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アイイロモンペ

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第十五章 ウサギに乗った女王様

第380話 醜悪な本性を曝け出したよ…

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 最初、おいらが賄賂を要求しに来たと思い込んでいたエチゴヤの店主マイド。
 おいらが、マジでエチゴヤを摘発に来たと知るとマイドは深く考えこんじゃったんだ。
 思考に没頭する中でブツブツと愚痴を漏らし始めたマイド。

 その愚痴の中にシャレにならないモノがあったもんだから。
 おいらはさりげなく追及すると、すんなりと口を滑らしてくれたよ。

 こいつ、ヒーナルに入れ知恵して簒奪を焚きつけていたんだ。
 ヒーナルを玉座に就けて、甘い汁を吸おうと画策したみたいだよ。
 実際、数多くの品々の商いを独占して、多大な儲けを上げていたみたいだからね。
 『パンの実』なんて、国の大部分の人が主食にしているモノまで独占していたし。

 更に驚いたのは、あろうことか、こいつ、トアール国での事件にも関与してたよ。
 モカさんの息子キャラメルが引き起こした『魔王』討伐とそれに伴うスタンピード。
 それに、『スイーツ団』による甘味の独占。

 両方とも、トアール国への進出の足掛かりに、エチゴヤが焚きつけたみたい。
 ヒーナルが王になるのを助けて美味しい思いをしたことで、味をしめた様子だね。

 こいつが元凶だったみたいだよ。
 まだ八つになったばかりのおいらが、三日間も延々とキモい虫の魔物と戦うハメになったのは…。

 マイドの話を聞いたジェレ姉ちゃんは、怒りの余りその場でマイドを斬り捨てようとしてたけど。
 おいらは、何とか宥めてマイドと番頭を捕縛させたんだ。

「オッチャン、『魔王』が倒されて発生したスタンピードでどれだけの民が犠牲になったと思っているの。
 自分の儲けのためだけに、そんな勝手な事をしただなんて赦されることじゃないよ。
 オッチャンには全ての罪をつまびらかに白状してもらって、その命で償ってもらうからね。」

 ジェレ姉ちゃん達に縄を打たれたマイドの向かってそう告げると。

「ワイが何悪いことをしたと言うねん。
 スタンピードが起こって村が襲われたのは天災みたいなもんやろう。
 ワイの責任やあらしまへんで。」

 マイドはスタンピードが村を襲ったのは天災で、自分には関係ない事だなんてしゃあしゃあと主張したよ。

「いや、いや、どう考えてもオッチャンの責任じゃん。
 さっきハッキリ言ってたじゃない。
 スタンピードを利用して、配下の騎士の底上げしろって助言したって。
 『魔王』を倒せばスタンピードが起こるのを知ってたんでしょう。
 それなら、『天災』じゃなくて『人災』だよ。
 それもとんでもなく悪質な。」

 マイドの責任逃れに呆れたおいらがそう指摘すると。

「全く、融通の利かないお人や。
 ヒーナル陛下が玉座に就かれる前の愚王そっくりですな。
 ええでっか、愚王の治世は『質素倹約』を貴族に押し付ける一方で。
 民に対する税を低くしぃ、民のご機嫌取りばかりしおったんやねん。
 おかげで、民は豊かになるのに、貴族は贅沢できなんだ。
 ワイら、商人にもちぃとも便宜を図ってくれへんし。
 数多の愚行に、貴族やワイら商人の間で不満が溜まったいたんですわ。
 そんな中、これでは国がダメになると。
 義憤にかられたヒーナル陛下が決起すると言うさかい。
 ヒーナル陛下の思想に賛同したワイがちょっと協力しただけやないでっか。」

 逆ギレではないけど、マイドはおいらに説教をかましてきたよ。
 おいらの爺ちゃんを民に阿る愚王と言い、権力者を蔑ろしにして国政を誤ったって。
 いや、民に重税を課して自分は贅沢したいと言う貴族やそれと癒着して悪どく儲けたい商人の言い分を正当化されても…。
 我欲を満たすために簒奪したヒーナルを、義憤に駆られて決起したなんて正義の味方みたいに言っているし。

      **********

 おいら、マイドの言葉を聞いていて頭が痛くなってきたよ。

「もう良いよ。
 幾らオッチャンが自分を正当化しようとしても。
 ヒーナルの簒奪に協力したオッチャンの罪が帳消しになることはないから。
 キーン一族や簒奪に関わった貴族と騎士は排除しちゃったから。
 オッチャンを庇護する人は、もういないと思うよ。」
  
 だから、そう告げてこれ以上問答をするのは止めようとしたんだ。

 すると、マイドは胡散臭い笑顔から、醜悪な顔つきに豹変して…。

「全く、小賢しいガキやな。
 少しは損得勘定でモノを考えらられへんのか。
 愚民共に施すより、ワイらに便宜を図った方がオノレらもずっと得やのに。
 もうええ、大人しくワイらの方につけば従っとこう思うとってんけど。
 こうなればしゃあない、このガキは消してしまおう。」

 そんな、不穏当な事をことを呟くと、「野郎ども、出てこい!」と叫んだんだ。

 ガタン!

 そんな、大きな音を立てて三方の壁が開くと、壁の向こうからぞろぞろとガラの悪い連中が湧いて出たよ。
 どうやら、壁には隠し扉があって用心棒が控えていたみたい。

「はっ、はっ、はっ。
 女王だとか言ぉてるが所詮は考えの足らんガキよ。
 王自ら、そんな無勢で敵地に乗り込んで来るなんて浅はかな。
 悪いな、恨むんやったら、オノレの愚かさを恨むんやな。」

 剥き身の剣を持った連中がおいら達を取り囲むと。
 マイドは醜悪な本性を剥き出しにして言ったんだ。

「そんな事をして良いの?
 もう、これで大逆罪は確定になっちゃうよ。
 これが無ければ、死罪だけは免れたかも知れないのに…。
 それに、おいらをここで殺してもキーン一族派の貴族はもういないし。
 おいらを弑逆した罪は揉み消せないんじゃないの?」

 一応、おいらは警告したよ。
 ヒーナルの時みたいに、誰か自分の推す人を王座に就けることが出来れば罪に問われないかも知れないけど。
 おいらを消したところで、それが出来なければ大逆罪の事実は消せないものね。

「はっ、はっ、はっ。
 ワイは知っとるで。
 オノレ、慈悲深いことで、セーオンを生かしてあるんやろ。
 対立するモンは一族郎党、根絶やしにしとかんとあかんやろ 。
 ワイにとっては、ああいう廃人が一番操り易くて有り難いんやで。
 慈悲深いオノレはキーン一族派の貴族も全部は取り潰さんかったんやろ。
 それなら、なんぼでもやり様はあるさかい。」

 どうやら、マイドは容姿を知らなかっただけで、おいらが王位に就いた時の経緯を粗方把握している様子だったよ。
 廃人になって自分じゃ何にもできないセーオンをお飾りで玉座に座らせて、降格したキーン一族派の貴族に実権を握らせるつもりらしいよ。
 更に、自分は裏で糸を引いて甘い汁を吸おうって魂胆みたい。

「あっ、そう、そんなつもりなら仕方がないね。
 おいら、なるべく死罪にはしたくないんだけど。
 世の中を乱そうと言う輩は放っておけないから。
 マイドだけじゃなくて、エチゴヤの幹部とおいらに剣を向けた者は全員死罪だね。」

「ガキがまだそんな戯言を言うか。
 たった、七人で、ワイが抱える精鋭三十人を相手に何が出来るちゅうねん。
 オノレこそ、ワイらと手を組む言うなら、仲良うしてやってもええのやで。」

「それは遠慮しとくよ。
 オッチャンみたいな、醜い大人になりたくないからね。」

「このクソガキが!
 おい、テメエら、こいつらをやっちまえ。」

 おいらの挑発に、湯気が上がりそうなくらい顔を真っ赤にしたマイドが手下をけしかけたよ。
 マイドの命を受けて、三十人のガラの悪い連中が剣を振りかざして襲って来たよ。

「結局、こうなっちまうのか…。
 今回は穏便に済むかと思ったのにな。
 俺、荒事は苦手なのに、こっちの連中はなんて気が荒いんだ…。」

 タロウはそんな愚痴を零しながら、鞘に納めたままの剣を構えていたよ。

「陛下、陛下、こいつら殺っちゃってもいいだよな。
 こんなに沢山、斬れるなんて初めてただぜ。
 おーい、野郎ども、俺が相手してやるぜ!
 まとめて掛かって来い!」

 一方のジェレ姉ちゃんは殺る気満々で、剥き身の剣を構えていたよ。

「女王様、オランジュ様、前へ出てもかまいませんが。
 怪我だけはしないでくださいよ。
 私が宰相閣下にお叱りを受けてしまいますから…。」

 おいら達が飛び出すと分かってるルッコラ姉ちゃんは困った顔をして注文を付けて来たよ。

「マロン陛下に指一本触れさせませんよ!」
「どうどう、トルテ、少し落ち着きなさい。」

 こっちじゃ、逸るトルテをタルトが宥めてた。

「みんな、やる気になってるし。
 私達も少し手伝うのじゃ。」

 オランが鞘に納めたままの剣を手にして向かって来たならず者に対峙したの。
 もちろん、おいらも、オランと共にならず者の前に出たよ。


「女、何がまとめて掛って来いだ、舐めるんじゃねぇぜ!」

「遅い!」

「ギャアーーーー!」

 口火を切ったのはジェレ姉ちゃんだった。挑発に乗ったおバカがジェレ姉ちゃんに斬り掛かったの。
 普段から冒険者のあしらいに慣れているジェレ姉ちゃんは、一撃のもとに斬り捨ててた。
 野太い男の悲鳴と共に血飛沫が上がり、剣を持ったままの手首が宙を舞ったよ。

「げっ、この女、ホントに強いぞ!
 野郎ども、一対一にはなるな!
 多勢に無勢だ、取り囲んで斬り捨てるんだ!」

 三十人の頭らしき男が命じると、数人ずつに分かれておいら達一人一人を取り囲んだよ。
 もっとも、おいらとオラン、トルテとタルトはくっついているから、二人を取り囲む形になったけどね。

 それで、一応連携して斬り掛かって来たよ。所詮ならず者の連携なんてたかが知れてるけどね。

 まあ、結果は一方的な蹂躙だったけどね…。
 さして時間も要せず、三十人の荒くれ者が床に転がっていたよ。
 ジェレ姉ちゃんの周りだけ、床に血の海が出来てた…。

「精鋭三十人がどうしたって?」

 おいらが床にへたり込んだマイドに声を掛けると…。

「信じられへん、たった七人でワイが集めた精鋭三十人を蹴散らすなんて。
 護衛の騎士はまだしも、何で年端のいかないガキがこないに強いねん。」

 マイドは床に転がる手下たちを呆然と眺めてたよ。
 流石に、頼みとする精鋭が一人残さず返り討ちに遭うと観念したみたい。
 逆らう気力も尽きたみたいで、その後は大人しくしょっ引かれてくれた。
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