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第十五章 ウサギに乗った女王様
第365話 タロウのギルドも門番の仕事を始めたよ
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そして、剣の所持を一斉に取り締まったのと同じ日。
午前中は近衛騎士の三人組に付いて回ったおいら達だけど。
最初の二人連れの冒険者以外は何事もなく取り締まれてたので、ここはもう見なくても良いだろうと思ったの。
それで、午後は別の場所を視察に行くことにしたんだ。
まずやって来たのは、王都の西側の門。
この門は、トアール国へ向かい南下する街道と海岸伝いにサニアール国へ続く街道と繋がってるんだ。
なので王都の中でも一番人の出入りが多い門で、正面玄関みたいなモノなの。
「タロウ、調子はどう? 問題は起きてない?」
その日は先日タロウのギルド『ひまわり会』に依頼した仕事の初日でもあったの。
と言うより、王都で武器の所持を規制したのに合わせて始めてもらったんだけどね。
「ああ、今のところ何にも問題は起きてないな。
マロンの言う通り、女性冒険者を門番に当てたのは正解だぜ。
ガラの悪い男の冒険者を門番に使おうもんなら、ひと悶着起こるのが目に浮かぶぜ。」
タロウがそんなことを言ってる間にも。
「すみません、先を急いでいるところを申し訳ございませんが。
少々、こちらの事務所に来て頂けませんか。」
この門を担当している門番の一人が王都へ入ろうとしていた旅装束の男性を呼び止めたの。
「おや、王都に着くなり若いお嬢さんのお声が掛かるなんて幸先が良い。
いったい何の御用かな。」
「はい、私共は女王陛下の委託を受けて、この門の門番を仰せつかっている者です。
実は本日より、剣、槍、弓、懐剣などの武器を市中へ持ち込むことが禁止されました。
ついては、それらの取り扱いについてご説明したいことがございます。
あまりお時間はかかりませんので、お話をお聞きください。」
「おや、剣の持ち込みが出来ないってどういうことだい。
王都へ持ち込めないと言うなら、ここで捨てて行けと言うのか。
私はここから別の街まで旅を続けないといけないんだ。
剣無しでは無用心で仕方が無いぞ。」
「はい、ですから、その剣の扱いについてご説明させていただきます。
どうぞこちらへ。」
そう告げて旅の男性を連れて行った先には、『勅許武器預り所』と記された看板を掲げた木造建物があったの。
建物の中に入るとカウンターがあって、そこには二人のギルド職員が座っていたよ。
もちろん、人当たりの良さそうな若いお姉さん。
「「いらっしゃいませ。『武器預り所』へようこそ。」」
カウンターの中にいる二人から、旅人を迎え入れる明るい声が掛かり。
「こちらは、女王陛下の嘱託により、冒険者ギルド『ひまわり会』が運営している施設です。
王都を離れるまで責任もってお客様の武具をお預かりさせて頂きます。」
案内してきた門番のお姉さんがそう告げて、カウンター席に座らせたんだ。
「『武具預り所』と言うことは、私はここで剣を預けないとならないのかい。」
席に腰掛けた旅人が尋ねると。
「はい、これが先日王宮から出された御触れ書きです。
この通り、本日より剣その他の武器を王都に持ち込むと罰せられることになります。
そのため、旅の方が王都に滞在する間、こちらでお預かりする事になりました。
私共が責任を持ってお預かりします。」
終始にこやかに、ギルドのお姉さんは旅人に説明したの。
カウンターの後ろにある壁には額装されたおいらからの嘱託状も掲げられてたよ。
「うん、王都への剣の持ち込みが禁止になったことが嘘ではない事は理解した。
君達が、正式に王宮からの嘱託を受けている事も。
しかし、本当に剣は返ってくるのだろうね。
安いモノではないし、旅を続けるために必要な物なのだ。
失くしたとか、盗まれたとか言われても困るよ。」
「はい、その点についてはご安心ください。
まず、お預かりする武器はお客様毎に個別の箱に納めて保管します。
更に武器を納めた箱は、後の金庫に納めて厳重に保管されます。」
紛失、盗難を心配している旅人に、お姉さんはそう説明し後ろにある巨大な金庫を差し示したの。
そう、おいらがチンに依頼した金庫だよ。
絶対に破壊できない頑丈な造りにしてもらい、持ち出しも不可能な大きさの物にしたよ。
なんて言ったって、おいらの『積載庫』に入れて持ち込んだので、この建物の扉よりはるかに大きいの。
壁をぶち抜かない限り運び出すことは不可能な大きさなんだ。
そもそも、大の大人十人掛かりでも持てるような重さじゃないし。
金庫の錠前も複雑かつ頑丈なモノが二重に掛かっていて、鍵無しで開錠することも、壊すことも無理って代物なの。
それだけじゃないよ。武器を納めた木箱は、中身のすり替えを防止するため、お客が署名した紙帯で封緘することになってるの。
また、預かる武器の明細を記載した書面を二通作り、預り所とお客がそれぞれ一枚づつ持つんだ。
お客が持つ一枚は預かり証なんだけど、返却の際に署名欄に署名してもらって引き出し状として提出してもらうの。
預り所が持つ方には予めお客の署名を貰っていて、引き出し状の署名と対比することでなりすましも防止しているよ。
そうすることで、預かった武器類を間違いなく本人に返却する仕組みを作ったの。
カウンターのお姉さんはその辺りも丁寧に説明していたよ。
「安心して預けても大丈夫なのは分かったが。
預けるのにはお金が掛かるんじゃないのかい。
余り高い費用を請求されても困るのだが。」
旅人は厳重な管理がされることを知り、その費用を請求されることを心配してたんだ。
「はい、その点についてもご安心ください。
お預かりするのに、費用は一切掛りません。
王都の治安維持のためにお客様にご協力をお願いするのです。
その費用をお客様に求める訳には参りません。
費用は全て王宮持ちです。」
お姉さんはニコニコと笑顔を崩さず、タダで預かると言ってたよ。
「それなら安心だ。
しかし、剣無しで王都へ入って、冒険者みたいなならず者に絡まれても困るんだが。」
「はい、そちらの御心配もありません。
本日より、騎士三百人以上を動員して王都で剣狩りをしています。
許可なく市中で剣を所持することは、一月前に法で禁じられており。
一月の猶予期間が過ぎた本日から一斉摘発をしています。
王都中隈なく騎士が目を光らせておりますので、ご安心してお過ごしください。」
「おおう、それを聞いて安心した。
それじゃ、この剣と懐剣を預かってもらおうか。」
カウンターのお姉さんの終始丁寧な対応が良かったんだと思う、旅人は快く剣を預けてくれたよ。
「しかし、市中で剣の所持を禁止するなんて、私もあちこち旅をしているが初めて聞いたよ。
まあ、町に住んでるのなら、魔獣狩りでも生業にしない限は武器なんぞ要らんからね。
誰も剣を所持していなければ、住人にとっては安心だな。」
剣を預かる手続きをしている間、旅人はカウンターのお姉さんにそんなことを言ってたよ。
市中に於ける剣の所持を制限したことについては、好意的に思ってくれたみたい。
「でも、それ以上の驚きは、冒険者ギルドが王宮に嘱託されてカタギな仕事をしている事だな。
正直、冒険者ギルドってのは、ならず者の集団だと思っていたよ。
まさか、冒険者ギルドにこんな礼儀正しいお嬢さんがいるなんて夢にも思わなかった。」
「はい、『ひまわり会』は新たに設置されたお役所『冒険者管理局』の直轄ギルドでございまして。
女王陛下に選ばれた者が会長を務めており、職員は女性が中心となって運営しています。
出入りの冒険者に対しては市井の人々に対する迷惑行為を固く禁じてます。」
「へえ、町の人に対する迷惑行為を禁止している冒険者ギルドなんて初耳だ。
冒険者ってのは、カタギの人に悪さをするのが仕事だと思ってた。
王都にこんなまともな冒険者ギルドがあったなんて知らなかったよ。」
「いえ、つい先日までは、ここもこの国最大の悪の巣窟のようなギルドだったのですが。
その存在を憂慮した女王陛下が上層部を処断して、国の直轄下に置きました。
現在は女王陛下の指示の下、市井の方々に愛されるギルドを目指して再建中でございます。
親切丁寧な対応を心掛けておりますので、ご依頼等ございましたらお気軽にご相談ください。」
お客さんと会話する中で、カウンターのお姉さんはきっちりギルドのPRをしてた。
中々、良い感じだよ。
「さっきから聞いていると、新しい女王様ってのは随分と王都の治安向上に力を注いでるんだね。
それじゃ、王都に滞在中は安心して街をほっつき歩けるな。
色々と見て歩くのが楽しみだ。」
「はい、この一月ほどで王都の治安が目に見えて良くなりました。
騎士もこまめに巡回していますので、表通りでは滅多なことはございません。
ただ、正直、まだ野放しになっている冒険者ギルドもございますし。
法外な請求をする酒場なども有りますので、裏通りや歓楽街を歩かれる際は十分にご用心ください。
もし、冒険者から迷惑行為を受けた場合は、中央広場にある『冒険者管理局』の事務所までご相談ください。」
「おっ、こりゃ、遊びに行く前に釘を刺されちゃったか。
やっぱり、色街まで、安全安心と言う訳にはいかないか。
それじゃ、そう遊びは自粛することにしよう。」
「はい、節度を持って王都の滞在をお楽しみください。」
そんな会話を交わすうちに、預かった剣を箱詰め封緘し、預かり証も手渡して手続きが完了したの。
「それじゃ、王都を出るまで剣の保管を頼んだよ。」
「はい、責任もってお預かりします。
お気をつけて、いってらっしゃいませ。」
剣の持ち込み禁止って他に類を見ない取り組みなんだけど、旅人は機嫌を損ねること無く預けてくれたよ。
この調子なら、大したトラブルを起こすこと無く続けられそうだね。
旅人とカウンターのお姉さんのお姉さんのやり取りを見て、何とかなりそうだと考えていると。
「うーん、トラブルが無いのは良いことなんだが…。
あのお姉さんの対応って。
何か、通販型自動車保険のコマーシャルを見ているような。
そこはかとない胡散臭さを感じるのは俺だけだろうか。」
タロウがまた訳の分からないことを言ってたよ。
それはともかく、これ、厳つい男の冒険者が対応したら絶対に揉めてるよね。
旅人から剣を取り上げるなんて、前代未聞のことらしいから。
この『勅許武具預り所』は王都の三つの門全てと、港の入り口に設置したよ。
全部一括して『ひまわり会』に委託したんだ。
四ヶ所とも覗いてみたけど、取り敢えずはトラブルは起こっていない様子だった。
「剣を取り上げるだなんて、上手くいくのか心配だったのじゃが。
どうやら、上手くいきそうなのじゃ。
マロンの言葉通り、女性を使って柔らかい対応するのが功を奏しているようじゃ。」
現場の様子を見るまでは、王都で剣の所持を禁止することは難しいんじゃないかと、オランは心配してたけど。
一日見て回った限りでは、案外上手くいきそうだとオランも感じたみたいだったよ。
これから上手く運用できるかは、門番やカウンターのお姉さん方の親切丁寧な対応に掛かっているね。
午前中は近衛騎士の三人組に付いて回ったおいら達だけど。
最初の二人連れの冒険者以外は何事もなく取り締まれてたので、ここはもう見なくても良いだろうと思ったの。
それで、午後は別の場所を視察に行くことにしたんだ。
まずやって来たのは、王都の西側の門。
この門は、トアール国へ向かい南下する街道と海岸伝いにサニアール国へ続く街道と繋がってるんだ。
なので王都の中でも一番人の出入りが多い門で、正面玄関みたいなモノなの。
「タロウ、調子はどう? 問題は起きてない?」
その日は先日タロウのギルド『ひまわり会』に依頼した仕事の初日でもあったの。
と言うより、王都で武器の所持を規制したのに合わせて始めてもらったんだけどね。
「ああ、今のところ何にも問題は起きてないな。
マロンの言う通り、女性冒険者を門番に当てたのは正解だぜ。
ガラの悪い男の冒険者を門番に使おうもんなら、ひと悶着起こるのが目に浮かぶぜ。」
タロウがそんなことを言ってる間にも。
「すみません、先を急いでいるところを申し訳ございませんが。
少々、こちらの事務所に来て頂けませんか。」
この門を担当している門番の一人が王都へ入ろうとしていた旅装束の男性を呼び止めたの。
「おや、王都に着くなり若いお嬢さんのお声が掛かるなんて幸先が良い。
いったい何の御用かな。」
「はい、私共は女王陛下の委託を受けて、この門の門番を仰せつかっている者です。
実は本日より、剣、槍、弓、懐剣などの武器を市中へ持ち込むことが禁止されました。
ついては、それらの取り扱いについてご説明したいことがございます。
あまりお時間はかかりませんので、お話をお聞きください。」
「おや、剣の持ち込みが出来ないってどういうことだい。
王都へ持ち込めないと言うなら、ここで捨てて行けと言うのか。
私はここから別の街まで旅を続けないといけないんだ。
剣無しでは無用心で仕方が無いぞ。」
「はい、ですから、その剣の扱いについてご説明させていただきます。
どうぞこちらへ。」
そう告げて旅の男性を連れて行った先には、『勅許武器預り所』と記された看板を掲げた木造建物があったの。
建物の中に入るとカウンターがあって、そこには二人のギルド職員が座っていたよ。
もちろん、人当たりの良さそうな若いお姉さん。
「「いらっしゃいませ。『武器預り所』へようこそ。」」
カウンターの中にいる二人から、旅人を迎え入れる明るい声が掛かり。
「こちらは、女王陛下の嘱託により、冒険者ギルド『ひまわり会』が運営している施設です。
王都を離れるまで責任もってお客様の武具をお預かりさせて頂きます。」
案内してきた門番のお姉さんがそう告げて、カウンター席に座らせたんだ。
「『武具預り所』と言うことは、私はここで剣を預けないとならないのかい。」
席に腰掛けた旅人が尋ねると。
「はい、これが先日王宮から出された御触れ書きです。
この通り、本日より剣その他の武器を王都に持ち込むと罰せられることになります。
そのため、旅の方が王都に滞在する間、こちらでお預かりする事になりました。
私共が責任を持ってお預かりします。」
終始にこやかに、ギルドのお姉さんは旅人に説明したの。
カウンターの後ろにある壁には額装されたおいらからの嘱託状も掲げられてたよ。
「うん、王都への剣の持ち込みが禁止になったことが嘘ではない事は理解した。
君達が、正式に王宮からの嘱託を受けている事も。
しかし、本当に剣は返ってくるのだろうね。
安いモノではないし、旅を続けるために必要な物なのだ。
失くしたとか、盗まれたとか言われても困るよ。」
「はい、その点についてはご安心ください。
まず、お預かりする武器はお客様毎に個別の箱に納めて保管します。
更に武器を納めた箱は、後の金庫に納めて厳重に保管されます。」
紛失、盗難を心配している旅人に、お姉さんはそう説明し後ろにある巨大な金庫を差し示したの。
そう、おいらがチンに依頼した金庫だよ。
絶対に破壊できない頑丈な造りにしてもらい、持ち出しも不可能な大きさの物にしたよ。
なんて言ったって、おいらの『積載庫』に入れて持ち込んだので、この建物の扉よりはるかに大きいの。
壁をぶち抜かない限り運び出すことは不可能な大きさなんだ。
そもそも、大の大人十人掛かりでも持てるような重さじゃないし。
金庫の錠前も複雑かつ頑丈なモノが二重に掛かっていて、鍵無しで開錠することも、壊すことも無理って代物なの。
それだけじゃないよ。武器を納めた木箱は、中身のすり替えを防止するため、お客が署名した紙帯で封緘することになってるの。
また、預かる武器の明細を記載した書面を二通作り、預り所とお客がそれぞれ一枚づつ持つんだ。
お客が持つ一枚は預かり証なんだけど、返却の際に署名欄に署名してもらって引き出し状として提出してもらうの。
預り所が持つ方には予めお客の署名を貰っていて、引き出し状の署名と対比することでなりすましも防止しているよ。
そうすることで、預かった武器類を間違いなく本人に返却する仕組みを作ったの。
カウンターのお姉さんはその辺りも丁寧に説明していたよ。
「安心して預けても大丈夫なのは分かったが。
預けるのにはお金が掛かるんじゃないのかい。
余り高い費用を請求されても困るのだが。」
旅人は厳重な管理がされることを知り、その費用を請求されることを心配してたんだ。
「はい、その点についてもご安心ください。
お預かりするのに、費用は一切掛りません。
王都の治安維持のためにお客様にご協力をお願いするのです。
その費用をお客様に求める訳には参りません。
費用は全て王宮持ちです。」
お姉さんはニコニコと笑顔を崩さず、タダで預かると言ってたよ。
「それなら安心だ。
しかし、剣無しで王都へ入って、冒険者みたいなならず者に絡まれても困るんだが。」
「はい、そちらの御心配もありません。
本日より、騎士三百人以上を動員して王都で剣狩りをしています。
許可なく市中で剣を所持することは、一月前に法で禁じられており。
一月の猶予期間が過ぎた本日から一斉摘発をしています。
王都中隈なく騎士が目を光らせておりますので、ご安心してお過ごしください。」
「おおう、それを聞いて安心した。
それじゃ、この剣と懐剣を預かってもらおうか。」
カウンターのお姉さんの終始丁寧な対応が良かったんだと思う、旅人は快く剣を預けてくれたよ。
「しかし、市中で剣の所持を禁止するなんて、私もあちこち旅をしているが初めて聞いたよ。
まあ、町に住んでるのなら、魔獣狩りでも生業にしない限は武器なんぞ要らんからね。
誰も剣を所持していなければ、住人にとっては安心だな。」
剣を預かる手続きをしている間、旅人はカウンターのお姉さんにそんなことを言ってたよ。
市中に於ける剣の所持を制限したことについては、好意的に思ってくれたみたい。
「でも、それ以上の驚きは、冒険者ギルドが王宮に嘱託されてカタギな仕事をしている事だな。
正直、冒険者ギルドってのは、ならず者の集団だと思っていたよ。
まさか、冒険者ギルドにこんな礼儀正しいお嬢さんがいるなんて夢にも思わなかった。」
「はい、『ひまわり会』は新たに設置されたお役所『冒険者管理局』の直轄ギルドでございまして。
女王陛下に選ばれた者が会長を務めており、職員は女性が中心となって運営しています。
出入りの冒険者に対しては市井の人々に対する迷惑行為を固く禁じてます。」
「へえ、町の人に対する迷惑行為を禁止している冒険者ギルドなんて初耳だ。
冒険者ってのは、カタギの人に悪さをするのが仕事だと思ってた。
王都にこんなまともな冒険者ギルドがあったなんて知らなかったよ。」
「いえ、つい先日までは、ここもこの国最大の悪の巣窟のようなギルドだったのですが。
その存在を憂慮した女王陛下が上層部を処断して、国の直轄下に置きました。
現在は女王陛下の指示の下、市井の方々に愛されるギルドを目指して再建中でございます。
親切丁寧な対応を心掛けておりますので、ご依頼等ございましたらお気軽にご相談ください。」
お客さんと会話する中で、カウンターのお姉さんはきっちりギルドのPRをしてた。
中々、良い感じだよ。
「さっきから聞いていると、新しい女王様ってのは随分と王都の治安向上に力を注いでるんだね。
それじゃ、王都に滞在中は安心して街をほっつき歩けるな。
色々と見て歩くのが楽しみだ。」
「はい、この一月ほどで王都の治安が目に見えて良くなりました。
騎士もこまめに巡回していますので、表通りでは滅多なことはございません。
ただ、正直、まだ野放しになっている冒険者ギルドもございますし。
法外な請求をする酒場なども有りますので、裏通りや歓楽街を歩かれる際は十分にご用心ください。
もし、冒険者から迷惑行為を受けた場合は、中央広場にある『冒険者管理局』の事務所までご相談ください。」
「おっ、こりゃ、遊びに行く前に釘を刺されちゃったか。
やっぱり、色街まで、安全安心と言う訳にはいかないか。
それじゃ、そう遊びは自粛することにしよう。」
「はい、節度を持って王都の滞在をお楽しみください。」
そんな会話を交わすうちに、預かった剣を箱詰め封緘し、預かり証も手渡して手続きが完了したの。
「それじゃ、王都を出るまで剣の保管を頼んだよ。」
「はい、責任もってお預かりします。
お気をつけて、いってらっしゃいませ。」
剣の持ち込み禁止って他に類を見ない取り組みなんだけど、旅人は機嫌を損ねること無く預けてくれたよ。
この調子なら、大したトラブルを起こすこと無く続けられそうだね。
旅人とカウンターのお姉さんのお姉さんのやり取りを見て、何とかなりそうだと考えていると。
「うーん、トラブルが無いのは良いことなんだが…。
あのお姉さんの対応って。
何か、通販型自動車保険のコマーシャルを見ているような。
そこはかとない胡散臭さを感じるのは俺だけだろうか。」
タロウがまた訳の分からないことを言ってたよ。
それはともかく、これ、厳つい男の冒険者が対応したら絶対に揉めてるよね。
旅人から剣を取り上げるなんて、前代未聞のことらしいから。
この『勅許武具預り所』は王都の三つの門全てと、港の入り口に設置したよ。
全部一括して『ひまわり会』に委託したんだ。
四ヶ所とも覗いてみたけど、取り敢えずはトラブルは起こっていない様子だった。
「剣を取り上げるだなんて、上手くいくのか心配だったのじゃが。
どうやら、上手くいきそうなのじゃ。
マロンの言葉通り、女性を使って柔らかい対応するのが功を奏しているようじゃ。」
現場の様子を見るまでは、王都で剣の所持を禁止することは難しいんじゃないかと、オランは心配してたけど。
一日見て回った限りでは、案外上手くいきそうだとオランも感じたみたいだったよ。
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