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アイイロモンペ

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第十六章 里帰り、あの人達は…

第483話 ネーブル姉ちゃん、大活躍?

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 ネーブル姉ちゃんがやって来た翌朝、日課のトレント狩りをしてると。
 クッころさん達、騎士がトレント狩り訓練にやって来たの。

 その日のみんなは、心なしか活気に満ちた感じがしたよ。
 前日までは寝不足気味なのか、誰もが少し眠たげな雰囲気だったのに…。

 実際、トレントを狩る姿も前日までに比べ、格段に動きが良くなっていたんだ。

 それに…。

「カズヤ様、素敵です! 頑張ってください!」

 ネーブル姉ちゃんの応援を受けてカズヤ殿下がトレント相手に健闘してたよ。
 将来のお嫁さんに良い所を見せようとしているのか、前日より動きが良かったの。

 でも。

「お兄様、前ばかり見ていて、背中がお留守になってますよ。
 トレントの攻撃枝は八本あるのです。
 全ての動きに気を配らないと怪我をしますよ。」

 背後からの攻撃に対してフォローを入れたカズミ姉ちゃんから叱られてたよ。
 ちょっと、張り切り過ぎて視野狭窄をおこしてたかな…。

「カズミ、助かった。
 ネーブル姫に恥ずかしい姿は見せられないからな。
 もう少し注意深く臨むこととしよう。」

 カズヤ殿下は助言に素直に頷いて、さっそく次のトレントに挑んでた。 

 おいら、騎士の姉ちゃん達が前日よりも活き活きとしているのが気になったもんだから。
 トレント狩りを終えて一休みしているクッころさんに聞いてみたよ。

「ねえ、クッころさん。
 今日はみんな、元気が良いみたいだけど何か変わった事でもあった?」

「あら、マロン、おはよう。
 昨日までは寝不足気味だったから調子が出なかったのよ。
 マロンのおかげで、昨夜はぐっすり眠れたからね。
 疲れも取れて絶好調よ。
 みんなも同じだと思うわ。」

「おいらのおかげ?
 おいら、何かしたっけ?」

「マロンがカズトお爺ちゃんに泉の水をあげたじゃない。
 あれで、お爺ちゃんに大分疲労が溜まっていたことが分かったでしょう。
 ミント様も、お爺ちゃんが体を壊したらいけないと思ったらしくてね。
 昨晩は早々にお休みになったの。
 安眠の妨げとなる騒音が無くて、みんなぐっすりと眠れたみたい。
 もちろん、私も。」

 夜な夜なミントさんが大きな声を出して、みんなの眠りを妨げていた様子だからね。
 ミントさん、こらからは自重すると言ってたけど、本当に静かにしたみたい。

 どうやら、寝不足が解消されてみんなの体調も良くなったようだね。

           **********

「姉上も、トレント狩り訓練を見に来たのじゃな。
 姉上のことだから、ゆっくり寝ているものかと思ったのじゃ。」

 オランがネーブル姉ちゃんにそんな言葉を掛けていたよ。
 ネーブル姉ちゃんが早起きしてトレント狩りを見物しているのが意外だったみたい。

「だって、カズヤ様が朝の訓練に行くと言うのですもの。
 一緒に居られるのですから、片時も離れたくないし。
 せっかくだから、旦那様の凛々しい姿を見ておきたいでしょう。
 ウサちゃんにも運動させてあげたかったら。」

 どうやら、ウサギに朝の散歩をさせるのも兼ねてついて来たみたい。
 きっとカズヤ殿下の凛々しい姿を見たいと、本人にも言ったんだろうね。
 あんなにカズヤ殿下が張り切っているのは。

 おいらが、トレント相手に健闘するカズヤ殿下を見ていると。

「お兄様、今朝はここまでにしておきましょう。
 昨日より大分動きがこなれて来ましたね。
 数日の内には一人でトレントを狩れそうです。」

「そう言ってもらえると、自信が付く。
 これも、カズミの指導の賜物だな。
 明日からもよろしく頼む。」

 何体目かのトレントを倒した二人から、そんな会話が聞こえてきたの。
 すると、スクッとネーブル姉ちゃんが立ち上がって。

「カズヤ様、お疲れさまです。
 お怪我などされてませんか。」

 そんな言葉と共にカズヤ殿下に駆け寄って、汗を拭いてあげてたよ。 

「あら、本当に仲睦まじいですね。
 お兄様も幸せ者ですね。
 あんなに慕ってくれるお嫁さんを貰えるなんて。」

 おいらの隣に立ったカズミ姉ちゃんが二人を微笑まし気に見ていたよ。

「昨日、ネーブル姉ちゃんをあまり歓迎してなかったでしょう。
 『また、面倒な人が来たな。』って顔をしてたよ。」

 おいらがこそっとカズミ姉ちゃんに耳打ちすると。

「あら、バレてました?
 だって、私、生粋の庶民ですもの。
 王族の方がいらしても、どう接して良いのか分かりません。
 お兄様は、一応血が繋がっているので邪険には出来ませんでしたが…。
 お兄様の婚約者と言われても…。」

 まあ、一介の庶民の家にお后様とか、王太子様とかが押し掛けてきたら普通は迷惑だよね。
 おいらもクッころさんが転がり込んできた時は、面倒くさい人を拾っちゃったなと思ったし。

「でも、今は、ネーブル様がいらしてくださって感謝しているのですよ?」

「うん? 感謝?
 たった一晩で、何か評価が変わるようなことがあったの?」

 普通、何日か過ごしてみて一緒に居て良かったと感じることはあっても。
 昨日の今日で、迷惑に感じていた人に感謝しているなんて、正反対の感情を持つことなんかあるのかな。

「ええ、昨夜から、妃の役割ですとおっしゃって。
 お兄様の着替えも、お風呂で背中を流すのもネーブル様がしてくださったのです。
 それに、お兄様の劣情もちゃんと鎮めて下さった様子です。
 今朝のお兄様はとてもスッキリとした顔をされてましたし。
 ズボンを膨らませていることもございませんでした。」

 それまでのカズヤ殿下はと言いうと、朝は目が血走っていて、ズボンがモッコリと膨らんでいたんだって。
 カズミ姉ちゃんを含め護衛の騎士三人は目のやり場に困っていたらしいよ。
 それが、今朝は清々しい表情で起きてきたうえに、ズボンはペッタンコだったそうなんだ。
 カズミ姉ちゃんが高く評価したのは、ネーブル姉ちゃんが安眠を妨げる煩い声を出さなかったことらしいの。

「うん? 姉上は一人で着替えなんてできなかったはずじゃが…。
 嫁入りすることが決まって、少しは自立心が出て来たのかのう。」

 カズミさんの言葉が耳に入ったのか、オランがそんな事を口にしたんだ。

「何言っているの、オランちゃん。
 私、自分で着替えなんてできないわよ。」

「はい?」

 おいら、聞き返しちゃったよ。
 ネーブル姉ちゃんが、自慢気に着替えが出来ないなんて言うものだから。

「シフォンさんから、頂戴した本に書いてあったのよ。
 お互いの服を脱がせあうことで気分を高めるのですって。
 殿方はご婦人の服を脱がせる時に奮い立つそうよ。
 お風呂場で体を洗うのも同じ、お互いに洗いっこするのよ。」

 「自分の背中を洗うのは難しいけど、他人の背中を洗うのは簡単よ。」と胸を張って言ったネーブル姉ちゃん。
 服に関しても、自分の服を脱ぎ着するより、他人にしてあげる方が簡単だって。
 「背中にあるボタンなんて、自分でどうやって外せと言うのよ。」なんて言ってたよ。
 
 それで、ネーブル姉ちゃんは言ってた。
 お風呂場で体を洗ってあげてたら、カズヤ殿下が元気になったらしくてね。
 風呂場にあった椅子を使って、その場でスッキリさせてあげたって。
 『元気』になるって言葉と、『スッキリ』させるって言葉、上手く意味が通らないよ…。
 それに、椅子を使うってフレーズも意味不明だし。

 おいらも、オランも言葉が変だよと首をひねっていたんだけど。
 カズミ姉ちゃんには通じた様子で、ゲンナリしてたよ。聞かなきゃよかったって顔をしてた。

 更にネーブル姉ちゃんは。

「昨日静かだったのは、あの本に書いてあった技を試してみたの。
 なんて言ったかな、聞き覚えのない言葉なんだけど…。
 何でも、カズトお爺ちゃんの故郷にある縦笛の名前らしいけど。
 その最中は声なんて出そうと思っても、出せないのよ。
 でも、カズヤ様、とても悦んでくださったわ。」

 なんてことも言ってたよ。
 誰しも笛を演奏している最中に声なんか出せないでしょうって、ネーブル姉ちゃんは言ってたけど…。
 一体、どうしてこの話の流れで縦笛の演奏が出て来るのか、ますます混乱しちゃったよ。

 他にも、にっぽん爺の故郷にいる鳥の名前がどうだとか言ってた。
 どんな鳥か知らないけど、『むく鳥』だとか、『さかさむく鳥』だとか。
 カズヤ殿下もとてもお気に召したようで、夢中になっていたって言ってたよ。

 ネーブル姉ちゃんは、はしたない声を周囲にまき散らさなくて済むのが良いと言ってたんだ。
 言ってることは良く解からなかったけど、…。
 二人がそれで満足していて、周りに迷惑かけていないなら、めでたしめでたしなんだろうね。
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