ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十五章 ウサギに乗った女王様

第396話 結局、力技で従えることになったよ…

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 手始めにと『ひまわり会』の支部を訪ねたら、何と、まだ『タクトー会』の看板が掛かってた。
 しかも、領主のマイナイ伯爵とエチゴヤの三者でつるんで悪事を働いてたよ。

 タロウは、本部の指示を守ってないと、支部長のゴマスリーを糾弾したんだけど。
 ゴマスリーは居直っちゃって、あろうことか支部を独立させるなんて言い出したよ。
 マイナイ伯爵の庇護の下、この支部で新生『タクトー会』を立ち上げるなんて言ってたよ。

 まったく、寝言は寝て言って欲しいよね…。

「ああ、そういう訳にはいかないんだ。
 ここウノは、東部地域の要衝らしいからな。
 これからのギルドの事業展開に、この支部は欠かすことが出来ないのさ。
 勝手に独立するなんて認める訳にはいかねえよ。
 第一、この建物も、中にある金も『ひまわり会』のモノだろう。
 それをテメエのモノにするなんて言い分が通る訳ないと分かんねえのか?」

 そして、再度、タロウはゴマスリーをクビにすると宣告し。
 その上で、何処か他へ行って新しいギルドを旗揚げするのなら勝手にしろと言い渡したの。

 そんなタロウに。

「若造がでけえ口を叩きやがって。
 オメエが役人にどんなゴマ擦って、その地位に収まったか知らねえが。
 俺は、長年掛けて領主にコネを築き、出入りの冒険者達を手懐けてきたんだ。
 テメエみてえなボッと出のガキが、会長面してこの支部を仕切ろうったって誰も言うこと聞かねえよ。
 怪我したくなければ、大人しく帰るんだな。」

 ゴマスリーはタロウを若僧と侮ってそんな啖呵を切ったの。
 『役人にどんなゴマ擦って』って…。
 自分がゴマ擦ってのし上がって来たから、他人もそうだと思ってるのかな。
 
 タロウが見た目に反して、滅茶苦茶強いとは思いもしないんだろうね。

「ふーん、素直に出て行けば見逃してやると言ってるのに…。
 物わかりの悪いおっさんだな。
 いいぜ、それなら、おっさんの手下の忠誠心を見せてもらおうかな。
 不良冒険者を叩き出す良い機会だ、ここに呼んで見せるが良いぜ。」

 タロウったら、ゴマスリーを排除するついでに、不良冒険者も一掃するつもりだね。

「ほお、ガキが吠えおって。
 そんな余裕かまして、後で吠え面かくんじゃねえぞ。」

 ゴマスリーは席を立つと部屋の扉の方へ向かったの。
 思わずおいらは、扉を塞ぐようにゴマスリーの前に立ちはだかったよ。

「なんだ、このちんまいメスガキは?
 何で、そんなところに突っ立ってる?」

「いや、オッチャンが援軍を呼ぶのはいっこうにかまわないんだけど。
 歯向かう振りをして、逃走するかも知れないからね。
 逃げられたら、探すのが面倒なんで道を塞がせてもらったよ。」

 今までも居たものね、啖呵を切った後に逃げ出した奴。…前皇太子のセーヒとか。

「生意気言ってんじゃねえ、このクソガキ!
 オメエもキツイお仕置きが必要みてえだな。
 よく見りゃ、まずまずのツラしているし。
 風呂屋でガキが好きな変態共の相手でもさせてやろうか。」

 そんな風に、おいらを恫喝したゴマスリーだけど。
 おいらが怯む様子が無いとみると、階下に向かって叫んだの。
 「曲者が潜入した、野郎ども、出会え!」ってね。

 余裕を見せたつもりか、手下を呼んだゴマスリーは席に戻ってどっしりと腰を下ろしたよ。

      **********

「お頭、何がありやした? 曲者ってのは?」

 しばらく待っていると、ガラの悪い連中が大挙して現れたよ。

「オメエら、一体何処に目を付けていたんだ。
 こんな連中が、俺の部屋まで入り込んで来たぞ。
 ガキ共が生意気に『タクトー会』にカチ込んで来やがった。」

 ゴマスリーが、冒険者連中を叱り付けると。
 冒険者共は、支部の奥深くまで入り込んだおいら達を見て驚いてたよ。
 
 そして。

「何時の間に、入り込みやがった。
 俺、朝から一階のロビーにいたけど、一度も扉は開きませんでしたぜ。
 それで、お頭、こいつらを痛めつけて叩き出せば良いんですかい。」

 冒険者の一人がゴマスリーに尋ねたの。

「男は八つ裂きにして、女はテメエらの好きにして良いぞ。
 ああ、一番ちんまいメスガキだけはケガをさせずに捕えとけ。
 風呂屋でガキ好きの変態共の相手をさせるからな。」

「おっ、お頭、気前が良いっすね。
 若くてベッピン揃いじゃねえですか。
 ゴチになりますぜ。
 カモがネギを背負ってやってくるたぁ、今日はついてるぜ。」

 おいら達を眺めてそんな声が上がってた。
 因みに、おいら、タロウ、オランの他でここに居るのは。
 おいらの護衛について来た、ルッコラ姉ちゃん、ジェレ姉ちゃん、それにタルトとトルテ。
 そして、こんなこともあろうかとタロウが連れて来た『ひまわり会』のお姉さん五人。
 冒険者から漏れ聞こえてきた通り、みんな若くてキレイなお姉さんばかりだよ。

「全く、どいつもこいつも、彼我の実力差が分からない雑魚ばっかりだな…。
 血の気が多いだけで、何に役にも立ちそうにないぞ。」

 タロウが冒険者達を眺めて、ため息を吐いていたよ。
 元々、『銀貨引換券』を支部で扱うために視察に来たんだものね。
 役に立ちそうもない連中ばかりで、がっかりしたみたい。

「このクソガキ! 舐めた口利いてんじゃねぇ!」

 血の気が多い冒険者が、タロウの言葉にキレて斬り掛かって来たよ。
 そんな冒険者に対し、タロウは鞘に納めたままの剣を構えて。

「俺も、剣の修行なんてしたことねえから偉そうなことは言えねえが…。
 力み過ぎだろうが。
 無抵抗なカタギに斬り付けるのならともかく。
 そんなにブンブン振り回したんじゃ、少し心得のある相手なら楽に避けられるぞ。」
 
 タロウは斬り掛かって来た剣を容易く躱して、鞘に納めた剣で殴り飛ばしてた。

「ひっ、ひっ、ひっ。
 こりゃ、むしゃぶり付きたいくらい良い女だな。
 悪いが、少し間だけ、大人しくなってもらうぜ。
 なあに、目が覚めた時は、極楽気分を味あわせてやるから安心しな。」

 下卑た笑いを浮かべながら、ジェレ姉ちゃんに鞘に納めたままの剣で襲い掛かる男がいたんだ。

「いや、いや、俺にも選ぶ権利はあるんでね。
 キモい男は願い下げだね。」

 ジェレ姉ちゃんは、剣を手にするまでもなく、手刀の一撃で男を撃退してたよ。

 そして…。

「こいつは上物だ、涎が垂れそうだぜ…。
 俺は、オメエみてえな小っちゃい娘が大好物なんだ。
 できれば、俺が初物を頂きたいが。
 どうせ、変態親父共の競りにかけられちまうんだろうな。
 まあ、仕方がねえ、『風呂屋』の店先に並んだ時は贔屓にしてやるから。
 大人しく捕まっとくんだな。」

 にやけた顔の兄ちゃんが、おいらを捕まえようと鼻息を荒くして迫って来たよ。 

「風呂屋がどんなところか知らないけど…。
 ニイチャン、モテないでしょう?
 顔がキモいよ。」

「うるせえ!余計なお世話だ!
 大人しく捕まりやがれ!」

 人間、図星を差されれると怒るって言うけど…。
 このニイチャン、普段からキモいって後ろ指差されているんだろうね。
 もの凄い形相で怒ってたよ。

 おいらはムキになって襲い掛かって来たニイチャンのキモい手を軽く払ってやったよ。
 手首の骨を粉砕したみたいで、手のひらが変な方向を向いちゃった。

「痛てぇ!」

 そんなくぐもった悲鳴と共に蹲るキモいニイチャン。

 それを見ていた他の冒険者達が、「やりやがったな!」なんて声を上げながら一斉に襲い掛かってきたんだ。
 
        **********

 そして、少し、時間が経過して…。

「信じられねえ…。
 たった、十人やそこいらの女子供に、うちの荒くれ共がのされちまうなんて。
 こりゃ、やべえ。」

 目の前に転がる三十人以上の冒険者を目にして、ゴマスリーは驚愕してたよ。
 そして、脱兎の如く、扉に向かって駆け出したよ。

「本当に往生際が悪いのじゃ。
 悪党の考える事なぞ、お見通しなのじゃ。」

 扉の前には、既にオランが待ち構えていたんだ。
 撃退された冒険者を逃がさないためと、新手を部屋に入れないために扉に張り付いてたんだよ。

「邪魔だ、このガキ、そこを退け!」

 ゴマスリーは、オランを蹴り飛ばそうとするけど…。

「おぬし、運動不足ではないか。
 体はだらしなく太っておるし、蹴りに力が無いのじゃ。」

 オランはヘロヘロの蹴りに呆れながら、蹴り込んできた足を軽く払ったよ。
 すると、ボキッという音が足首から響いて…。

「うがっ!」

 ゴマスリーは、変な悲鳴を上げて床に転がってた。

「アルト姐さん、悪いけど、こいつらを全員しまっておいてもらえるか。
 後で、キツイお灸を据えてやるから。」

「任せなさい、そのくらいお安い御用よ。」

 アルトが承諾して、転がっている連中を『積載庫』に収容すると。
 
「悪い予感が当たっちまったが仕方がない。
 姉さん達五人にこの支部は預けるから、打ち合わせ通り仕切ってもらえるか。」

 タロウは連れて来たギルドのお姉さんに向かってそんな指示を出してたよ。
 この五人のお姉さんは東部地域の出身らしいの。
 こんな事態も想定して、土地勘があって、信頼できそうなお姉さんを連れて来たんだ。
 『銀貨引換券』の導入に向けて、このギルドの体制を整えるためにね。

   
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