ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十六章 里帰り、あの人達は…

第478話【閑話】気分転換に出掛けることにした

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 さて、妹のカズミの冷たい視線に晒されながらも、『風呂屋』でモヤモヤを解消してきた訳だが。
 欲求不満を十分に解消したので、数日は問題なかったものの…。

 母上が昼夜を問わずカズト殿にべったりで、悩ましい声を上げているのだ。
 流石に、健康な男児としては、館の中に留まるのはキツかったよ。
 なので、母上の嬌声の届かない庭で、護衛の騎士達とお茶を嗜んでいると。

「お兄様、こうして屋敷に留まっていても退屈でしょうし。
 なにより精神衛生上、良くないでしょう。
 何処か、外出でもしませんか? お供いたしますよ。」

 カズミが外へ行こうと誘ってくれたよ。
 母上の嬌声にあてられてまた私が欲情したら困ると、カズミは思ったのだろう。
 因みに、カズミは私を『お兄様』と呼んでいるが、これは決して親しみを込めて呼んでいる訳では無いぞ。
 私が『お兄様』と呼んで欲しいと頼むと、最初カズミはそんな不敬は出来ないと拒絶したのだ。

 だが、ここに来た初日の晩に、アクシデントからカズミに粗相をしてしまい。
 その瞬間から、突如『お兄様』と呼ぶようになったのだ。
 どうやら、私がカズミに欲情していると誤解し、身の危険を感じたようであった。
 『お兄様』と呼ぶことで、自分が血の繋がった妹だと私に認識させるつもりようだ。
 それにより、自分が劣情の対象となるのを防ごうと思っているらしい。

 そのため、私へ掛けられる『お兄様』という言葉は、とても冷淡な印象を受けるのだ。
 残りの半月ほどで兄としての信頼を取り戻したいと、私は思っているのだが。

「そうだな、…。
 では、この領地ご自慢のダイヤモンド鉱山に連れて行ってはもらえないだろうか?」

 私は常々、ハテノ男爵領の復興の原動力と聞いているダイヤモンド鉱山を見学したいと思っていたのだ。

 すると。

「殿下、申し訳ございませんが、鉱山は関係者以外立ち入り禁止となっています。
 仮にライム様の許可があったとしても、鉱山内は危険なため護衛として立ち入りは認められません。」

 騎士団のエクレア団長がきっぱりと断って来たよ。
 流石、この国の近衛騎士団長モカの娘、ダメな事はダメとはっきり言う。
 護衛対象の私の身に危険が及ぶ怖れのあることは容認できないようだ。

「そうでしょうね、鉱山はこの領地の生命線とも言えるもの。
 部外者、特に王族には見せたくは無いでしょうね。
 残念だな、鉱山がどんな所にあるかだけでも知りたかったのに。」

 無理強いするほどのことでないので、私は諦めるつもりでそう答えると。

「遠目で見るだけでよろしいのなら、お連れしてもかまいませんよ。
 街道を行く旅人は鉱山の姿を目にしている訳ですので。
 敷地内に入らなければ問題はございませんし。
 途中、景色の良い所もございますので、気分転換には良いでしょう。」

 エクレア団長は、私に気遣ってかそんな提案をしてくれたのだ。
 母上のアノ声のせいで、私が悶々としているのをエクレア団長も察しているのだろう。
 もちろん、私はその提案に乗ったよ。

          **********

「お兄様、私の腰にきつく腕を回して、決して放さないでくださいね。
 ウサギから振り落とされると怪我をしますから。」

 カズミはウサギの首を撫でながら、私に注意をしたのだ。
 そのウサギはカズミが自分で飼い慣らしたもので、騎士団の仕事で騎乗してると言う。
 エクレア団長も、騎士スフレもそれぞれ自分のウサギに跨っていたよ。

 馬車で出かけることも考えたのだが、その日はとても天気が良く心地良い風が吹いていた。
 こんな麗らかな日に外出するなら、この方が快適だろうとウサギに騎乗することになったのだ。
 途中の山道は王都近辺では見られない風光明媚なところが多く、視界の効かない馬車では勿体ないと。

 この町に駐在している連隊の隊長に屋敷の護衛を任せて、私達は鉱山へ向かったのだ。
 騎士服に身を包んだ精悍な姿のカズミの後ろに乗せてもらい、屋敷を出発すると。

 私達は高くそびえる山脈の方向にある門に向かったのだ。

「お役目ご苦労様です。
 今日は、エクレア様のお顔を拝めるなんてラッキーだぜ。
 いってらっしゃいませ、エクレア様。」

 門番をしていた冒険者がエクレア団長の姿を見て嬉しそうに声をかけていたよ。

「エクレア団長は、騎士団で一、二を争う人気者なのです。
 団長がステージに立つときは広場が超満員になるのですが。
 しばらく前から、団長は領都から出ることがなくなったもので。
 残念に思っている方が多いようなのです。
 町を巡回していると、『エクレア様はもう来ないのか』と度々尋ねられますの。」

 ハテノ男爵領の騎士団は全員がうら若き女性で、領地を無法者や魔物から護っているのだが。
 その他、娯楽の無い辺境の民を楽しませるため、定期的に歌や踊りを披露しているそうだ。
 エクレア団長は、ペンネ連隊長と双璧を成す人気者だと言う。
 ただ、領地の復興と共にライム嬢の護衛や領都の治安維持を強化する必要に迫られ。
 エクレア団長は領都から離れられなくなったため、彼女の歌声を聴くためには領都まで行かないとならないと言う。

 門を出ると、目の前にはとてもきれいに整備された街道が続いていた。
 山へ向かうとは、とても思えない石畳で舗装された街道が。

「この道も、鉱山が再開した一年程前は草ぼうぼうで大分荒れていたんですよ。
 ライム様が予算をやりくりして、少しずつ街道を整備してるんです。
 やっと、もうすぐ国境と言うところまで工事が進んだと聞いてます。」

 私が道の良さに感心していると、カズミは街道の整備状況を教えてくれたよ。
 そんな話をしつつ進んでいくと、街道はすぐに山の中に入っていったよ。

 しばらく、山の中を進むと対面から馬車が向かって来た。
 すれ違いのために、お互い速度を落とすと…。

「おや、カズミ様じゃないかい。今日はお兄さんも一緒なのかい。
 先日は危ないところを助けてもらって有り難う。 
 おかげで、こうして今日も商いを続けていられるよ。」

 すれ違いざまに、商人らしき初老の紳士がカズミに声を掛けて来たのだ。
 どうやら、盗賊か、魔物かは分からぬが、襲われていたところをカズミに救われたらしい。 

「いいえ、お気になさらず。
 街道の安全を守るのも騎士の役目ですから。
 良いご商売が出来ると良いですね。」

「ハテノ男爵領の騎士様は、親切で良いね。
 それに、定期的に街道を巡回してくださるから、安心して旅が出来ますよ。
 では、カズミさまもお気をつけて。
 この先九十九折になるから、兄さんも振り落とされないようにね。」
 
 この領地の騎士は本当に評判が良いようで、そんな言葉を残して商人は去っていったよ。

「あの商人さん、私達を兄弟だと決めつけていましたね。
 お兄様が、やんごとなき身分の方だとは夢にも思っていないでしょうね。」

 カズミは可笑しそうに言っていたよ。
 すこし前にこの街道の巡回中、あの商人が魔物に襲われている所に出くわしたらしい。
 その魔物をカズミが討ち取ったのだと言う。

「凄いな、カズミ一人で魔物を討ち取ったと言うのか。」

「通常、五人一組で行動するのですけど。
 街道を巡回する時は、少し距離をとって行動することも多いのです。
 魔物なんて、どんなタイミングで出て来るか分からないし。
 大概は一人で対処できますからね。」

 大抵の魔物は一人で対処できると言うカズミを頼もしく思っていると。

「商人さんと話している間に、エクレア団長から大分離れてしまいましたね。
 少し速く走りますから、ギュッとしがみ付いてくださりますか。
 ウサギから振り落とされるといけませんから。」

 カズミの言葉通り、エクレア団長と騎士スフレは大分前を進んでおりその姿が小さくなっていたのだ。
 指示された通り、カズミの腰に回した腕に力を込めると、カズミをウサギの速度を上げたのだ。

 ウサギと言う魔物は思いの外早く走るもので、周りの景色があっという間に後ろに遠のいていくのだ。
 頬を撫でる風は心地良いのだが、確かに気を抜くと振り落とされそうで…。
 自然と、カズミの腰に回した腕に力が籠ったよ。

 すると、当然、体が密着する訳で…。
 カズミの柔らかな抱き心地と風に乗って鼻をくすぐる良い香りに、恥ずかしながら『おっき』してしまったよ。
 しかも、柔らかいカズミのお尻がウサギに揺られて、私の股間を絶妙な力加減で刺激するし…。
 つい、お風呂で見た浴衣越しの透けたカズミの肢体も思い出してしまったよ。

 無事にエクレア団長達に追い付き速度を落としたカズミは…。

「お兄様、少し自制心を鍛えないといけないようですね。
 硬いモノがお尻に当たっていましたよ。
 血の繋がった妹に欲情するのは、如何なものかと思います。」

 後ろを振り返ると寒々とした目で、きつい一言を吐いたのだ。
 「いや欲情した訳では無く、これは自然現象だ。」と、口に出して反論することは出来なかったよ。

「はい、これからは気を付けます」

 としか、言えなかったぞ…。 
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