ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十五章 ウサギに乗った女王様

第403話 襲来したのは、お久しぶりの…

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 館の外から悲鳴が聞こえると、アルトはすぐさま領主の部屋から飛び出したんだ。
 すると、町の上空には、羽の生えた巨大なトカゲが飛来していたよ。

「おお、懐かしいな。
 ありゃ、俺がこの世界に飛ばされた初日に遭遇したワイバーンじゃねえか。
 やっぱ、でっかいな。
 あんなの、俺じゃ、手も足も出なねえや。」

 タロウがそんな呑気な事を言っている間にも、ワイバーンは町の城壁を越えて侵入し。
 何かを目掛けて、今まさに急降下を始めたんだ。
 何かって、やっぱり、人間だよね。

 すると。

「トカゲなら、トカゲらしく、山でネズミでも獲ってなさい!」

 アルトのそんな言葉と共に、青白い光の玉がワイバーン目掛けて飛んで行ったよ。
 光の玉は寸分違わずワイバーンの頭を直撃し・・・。


「ギャーーーーー!」

 と、かん高い悲鳴を上げて、ワイバーンは急上昇してきたよ。
 上空に舞い上がったワイバーンは周囲を警戒するように、ゆっくりと首を左右に振ってた。

 そんなワイバーンに、アルトは。

「何処に目を付けてるの!
 こっちよ!こっち!」

 まるで、自分の方へ誘き出すように大きな声を掛けると。
 それと共に、一発、二発と光の玉を放ったの。

 やはり、外すこと無く光の玉はワイバーンを捕らえたよ。
 その度に痛そうに悲鳴を上げたワイバーンは、やっとその目にアルトを捉えたみたい。
 こちらに向かって、凄い勢いで飛んできたよ。

「アルト姐さん、何で手を抜いてるんだろう?
 アルト姐さんの電撃なら、一撃で仕留められるんじゃないか?」

 タロウは、ワイバーンに当たった光の玉を見てそんな疑問を口にしてたよ。
 実は、おいらも不思議に思ったの。
 アルトったら、まるでワイバーンを挑発するかのように、明らかに手加減してるんだもの。

「町の上空でワイバーンを仕留めると。
 墜落したワイバーンの下敷きになる民が出るやも知れぬのじゃ。
 アルト殿は、それを恐れているのでは。
 何処か人のいない所へ誘導してから仕留めるつもりだと思うのじゃ。」  
 
 オランは、多くの人がいる場所の上空でワイバーンを撃墜すると、巻き添えとなる人が出るのではないかと言い。
 それを避けるために、アルトが敢えて手を抜いて攻撃しているんじゃないかと言ってたよ。

 確かに、広場の上空とかで撃墜しようものなら、下敷きになる人は沢山出て来るだろうね。
 あの巨体じゃ…。

 でもね、オイラ思うんだ、。
 確かに一般人を巻き込みたくないと言う気配りはあるだろうけど。
 アルトの本当の狙いはそこじゃないんじゃないかと。
 イタズラ好きのアルトだもの、きっと…。

 怒りを露わにアルトに襲い掛かるワイバーン。
 その咢がアルトを捉えようとした瞬間、アルトは素早い動きでその攻撃を躱すと。
 一目散に飛び始めたの、多分、目的地は…。

     **********
 
 今まで経験したことも無い速さで飛ぶアルト。
 怒りに燃えるワイバーンはそれに必死に食らい付いてきたよ。

 街の風景が凄い速さで後ろに通り過ぎていき、あっという間にそこに到達したの。

「おい、あれは伝承に聞くワイバーンではないか。
 何故、こんな所に…。
 じゃない、あれ、こっちに向かってくるではないか!
 爺、あれを何とかるするのだ!」

「殿、こういう時こそ騎士の出番ですぞ。
 おい、お前、大至急、騎士をこのバルコニーに集めよ。
 ここで、ワイバーンを迎撃するのだ。
 今こそ、殿に対する忠誠心を発揮する時だぞ。」

 領主の部屋の外にある広いバルコニー。
 そこで、マイナイ伯爵はお爺ちゃんと一緒に町の騒ぎを眺めていたよ。
 ワイバーンが向かってくることに気付いた伯爵は、お爺ちゃんに無茶振りしてた。
 おそらく剣も握ったことも無いお爺ちゃんに何とかしろなんて言ってもね。

 お爺ちゃんは、さっき領主のもとに報告に来た騎士に向かって、騎士を召集するように命じてたよ。
 そして、伯爵とお爺ちゃんは、急いで部屋の中に退避したの。

 尚もアルトは伯爵の館に向かって一直線に飛び、伯爵たちが退避した部屋の窓を背にして停止したんだ。
 そこで、ワイバーンが襲ってくるのを待ち構え・・・。
 一飲みにしようとするワイバーンの咢がアルトを捉える瞬間、アルトはスッと脇へ退いたの。

 そして…。

 グァッシャーン!

 ワイバーンは窓を突き破って、伯爵の退避した部屋に飛び込んだよ。

「うわっ!
 何で、よりによって儂のいる部屋に飛び込んでくるのだ。
 おい、爺、何とかせぇ!」

「殿、落ち着いてくだされ。
 見てください。
 さしものワイバーンも、窓は破れてもこの館の頑丈な壁は破れない様子。
 巨大な体がつかえて、部屋には入ってこれません。
 今が好機ですぞ。
 あやつが窓枠にハマって身動きが取れない間に騎士達に討伐させましょう。」

 お爺ちゃんの言葉通り、巨体のワイバーンは窓から部屋には入れなかったんだ。
 でも、ワイバーンは部屋の中に侵入しようと必死にもがいてるの。
 ワイバーンの目には、伯爵とお爺ちゃんという『餌』しか映っていないみたい。
 ここまで追って来たアルトのことは、『餌』を前にしてすっかり忘れちゃったみたい。

       **********

「さて、ここの腑抜けた騎士達がどんな戦いをするか。
 お手並み拝見と行きましょうか。」

 そんな言葉を口にしながら、アルトがおいら達のいる部屋に入ってきたの。

「アルト、さっきの領主の話が癇に障ったんだね。
 伯爵に現実を思い知らせてあげるつもりなんでしょう。」

「あら、分った?
 魔物が襲って来る訳ないとか、堅固な塀があるから心配ないとか。
 あいつ、魔物の脅威を舐め切っていたからね。
 騎士はロクに訓練もしてないようだし、領民を護るつもりも無いようだしね。
 あんな領主や騎士なんて、百害あって一利なしよ。
 すこし、痛い目に遭った方が良いと思ってね。
 野生のワイバーンをお見舞いしてあげたわ。」

 イタズラな笑みを浮かべながら、アルトは予想通りのセリフを口にしてたよ。

 そうこうするうちに。

「お館様、ご無事ですか!」

 三十人ほどの騎士が伯爵の退避している部屋にやって来たの。
 一応それらしい格好をしているけど、実力はどうだろうね。

「あの通り、ワイバーンは猪突猛進でこちらに入ることばかり考えているとみえる。
 そのせいで、堅固な窓枠にハマって身動き取れない状況になっとる。
 この機を逃さず、一気に打ち倒すのだ。」

 狼狽している伯爵に代わり、お爺ちゃんが冷静に騎士達に命じてたよ。

「おお、執事殿の言う通り、あれなら我等でも何とかなりそうですな。
 ワイバーンと聞き、正直、生きた心地がしなかったのですが。
 見事、討ち果たして見せましょうぞ。」

 隊長と思しき騎士がお爺ちゃんの指示に呼応すると、部下達に攻撃の指示を出してたよ。
 騎士は、バルコニーに出て胴体に攻撃を加える者と部屋の中で頭部や頸部に攻撃をする者に分かれたよ。

「前ばかり見て、急所の腹が無防備とは所詮デカいだけのトカゲだな。
 頭が回らないみたいで助かるわ。」

 そんなことを言いながら槍を腹部に突き立てる騎士や剣で突く騎士。
 その度に、ワイバーンは痛そうにもがいてるけど、致命傷にはなってない様子だよ。

 そのうち巨大な翼を激しくばたつかせて、振り払われる騎士が出て来た。
 騎士は腹部に斬り付けるのに夢中で、翼の動きに用心してなかったみたい。

 更に…。

「ぎゃっ!」

「おい、どうした? うわっ!」

 ワイバーンが今まで無かった攻撃を繰り出したの。
 槍の様に鋭く尖った尻尾の先で、騎士を次々と刺していったんだ。

 刺された騎士は顔面蒼白になって倒れちゃったよ。

「バカね、ワイバーンが尻尾に猛毒を持ってるなんて常識でしょう。
 何で、最初に尻尾を斬り落とさないかな。
 あいつらはもうダメね。
 ワイバーンの猛毒じゃ、これから『泉の水』を飲ませても間に合わないわ。」

 万病に効くという『妖精の泉』の水でも直ぐに飲ませないと間に合わないみたい。
 ワイバーンの毒は、それだけ毒性が強く、即効性なんだって。

 そんな話をしている間に、胴体攻撃組は半数以下に減っちゃったよ。

 そして、頭と首を攻撃している組だけど…。

「畜生、こいつデカいくせに、動きが機敏だぜ。
 一太刀浴びせるのが、中々、難しいぞ。
 クリティカルな攻撃ができねえ。」

 ワイバーンは長い首を自在に動かして、剣による攻撃を上手く躱していたんだ。
 そうして、騎士とワイバーンの戦いが膠着状態になると。
 ワイバーンは首を起こして、一瞬静止したの。

「あっ、ヤバい!」

 珍しくアルトが狼狽した声を上げたかと思うと…。

 ボワッ!

「「「「うっ、熱っちぃ!」」」」

 ワイバーンが灼熱の炎を吐いて、たちどころに数名の騎士が火だるまになったよ。

「あいつ、火吹きだったとは…。
 拙いわ、マロン出番よ。
 うかうかしてたら、部屋中、焼き尽くされちゃうわ。
 領主には責任取らせないといけないから。
 ここで死なれちゃ困るでしょう。」

 ごく少数のワイバーンは火を噴くと聞いたことがあるけど。
 ワイバーンは『厄災』と言われてるけど、その中でも火吹きは『厄災中の厄災』と呼ばれてるって父ちゃんが言ってたよ。
 古来から、火吹きのワイバーンに焼き尽くされた町や村があるんだって。

 それじゃ、ちょこっとってくるとしましょうか。
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