ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

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第十四章 まずはコレをどうにかしないと

第357話 ナイショだよ、色々と…

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 大した時間もかからず、おいらは『生命の欠片』を配り終えたよ。
 すると、『生命の欠片』を取り込んだお姉さん達の中から。

「凄いです、まるで生まれ変わったかのようです。
 力が漲って自分の体じゃないようです。」

「ホント、これなら、ヘッポコ冒険者が束になって掛かって来てもいなせそうです。」

 レベルアップによる身体能力の向上を実感している声が聞こえて来たよ。

「みんな、喜んでいるところに悪いけど、真面目に聞いてくれるかな。
 これから重要な話をするから。」

 おいらは、お姉んさん達の注目を集めるとレベルについてのやや詳しい説明をしたんだ。
 そして、その最後にこう伝えたの。

「レベルって言葉が禁句なのは、レベル持ちを殺せばレベルが奪えるからなんだ。
 今、お姉さん達を殺せば、レベル二十分の『生命の欠片』がここに現れて。
 それを取り込んだ殺人者がレベル二十になれるの。
 大昔、人からレベルを聞き出した上で、殺してレベルを奪うという事件が多発したの。
 それ以来、身を護るためにレベルを口外するのはタブーになり。
 他人のレベルを聞き出そうとする者を殺人者予備軍として、殺しても良いという風潮になったの。
 だから、お姉さん達もこれまで通り、レベルのことは口に出したらダメだからね。
 正面から挑まれれば、レベルゼロの冒険者なんかには引けは取らないだろうけど…。
 卑怯者は、一服盛って眠っているとこを殺してレベルを奪おうとするかも知れないからね。」

 どうしてレベルという言葉を口にする事がタブーなのかは誰も知らなかったみたい。
 レベルの詳細については民には明かされていないから仕方がないね。

 レベルという言葉を人前で口にするのはタブーだということ。
 そして、もし口にしたら殺されても文句言えないということ。
 お姉さん達が両親からは聞かされていたのはその二点だけだったみたいだよ。
 きっと、両親も詳しいことは知らなかったんだろうね。

 レベルのことを人前で口にする事がタブーとされた訳を知り、お姉さん達は青い顔をしてた。
 おいらが、しゃべっちゃダメと念押しすると、みんなすごい勢いで首を縦に振ってたよ。

 すると。

「まあ、レベル二十もあれば、雑魚冒険者が束になって掛かって来ても後れを取ることはないと思う。
 ただ、上がった身体能力に動きを馴染ませるために、実際に体を動かした方が良いな。
 マロン、管理局の研修施設を少し使わせてもらえるか?
 このお姉さん達に、単独トレント狩りに挑んでもらおうと思うんだけど。」

 タロウがそんな依頼を口にしたんだ。

「えっ、単独でトレントを狩るんですか?
 無理、無理、そんなの無理ですよ!」

 その言葉に反応して、お姉さんの中からそんな焦りの声が上がってたよ。

「分かった、明日の午後でも来てもらえるかな。
 縛り上げた冒険者を預けるため、帰り掛けに管理局に寄るから伝えておくよ。
 みんな、安心して良いよ、レベル二十なら単独トレント狩りは楽勝だから。
 このギルドの先輩職員も全員通って来た道だよ。」

 おいらが、無情にもタロウの依頼を受け入れたもんだから、お姉さん達は落胆してたよ。
 タロウがお手本を示すだろうし、危なくなったらフォローするだろうから心配する必要ないけどね。

      **********

 お姉さん達がギルドにお勤めしてくれることは決まったし、『生命の欠片』も配り終えた。
 することも終わったから、ホールに放置している冒険者達を連れて立ち去ろうかと思っていると。

「実は私達、王都へ出て来たその日から管理局の研修施設に宿泊していたので。
 まだ、住む所が決まっていないのです。
 下宿? 宿屋? 借家? 私達はどんなところへ住めば良いのでしょう?
 ここにお勤めの先輩方は、みなさん、どんなところに住んでいるのですか。」

 お姉さん達の中から寝床の心配をする声が上がったんだ。
 
「今このギルドの女性職員は十人いるんだが…。
 詳しい事情は話せないけど、全員結構な金持ちで王都に屋敷を構えているんだ。
 俺も、マロンに屋敷を下賜してもらったんで借家事情とかは詳しく無くてな。
 何なら、ここの三階、四階に居住用の部屋があるから使っても良いぞ。」

 タロウがここの会長となるのと同時に採用したお姉さん達は、全員このギルドに拉致されてた被害者なんだ。
 このギルドを接収した時に、キンベー会長以下幹部が隠し持っていた財産を全て没収したの。
 没収した個人財産は、拉致されてた被害者三十六人に慰謝料として分配することにしたんだけど。
 奴らが隠し持っていた財産はとんでもない額で、一人当たりの分配額は王都でちょっとしたお屋敷が買えるほどになったの。

 ちょうどその時、幾つもの騎士家が取り潰しになって手頃な屋敷がいっぱい売りに出たんだ。
 膨大な銀貨を抱えていても無用心だし、王都で屋敷を手に入れる機会は滅多にないということもあって。
 お姉さん達は、慰謝料を屋敷に換えちゃったの。だから、みんな十代なのに屋敷持ちだよ。
 でも、お姉さん達がここで慰み者になってたとは言えないから、タロウもそこは軽く流したんだね。

 因みに、ここの三階、四階は処刑した幹部が居室として使っていた部屋が並んでいるの。
 どれも、豪勢な造りで、調度品も揃っているらしいよ。
 監禁していたお姉さんを連れ込んでいたそうで、ベッドなんか凄く大きくて上質なモノなんだって。 

 タロウは、三、四階の部屋はちゃんと掃除済みで、ベッドのシーツも替えてあると説明して宿泊を勧めたんだけど…。

「ええっと、このギルドの部屋に泊るんですか…。
 一階のホールには夜でも冒険者がたむろっているんですよね。」

「私、冒険者ギルドって、宿無しの冒険者が大部屋で寝泊まりしているって聞いたことが…。
 冒険者と一つ屋根の下で眠るのは、なんかイヤ。」

「そうね、幾ら強くなったと言われても、寝込みを襲われたら…。
 寝入ってるところを、多人数で襲われたら抵抗できそうも無いわ。」

 まだ冒険者研修による調教は始まったばかりで、躾されてない野良犬のような冒険者が主流だからね。
 そんな冒険者が寝起きしているギルドには泊まりたくないって主張したんだ。

「どっちみち、ずっと宿屋暮らしという訳にもいかないし。
 これから定住するところを探さないといけないな。
 じゃあ、明日、明後日は住む部屋探しに充ててもらうとして、出勤は三日後からで良いや。
 それで、今日の宿だけど、俺も王都の宿屋は詳しくないし…。
 何なら、俺の家に泊るか? 部屋なら沢山空いているからな。
 シフォンにご馳走を作ってもらって、今夜はみんなの歓迎会でもするか。」

 宿屋を探すのが面倒になったんだろうね、タロウは自分の屋敷に泊らないかと誘ったの。
 
「えっ、でも、いきなり押し掛けたら、奥様がご迷わ…。」

 タロウに勧められたものの、五人中四人までは急にお泊まりするのは申し訳ないと思っていたようで。
 相互に顔を見合わせて、代表するように一人が遠慮しようとしてたんだけど…。

「はい、はい、それは有り難いです。
 私、知らない町でどんなところか分からない宿屋に泊るのは不安だったんです。
 タロウさんのお屋敷に泊めて頂けるのなら、安心できます。」

 その言葉を遮るようにさっきタロウに粉を掛けていたお姉さんが、タロウの申し出を受けると答えたの。
 まるっきり空気を読まないで…。

 おいら、見たよ。タロウが誘った瞬間、獲物を狙う鷹のようにお姉さんの目が鋭く光ったのを。

 結局、声の大きなそのお姉さんの一言で他の人も遠慮できなくなっちゃて、タロウの家にお泊りが決まったの。
 なんだか面白いことになりそうなんで、おいらもチョットだけお邪魔することにしたよ。

        **********

 その日は終業時間には早いけど、タロウはお姉さん達五人を連れてギルドを後にしたんだ。
 早く帰ってシフォン姉ちゃんに五人を泊めることを伝えないと、それこそ食事や部屋の準備が出来ないからね。

 途中、『冒険者管理局』の事務所に寄って、不良冒険者を預け、翌日トレントの森を使わせてもらう許可もとったよ。

 そして、やって来たのは。

「すっごい! タロウさんのお屋敷ってどれだけ広いのですか。」

 タロウの屋敷を見て、その広大さにお姉さん達が驚嘆してたよ。
 繁華街の外れ、貴族の屋敷が立ち並ぶお屋敷街とは全く別の街区にタロウの屋敷はあるの。
 周りは市井の人が暮らす住宅街だから、タロウのお屋敷の巨大さが際立っているんだ。

「久しぶりに来たけど、住み心地はどう?」

「うん? どうって言われても、マロンだって何日か泊っていただろう。
 居心地が良い屋敷だと知っていたから、ここを下賜して貰ったんだし。
 何より、貴族街から離れているんで気楽に過ごせる事が一番だぜ。」

 そう、ここはセーナン兄ちゃん母子が軟禁されていた屋敷なんだ。
 この屋敷は名義上キーン一族の別邸だったので、王宮が没収したの。
 セーナン兄ちゃん母子には、住む場所を奪う分も上乗せして賠償金を支払う形にしたんだ。

 タロウは少しの間、この屋敷に滞在して、立地の良さと住み易さを知っていたんで迷わずここを希望したの。

 屋敷の中に入ると庭でシフォン姉ちゃんがお茶会をしてたよ、耳長族のお姉ちゃん達と。

「あれ、タロウ君、今日は早いのね。
 マロンちゃんもいらっしゃい。
 今日は何かしら、大勢連れちゃって。」

 タロウに気付いたシフォン姉ちゃんが声を掛けてきたよ。

「ああ、後にいる五人が、今日、冒険者ギルドに就職してくれたんだ。
 マロンが連れて来てくれた。
 まだ、王都に出て来たばかりで、宿無しなんだって。
 明日、明後日で住む部屋を探すんで、二日ここに泊めようと思ってな。
 悪いが、今日は歓迎会をしたいから、ご馳走を用意してもらえるか。」

「あら、マロンちゃん、有り難う。
 五人も職員が増えれば、もう少し早く帰って来られるようになるわね。
 このところ、タロウ君、仕事が忙しくて、…。
 帰りが遅いものだから、このところ不完全燃焼だったの。
 持て余しちゃって、町へイケメンを漁りに行くところだったわ。」

 タロウの言葉を聞いて、シフォン姉ちゃんは良く解からない感謝の言葉を口にしてたよ。
 タロウの帰りが遅いのと町にイケメンを漁りに行くのがどういう関係があるのか分からないけど。
 取り敢えずはとっても喜んでもらえたみたい。

「みんな、ようこそ。
 大したおもてなしも出来ないけど、腕に撚りをかけてご馳走を作っちゃうね。」

 満面の笑顔でお姉さん達を歓迎するシフォン姉ちゃん。
 歓迎されたお姉さん方はと言うと。

「突然お邪魔して申し訳ございません。
 二日ほどお世話になりますので、よろしくお願いします。」

 そう礼儀正しく、挨拶をするお姉さんがいる一方で…。

「ねえ、ねえ、テーブルでお茶している年上のご婦人方、凄くキレイ…。
 お貴族様かな? でも、何か違和感が…。」

 シフォン姉ちゃんとテーブルを囲んでいた耳長族のみんなに目をとらわれたお姉さんもいたよ。

 極めつけは。

「ちっ、サラサラの金髪に、でっかい胸って、まるで勝ち目が無いじゃん。
 あの目の下にある泣き黒子があざとい…。」
 
 タロウを狙っているお姉さんが、シフォン姉ちゃんを見てそんな言葉をこぼしてた。
 自分の薄い胸を恨めし気に撫でてたよ。

 シフォン姉ちゃんは、耳長族に見惚れているお姉さんに気付いたようで。

「こちらの五人は、もうすぐ私が開くお店のスタッフなの。
 この町に来る前から、服の縫製を手伝ってもらってたんだけど。
 ここで店を構えることになったので、一緒に来てもらったのよ。
 みんな、耳長族で人の住む町は不慣れなモノだから一緒に暮らしているの。」
 
 シフォン姉ちゃんは事も無げに紹介したけど。
 幻の種族と言われている耳長族だと紹介されてみんなビックリしてたよ。
 巷では絶滅したと思われていたからね。

「耳長族なんて、そんな反則みたいな人達と一緒に住んでて手を出していないなんて…。
 私、ホントに、勝ち目無いじゃん。
 あんな綺麗な人達にお手付きしないで、奥さん一筋なんて…。」

 このお姉さん、まだ言っているし…。
 玉の輿願望はそろそろ卒業した方が良いよ、タロウの『チューニ病』みたいに。
 
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