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第十六章 里帰り、あの人達は…
第450話 故郷へ帰してあげることができたよ…
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おいらが、女王に即位して一年が過ぎた頃。
「まだ御幼少の砌にも関わらず、この一年休む間も無く働き詰めでお疲れさまでした。
陛下が津々浦々を飛び回り、民を慰撫してくださったおかげで国は平穏さを取り戻しました。
逆賊ヒーナルが玉座にあった頃の不穏な雰囲気は微塵も感じられなくなりました。
ここまで来れば、陛下がお休みになられても国に大事はありますまい。
どうぞ、ごゆるりと休暇を楽しまれて、英気を養ってくだされませ。」
宰相が、それまでのおいらの働きを労ってくれ、快く休暇を取らせてくれたよ。
その日、おいらはやっとまとまった休暇をもらうことが出来たんだ。
年に二回くらいは、まとまった休暇を取ってトアール国の辺境の町に里帰り(?)しようと思っていたけど。
国のあちらこちらに前マイナイ伯爵みたいな輩が残っていて、民の不満が溜まっている領地が少なくなかったの。
タロウが、全国にあるひまわり会の支部全てで『銀貨引換券』の取り扱いを計画してて。
そのために、全ての支部を視察して、幹部を信頼できる人に置き換えたいと言ってたの。
おいらも、タロウに便乗して一年かけて国中を巡って、不正を働いている領主の首を挿げ替えて回ったの。
宰相になるべく穏便に済ますように言われていたので、お取り潰しにした家は一つも無かったよ。
マイナイ伯爵の時と同じで、おいらの命に背いた貴族、不正を働いた貴族は当主に隠居してもらったんだ。
そのうえで、まともそうな子女を後釜に据えたの。
これもマイナイ伯爵家と同じで、従来後継ぎと目されていた長男は当主の劣化コピーでダメダメだったよ。
結局一年間で女性領主が十人以上誕生する異常事態になっちゃった。
交替した領主の半数以上が女性領主になっちゃったんだもん。
一年の全国行脚で、おいらが発布したお触れが全国の津々浦々まで浸透したし、タロウも『銀貨引換券』の取り扱いを全国で始めたの。
そんな訳で、やっとまとまった休暇を取れるようになったんだ。
アルトの『積載庫』に乗せてもらって、トアール国の辺境の町に里帰りをするんだ。
「陛下、他国にお邪魔するのですから、くれぐれも問題は起こさないでくださいよ。
それと、無断で行かないで、一応、先方の王家にはきちんと挨拶をしておいてくださいね。」
育ったトアール国の辺境の町で休暇を過ごすと伝えると、宰相からモカさんに挨拶をしておけって言われたよ。
モカさんにきちんと話を通しておけば、昼行燈は形だけの挨拶で良いって…。
そんな訳で、おいらは休暇を取ってトアール国の辺境の町へ行くことになったんだ。
同行するのは、オランとプティー姉、それにいつもの護衛騎士の四人。
それに、父ちゃんとタロウの一家だよ。
タロウの一家はお嫁さんのシフォン姉ちゃんとカヌレ姉ちゃんは勿論のこと。
お針子さんとして連れてきている耳長族のみんなも一緒だよ。
やっぱり、里帰りさせてあげないといけないから。
**********
それから更に三日ほどして。
「これは、これは、マロン嬢、お久しぶりでございます。
御即位の式典に伺った際は、この上ないおもてなしをして頂き有り難うございました。
今回はご休暇で、我が国に息抜きにいらしたのですか。」
モカさんの家を訪ねると、おいらがラフな服装をしていたためか陛下とは呼ばずに以前と同じように接してくれたよ。
その方が、おいらも肩が凝らないで助かるよ。
「うん、即位から一年経ってやっとまとまった休暇が貰えたんだ。
辺境の町へ行ってのんびり温泉に浸かろうと思ってね。
そうそう、公務と言う訳じゃないんだけど。
この王都で少しだけ土地を買いたいのだけど紹介してもらえるかな。」
「土地ですか?
この町に外交官でも駐在させるのでしょうか。
それとも、マロン嬢の別荘でも?」
いや、いや、それじゃ、少しの土地じゃなくなっちゃうじゃん。
「そんな大きな土地じゃなくて。
お墓と慰霊碑を建てたいんだ。
ウエニアール国の王都にも慰霊碑を建てたんだけど。
お墓は里帰りさせてあげたくて。」
そう、おいら、逆賊として葬られたオーマサさんとコマーサさんが埋葬されていたところを探したんだ。
おいらのお爺ちゃんや伯父さんを護って最期まで戦ってくれた恩人だもね。
丁重に供養しないといけないと思って。
逆賊と言うことでかなり無造作に扱われていたけど、二人の亡骸が埋葬されていた場所はすぐに分かったよ。
大罪人として、他の人からは離れた場所に埋められていたからね。
おいらが、事情を説明すると。
「何と、そんな忠義に厚い者が我が国に居たとは存じませんでした。
でしたら、しかるべき場所に土地を用意させますので。
明日にでも、王宮へお越しいただけますか。」
モカさんは、王都の土地を管理している役人に相応しい土地を見繕わせると言ってたよ。
なので、おいらは明日改めて出向くことを告げると、次の目的地に行くことにしたの。
「まいど! ジロチョー親分はいるかな?」
ドッチカイの事務所に入ると、カウンターに向かって父ちゃんお馴染みの声を掛けたの。
「おや、珍しい奴が来たもんだ。
久しいな、モリィシー、おめえ、今何してんだ?
辺境の町で所帯を持ったって言ってたっけ。」
「オニキチー兄貴、ご無沙汰しています。
いえ、今、俺、娘にくっついてウエニアール国に行っていて。
久しぶりに里帰りしたんですよ。
オニキチー兄貴こそ、今は桶屋を営んでるんでしょう。
今日は、何でここに?」
「何言ってんだい。
ジロチョー親分がギルドの看板をまた掲げたからな。
俺達がジロチョー親分のために働かないでどうするんだ。
今じゃ、昔馴染みがみんな顔を出しているんだぜ。
おめーと、オーマサ、コマーサの両兄貴以外はな。」
オニキチーさんは、桶屋の仕事の合間を縫って依頼をこなしているらしいよ。
パートタイム冒険者だなんて言ってた。
他のギルド幹部も似たようなもので、本業の傍らギルドの仕事をしてるんだって。
「それなら、丁度良いから、オニキチー兄貴も一緒に聞いてください。
今日は、オーマサ兄貴とコマーサ兄貴の事についてジロチョー親分にご報告があって来たんですよ。」
すると。
「誰かが、俺を訪ねて来たと言うから出て来てみれば。
モリィシーじゃねえか、久し振りだな。
今、オーマサ、コマーサがどうこうと聞こえたが。
まあ奥へ入れや、腰を落ち着けてゆっくり聞かせてもらおうじゃないか。」
そう言いながら、事務所の奥から顔を出したジロチョー親分。
ジロチョー親分の部屋に通されると、オチョー姐さんがお茶を淹れてくれたよ。
「それで、オーマサ、コマーサがどうしたって?」
ジロチョー親分が話を切り出した時。
「これ、オーマサさんとコマーサさんの御遺骨です。
それと、少しですが回収できた遺品がこれです。」
おいらは、テーブルの上に二人の骨壺と二振りの剣を出したの。
もちろん、骨壺は新品で極上の磁器製だし、剣は汚れを落としてきれいに磨いてあるよ。
遺品は、遺体と別にゴミ捨て場に投棄されてたの。
剣だけは特注品だったので、父ちゃんが二人のモノだと特定できたんだ。
「オーマサ、コマーサの遺骨と遺品だと…。」
「お前さん、この剣は二人のモノに間違いないよ。
山の民の作だって、自慢していた業物だもの。
忘れはしないよ。
世の中に二つと無い物だってね。
行商に来た山の民から買ったと言ってたじゃないかい。」
オチョー姐さんは、二人の剣に見覚えがあった様子で、間違いないと証言してくれたよ。
「これは一体どうしたんだい?」
オチョー姐さんの言葉に、ジロチョー親分は信じられないって表情で尋ねて来たの。
なので、おいらは二人が命を賭けて護ろうとしたウエニアール国の王族の生き残りだと明かし。
おいらが、謀反を起したヒーナルを廃して女王になったことを伝えたの。
父ちゃんが貴族になった事や、ジロチョー親分の真似事をしている事も話したよ。
それから、色々と事情を話した後で。
「おいらが女王になってから、二人の遺骨と遺品を探したの。
逆賊の汚名も取り消して名誉を回復したし、王都には二人の慰霊碑も作ったんだ。
ただ、遺骨は故郷のウエニアール国へ帰した方が良いだろうって父ちゃんが言ったから。
今回、休暇で里帰りを兼ねて届けに来たんだ。
さっき、王宮の知人に頼んで、埋葬する場所を手配してもらうようにお願いしてきたよ。
二人のお墓を建てて、その横に慰霊碑を建てようと思っているの。
誰か、腕の良い石工さんは知らないかな。」
二人の遺骨の件を伝えたんだ。
「嬢ちゃん、有り難うよ。
遠く異国の地で、死んだ後まで逆賊との誹りを受けるなんて。
そりゃ、あんまりだと思っていたんだ。
死んじまった者は帰っちゃ来ないけど。
名誉を回復してもらって。
こうして故郷の地に眠れりゃ二人も満足だろうよ。
女王様自ら追悼文を刻んでもらえるとは、二人も果報者だぜ。」
おいらが慰霊碑に刻んでもらう予定の追悼文を見せると。
ジロチョー親分は、それに目を通して涙を流していたよ。
宰相に何度もダメだしを出されて書き直した追悼文だけど、ジロチョー親分も感激してくれた様子で良かった。
「あの洟垂れ小僧のモリィシーが貴族とはおっ魂消たね。
よし、そう言う事なら、このギルドの古株に腕の良い石工がいる。
オーマサ、コマーサ兄貴の慰霊碑を作ると言えば腕に撚りをかけて作ってくれるだろうぜ。」
オニキチーさんはそう言うと、石工さんを呼びに走っていったよ。
桶屋さんとか、石工さんとか、このギルドの冒険者は多芸だね。
その後、オニキチーさんが連れて来た石工さんと打ち合わせをして。
おいらが国に帰る一月後までに完成させるようにお願いしておいたよ。
帰り道にもう一度王都へ寄って、形ばかりだけど追悼慰霊祭をすることにしたんだ。
「まだ御幼少の砌にも関わらず、この一年休む間も無く働き詰めでお疲れさまでした。
陛下が津々浦々を飛び回り、民を慰撫してくださったおかげで国は平穏さを取り戻しました。
逆賊ヒーナルが玉座にあった頃の不穏な雰囲気は微塵も感じられなくなりました。
ここまで来れば、陛下がお休みになられても国に大事はありますまい。
どうぞ、ごゆるりと休暇を楽しまれて、英気を養ってくだされませ。」
宰相が、それまでのおいらの働きを労ってくれ、快く休暇を取らせてくれたよ。
その日、おいらはやっとまとまった休暇をもらうことが出来たんだ。
年に二回くらいは、まとまった休暇を取ってトアール国の辺境の町に里帰り(?)しようと思っていたけど。
国のあちらこちらに前マイナイ伯爵みたいな輩が残っていて、民の不満が溜まっている領地が少なくなかったの。
タロウが、全国にあるひまわり会の支部全てで『銀貨引換券』の取り扱いを計画してて。
そのために、全ての支部を視察して、幹部を信頼できる人に置き換えたいと言ってたの。
おいらも、タロウに便乗して一年かけて国中を巡って、不正を働いている領主の首を挿げ替えて回ったの。
宰相になるべく穏便に済ますように言われていたので、お取り潰しにした家は一つも無かったよ。
マイナイ伯爵の時と同じで、おいらの命に背いた貴族、不正を働いた貴族は当主に隠居してもらったんだ。
そのうえで、まともそうな子女を後釜に据えたの。
これもマイナイ伯爵家と同じで、従来後継ぎと目されていた長男は当主の劣化コピーでダメダメだったよ。
結局一年間で女性領主が十人以上誕生する異常事態になっちゃった。
交替した領主の半数以上が女性領主になっちゃったんだもん。
一年の全国行脚で、おいらが発布したお触れが全国の津々浦々まで浸透したし、タロウも『銀貨引換券』の取り扱いを全国で始めたの。
そんな訳で、やっとまとまった休暇を取れるようになったんだ。
アルトの『積載庫』に乗せてもらって、トアール国の辺境の町に里帰りをするんだ。
「陛下、他国にお邪魔するのですから、くれぐれも問題は起こさないでくださいよ。
それと、無断で行かないで、一応、先方の王家にはきちんと挨拶をしておいてくださいね。」
育ったトアール国の辺境の町で休暇を過ごすと伝えると、宰相からモカさんに挨拶をしておけって言われたよ。
モカさんにきちんと話を通しておけば、昼行燈は形だけの挨拶で良いって…。
そんな訳で、おいらは休暇を取ってトアール国の辺境の町へ行くことになったんだ。
同行するのは、オランとプティー姉、それにいつもの護衛騎士の四人。
それに、父ちゃんとタロウの一家だよ。
タロウの一家はお嫁さんのシフォン姉ちゃんとカヌレ姉ちゃんは勿論のこと。
お針子さんとして連れてきている耳長族のみんなも一緒だよ。
やっぱり、里帰りさせてあげないといけないから。
**********
それから更に三日ほどして。
「これは、これは、マロン嬢、お久しぶりでございます。
御即位の式典に伺った際は、この上ないおもてなしをして頂き有り難うございました。
今回はご休暇で、我が国に息抜きにいらしたのですか。」
モカさんの家を訪ねると、おいらがラフな服装をしていたためか陛下とは呼ばずに以前と同じように接してくれたよ。
その方が、おいらも肩が凝らないで助かるよ。
「うん、即位から一年経ってやっとまとまった休暇が貰えたんだ。
辺境の町へ行ってのんびり温泉に浸かろうと思ってね。
そうそう、公務と言う訳じゃないんだけど。
この王都で少しだけ土地を買いたいのだけど紹介してもらえるかな。」
「土地ですか?
この町に外交官でも駐在させるのでしょうか。
それとも、マロン嬢の別荘でも?」
いや、いや、それじゃ、少しの土地じゃなくなっちゃうじゃん。
「そんな大きな土地じゃなくて。
お墓と慰霊碑を建てたいんだ。
ウエニアール国の王都にも慰霊碑を建てたんだけど。
お墓は里帰りさせてあげたくて。」
そう、おいら、逆賊として葬られたオーマサさんとコマーサさんが埋葬されていたところを探したんだ。
おいらのお爺ちゃんや伯父さんを護って最期まで戦ってくれた恩人だもね。
丁重に供養しないといけないと思って。
逆賊と言うことでかなり無造作に扱われていたけど、二人の亡骸が埋葬されていた場所はすぐに分かったよ。
大罪人として、他の人からは離れた場所に埋められていたからね。
おいらが、事情を説明すると。
「何と、そんな忠義に厚い者が我が国に居たとは存じませんでした。
でしたら、しかるべき場所に土地を用意させますので。
明日にでも、王宮へお越しいただけますか。」
モカさんは、王都の土地を管理している役人に相応しい土地を見繕わせると言ってたよ。
なので、おいらは明日改めて出向くことを告げると、次の目的地に行くことにしたの。
「まいど! ジロチョー親分はいるかな?」
ドッチカイの事務所に入ると、カウンターに向かって父ちゃんお馴染みの声を掛けたの。
「おや、珍しい奴が来たもんだ。
久しいな、モリィシー、おめえ、今何してんだ?
辺境の町で所帯を持ったって言ってたっけ。」
「オニキチー兄貴、ご無沙汰しています。
いえ、今、俺、娘にくっついてウエニアール国に行っていて。
久しぶりに里帰りしたんですよ。
オニキチー兄貴こそ、今は桶屋を営んでるんでしょう。
今日は、何でここに?」
「何言ってんだい。
ジロチョー親分がギルドの看板をまた掲げたからな。
俺達がジロチョー親分のために働かないでどうするんだ。
今じゃ、昔馴染みがみんな顔を出しているんだぜ。
おめーと、オーマサ、コマーサの両兄貴以外はな。」
オニキチーさんは、桶屋の仕事の合間を縫って依頼をこなしているらしいよ。
パートタイム冒険者だなんて言ってた。
他のギルド幹部も似たようなもので、本業の傍らギルドの仕事をしてるんだって。
「それなら、丁度良いから、オニキチー兄貴も一緒に聞いてください。
今日は、オーマサ兄貴とコマーサ兄貴の事についてジロチョー親分にご報告があって来たんですよ。」
すると。
「誰かが、俺を訪ねて来たと言うから出て来てみれば。
モリィシーじゃねえか、久し振りだな。
今、オーマサ、コマーサがどうこうと聞こえたが。
まあ奥へ入れや、腰を落ち着けてゆっくり聞かせてもらおうじゃないか。」
そう言いながら、事務所の奥から顔を出したジロチョー親分。
ジロチョー親分の部屋に通されると、オチョー姐さんがお茶を淹れてくれたよ。
「それで、オーマサ、コマーサがどうしたって?」
ジロチョー親分が話を切り出した時。
「これ、オーマサさんとコマーサさんの御遺骨です。
それと、少しですが回収できた遺品がこれです。」
おいらは、テーブルの上に二人の骨壺と二振りの剣を出したの。
もちろん、骨壺は新品で極上の磁器製だし、剣は汚れを落としてきれいに磨いてあるよ。
遺品は、遺体と別にゴミ捨て場に投棄されてたの。
剣だけは特注品だったので、父ちゃんが二人のモノだと特定できたんだ。
「オーマサ、コマーサの遺骨と遺品だと…。」
「お前さん、この剣は二人のモノに間違いないよ。
山の民の作だって、自慢していた業物だもの。
忘れはしないよ。
世の中に二つと無い物だってね。
行商に来た山の民から買ったと言ってたじゃないかい。」
オチョー姐さんは、二人の剣に見覚えがあった様子で、間違いないと証言してくれたよ。
「これは一体どうしたんだい?」
オチョー姐さんの言葉に、ジロチョー親分は信じられないって表情で尋ねて来たの。
なので、おいらは二人が命を賭けて護ろうとしたウエニアール国の王族の生き残りだと明かし。
おいらが、謀反を起したヒーナルを廃して女王になったことを伝えたの。
父ちゃんが貴族になった事や、ジロチョー親分の真似事をしている事も話したよ。
それから、色々と事情を話した後で。
「おいらが女王になってから、二人の遺骨と遺品を探したの。
逆賊の汚名も取り消して名誉を回復したし、王都には二人の慰霊碑も作ったんだ。
ただ、遺骨は故郷のウエニアール国へ帰した方が良いだろうって父ちゃんが言ったから。
今回、休暇で里帰りを兼ねて届けに来たんだ。
さっき、王宮の知人に頼んで、埋葬する場所を手配してもらうようにお願いしてきたよ。
二人のお墓を建てて、その横に慰霊碑を建てようと思っているの。
誰か、腕の良い石工さんは知らないかな。」
二人の遺骨の件を伝えたんだ。
「嬢ちゃん、有り難うよ。
遠く異国の地で、死んだ後まで逆賊との誹りを受けるなんて。
そりゃ、あんまりだと思っていたんだ。
死んじまった者は帰っちゃ来ないけど。
名誉を回復してもらって。
こうして故郷の地に眠れりゃ二人も満足だろうよ。
女王様自ら追悼文を刻んでもらえるとは、二人も果報者だぜ。」
おいらが慰霊碑に刻んでもらう予定の追悼文を見せると。
ジロチョー親分は、それに目を通して涙を流していたよ。
宰相に何度もダメだしを出されて書き直した追悼文だけど、ジロチョー親分も感激してくれた様子で良かった。
「あの洟垂れ小僧のモリィシーが貴族とはおっ魂消たね。
よし、そう言う事なら、このギルドの古株に腕の良い石工がいる。
オーマサ、コマーサ兄貴の慰霊碑を作ると言えば腕に撚りをかけて作ってくれるだろうぜ。」
オニキチーさんはそう言うと、石工さんを呼びに走っていったよ。
桶屋さんとか、石工さんとか、このギルドの冒険者は多芸だね。
その後、オニキチーさんが連れて来た石工さんと打ち合わせをして。
おいらが国に帰る一月後までに完成させるようにお願いしておいたよ。
帰り道にもう一度王都へ寄って、形ばかりだけど追悼慰霊祭をすることにしたんだ。
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