ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十五章 ウサギに乗った女王様

第444話 次々と関係が明るみになるよ…

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 冒険者研修三日で音を上げた根性無し五人を、辺境の街道整備に作業員として送り込むと。
 おいらは次へ行くことにしたの。

 次に向かうのは、冒険者に開放しているトレントの森だよ。
 そこも未回収のトレント本体が凄いことになっているだろうからね。
 その回収を兼ねて、ヴァイオレットお姉さんにギルドの買取所を見てもらおうと思って。

 少し距離があるので、アルトの『積載庫』に乗せてもらったよ。

「王都のすぐ近くにこんな大きな森があるとは知りませんでした。
 王都に住んでいた頃は、町の外に出たことが殆どありませんでしたから。」

 トレントの森に入って直ぐの広場、ひまわり会の買取所の前。
 そこで『積載庫』から降ろされたヴァイオレットお姉さんが、周りを見回してそんなことを呟いていた。

「ああ、これ? 知らないのは無理も無いよ。
 だって、ここ、三ヵ月前までは何にも無い荒野だったもん。
 アルトに頼んで、十日程で造ってもらったの。」

「へえっ?」

「ふふん、凄いでしょう。
 私に掛かれば、このくらい簡単よ。」

 アルトが十日ほどで造った森だと答えると、「何を言っているんだこいつ」って表情になったヴァイオレットお姉さん。
 だけど、アルトが自慢気にそれを肯定する言葉を口に出すと。

「は、はぁ…。
 確かに、あの辺境からたった一日で王都までお連れくださるのですし…。
 そう言われたら、そうですかとしか言いようが無いです。
 想像を絶する力をお持ちなのですね、アルト様。」

 ヴァイオレットお姉さんは、無理やり自分を納得させるような言葉を漏らしたよ。

「ここは、冒険者が十分に稼げるようにと。
 アルトに頼んで造ってもらったトレントの森なんだ。
 管理局に登録した冒険者なら、誰でもタダでトレント狩りが出来るの。
 実際の運営は、ひまわり会に委託しているんだけどね。」

「ああ、なるほど。
 冒険者研修を受けたならず者達が改心して。
 堅気な冒険者稼業をしようとしても…。
 肝心な稼げる魔物が近くに居なければ、結局燻ぶっちゃいますものね。
 それで、人工の狩場をわざわざ造ったのですね。」

 目の前にあるトレントの森の目的を説明すると、ヴァイオレットお姉さんはその趣旨に納得したみたい。

「あっ、陛下、それに会長も。
 良くぞ、お帰り頂きました。待っていたんですよ。」

 おいら達が、ひまわり会の買取所へ顔を出すと。
 カウンターにいた買取係のお姉さんはパッと表情を明るくして声を掛けてきたの。
 これは、何か問題が起こっているのかな?

「うん? どうかしたの?
 倒したトレントが邪魔だって言うのなら、今から回収していくよ。」

 おいらが問い掛けると。

「いえ、トレント本体ももの凄い数になってて大変なんですけど。
 トレントの木炭の在庫が底を突きそうなんです。
 販売用の在庫だけじゃなくて、風呂屋の燃料用の在庫もです。
 もう、数日分しか無いそうで。
 陛下達がお戻りにならなければ、どうしたものかと。
 このところ、皆が頭を悩ましていました。」

「おお、それは悪かったな。
 出掛ける前に、十分な在庫を積んでおいたつもりだったが。
 それでも、まだ足りなかったか。」

「はい、会長はその辺を配慮したのだとは思いますが。
 交易船からの発注が激増していて…。」

 どうやら、トレントの木炭の評判は上々の様子で、それを求めて寄港する交易船が更に増えているみたい。
 交易船が増えると言う事は、長い船旅をしてきた男達も増えると言ういうことで。
 ひまわり会が経営する風呂屋も大賑わいらしの。

「おっ、ひまわり会が経営する風呂屋は大繁盛なのか。
 それなら、たくさん稼げそうだね。
 馴れている仕事の方がやり易いし、私も風呂屋で使ってもおらおうかね。」

 マルグリットさん、ひまわり会の風呂屋が大賑わいと聞いて、そんな言葉を漏らしてたよ。
 泡姫さんは何時までも出来るものじゃないから、堅気の仕事に就くって言った気がするけど…。

「分かったよ、じゃあ、マロンに頼んで大至急木炭を卸してもらうよ。
 ついでに、風呂屋で使う分の木炭の原料を狩らないといけないな。」

 タロウが倒したトレントについては、風呂屋の燃料用に無償で木炭に加工して渡しているんだ。
 ひまわり会に所属している冒険者が倒したトレントの本体は、おいらが無償で貰っているから。
 その見返りみたいなものだね。

「それじゃ、タロウがトレントを狩っている間に。
 おいらは、その辺に放置されている本体を回収しておくね。」

 買取係のお姉さんにそう伝えて、おいら達は揃って狩場へ向かったんだ。

      **********

 トレントの狩場へ着くと、何組もの冒険者が狩りの最中だったよ。
 やはり、森の手前の方には倒したトレントの本体が散乱していて、足の踏み場も無かった。
 面白いもので、繁殖力旺盛なトレントも土地全体が倒木で覆われちゃうとそこには生えないみたい。
 狩場が森の奥の方に向かって大分後退していたよ。

 おいらが、手前から手当たり次第にトレントの倒木を回収し始めると。
 タロウは、風呂屋の木炭用のトレントを狩るべく、荷車を引いてトレントが生えている方に向かったよ。

 まあ、『積載庫』に回収するのに時間は掛からないからね。
 回収するのは一瞬、それよりも放置されたトレントを探して歩き回る方が、時間と体力を要したよ。
 トレントの森をあちこち見て回り、放置されたトレント本体を粗方回収し終えて。
 おいらは、タロウと合流したの。

「凄い、一人であんなに易々とトレントを倒している…。
 タロウさん、やっぱり、格好良い…。」

 一人で黙々とトレントを狩っているタロウに、ヴァイオレットお姉さんは見惚れていたよ。
 まあ、それはヴァイオレットお姉さんに限った事じゃなくて。

「おお、会長さん、強ぇな。
 あんな、ひ弱な見た目なのに。
 人は見かけによらないってのは、ホント、このことだね。
 あれじゃ、ヴァイオレット嬢ちゃんがホの字になるのも頷けるよ。
 私もジュンときちゃいそうだ。」

 マルグリットさんもそんな事を言ってたし。でも、「キュン」と来るんじゃないんだ。

 それに、感心しているのは二人だけじゃなかったの。

「いつ見ても、会長は凄げえな。
 俺達は、五人掛かりでやっと倒してるってのに。
 一人で、いったい何体のトレントを狩る気だよ。
 足元に転がっているトレント二十本を超えているんじゃないか。」

「ホント、魂消たもんだ。
 俺達ゃ、五人掛かりで一日五本狩るのがやっとだが。
 それでも、けっこう良い稼ぎになってんだぜ。
 一日で十本も二十本も一人で狩って、会長は一体どんだけ稼いでいるんだ。
 俺達も、何時かああなってみたいもんだな。」

 周りで狩りをしていた冒険者達からそんな声が上がっていたよ。
 自分達が狩りを終えた後も、沢山の冒険者がタロウの狩りをずっと見てるの。

 そして、タロウが狩りを終えると、見物人も掃けたよ。
 人目が無くなったのを見計らって、タロウが倒したトレントを回収したら。
 この日、タロウが倒したトレントは二十体を超えてた。

「一月もトレント狩りをサボっちまったからな。
 風呂屋の燃料に使う木炭を多めに確保しておかないとな。」

 そんな訳で、何時もは十体の所を、倍以上狩ったみたい。
 今日はトレント二十本分の木炭を風呂屋に置いて来ないといけないね。

      **********

 タロウが、トレント二十分の収穫物を荷車に積み上げて、買取所に戻ってくると。
 荷車いっぱいに積み上げられた収穫物の量に、周囲の人が沸いたよ。

「会長、この時間にこんなに持って来られても困ります。
 これから、数えていたら私達残業になっちゃいますよ…。
 今日は、みんな揃って、王都で夕食会をする予定なんです。
 精算は明日でも良いですか?」

 他の冒険者の買い取りは終了したみたいで。
 買取係のお姉さんは、カウンターの後片付けをしていたところだったの。

「ああ、遅い時間まで狩りをしていて悪かったよ。
 俺は、別に急いでいないから明日でも構わないぜ。
 急ぎで欲しいのは、マロンに頼んでいる木炭だけだからな。」

 タロウの返事を聞くと、買取係のお姉さんは満面の笑みを浮かべて…。

「会長って、話が分かるから大好き!
 今晩は、美味しいごはんを食べて、お酒も少しだけの飲むし…。
 きっとほろ酔い気分になるから、タロウ君の寝室に行くね。
 朝まで、うんとサービスしちゃうから楽しみにしてて。
 他の子も誘っちゃおうかな。」

 うん? さっき、管理局のお姉さんもタロウの寝室に行くって言ってなかったっけ?

「おい、こら、人前でそんなことを言うんじゃない。
 今日はギルドの仕事を見学に来ている部外者を連れているんだぞ。
 俺の品位を疑われちまうじゃないか。」

「あっ、お客様だったのですか。
 失礼しました。
 私、てっきり、新しい女性を囲うのかと思ってました。」

 まあ、ギルドに就職するなら、タロウが屋敷の部屋を提供するって言ってるから。
 囲うって言葉は、あながち間違いではないけど。
 それでも、最後の言葉は余計だって…。そんなこと言ったら。

「タロウさん、不潔です。
 一体、何人の女性と関係を持っているのですか…。
 ショックです、あんなにカッコイイところを見せてくれたのに。」

 ほら、ヴァイオレットお姉さんが、生ゴミを見るような目でタロウのことを見ているし…。
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