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第十五章 ウサギに乗った女王様
第373話 国の生命線を握られてたよ…
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ヒーナルが王位に就いていた頃、『エチゴヤ』と言う息の掛かった商人に無茶な便宜を図ってたんだって。
そのせいで、物の値段が上がって市井の人々はえらい迷惑を被ってたみたいだよ。
おいらが、塩の値段がバカ高いことに驚いていたら…。
「まあ、人間塩が無いと生きて行けないからね。
高いからといって買わないって訳にはいかないから質が悪いよ。
でもね、驚くのは早いよ。
こっちを見たらきっと仰天するからね。」
お店のおばちゃんはそう告げつと、おいら達をまた別の売り場に導いたの。
「これねえ、ヒーナル王が即位する前は銅貨十枚だったんだよ。
今じゃ、この通りさ。
何なんだろうね、下々のモンは腹を空かせてろってことかね。」
そう言っておばちゃんがおいら達に指差して見せたのは…。
「何なのじゃ、これは。
『パンの実』が一つ銅貨二十枚もするのじゃ。
まさか、あの愚王は民の主食に税を課したと言うのか。」
オランもおいらと一緒に暮らして一年近くになり、庶民の暮らしぶりも分かって来たみたい。
普段から一緒に市場へ買い物に行ってたからね。
「げっ、辺境の街の二倍もするじゃねえか。
『パンの実』ってのは栽培が簡単で、一年中実を付けるんだろう。
だから、安いし、庶民が飢えないで済むって言ったよな、マロン。」
勿論、タロウも『パンの実』幾らするかは知っている訳で、以前おいらと話したことも覚えてたようだね。
「そうだね、パンの実って安くて、お腹いっぱい食べられるから庶民の味方なのに。
稼ぎが変わらないのに、倍の値段もするんじゃ困っちゃうね。
毎日食べるものだし…。」
どうやら、『パンの実』もヒーナルが税を課したもんだから値が上がっているらしいの。
オランは民の主食になるモノに税を課すのは、民の不満を募らせるだけだと呆れてたよ。
しかも、この『パンの実』に掛かる税の話はもっと深刻なモノみたい。
「『パンの実』の税は、今まで見て来たものとちょっと違うんですよ。
税が掛かっているのは、『パンの実』じゃなくて『パンの木』なんです。
ヒーナルが王になると直ぐに『パンの木』の保有に税を課したそうです。
一本当たり銀貨一万枚。
そんなの小さなパン屋さんが払える訳ないですよね、無茶苦茶です。」
例によって家が商売をしていると言うトルテが詳しいことを教えてくれたよ。
パンの実って主食になってるモノだから、町や村には必ず最低一軒パン屋さんがあってパンの木を栽培しているんだって。
パンの実って毎日食べるモノだし、余り保存が利かないものだから、税をかけて『エチゴヤ』に徴収を任せると言う訳にはいかなかったみたい。
一々、王都にあるエチゴヤに集めて、国中に配送するなんてしてたら途中で腐っちゃうし、十分な量が行き渡らないかも知れないからね。
それで、エチゴヤと結託したヒーナルが何をしたかと言うと。
他の物みたいに『パンの実』そのものに税を掛けるんじゃなくて、持っている『パンの木』一本一本に税を課したんだって。
ある日突然、徴税官がエチゴヤの人を伴なってやって来て、税の取り立て書を示していったらしいよ。
持っているパンの木一本につき銀貨一万枚、一ヶ月以内に支払うようにって。
パンの実って主食だから、相場は誰でも買えるように一つ銅貨十枚って低く抑えられていたんだ。
パン屋さんは、自分が住む町や村の食卓を支えるって使命感で薄利で商っていることが多いみたいで…。
小さな村でも、パン屋さんは最低十本くらいパンの木を抱えているようだから。
一月以内に銀貨十万枚なんて大金を納めろと言われて面食らったみたい。
村の小さなパン屋さんに銀貨十万枚を急に払えってのは、トルテの言葉通り無茶苦茶なんだよね。
パン屋さんが困っていると、同行しているエチゴヤの人の出番らしいよ。
「税が支払えないなら、『パンの木』を伐り倒さなければならないんだが。
それじゃ、この村の人が飢えちまうだろう。
ここは、俺達の『エチゴヤ』にパンの木を譲らねえか。
そしたら、エチゴヤが税を支払うのでこの村は今まで通りパンを食えるってもんだ。
何なら、オメエらもエチゴヤの支店の奉公人ってことで雇っても良いんだぜ。」
そう持ち掛けて、タダ同然で『パンの木』を譲り受けるそうなんだ。
村のパン屋さんはエチゴヤの支店と言う形で存続して、パン屋さんのご主人たちは安い給金で使われたらしいの。
何のことは無い、実態は何も変わらず、エチゴヤは上前を撥ねただけなんだね。
安い給金で働かされることになったご主人と、高いパンを買わされることになった村人が損をしただけのことなの。
その方法で、エチゴヤはこの国で栽培されている『パンの木』を独占しているらしいの。
「この国の『パンの木』を全てエチゴヤが保有していますから。
『パンの木』に掛かる税を廃止してもパンの値段は下がらないでしょうね。
幾らでも売り惜しみ出来ますから。」
そんな風に、トルテがボヤいてたよ。
『パンの木』に課された税を廃止したので、これからは誰でも自由に栽培することが出来るけど。
実際問題、パンの木が実を付けるのは苗を植えてから八年後らしいよ。
その間はエチゴヤの独占を許すことになるし。
そもそもエチゴヤが妨害するだろうから、苗木をちゃんと育てられるかも疑問だって。
「『パンの実』を独占なんて信じられないのじゃ。
それでは、エチゴヤが国の生命線を握っているようなものなのじゃ。
民の主食を一つの商人が独占するなんて、そんなことを許してはいけないのじゃ。
マロン、早急に対策をしないとならないのじゃ。」
全ての経緯を聞き終えると、オランが焦りの色を見せて訴えてきたの。
「分かったよ。『パンの木』については考えがある。
直ぐには出来ないけど、三月もあればなんとかとするよ。」
これは毎日の食事に欠かせないパンの問題だから、本当は一番最初にしないといけないんだけど。
実際問題、アルトが戻ってこないとどうにもできないんだ。
**********
でも、何でも、かんでも、物の値段が倍になってたらみんな困っているよね。
それで、給金の方は全然上がってないんだから、実際は稼ぎが半分になったようなものだし。
おいらがそれを口にすると。
「全てのモノの値段が倍になった訳じゃないですよ。
ヒーナル王は、エチゴヤから貢物を貰って便宜を図っていたと言われてますので。
エチゴヤが扱い易いものだけ、税を掛けてエチゴヤに独占させることにしたんです。
基本、生活に欠かせない物で、保存の利く物ですね。
売れ残っても保存できる物、売り惜しみして値を吊り上げられる物です。」
トルテが補足してくれたよ。
なので、シフォン姉ちゃんが困っていた布地とか、他には紙なんて物も税を課していたみたい。
布も紙も保存が利くし、欠かせない物だからね。
「それじゃ、剣なんかもか?」
「いやだな、剣なんかに税を課したら、冒険者が暴れるじゃないですか。
エチゴヤは冒険者を使って汚れ仕事をさせてるんですから。
連中に恨まれるようなことはしませんよ。」
タロウが口にした疑問を、トルテが一笑に付してたよ。
しかし、トルテ、タロウと同い年のはずなのによく知っているね。
と言うか、ヒーナルとエチゴヤの癒着って子供でも知ってるくらい有名な事なんだ…。
「因みに、私の家も、タルトの家も昔から全然売り物の値段は変わってないそうですよ。
いえ、正確には相場物なんで、どのくらいとれるかでいつも値段は違うんですが。
税が乗っかって急に高くなった訳では無いって意味で。」
「うん? トルテ、タルトの実家は何は商っているの?」
「うちは、魚屋です。
毎朝、港の網元から仕入れて王都で売ってるんです。
大量に仕入れて、余った魚は干物にしたり、燻製にしたりもしてます。
魚は足が速くて、売れ残ったらすぐにダメになるからエチゴヤは手を出さないんです。」
「私の家は、八百屋。
王都近郊の農家から野菜を仕入れて売ってます。
同じく大量に仕入れて、ピクルスにも加工してます。
やっぱり、保存が利かないのでエチゴヤは手を出しません。」
トルテの実家が魚屋で、タルトが八百屋と。
本当に保存が利かない物には手を出していないんだね、エチゴヤ。
一通り値段が上がった物を見せてもらったんで、そろそろ帰ることにしたよ。
「おばちゃん、色々と教えてくれて有り難う。
凄く勉強になったよ。
大至急、対策を練るから、もう少し我慢してね。」
「いいさね、こっちも商売なんだから。
お客さんから、ぼってるなんて噂を立てられたら困るからね。
しかし、お嬢ちゃん、ちっこいのにしっかりしてるね。
護衛なんて連れてるし、どこぞの貴族のお嬢ちゃんかい。」
おいらがお礼を告げて、立ち去ろうとすると。
おばちゃん、今更ながら、そんなことを尋ねてきたよ。
おいらが名乗ろうとすると…。
「ああ、こいつな、こんなチンチクリンでも女王なんだぜ。
この国のマロン女王陛下。
けっこう、町をふらついてるんで、知っている人の方が多いんじゃないかと思ってたが。」
タロウが愉快そうに笑いながら、おいらを紹介したんだ。
チンチクリンで悪かったね。
「あれまあ、女王陛下さんかい。
王様が変わったとは聞いてたけど。
こんなに可愛いお嬢ちゃんだったんだね。
朝から晩までここで働いてるんで、昼間町を歩くことが無いからね。
申し訳ないけど、初めてお目に掛かったよ。」
このおばちゃんも、中々肝が据わっているね。
おいらが女王だと分かっても全然態度が変わらないでやんの。
別に、女王だと威張り散らすつもりも無いけどね。
**********
おばちゃんに別れを告げてお店を出ると、次に向かったのは。
「マロン、海なんかにやって来てどうするのじゃ?
もう、他の店は見ないで良いのか?」
港を通り越して人気のない海辺にやって来たおいらに怪訝な表情でオランが尋ねてきたの。
「うん?
もう他の店は見なくても良いよ。
エチゴヤが値を吊り上げている事が分かっただけで十分。
それよりも。
ちょっと、試してみたいことがあるんだ。」
おいらは、オランの問い掛けに答えると波打ち際まで進んだの。
それじゃ、ちょっと試してみましょうか。
**********
申し訳ございませんが、明日13日から15日まで3日間投稿をお休みさせて頂きます。
16日より投稿を再開しますので、よろしくお願いいたします。
そのせいで、物の値段が上がって市井の人々はえらい迷惑を被ってたみたいだよ。
おいらが、塩の値段がバカ高いことに驚いていたら…。
「まあ、人間塩が無いと生きて行けないからね。
高いからといって買わないって訳にはいかないから質が悪いよ。
でもね、驚くのは早いよ。
こっちを見たらきっと仰天するからね。」
お店のおばちゃんはそう告げつと、おいら達をまた別の売り場に導いたの。
「これねえ、ヒーナル王が即位する前は銅貨十枚だったんだよ。
今じゃ、この通りさ。
何なんだろうね、下々のモンは腹を空かせてろってことかね。」
そう言っておばちゃんがおいら達に指差して見せたのは…。
「何なのじゃ、これは。
『パンの実』が一つ銅貨二十枚もするのじゃ。
まさか、あの愚王は民の主食に税を課したと言うのか。」
オランもおいらと一緒に暮らして一年近くになり、庶民の暮らしぶりも分かって来たみたい。
普段から一緒に市場へ買い物に行ってたからね。
「げっ、辺境の街の二倍もするじゃねえか。
『パンの実』ってのは栽培が簡単で、一年中実を付けるんだろう。
だから、安いし、庶民が飢えないで済むって言ったよな、マロン。」
勿論、タロウも『パンの実』幾らするかは知っている訳で、以前おいらと話したことも覚えてたようだね。
「そうだね、パンの実って安くて、お腹いっぱい食べられるから庶民の味方なのに。
稼ぎが変わらないのに、倍の値段もするんじゃ困っちゃうね。
毎日食べるものだし…。」
どうやら、『パンの実』もヒーナルが税を課したもんだから値が上がっているらしいの。
オランは民の主食になるモノに税を課すのは、民の不満を募らせるだけだと呆れてたよ。
しかも、この『パンの実』に掛かる税の話はもっと深刻なモノみたい。
「『パンの実』の税は、今まで見て来たものとちょっと違うんですよ。
税が掛かっているのは、『パンの実』じゃなくて『パンの木』なんです。
ヒーナルが王になると直ぐに『パンの木』の保有に税を課したそうです。
一本当たり銀貨一万枚。
そんなの小さなパン屋さんが払える訳ないですよね、無茶苦茶です。」
例によって家が商売をしていると言うトルテが詳しいことを教えてくれたよ。
パンの実って主食になってるモノだから、町や村には必ず最低一軒パン屋さんがあってパンの木を栽培しているんだって。
パンの実って毎日食べるモノだし、余り保存が利かないものだから、税をかけて『エチゴヤ』に徴収を任せると言う訳にはいかなかったみたい。
一々、王都にあるエチゴヤに集めて、国中に配送するなんてしてたら途中で腐っちゃうし、十分な量が行き渡らないかも知れないからね。
それで、エチゴヤと結託したヒーナルが何をしたかと言うと。
他の物みたいに『パンの実』そのものに税を掛けるんじゃなくて、持っている『パンの木』一本一本に税を課したんだって。
ある日突然、徴税官がエチゴヤの人を伴なってやって来て、税の取り立て書を示していったらしいよ。
持っているパンの木一本につき銀貨一万枚、一ヶ月以内に支払うようにって。
パンの実って主食だから、相場は誰でも買えるように一つ銅貨十枚って低く抑えられていたんだ。
パン屋さんは、自分が住む町や村の食卓を支えるって使命感で薄利で商っていることが多いみたいで…。
小さな村でも、パン屋さんは最低十本くらいパンの木を抱えているようだから。
一月以内に銀貨十万枚なんて大金を納めろと言われて面食らったみたい。
村の小さなパン屋さんに銀貨十万枚を急に払えってのは、トルテの言葉通り無茶苦茶なんだよね。
パン屋さんが困っていると、同行しているエチゴヤの人の出番らしいよ。
「税が支払えないなら、『パンの木』を伐り倒さなければならないんだが。
それじゃ、この村の人が飢えちまうだろう。
ここは、俺達の『エチゴヤ』にパンの木を譲らねえか。
そしたら、エチゴヤが税を支払うのでこの村は今まで通りパンを食えるってもんだ。
何なら、オメエらもエチゴヤの支店の奉公人ってことで雇っても良いんだぜ。」
そう持ち掛けて、タダ同然で『パンの木』を譲り受けるそうなんだ。
村のパン屋さんはエチゴヤの支店と言う形で存続して、パン屋さんのご主人たちは安い給金で使われたらしいの。
何のことは無い、実態は何も変わらず、エチゴヤは上前を撥ねただけなんだね。
安い給金で働かされることになったご主人と、高いパンを買わされることになった村人が損をしただけのことなの。
その方法で、エチゴヤはこの国で栽培されている『パンの木』を独占しているらしいの。
「この国の『パンの木』を全てエチゴヤが保有していますから。
『パンの木』に掛かる税を廃止してもパンの値段は下がらないでしょうね。
幾らでも売り惜しみ出来ますから。」
そんな風に、トルテがボヤいてたよ。
『パンの木』に課された税を廃止したので、これからは誰でも自由に栽培することが出来るけど。
実際問題、パンの木が実を付けるのは苗を植えてから八年後らしいよ。
その間はエチゴヤの独占を許すことになるし。
そもそもエチゴヤが妨害するだろうから、苗木をちゃんと育てられるかも疑問だって。
「『パンの実』を独占なんて信じられないのじゃ。
それでは、エチゴヤが国の生命線を握っているようなものなのじゃ。
民の主食を一つの商人が独占するなんて、そんなことを許してはいけないのじゃ。
マロン、早急に対策をしないとならないのじゃ。」
全ての経緯を聞き終えると、オランが焦りの色を見せて訴えてきたの。
「分かったよ。『パンの木』については考えがある。
直ぐには出来ないけど、三月もあればなんとかとするよ。」
これは毎日の食事に欠かせないパンの問題だから、本当は一番最初にしないといけないんだけど。
実際問題、アルトが戻ってこないとどうにもできないんだ。
**********
でも、何でも、かんでも、物の値段が倍になってたらみんな困っているよね。
それで、給金の方は全然上がってないんだから、実際は稼ぎが半分になったようなものだし。
おいらがそれを口にすると。
「全てのモノの値段が倍になった訳じゃないですよ。
ヒーナル王は、エチゴヤから貢物を貰って便宜を図っていたと言われてますので。
エチゴヤが扱い易いものだけ、税を掛けてエチゴヤに独占させることにしたんです。
基本、生活に欠かせない物で、保存の利く物ですね。
売れ残っても保存できる物、売り惜しみして値を吊り上げられる物です。」
トルテが補足してくれたよ。
なので、シフォン姉ちゃんが困っていた布地とか、他には紙なんて物も税を課していたみたい。
布も紙も保存が利くし、欠かせない物だからね。
「それじゃ、剣なんかもか?」
「いやだな、剣なんかに税を課したら、冒険者が暴れるじゃないですか。
エチゴヤは冒険者を使って汚れ仕事をさせてるんですから。
連中に恨まれるようなことはしませんよ。」
タロウが口にした疑問を、トルテが一笑に付してたよ。
しかし、トルテ、タロウと同い年のはずなのによく知っているね。
と言うか、ヒーナルとエチゴヤの癒着って子供でも知ってるくらい有名な事なんだ…。
「因みに、私の家も、タルトの家も昔から全然売り物の値段は変わってないそうですよ。
いえ、正確には相場物なんで、どのくらいとれるかでいつも値段は違うんですが。
税が乗っかって急に高くなった訳では無いって意味で。」
「うん? トルテ、タルトの実家は何は商っているの?」
「うちは、魚屋です。
毎朝、港の網元から仕入れて王都で売ってるんです。
大量に仕入れて、余った魚は干物にしたり、燻製にしたりもしてます。
魚は足が速くて、売れ残ったらすぐにダメになるからエチゴヤは手を出さないんです。」
「私の家は、八百屋。
王都近郊の農家から野菜を仕入れて売ってます。
同じく大量に仕入れて、ピクルスにも加工してます。
やっぱり、保存が利かないのでエチゴヤは手を出しません。」
トルテの実家が魚屋で、タルトが八百屋と。
本当に保存が利かない物には手を出していないんだね、エチゴヤ。
一通り値段が上がった物を見せてもらったんで、そろそろ帰ることにしたよ。
「おばちゃん、色々と教えてくれて有り難う。
凄く勉強になったよ。
大至急、対策を練るから、もう少し我慢してね。」
「いいさね、こっちも商売なんだから。
お客さんから、ぼってるなんて噂を立てられたら困るからね。
しかし、お嬢ちゃん、ちっこいのにしっかりしてるね。
護衛なんて連れてるし、どこぞの貴族のお嬢ちゃんかい。」
おいらがお礼を告げて、立ち去ろうとすると。
おばちゃん、今更ながら、そんなことを尋ねてきたよ。
おいらが名乗ろうとすると…。
「ああ、こいつな、こんなチンチクリンでも女王なんだぜ。
この国のマロン女王陛下。
けっこう、町をふらついてるんで、知っている人の方が多いんじゃないかと思ってたが。」
タロウが愉快そうに笑いながら、おいらを紹介したんだ。
チンチクリンで悪かったね。
「あれまあ、女王陛下さんかい。
王様が変わったとは聞いてたけど。
こんなに可愛いお嬢ちゃんだったんだね。
朝から晩までここで働いてるんで、昼間町を歩くことが無いからね。
申し訳ないけど、初めてお目に掛かったよ。」
このおばちゃんも、中々肝が据わっているね。
おいらが女王だと分かっても全然態度が変わらないでやんの。
別に、女王だと威張り散らすつもりも無いけどね。
**********
おばちゃんに別れを告げてお店を出ると、次に向かったのは。
「マロン、海なんかにやって来てどうするのじゃ?
もう、他の店は見ないで良いのか?」
港を通り越して人気のない海辺にやって来たおいらに怪訝な表情でオランが尋ねてきたの。
「うん?
もう他の店は見なくても良いよ。
エチゴヤが値を吊り上げている事が分かっただけで十分。
それよりも。
ちょっと、試してみたいことがあるんだ。」
おいらは、オランの問い掛けに答えると波打ち際まで進んだの。
それじゃ、ちょっと試してみましょうか。
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申し訳ございませんが、明日13日から15日まで3日間投稿をお休みさせて頂きます。
16日より投稿を再開しますので、よろしくお願いいたします。
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