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アイイロモンペ

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第十五章 ウサギに乗った女王様

第399話 あんまり弱い者イジメはしない方が良いよ…

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 おいらが女王だと、タロウが暴露すると。

「「「「「へっ? 女王陛下?」」」」」

 広場に集まってたご町内のみなさん方から、俄かには信じられないと言う声が上がったの。

「なあ、お嬢ちゃん。
 あんたが女王様だってのは本当かい?
 まあ、高価な砂糖を気前よくばら撒くんだから。
 金持ちの娘だとは思ってたけど…。
 女王様にしてはみすぼらしい格好してるし。
 大店の娘だって、お嬢ちゃんより上等な服を着てるよ。」

 人々の疑問を代弁するように、すぐ隣から問い掛けられたよ。
 尋ねてきたのは、おいらにべったりと引っ付いている女の子のお母ちゃん。

「実はそうなんだ、おいらが今の国王だよ。
 みすぼらしい格好って言うけど。
 如何にも王侯貴族って感じの煌びやかな服装してたら。
 みんな、こうして気軽に声を掛けてはくれないでしょう。
 それじゃ、市井で暮らしている人の本音が聞けないじゃない。
 おいら、王都でもこんな服装で町に住む人の生の声を聞いてるんだよ。」

 本音を言うと、こっちの方が楽で良いからなんだけどね。
 宮廷でさせられる服装は肩が凝るから好きになれないよ。

「たしかに、その方が親しみが持てるね。
 それに引き換えここの領主は、お近づきにもなりたかないね。
 成金趣味丸出しの格好して、威張り散らしてばかりだから。
 それで、女王陛下は何でこんな辺境まで足を運んできたんだい?
 まさか、物見遊山って訳じゃないんだろう。」
 
「少し前に、王都の市場でこの町から出て来た人の話しを聞いてね。
 パンの実が一つ銅貨四十枚もするって。
 それで、確かめに来たんだ。
 おいらが出した御触れに背いているんだからね。
 犯人を探し出して、お灸を据えないといけないから。」

 おいらが、お母ちゃんの問い掛けに答えると。

「そいつは助かる。
 それで、物の値段が下がるのなら大助かりだ。
 随分前に色々な物が急に値上がりしちまって、正直暮らし向きが良くないんだ。
 是非とも、俺達から搾り取った税をちょろまかしている不逞の輩に鉄槌を下して欲しいぜ。」

 街の人の中からおいらに期待する声が聞こえ。

「うん、少し混乱があると思うんで、一日二日じゃ無理だけど。
 四、五日中には、昔の値段に戻すようにさせてみせるよ。
 それと、この中に商人がいるなら、今日からエチゴヤを通さずに仕入れをすれば良いよ。
 『パンの実』と『塩』以外は、何処から仕入れて幾らで売ろうと自由だからね。」

 それにおいらが答えると共に、商人に再度念押しすると。

「おっ、こうしちゃいられねえぜ。
 少しでも早くエチゴヤを抜きにして、安く仕入れをしないとな。
 嬢ちゃん、知らせてくれて有難うな。
 さっそく、仕入れに行ってくるわ。」

 さっそく、駆け出して行ったおじさんがいたよ。
 それに、続くように数人広場から出て行った。 
 
         **********

 広場でやらないといけないことは済んだので、おいらは次へ行くことにしたんだ。

 ところが…。

「こら! こんな所で何を群がっておる! 散れ! 散るのだ!」

 告知板の前に群がった街を人々を解散させるようと怒声を上げる一団が現れたの。
 非常識にも馬に騎乗して、人混みの中をかき分けて来たんだ。
 どうやら、マイナイ伯爵家に仕える騎士達のようだね。

 騎乗した連中は告知板の前まで来ると、貼り出された御触れ書きを目にして。

「誰だ! こんなものを勝手に貼り出したのは!
 ここは、ご領主様の告知板だぞ!
 ご領主様の指示した物以外を勝手に貼り出すことはまかりならん。」

 そんな怒声を上げながら、おいらが貼り出した御触れ書きに手を掛けたんだ。
 どうやら、御触れ書きを破り捨てようという魂胆みたい。

 すると。

「女王陛下がお貼りになられた物に汚い手を触れるな!」

 そんな声と共に、ジェレ姉ちゃんが鞘に納めたままの剣で御触れ書きに触れようとした手を払ったの。

「痛てぇ! このアマ、何しやがる!
 ご領主様に仕える俺に狼藉を働いたのだ。
 どんな目に遭うか、覚悟はあるんだろうな。」

 騎士はジェレ姉ちゃんを恫喝すると、馬上で剣を抜いたんだ。
 そして、る気満々で、躊躇なくその剣を振り下ろしたの。

「領主がならず者みたいな奴じゃ、それに仕える者もならず者ばかりか。
 婦女子に向かって問答無用で剣を振り下ろすとは、呆れた奴だ。」

 そんな愚痴を零しながら、ジェレ姉ちゃんは振り下ろされた剣を軽く弾いたの。
 そしてそのまま、騎士の膝を鞘に納めたままの剣で打ち抜いたんだ。
 この騎士、剣を振り下ろすために鐙に体重を乗せていたもんだから。
 ジェレ姉ちゃんに膝を粉砕された瞬間、体を支えられなくなって馬から転げ落ちたよ。

「うきゅう…。」

 前のめりに頭から落馬した騎士はマヌケな声を上げて気を失っちゃった。

「あっ、隊長!
 このクソアマ! 騎士に対する無礼な振る舞い赦しておけぬぞ。
 全員下馬して、あの者共を捕らえるぞ。」

 手下の騎士の一人が呼び掛けると、全員が下馬しておいら達を捕らえようと迫って来たの。
 その数は十人。

「陛下、あれ、っちゃって良いんですよね。」

 ジェレ姉ちゃんは、期待に満ちた表情で尋ねてきたよ。

「期待してるところ悪いけど。
 相手はおいら達を殺すつもりは無いみたいだから。
 ジェレ姉ちゃんも、殺しは無しの方向でお願いできないかな。」

「えー、そんな殺生な…。
 まあ、陛下の御命令とあらば、従いますが。」

 おいらがダメ出しすると、渋々といった表情でジェレ姉ちゃんは答え。
 
「お前ら、慈悲深い陛下のおかげで命拾いしたな。
 陛下が殺すなと仰せだから、命ばかりは勘弁してやる。
 陛下に感謝するんだな。」

 そんなことを口にしながら、ジェレ姉ちゃんは騎士達の前に立ち塞がったの。

「このクソアマ、何処まで、俺達を虚仮にしやがる。
 テメエにはキツイお仕置きが必要なようだな。 
 とっ捕まえたら、ひん剥いて三日三晩眠らせねえから覚悟しとけよ。」
  
 そんな下卑た言葉を返して、騎士達は一斉にジェレ姉ちゃんに襲い掛かったんだ。
 因みに、ルッコラ姉ちゃん達三人はおいらとオランの護衛に就いて周囲を警戒してるよ。

 ジェレ姉ちゃんの楽しみを邪魔すると後で不満を零されるって、みんな分かってるから。
 たかが十人くらいを相手にジェレ姉ちゃんが遅れを取るはずが無いもんね。

 実際、騎士達はあっという間にジェレ姉ちゃんに打ちのめされたよ。
 全員無様な格好を晒して、地べたに転がってたの。

 それから、近衛の皆が手分けをして転がった騎士達に縄を打ってた。

      **********

 返り討ちにした騎士達全員を縛り終わった後のこと。

「ねえ、オッチャン達。
 広場に街の人が集まってると、何時もこうして解散させてるの?」

 おいらは尋ねてみたんだ。
 広場に人が集まることくらいで、一々目くじらを立てているのかと思って。

「愚民共が集まるとロクな事をしねえからな。
 領主様に対する不平不満ばかりを言いおって。
 時折、扇動する愚か者が出て来て、騒動を起こしやがる。
 だから、目に余る数の愚民共がたむろっていると解散させるのだ。
 今日はエチゴヤのモンからタレコミもあったしな。
 告知板にけしからん貼り紙をしている連中がいると。」

 意識を取り戻した騎士の話では、この町でも街の人々による反乱もどきが頻発してるらしいの。
 まあ、ヒーナルが課した税に便乗して、領主も追加で税を課していたみたいだから。
 街の人の不満が溜まるのも無理もない事だとは思うよ。

 王都ですら一つ銅貨三十枚のパンの実が、この町では銅貨四十枚もするってことだから。
 おそらく、その差十枚はマイナイ伯爵が独自の税として着服してると思うんだよね。
 結託してるエチゴヤも少しおこぼれに与っているかもだけど。

 でもそうか。
 これだけ人が集まってるんだから、エチゴヤの者がいても不思議じゃないか。
 きっと、おいらが女王だと、タロウがぶっちゃける前に領主にチクりに走ったんだろうね。
 領主とエチゴヤにとって不都合な内容だから、相当焦ったんだと思うよ。

 すると、広場に集まった人々の中から。

「ざまぁみろってんだ。
 いつもいつもデカい顔して、俺達が集まっていると剣で脅して解散させやがる。
 街のモンを弾圧するのもいい加減にしやがれ。」

 縄で拘束されて地面に転がる騎士達に、吐き捨てるような罵声が浴びせられてたよ。

 それを横目で見ながら。

「マロン、この馬、私が貰っても良いわよね。
 最近、辺境の町のギルドが大繁盛みたいでね。
 ダイヤ搬送の荷馬車や駅馬車で馬が幾らあっても足りないみたいなの。
 マロン達をここまで乗せて来たお駄賃にもらっとくわね。」

 嬉々として、騎士が乗って来た十頭の馬を『積載庫』にしまってるアルト。

 うん、それは構わないから、悪いけど地面に転がっている騎士達もしまっといてちょうだい。
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