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第十六章 里帰り、あの人達は…
第454話 お祝いの品は凄いモノらしいよ
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「ライムや、珍しいお客さんがお越しになられたぞ。
お前の出産祝いにと、遠路遥々来てくださった。」
そんな言葉と共に、ゼンベー爺ちゃんはライム姉ちゃんの執務室の扉を開いたの。
ライム姉ちゃんの執務室には大きな机が二つ向かい合わせに置いてあり。
そこでは、領主のライム姉ちゃんと伴侶のレモン兄ちゃんが黙々と仕事をしていたよ。
「何ですか、お父様、大きな声を上げて…。
昼寝中のユズが目を覚ましてしまうでは無いですか。
それで、お客様とはいったい…。」
ペンを手にしたまま、書類から顔を上げたライム姉ちゃん。
ノックもしないで乱暴に扉を開け放ったゼンベー爺ちゃんに文句を言ってたよ。
「忙しいところに急に来ちゃってゴメンね。
赤ちゃん、生まれたって聞いたから見に来たよ。」
おいらが、ゼンベー爺ちゃんの背後から顔を覗かせて声を掛けると。
「まあ、マロンちゃん、遠い所、よく来てくれたわね。
マロンちゃんなら、何時だって大歓迎よ。
でも、良いの? 一国の女王がこんな遠くまで来ちゃって?」
ライム姉ちゃんは顔を綻ばせておいらを歓迎してくれたの。
「おいら、まだ子供なのに、この一年休みなしに働かされたんだもん。
たまにはお休みをもらわないと体を壊しちゃうよ。
そんな訳で、まとまったお休みをもらったの。
辺境の町へ帰って、のんびり温泉にでも浸かろうと思ってね。
もちろん、オランも一緒だよ。」
「義姉上、お久しぶりなのじゃ。
産後の肥立ちも良好のようで何よりじゃ。
兄上も元気そうじゃの。
そこに寝ている愛らしい赤子がユズちゃんじゃろうか。」
おいらがライム姉ちゃんの言葉に答えて、ついでにオランも居ることを告げると。
オランがひょっこり顔を出して挨拶してたよ。
「おお、オランジュ、良く来たな。
しばらく見ないうちに、逞しくな…。
ってはおらんな。
お前、何時まで女の子のようななりをしてるんだ?」
「兄上、久し振りに会った弟へ掛ける言葉がそれなのか。
私だって好きで女子のような姿をしている訳じゃないのじゃ。
ほっといてくれなのじゃ。」
オランはレモン兄ちゃんの言葉にヘソを曲げちゃったよ。
おいらは今のままでいて欲しいかも、お人形のように可愛いオランはアリだと思うんだ。
それに、大人になっても逞しいオランなんて想像できないよ。
チャラいシトラス兄ちゃんみたいになるんじゃないかと思っているんだ。
**********
「ねえ、二人とも、部屋の入り口で立ち話してないで中に入ったら。
私達が挨拶出来ないんだけど。」
ミントさんにせっつかれて部屋の中に入ると。
「王后陛下? それに皇太子殿下も。
お久しぶりでございます、遠路お運び頂きまして恐縮でございます。
応接室にもお通しもせずに、大変失礼しました。」
ライム姉ちゃんはミントさんの姿を目にすると、さっと席を立ち丁重な挨拶をしたんだ。
そして、応接室に通さないで、執務室へ連れて来たゼンベー爺ちゃんを睨んだの。
「ああ、それは気にしないで良いわ。
こちらへ連れて来るように先代にお願いしたのは私だから。
あなたが執務中だと言うし、赤ちゃんもこちらにいると聞いたのでね。
それでその子があなたの赤ちゃんなの?
とても、元気そうで良かったわね。」
ミントさんは、ゼンベー爺ちゃんを叱らないようにとミントさんに言ってたよ。
「はい、おかげさまで無事に生まれて参りました。
女の子で、ユズと名付けました。
アルト様が、貴重な『妖精の泉』の水を下さったので。
私も、この子も、健康そのもので助かっています。」
ライム姉ちゃんは娘さんの紹介をすると、ミントさん達を部屋に招き入れてたの。
近くで娘さんを見て行ってくれって。
「おお、モミジのような小っちゃい手なのじゃ。
可愛い赤子なのじゃ。
私とマロンじゃ、あと五年は先の話じゃの。」
オランはユズちゃんを見てそんなことを呟いていたよ。
うーん、五年か…、果たしておいら達は五年で大人になっているんだろうか。
ちんちくりんのおいらと女の子のようなオラン、とても五年で大人になっている気がしないよ。
おいら、あと十年は先のことだと思うな。
それから、おいら達はライム姉ちゃんに促されて応接室に移動したんだ。
お昼寝中のユズちゃんは、レモン兄ちゃんがかごに寝かせて応接室へ移動させたよ。
執務室で一人にはしておけないって。
応接室に腰を落ち着かせると。
「アルト様、あれを出して頂けますか?」
ミントさんがお願いすると、目の前のテーブルの上にドーンと物が積み上げられたよ。
「これ、王家から出産祝いですわ。お納めくださいね。
おむつは幾らあっても足りないでしょうから、布地を中心に見繕って来たの。」
「王家から出産祝いを頂戴できるとは恐縮でございます。
仰る通り、赤ちゃんのおむつに使える布地は助かります。
って、陛下、これ、シルクじゃございませんか。
おむつに使うなんて、そんな勿体ない。」
目に前に積まれた布地を手にしたライム姉ちゃんがビックリしてたよ。
とっても高価な布地だったみたい。
「あらそう? 確かにおむつにするには薄すぎたかしら?
それに、吸水性も良く無さそうね…。
赤ちゃんがかぶれたら大変だわ。」
「いえ、陛下、そう言う事では無くて…。」
ライム姉ちゃんはそんな高価な布地をおむつに使うには抵抗があると感じているようだけど。
ミントさんには伝わっていないみたい。ボケをかましている訳じゃないよね。
「まあ、良いでしょう。
なんなら、それをお金に換えて、おむつに適した布地を買えば良いわ。
それと、布地ばかりでは王家がケチっているみたいだから、これを取っておいて。」
そんなことを口にしながら、ミントさんが差し出したのは懐剣だったよ。
剣と言っても、鞘や持ち手は金で作られて、そこに宝石が散りばめられてるの。
実用性皆無の装飾用の剣、おそらく礼装と一緒に身に付けるモノだね。
おいらが亡き母ちゃんから譲られた、王家の証の剣と良い勝負だと思う。
「陛下、こんな、大層なモノを頂戴する訳には参りません。
これは、国宝クラスの剣でしょう。」
そんな言葉を発したのはレモン兄ちゃん。
さすが大国の王族だけあって、その手のモノに目が利くみたい。
貧乏暮らしが長かったライム姉ちゃんに、剣の価値など分かる訳がないもんね。
「良いのよ。
どうせ、宝物庫で埃を被っていたモノだもの。
既に、ハテノ男爵家に下賜すると正式に手続しちゃったし。
納めてもらえないと、王家が恥をかくことになるわ。」
「陛下、この国の慣例は不案内なもので、失礼なことをお尋ねしますが。
この国では、一介の貴族の出産祝いにこのような貴重なモノを下賜されるのでしょうか?」
「まさか。この国はそれほど豊かではございませんよ。
これは特別です。と・く・べ・つ。
建前は、復興目覚ましいハテノ男爵家に媚びを売るためってなってます。」
不相応なほど立派過ぎる出産祝いに、レモン兄ちゃんが警戒感を露わに問い掛けると。
ミントさんは、思わせぶりなセリフを口にしたんだ。
「建前はってことは、本音では男爵家に特別な何かをお望みとのことなのでしょうか。
例えば、国王陛下より疎まれている皇太子殿下の後ろ盾になれとか?」
「あら、流石、大国の王子様だっただけあって、ずばりと尋ねて来るのね。
でも、安心してくださって良いわよ。
この子の後ろ盾は、公爵家だけで十分ですもの。
中央の政から、あえて一線を引いている男爵家を巻き込もうとは思わないわ。」
ハテノ男爵家はこの国最大のダイヤモンド鉱山を抱えて、かつては王家を凌ぐ財力を有していたらしいんだ。
にもかかわらず、爵位は最低の男爵なんだ。
これは、代々の領主がいらぬ政争に巻き込まれるのを嫌って、中央の政に関与してこなかったかららしいの。
王家を凌ぐほどの財力と高い地位を併せ持っていると、良からぬ輩が寄って来ること請負だからだって。
で、婿のレモン兄ちゃんは代々の方針に従うようで、政争に巻き込まれるのを避けようとしてるみたい。
「まあ、そうでしょうね。
幾ら現王が皇太子殿下を疎んでいても、正式に立太子の儀礼を済ませ。
最有力貴族である公爵家の後ろ盾もあるのですから。
今更、片田舎の男爵家の支援など要りませんね。
では、陛下は何をお望みなのでしょうか。」
「まあ、そんなご謙遜を。
この町の賑わいを見たら誰でも思いますわ。
ハテノ男爵家を敵には回したくないとね。
でも、私には分かっていますの。
もし、陛下に付くか、私に付くかの二択になった時は。
ハテノ男爵家は迷わず私に付いてくれるとね。
あなた方お二方は聡明ですもの。
流石に愚王に与しようとは思わないでしょう。
ですから、あなた達に私の閥に入れとは言わないわ。
私があなた達にお願いしたのは、この子のこととは別のことよ。」
ミントさんは、カズヤ殿下の件は関係ないと言ったんだ。
でも、自分の旦那を愚王だなんて…、歯に衣を着せるつもりは全く無いね
「別のこととは?」
「ふ、ふ、ふ、そんな大したことじゃないわ。
私、この屋敷をお暇した後、しばらくハテノ男爵領に留まるつもりなの。
あなた達は口裏をあわせて欲しいのよ。
私が一月ほど、この屋敷に滞在していたとね。」
「はっ?
ミント様はここに滞在されるのではなく、何処かへ行こうと言うのですか?
まさか…。」
レモン兄ちゃんへの返答を耳にして、今度はライム姉ちゃんが話に加わって来たの。
そして、何かに思い至ったみたい。
「そう、私、マロンちゃんが育った町に行こうと思っているの。
そして、あの方のもとへ行って、しばしの逢瀬を楽しむのよ。
ぶっちゃけ、これはあなた達への口止め料よ。」
ミントさん、本当にぶっちゃけたよ。
ライム姉ちゃんは、余りのことにポカンとしちゃったし。
にっぽん爺とミントさんの関係を知らないレモン兄ちゃんは、首をかしげていたよ。
あっ、この場にゼンベー爺ちゃんは居ないから、他に聞いている人はいないよ。
この場で事情を知らないのは、レモン兄ちゃんだけ。
お前の出産祝いにと、遠路遥々来てくださった。」
そんな言葉と共に、ゼンベー爺ちゃんはライム姉ちゃんの執務室の扉を開いたの。
ライム姉ちゃんの執務室には大きな机が二つ向かい合わせに置いてあり。
そこでは、領主のライム姉ちゃんと伴侶のレモン兄ちゃんが黙々と仕事をしていたよ。
「何ですか、お父様、大きな声を上げて…。
昼寝中のユズが目を覚ましてしまうでは無いですか。
それで、お客様とはいったい…。」
ペンを手にしたまま、書類から顔を上げたライム姉ちゃん。
ノックもしないで乱暴に扉を開け放ったゼンベー爺ちゃんに文句を言ってたよ。
「忙しいところに急に来ちゃってゴメンね。
赤ちゃん、生まれたって聞いたから見に来たよ。」
おいらが、ゼンベー爺ちゃんの背後から顔を覗かせて声を掛けると。
「まあ、マロンちゃん、遠い所、よく来てくれたわね。
マロンちゃんなら、何時だって大歓迎よ。
でも、良いの? 一国の女王がこんな遠くまで来ちゃって?」
ライム姉ちゃんは顔を綻ばせておいらを歓迎してくれたの。
「おいら、まだ子供なのに、この一年休みなしに働かされたんだもん。
たまにはお休みをもらわないと体を壊しちゃうよ。
そんな訳で、まとまったお休みをもらったの。
辺境の町へ帰って、のんびり温泉にでも浸かろうと思ってね。
もちろん、オランも一緒だよ。」
「義姉上、お久しぶりなのじゃ。
産後の肥立ちも良好のようで何よりじゃ。
兄上も元気そうじゃの。
そこに寝ている愛らしい赤子がユズちゃんじゃろうか。」
おいらがライム姉ちゃんの言葉に答えて、ついでにオランも居ることを告げると。
オランがひょっこり顔を出して挨拶してたよ。
「おお、オランジュ、良く来たな。
しばらく見ないうちに、逞しくな…。
ってはおらんな。
お前、何時まで女の子のようななりをしてるんだ?」
「兄上、久し振りに会った弟へ掛ける言葉がそれなのか。
私だって好きで女子のような姿をしている訳じゃないのじゃ。
ほっといてくれなのじゃ。」
オランはレモン兄ちゃんの言葉にヘソを曲げちゃったよ。
おいらは今のままでいて欲しいかも、お人形のように可愛いオランはアリだと思うんだ。
それに、大人になっても逞しいオランなんて想像できないよ。
チャラいシトラス兄ちゃんみたいになるんじゃないかと思っているんだ。
**********
「ねえ、二人とも、部屋の入り口で立ち話してないで中に入ったら。
私達が挨拶出来ないんだけど。」
ミントさんにせっつかれて部屋の中に入ると。
「王后陛下? それに皇太子殿下も。
お久しぶりでございます、遠路お運び頂きまして恐縮でございます。
応接室にもお通しもせずに、大変失礼しました。」
ライム姉ちゃんはミントさんの姿を目にすると、さっと席を立ち丁重な挨拶をしたんだ。
そして、応接室に通さないで、執務室へ連れて来たゼンベー爺ちゃんを睨んだの。
「ああ、それは気にしないで良いわ。
こちらへ連れて来るように先代にお願いしたのは私だから。
あなたが執務中だと言うし、赤ちゃんもこちらにいると聞いたのでね。
それでその子があなたの赤ちゃんなの?
とても、元気そうで良かったわね。」
ミントさんは、ゼンベー爺ちゃんを叱らないようにとミントさんに言ってたよ。
「はい、おかげさまで無事に生まれて参りました。
女の子で、ユズと名付けました。
アルト様が、貴重な『妖精の泉』の水を下さったので。
私も、この子も、健康そのもので助かっています。」
ライム姉ちゃんは娘さんの紹介をすると、ミントさん達を部屋に招き入れてたの。
近くで娘さんを見て行ってくれって。
「おお、モミジのような小っちゃい手なのじゃ。
可愛い赤子なのじゃ。
私とマロンじゃ、あと五年は先の話じゃの。」
オランはユズちゃんを見てそんなことを呟いていたよ。
うーん、五年か…、果たしておいら達は五年で大人になっているんだろうか。
ちんちくりんのおいらと女の子のようなオラン、とても五年で大人になっている気がしないよ。
おいら、あと十年は先のことだと思うな。
それから、おいら達はライム姉ちゃんに促されて応接室に移動したんだ。
お昼寝中のユズちゃんは、レモン兄ちゃんがかごに寝かせて応接室へ移動させたよ。
執務室で一人にはしておけないって。
応接室に腰を落ち着かせると。
「アルト様、あれを出して頂けますか?」
ミントさんがお願いすると、目の前のテーブルの上にドーンと物が積み上げられたよ。
「これ、王家から出産祝いですわ。お納めくださいね。
おむつは幾らあっても足りないでしょうから、布地を中心に見繕って来たの。」
「王家から出産祝いを頂戴できるとは恐縮でございます。
仰る通り、赤ちゃんのおむつに使える布地は助かります。
って、陛下、これ、シルクじゃございませんか。
おむつに使うなんて、そんな勿体ない。」
目に前に積まれた布地を手にしたライム姉ちゃんがビックリしてたよ。
とっても高価な布地だったみたい。
「あらそう? 確かにおむつにするには薄すぎたかしら?
それに、吸水性も良く無さそうね…。
赤ちゃんがかぶれたら大変だわ。」
「いえ、陛下、そう言う事では無くて…。」
ライム姉ちゃんはそんな高価な布地をおむつに使うには抵抗があると感じているようだけど。
ミントさんには伝わっていないみたい。ボケをかましている訳じゃないよね。
「まあ、良いでしょう。
なんなら、それをお金に換えて、おむつに適した布地を買えば良いわ。
それと、布地ばかりでは王家がケチっているみたいだから、これを取っておいて。」
そんなことを口にしながら、ミントさんが差し出したのは懐剣だったよ。
剣と言っても、鞘や持ち手は金で作られて、そこに宝石が散りばめられてるの。
実用性皆無の装飾用の剣、おそらく礼装と一緒に身に付けるモノだね。
おいらが亡き母ちゃんから譲られた、王家の証の剣と良い勝負だと思う。
「陛下、こんな、大層なモノを頂戴する訳には参りません。
これは、国宝クラスの剣でしょう。」
そんな言葉を発したのはレモン兄ちゃん。
さすが大国の王族だけあって、その手のモノに目が利くみたい。
貧乏暮らしが長かったライム姉ちゃんに、剣の価値など分かる訳がないもんね。
「良いのよ。
どうせ、宝物庫で埃を被っていたモノだもの。
既に、ハテノ男爵家に下賜すると正式に手続しちゃったし。
納めてもらえないと、王家が恥をかくことになるわ。」
「陛下、この国の慣例は不案内なもので、失礼なことをお尋ねしますが。
この国では、一介の貴族の出産祝いにこのような貴重なモノを下賜されるのでしょうか?」
「まさか。この国はそれほど豊かではございませんよ。
これは特別です。と・く・べ・つ。
建前は、復興目覚ましいハテノ男爵家に媚びを売るためってなってます。」
不相応なほど立派過ぎる出産祝いに、レモン兄ちゃんが警戒感を露わに問い掛けると。
ミントさんは、思わせぶりなセリフを口にしたんだ。
「建前はってことは、本音では男爵家に特別な何かをお望みとのことなのでしょうか。
例えば、国王陛下より疎まれている皇太子殿下の後ろ盾になれとか?」
「あら、流石、大国の王子様だっただけあって、ずばりと尋ねて来るのね。
でも、安心してくださって良いわよ。
この子の後ろ盾は、公爵家だけで十分ですもの。
中央の政から、あえて一線を引いている男爵家を巻き込もうとは思わないわ。」
ハテノ男爵家はこの国最大のダイヤモンド鉱山を抱えて、かつては王家を凌ぐ財力を有していたらしいんだ。
にもかかわらず、爵位は最低の男爵なんだ。
これは、代々の領主がいらぬ政争に巻き込まれるのを嫌って、中央の政に関与してこなかったかららしいの。
王家を凌ぐほどの財力と高い地位を併せ持っていると、良からぬ輩が寄って来ること請負だからだって。
で、婿のレモン兄ちゃんは代々の方針に従うようで、政争に巻き込まれるのを避けようとしてるみたい。
「まあ、そうでしょうね。
幾ら現王が皇太子殿下を疎んでいても、正式に立太子の儀礼を済ませ。
最有力貴族である公爵家の後ろ盾もあるのですから。
今更、片田舎の男爵家の支援など要りませんね。
では、陛下は何をお望みなのでしょうか。」
「まあ、そんなご謙遜を。
この町の賑わいを見たら誰でも思いますわ。
ハテノ男爵家を敵には回したくないとね。
でも、私には分かっていますの。
もし、陛下に付くか、私に付くかの二択になった時は。
ハテノ男爵家は迷わず私に付いてくれるとね。
あなた方お二方は聡明ですもの。
流石に愚王に与しようとは思わないでしょう。
ですから、あなた達に私の閥に入れとは言わないわ。
私があなた達にお願いしたのは、この子のこととは別のことよ。」
ミントさんは、カズヤ殿下の件は関係ないと言ったんだ。
でも、自分の旦那を愚王だなんて…、歯に衣を着せるつもりは全く無いね
「別のこととは?」
「ふ、ふ、ふ、そんな大したことじゃないわ。
私、この屋敷をお暇した後、しばらくハテノ男爵領に留まるつもりなの。
あなた達は口裏をあわせて欲しいのよ。
私が一月ほど、この屋敷に滞在していたとね。」
「はっ?
ミント様はここに滞在されるのではなく、何処かへ行こうと言うのですか?
まさか…。」
レモン兄ちゃんへの返答を耳にして、今度はライム姉ちゃんが話に加わって来たの。
そして、何かに思い至ったみたい。
「そう、私、マロンちゃんが育った町に行こうと思っているの。
そして、あの方のもとへ行って、しばしの逢瀬を楽しむのよ。
ぶっちゃけ、これはあなた達への口止め料よ。」
ミントさん、本当にぶっちゃけたよ。
ライム姉ちゃんは、余りのことにポカンとしちゃったし。
にっぽん爺とミントさんの関係を知らないレモン兄ちゃんは、首をかしげていたよ。
あっ、この場にゼンベー爺ちゃんは居ないから、他に聞いている人はいないよ。
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