと思われたのですか。
自分で言うのも何ですが、私、殿方に体を売って生活しているのですよ。
良いとこのお嬢さんの付き人に相応しいとは思えないですが。」
ネーブル姉ちゃんの言葉を素直に受け入れることが出来ない様子で、更に尋ねたんだ。
「それは、私の婚約者があなたをお気に召した様子だからよ。
あなたには、他にもして欲しい仕事があるの。
付き人の仕事よりも、むしろ、こっちの仕事の方が重要なの。」
「付き人よりも大事な仕事?」
「そう、私の婚約者の夜のお相手。
あなた、あの方を憎からず思っているのでしょう。
私の付き人として、夜の方も付き添ってもらうわ。」
すると、ウルシュラ姉ちゃんの表情が曇ったの。
そして、…。
「それは、私に若旦那の慰み者になれと言う事ですか。
わかった、お嬢さん、若旦那の指示でここに来たのですね。
私を慰み者にしたいので連れて来いと命じられたのでしょう。
私、今、若旦那を軽蔑しました。
それでは、あの貴族のバカ息子と同じではないですか。
どうせ、慰み者にしたあげく、孕んだらゴミ屑のように捨てるつもりなのでしょう。
母を玩んで孕ませた貴族のように。」
自分の母親の事が頭に浮かんだのか、ウルシュラ姉ちゃんは激昂したよ。
「あら、あなたのその金色に輝く髪、珍しいと思ったら貴族の血が混じっていたのね。
平民を強引に召し上げた挙げ句、孕ませたらポイ捨てする貴族ですか…。
まるで、先代のイナッカ辺境伯のようなクズね。
安心なさい、あの方はそんな下衆ではないから。
私は自分の独断でここに来たのよ。
あの方は、私があなたに会う事を知らないの。
それにポイ捨てなんて、そんな勿体ないことしないわ。
あなたにも、沢山子供を産んでもらわないとならないのに。」
「はい?」
激昂したウルシュラ姉ちゃんとは対照的に、ネーブル姉ちゃんはたじろぎもせずそんな言葉を返したんだ。
そう言えば、ウルシュラ姉ちゃんに貴族の血が混じっていることや貴族を恨んでいることは言ってなかったね。
平然と返された上に、子供をたくさん産んでもらうなんて言われたものだから、ウララ姉ちゃんは呆気に取られていたよ。
「実はね、私の婚約者、れっきとした家の跡取りなんだけど訳ありでね。
家中にもあの方が跡を継ぐことを快く思っていない者が多いの。
私としては、あの方の味方を増やしたいのよ。
あなたをあの方の側室として迎えることは出来ないけど。
あなたが子を成してくれたら、分家を持たせてあげる。
もちろん、あなたには私の付き人としてずっと働いてもらうし。
あなたのお母さんがまだ存命なら、呼び寄せても良いわよ。
お母さんを養えるくらいの給金は出すし、住む場所も用意してあげるわ。」
ネーブル姉ちゃんはミントさんから宮廷に蔓延る不良貴族の話を聞いているからね。
そういう連中の力を削ぎたいみたいなの。
カズヤ殿下の代で王家を支える忠実な分家を増やしたいと、ネーブル姉ちゃんは考えているみたい。
ウルシュラ姉ちゃんは、あくまでネーブル姉ちゃんの付き人として。
カズヤ殿下は、ネーブル姉ちゃんの付き人にお手付きしたという形にするそうだよ。
カズヤ殿下の側妃として迎えてしまうと、子供に王位継承権が発生するから拙いみたい。
お手付きで出来た庶子に、責任を取って家を持たせる形にするんだって。
因みに、ネーブル姉ちゃんはこの時点ではまだ自分達が王族だとは明かしていないよ。
大店の若旦那って設定を訂正しないで、話をしていたんだ。
「お嬢さん、それは本当ですか?
お嬢さんのお誘いをお受けすれば、母を呼び寄せることが出来るのですか?」
ウルシュラ姉ちゃんには、田舎に残して来た母親の事の方が関心を引いたみたい。
将来、自分に子供が出来た時のことよりも。
「ええ、そのくらいは容易いことよ。
但し、私が正式に嫁いでからになるけどね。
それまでは、私自身が他所様の家にお世話になるから。
付き人となったあなたしか、連れて行けないの。」
うん? ネーブル姉ちゃん、一旦シタニアール国へ帰るつもりじゃないの?
いったい、お嫁入りするまで何処で過ごすつもりなんだろう?
「分かりました、お嬢様にお仕えさせて頂きます。
もちろん、若旦那にも誠心誠意ご奉仕させた頂きます。
これからよろしくお願いします。」
ウルシュラ姉ちゃん、ネーブル姉ちゃんの誘いに乗っちゃったよ。
ネーブル姉ちゃんの嫁ぎ先がこの国の王家だと知ったらビックリするだろうな…。
**********
そんな訳で、ウルシュラ姉ちゃんを連れてにっぽん爺の屋敷に戻って来たよ。
「カズヤ様、ウルシュラさんを私の側仕えとして召し抱えました。
宮廷内には、私が国から連れて来た貴族の娘との触れ込みでお願いします。
こんな鮮やかな金髪ですもの、誰も疑いはしないでしょう。
もちろん、カズヤ様の夜のお相手もしてもらいますよ。
私とウルシュラさんの二人で、沢山御子を産みますからね。」
カズヤ殿下のもとに行くやいなや、ネーブル姉ちゃんはぶっちゃけたよ。
「宮廷? 貴族?
ネーブル様、いったい何を仰っているので?」
あっ、やっぱり気になるよね、その言葉。
「ウルシュラさん、それを聞いたらもう引き返すことは出来ないわよ。
覚悟は良いかしら。」
ネーブル姉ちゃんはマジな顔をして言うもんだから、ウルシュラ姉ちゃんは一瞬息を飲んだよ。
やや間を置いて、ウルシュラ姉ちゃんが首を縦に振ると。
「あなたが若旦那と呼んでいる私の婚約者はカズヤ殿下。
この国の王太子よ。
そして私は、隣国シタニアール国の第一王女ネーブル。
あなたには、王太子妃のお側仕えになってもらうわ。
あなたが産む子供は貴族家を創設することになるの。」
ネーブル姉ちゃんは自分達の素性を明かしたんだ。
「ちょっと、待ってくれ。
どういう事か詳しく説明してもらえないか、ネーブル姫。」
驚きの余り言葉を失ったウルシュラ姉ちゃんに代わり、声を発したのはカズヤ殿下だったよ。
いきなり言われて、事態が把握できていない様子だったの。
「あら、カズヤ様がご執心のようでしたので。
ウルシュラさんを私の側仕えにスカウトしてきたのですが。
嬉しくはございませんか?」
そんな言葉で口火を切ったネーブル姉ちゃんは、ウララ姉ちゃんに話したような事を言ってたよ。
トアール国の王家は一族が少なすぎるので、分家を含めて増やす必要があるってね。
一族の繁栄にウルシュラ姉ちゃんにも協力してもらうんだって。
あと半月もすれば爵位がいっぱい宙に浮くだろうから、その再利用にもってこいだろうなんてことも言ってたよ。
「ネーブル姫が私や王家のことを気遣ってくれたのは分かったが。
ネーブル姫はそれで良いのか?
ネーブル姫を妃に迎えた早々に、私が愛人を持つのだぞ。」
「私を愛してくださるのなら、一向に構いませんわ。
三人で一緒に愛し合いましょう。
但し、誤解しないでくださいね。
ウルシュラさんは私の側仕え、カズヤ様の愛人ではございません。
カズヤ様はあくまでお手付きをしてしまうだけなのです。
子供が出来たら、ちゃんと責任取って家を与えてくださね。」
あれかな、『男女和合の極意』に三人いないと出来ないことが書いてあったとか。
シフォン姉ちゃんはそれでタロウのお嫁さんを増やしてたし。
ネーブル姉ちゃん、口では色々言ってたけど、実はそれがしたかっただけとか…。
最終的には、カズヤ殿下も嬉しそうに迎え入れていたよ。
ウルシュラ姉ちゃんのことを、随分と気に掛けてたみたいだからね。
ネーブル姉ちゃんが来る前、トレント狩りで稼いだお金でウルシュラ姉ちゃんを買い占める算段をしていたみたいだし。
ご要望にお応えしてウルシュラ姉ちゃんに会わせると、カズヤ殿下に対してどう思うかを尋ねたの。
ウルシュラ姉ちゃんがカズヤ殿下に好意的なセリフを口にすると、ネーブル姉ちゃんはとても上機嫌になったよ。
ネーブル姉ちゃん、一体何を考えてるんだろう?
まさか、自分の旦那さんが褒められて嬉しかっただけってことは無いよね。
おいらがネーブル姉ちゃんの意味不明な行動に首を傾げていると。
「そう、じゃあ、あなた、私の婚約者を憎からず思っていると考えて良いのね。
ねえ、あなた、今のお仕事を辞めるつもりは無いかしら。
私なら、代わりにもっと良いお仕事を与えることが出来るけど。」
ネーブル姉ちゃんは唐突にそんなことを言い出したんだ。
ウルシュラ姉ちゃんも言ってることが理解できなかった様子で…。
「お嬢さんは先程から何を仰ってるのでしょうか。
私が下賤な仕事している人間だからと、からかっているのではございませんか。
風呂屋の泡姫に身を落した女に、良い仕事などある訳が無いでございましょう。」
少しムッとした表情になって、ネーブル姉ちゃんに言い返したんだ。
やっぱり、からかわれていると思ったんだね。
「ゴメンなさいね。気を悪くしたのなら謝るわ。
でも、私、あなたをからかうつもりはないのよ。
ねえ、あなた、私の付き人にならない?
私の身の周りの世話や仕事の手伝いをして欲しいの。」
何を考えたのか、ネーブル姉ちゃんはとんでもないことを言い出したよ。
この国のお妃様になるのに、泡姫のお姉さんを付き人にするなんて…。
お妃様の付き人って言ったら、高級貴族のご令嬢の仕事だよ、普通は。
「ええと、お嬢さん。
私、貧農の生まれで…。
仕事と言えば野良仕事か、殿方の床のお相手しかしたことが無いのですが。
お金持ちのお嬢さんのお世話とか、仕事のお手伝いとか私に務まるとは思えません。
第一、紹介状も身元保証人も無しに、お嬢さんのお父様が私を雇い入れて下さりますか?」
ウルシュラ姉ちゃんは、ネーブル姉ちゃん自身が雇い主になるとは露ほども思っていないみたい。
ネーブル姉ちゃんの父親が雇って、ネーブル姉ちゃんの付き人にするものだと想像しているようだね。
「その心配は要らないわ。
あなたは私の権限で雇い入れるから。
仕事もちゃんと指導役をつけるから安心してちょうだい。
給金も悪いようにはしないわ。
月の給金はお風呂屋さんの稼ぎには及ばないだろうけど…。
お風呂屋さんと違って長く働けるわよ。」
ネーブル姉ちゃんは至って真剣に返答したのだけど。
「お嬢さんは、何故、初対面の私を雇おうなどと思われたのですか。
自分で言うのも何ですが、私、殿方に体を売って生活しているのですよ。
良いとこのお嬢さんの付き人に相応しいとは思えないですが。」
ネーブル姉ちゃんの言葉を素直に受け入れることが出来ない様子で、更に尋ねたんだ。
「それは、私の婚約者があなたをお気に召した様子だからよ。
あなたには、他にもして欲しい仕事があるの。
付き人の仕事よりも、むしろ、こっちの仕事の方が重要なの。」
「付き人よりも大事な仕事?」
「そう、私の婚約者の夜のお相手。
あなた、あの方を憎からず思っているのでしょう。
私の付き人として、夜の方も付き添ってもらうわ。」
すると、ウルシュラ姉ちゃんの表情が曇ったの。
そして、…。
「それは、私に若旦那の慰み者になれと言う事ですか。
わかった、お嬢さん、若旦那の指示でここに来たのですね。
私を慰み者にしたいので連れて来いと命じられたのでしょう。
私、今、若旦那を軽蔑しました。
それでは、あの貴族のバカ息子と同じではないですか。
どうせ、慰み者にしたあげく、孕んだらゴミ屑のように捨てるつもりなのでしょう。
母を玩んで孕ませた貴族のように。」
自分の母親の事が頭に浮かんだのか、ウルシュラ姉ちゃんは激昂したよ。
「あら、あなたのその金色に輝く髪、珍しいと思ったら貴族の血が混じっていたのね。
平民を強引に召し上げた挙げ句、孕ませたらポイ捨てする貴族ですか…。
まるで、先代のイナッカ辺境伯のようなクズね。
安心なさい、あの方はそんな下衆ではないから。
私は自分の独断でここに来たのよ。
あの方は、私があなたに会う事を知らないの。
それにポイ捨てなんて、そんな勿体ないことしないわ。
あなたにも、沢山子供を産んでもらわないとならないのに。」
「はい?」
激昂したウルシュラ姉ちゃんとは対照的に、ネーブル姉ちゃんはたじろぎもせずそんな言葉を返したんだ。
そう言えば、ウルシュラ姉ちゃんに貴族の血が混じっていることや貴族を恨んでいることは言ってなかったね。
平然と返された上に、子供をたくさん産んでもらうなんて言われたものだから、ウララ姉ちゃんは呆気に取られていたよ。
「実はね、私の婚約者、れっきとした家の跡取りなんだけど訳ありでね。
家中にもあの方が跡を継ぐことを快く思っていない者が多いの。
私としては、あの方の味方を増やしたいのよ。
あなたをあの方の側室として迎えることは出来ないけど。
あなたが子を成してくれたら、分家を持たせてあげる。
もちろん、あなたには私の付き人としてずっと働いてもらうし。
あなたのお母さんがまだ存命なら、呼び寄せても良いわよ。
お母さんを養えるくらいの給金は出すし、住む場所も用意してあげるわ。」
ネーブル姉ちゃんはミントさんから宮廷に蔓延る不良貴族の話を聞いているからね。
そういう連中の力を削ぎたいみたいなの。
カズヤ殿下の代で王家を支える忠実な分家を増やしたいと、ネーブル姉ちゃんは考えているみたい。
ウルシュラ姉ちゃんは、あくまでネーブル姉ちゃんの付き人として。
カズヤ殿下は、ネーブル姉ちゃんの付き人にお手付きしたという形にするそうだよ。
カズヤ殿下の側妃として迎えてしまうと、子供に王位継承権が発生するから拙いみたい。
お手付きで出来た庶子に、責任を取って家を持たせる形にするんだって。
因みに、ネーブル姉ちゃんはこの時点ではまだ自分達が王族だとは明かしていないよ。
大店の若旦那って設定を訂正しないで、話をしていたんだ。
「お嬢さん、それは本当ですか?
お嬢さんのお誘いをお受けすれば、母を呼び寄せることが出来るのですか?」
ウルシュラ姉ちゃんには、田舎に残して来た母親の事の方が関心を引いたみたい。
将来、自分に子供が出来た時のことよりも。
「ええ、そのくらいは容易いことよ。
但し、私が正式に嫁いでからになるけどね。
それまでは、私自身が他所様の家にお世話になるから。
付き人となったあなたしか、連れて行けないの。」
うん? ネーブル姉ちゃん、一旦シタニアール国へ帰るつもりじゃないの?
いったい、お嫁入りするまで何処で過ごすつもりなんだろう?
「分かりました、お嬢様にお仕えさせて頂きます。
もちろん、若旦那にも誠心誠意ご奉仕させた頂きます。
これからよろしくお願いします。」
ウルシュラ姉ちゃん、ネーブル姉ちゃんの誘いに乗っちゃったよ。
ネーブル姉ちゃんの嫁ぎ先がこの国の王家だと知ったらビックリするだろうな…。
**********
そんな訳で、ウルシュラ姉ちゃんを連れてにっぽん爺の屋敷に戻って来たよ。
「カズヤ様、ウルシュラさんを私の側仕えとして召し抱えました。
宮廷内には、私が国から連れて来た貴族の娘との触れ込みでお願いします。
こんな鮮やかな金髪ですもの、誰も疑いはしないでしょう。
もちろん、カズヤ様の夜のお相手もしてもらいますよ。
私とウルシュラさんの二人で、沢山御子を産みますからね。」
カズヤ殿下のもとに行くやいなや、ネーブル姉ちゃんはぶっちゃけたよ。
「宮廷? 貴族?
ネーブル様、いったい何を仰っているので?」
あっ、やっぱり気になるよね、その言葉。
「ウルシュラさん、それを聞いたらもう引き返すことは出来ないわよ。
覚悟は良いかしら。」
ネーブル姉ちゃんはマジな顔をして言うもんだから、ウルシュラ姉ちゃんは一瞬息を飲んだよ。
やや間を置いて、ウルシュラ姉ちゃんが首を縦に振ると。
「あなたが若旦那と呼んでいる私の婚約者はカズヤ殿下。
この国の王太子よ。
そして私は、隣国シタニアール国の第一王女ネーブル。
あなたには、王太子妃のお側仕えになってもらうわ。
あなたが産む子供は貴族家を創設することになるの。」
ネーブル姉ちゃんは自分達の素性を明かしたんだ。
「ちょっと、待ってくれ。
どういう事か詳しく説明してもらえないか、ネーブル姫。」
驚きの余り言葉を失ったウルシュラ姉ちゃんに代わり、声を発したのはカズヤ殿下だったよ。
いきなり言われて、事態が把握できていない様子だったの。
「あら、カズヤ様がご執心のようでしたので。
ウルシュラさんを私の側仕えにスカウトしてきたのですが。
嬉しくはございませんか?」
そんな言葉で口火を切ったネーブル姉ちゃんは、ウララ姉ちゃんに話したような事を言ってたよ。
トアール国の王家は一族が少なすぎるので、分家を含めて増やす必要があるってね。
一族の繁栄にウルシュラ姉ちゃんにも協力してもらうんだって。
あと半月もすれば爵位がいっぱい宙に浮くだろうから、その再利用にもってこいだろうなんてことも言ってたよ。
「ネーブル姫が私や王家のことを気遣ってくれたのは分かったが。
ネーブル姫はそれで良いのか?
ネーブル姫を妃に迎えた早々に、私が愛人を持つのだぞ。」
「私を愛してくださるのなら、一向に構いませんわ。
三人で一緒に愛し合いましょう。
但し、誤解しないでくださいね。
ウルシュラさんは私の側仕え、カズヤ様の愛人ではございません。
カズヤ様はあくまでお手付きをしてしまうだけなのです。
子供が出来たら、ちゃんと責任取って家を与えてくださね。」
あれかな、『男女和合の極意』に三人いないと出来ないことが書いてあったとか。
シフォン姉ちゃんはそれでタロウのお嫁さんを増やしてたし。
ネーブル姉ちゃん、口では色々言ってたけど、実はそれがしたかっただけとか…。
最終的には、カズヤ殿下も嬉しそうに迎え入れていたよ。
ウルシュラ姉ちゃんのことを、随分と気に掛けてたみたいだからね。
ネーブル姉ちゃんが来る前、トレント狩りで稼いだお金でウルシュラ姉ちゃんを買い占める算段をしていたみたいだし。
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